/ 2016/09/27
誰もがこの日を待ち望んでいました。宇多田ヒカル、8年ぶりのオリジナルアルバムです。さてその中身はというと、8年の間に別人のように変化した宇多田ヒカルを見せつける作品、というよりは、8年前の宇多田ヒカルの延長線上にあるアルバムです。いわば正統進化。ファンが待ち望んでいた姿。あの時の宇多田ヒカルそのまま。8年も経ったんだから、どんな風になっているか不安半分、期待半分だったんだけど、安パイなアルバムを出してきたなあ、と。もっとめちゃくちゃでも許されたと思いますよ。もっとめちゃくちゃな作品を聴きたかったですよ。とんでもない作品を聴きたかったですよ。確かにこれはスタンダートにとんでもない傑作ですよ。でも僕は、だれもたどり着いたことのない境地に到達した音楽を聴きたかった。でも言い換えれば、宇多田ヒカルはデビュー時から完成されたアーティストで、その形は変わりようがないのかなあとも思いました。最初から通して最後まで聞きやすく、時間が過ぎるのがあっという間。ただ、曲調は変わっていないものの、歌詞は8年の人間活動の深化があらわれています。一言でいうと、今までの歌詞は静脈、動脈。今作の歌詞はそれに加えて毛細血管まで網羅。明らかにインプットが増えて、アウトプットが豊かになっている。風景が豊か。素晴らしい作品だけど、もっとすごいものを期待してたんだよなあ。宇多田ヒカル、8年間の人間活動を経ての作品だもん。
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