去年までなら最終日でもあった4日目。この日と最終日は当初は天気が良くないというか、雨予報すらあったのだが、やはり開場して開演が近づくにつれて晴れてくるどころか暑さすら感じるほどに。さすが悪魔に魂を売り渡した男・渋谷陽一主催のフェスである。(ストレイテナー・ホリエアツシ談)
10:30〜 夜の本気ダンス [PARK STAGE]
去年まではこのPARK STAGEはロッキンオンジャパン編集長の小柳大輔が前説を行なっていたのだが、小柳の退職に伴い、今年からフェス事業部の海津亮が務めている。
その海津に、「ROCK IN JAPAN FES.」「COUNTDOWN JAPAN」「JAPAN JAM」「JAPAN’S NEXT」というロッキンオン主催のフェス(総称:J FES)の直近数年間全てに出演している、「ミスター J FES」と称されたのが、この日のPARK STAGEのトップバッター、夜の本気ダンス。CDJではバンド名の通りに夜中に出演したりもしているが、このロッキンでは昼間のイメージが強い。
おなじみ「ロシアのビッグマフ」のSEでメンバーが登場すると、
「踊れる準備はできてますか?」
といつものようにスタイリッシュな米田貴紀(ボーカル&ギター)が問いかけると、その米田と、独特のオーラを放つギタリストの西田一紀によるジャキジャキと刻むイントロの「WHERE?」がこの日の号砲を告げる。もちろん客席は問いかけるまでもなく朝一からの本気ダンスタイム。
このバンドの持つメロディアスな部分が炸裂した、2019年の音楽シーンの中でも屈指のキラーチューンだと思っている「My Sweet Revolution」は2ヶ月前にリリースされたばかりのアルバムの収録曲とは思えないくらいにこのバンドのライブにおいて欠かせない曲になっているし、その曲を表現するための説得力が増している。それを支えているのはダンスロックならではのビート感がありながらも手数も力強さも増している、マイケル(ベース)と鈴鹿秋斗(ドラム)によるリズム隊だ。
だからこのバンドは曲と曲の間をリズム隊が途切れることなく繋ぐライブならではのアレンジを施したりしているのだが、そのリズムを叩き出しながら、CDではCreepy NutsのミスターフリースタイルことR-指定が参加していた「Movin’」のラップ部分さえも鈴鹿が担ってみせる。デビュー当初はひたすらに面白い人という印象が強かった鈴鹿だが、ここにきてドラムはもちろん、それ以外の音楽的な部分でも凄まじい進化を遂げている。それは最新アルバム「Fetish」を聴くとすぐにわかる。
米田がネクタイを外してハンドマイクで踊りまくる「fuckin’ so tired」からはさらにダンサブルになっていく。「Fetish」のリード曲であり、MVの通りに会社の会議室にいたとしてもこの曲を聴いたら踊り出してしまいそうな「Take it back」、そのタイトル通りにクレイジーに踊りまくる「Crazy Dancer」と畳み掛けていくが、そんな中で「Fetish」のラストナンバーであり、踊れるというよりもメロディを前面に押し出した「Forever young」をセトリに入れてきたのはバンド側からの「Fetish」への絶大な自信を感じさせる。というかセトリのほぼ半分が「Fetish」の収録曲なわけで、バンドの最新のモードを示していながらもフェスらしいセトリという点は外していない。自分は「Fetish」をこのバンドの現状の最高傑作アルバムだと思っているが、その曲を多数演奏するというライブはそれを証明しているかのようだ。
そして鈴鹿が、
「かつてRO JACKで落とされて、「クソが!」って思っていた俺たちが今やMr. Jって呼ばれるようになってきている!」
とロッキンオンのフェスを背負う存在になったことへの喜びを語るが、「Mr. J FES」じゃなくて「Mr. J」と言っていたことをマイケルからは突っ込まれていた。
そしてラストは米田がメガネを外すだけではなく、シャツの胸元までもはだけさせるというセクシーな出で立ちになっての「TAKE MY HAND」。心地いいドラムのビートに朝から満員のPARK STAGEは最後まで踊りまくり。いつかはこのフェスでも夜に見てみたいと思わせるのはバンド名による部分も大きいけれど、やっぱりフェスのトップバッターはアッパーなバンドの方がテンションが上がる、という意味ではこのバンドがこの位置での出演になったのもよくわかる。
6月、「Fetish」のリリースツアーの初日のZepp Tokyoで、初めてこのバンドのワンマンに足を運んだ。もちろん踊りまくりの一夜であったが、それ以上にこのバンドの持つメロディの力からこれからのさらなる可能性を感じさせた。バンド名だけで判断されることも多いというのは仕方ないところでもあるけれど、踊りたい以外の人にも「Fetish」は聞いて欲しいし、こうしてライブを見て欲しい。きっとこのバンドの今までは知らなかった部分が見えてくるから。
1.WHERE?
2.My Sweet Revolution
3.Movin’
4.B!tch
5.fuckin’ so tired
6.Take it back
7.Crazy Dancer
8.Forever young
9.TAKE MY HAND
11:45〜 KEYTALK [GRASS STAGE]
2年連続でのGRASS STAGE登場となる、KEYTALK。ワンマンの規模が幕張メッセなどどんどん大きくなる一方なのもあるし、最近はメンバーのテレビ出演も増え、その愉快なキャラクターが広まってきている感もある。
どんなフェスでもリハで毎回2曲くらいは演奏してくれるというのは実にお得な気持ちになるが、おなじみ「物販」のSEで八木優樹(ドラム)を筆頭に元気いっぱいにメンバーが登場すると、巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)がビールを飲みながら客席をスマホで撮影し、この日もそれぞれのイメージカラーに合わせた衣装を着る中で「BUBBLE-GUM MAGIC」からスタート。ちょっと大人なKEYTALKのサウンドというのは間違いないが、小野武正のギターの音はひたすらに弾きまくるというタイプのものであり、このバンドのロックさを1番音で表しているのはこの男かもしれない。ちなみにGRASS STAGEにはステージ両サイドだけでなく、正面にもスクリーンがあるのだが、そこにはやくも曲のイメージを増幅させるような映像が映し出されていく。
先日のヤバイTシャツ屋さんとの恵比寿リキッドルームでの対バンは選曲も含めてこのバンドの持っているパンクな部分に焦点を当てたライブになっていたが、今やこのバンドは日本のバンドシーンの中でも数多くの夏曲を生み出してきたバンドであるだけに、首藤義勝のスラップベースが冴えまくる「MATSURI BAYASHI」から「YURAMEKI SUMMER」と夏曲を連発。もはや夏はこのバンドのものなのだろうか、と思ってしまうくらいにこの真昼間の夏の野外というシチュエーションがよく似合っている。
「Love me」、配信されたばかりの「ララ・ラプソディー」とポップな一面を見せるのはもちろんだが、そうした曲ではこの日もビールを飲みながらとは思えないくらいの声の伸びを見せていた、巨匠の歌のうまさをしっかりと感じさせる一面も担っている。
フェスではなぜか季節に関係なく毎回欠かさず
に演奏されている「桜花爛漫」から、配信リリースされたばかりの新曲「真夏の衝動」を披露。タイトルだけ見るとアッパーな夏ソングというイメージであるが、サウンドはむしろどっしりとしたものであり、このバンドの衝動がわかりやすく燃えているというよりも、フツフツと湧き上がってるかのような。夏ソングが多数あるバンドというのは先に触れた通りだが、こうしたタイプの夏ソングは今までにないものであり、8月は毎週金曜日に新曲が配信リリースされるということで、今後の新曲にも期待が高まる。きっとそれはこのバンドの引き出しの多さを感じさせるものになるんじゃないかと思うが。
巨匠が義勝の特技である「鉛筆舐め」をいじる中、八木はカメラに向かって自身の可愛さをあざとくアピールすると、
「このGRASS STAGEで演奏したいと思って作った曲」
という「fiction escape」を演奏。ほかの曲はいわゆるフェスセトリとしておなじみの曲であるが、決してそういう毎回フェスで演奏されるわけではないこの曲をこうして聴けたのはファンは嬉しいだろうし、この曲にそうしたエピソードがあるということも知らなかった。
そしてラストは巨匠がビールを飲みながら踊りまくる「Summer Venus」でさらに夏を熱く呼び込むと、最後に演奏されたのは観客が振り付けを踊りまくった「MONSTER DANCE」で、演奏を終えると八木は爽やかな笑顔を客席にアピールしながらステージを去っていった。
同じくらいの持ち時間のライブであっても、曲が変わると印象は全く変わる。いわゆるフェスセトリだったこの日のライブはKEYTALKが新たな夏の申し子バンドであることを証明するようなものだったが、やはりこうしてまるっきり内容が変わるライブを数日間で見せられると、どんな曲でも常にライブでできる状態にあるというのは凄いと思うし、それはこのバンドが他の誰よりもライブをやりまくって生きてきた、ライブバンドであることの証だ。GRASS STAGEに立っているのもそこの強さがあってこそ。
リハ.FLAVOR FLAVOR
リハ.パラレル
1.BUBBLE-GUM MAGIC
2.MATSURI BAYASHI
3.YURAMEKI SUMMER
4.Love me
5.ララ・ラプソディー
6.桜花爛漫
7.真夏の衝動
8.fiction escape
9.Summer Venus
10.MONSTER DANCE
13:00〜 Mrs. GREEN APPLE [GRASS STAGE]
昨年はMAN WITH A MISSIONの真裏のLAKE STAGEのトリで超満員にしてみせた、Mrs. GREEN APPLE。CDJでのEARTH STAGEを経て、満を持してこのGRASS STAGEに初進出。
初のGRASS STAGEということで気合いが入っているのか、やはり元気よくメンバーがステージに登場。山中綾華(ドラム)は金髪というか銀髪というかとにかく鮮やかな髪色の派手さというのは変わらないが、高野清宗(ベース)は逆に髪色は落ち着いているイメージ。
そんなメンバーが揃うと、ドラマ主題歌になってヒットした「WanteD! WanteD!」からスタート。サビで一気に突き抜けるようなデジタルなサウンドを、ハンドマイクで歌う大森元貴(ボーカル&ギター)の、この世代トップクラスのボーカル力がさらに遠くへ飛ばしていく。
高野のベースソロもある初期曲「VIP」、この青空の下で鳴るのが実によく似合う「Speaking」とこれまでにこのバンドのライブを支えてきた、つまりバンドをこのステージまで連れてきた曲たちを演奏し、高野はベースを弾きながら、藤澤涼架(キーボード)はバンド一の元気者っぷりを示すように身軽にステージ左右の花道を走っていく。ミセスはワンマンでも独特なセットの花道を作って自分たちの音楽を最大限に伝えられるようにしているが、そうした経験があるからか、初めてのGRASS STAGEとは思えないくらいに堂々としている。
アニメの主題歌としてすでにオンエアされている「インフェルノ」は最近のこのバンドの曲からすると珍しくなったギターロック感の強い曲であるが、タイアップに寄せすぎることなくその作品に最も合うものを作ってきたこのバンドなだけに、アニメの内容を意識してのものというのも少しはあるのだろう。
GRASS STAGEからの景色を見た大森は
「美しい!」
と何度も口にしていたが、その美しい景色に見合うようなバンドになっているな、と思えるのが大森のボーカルのスケールだ。その大森の素晴らしいボーカルを中心に据えた「僕のこと」は高校サッカーのテーマソングとして、負けてしまったチームにスポットを当てた曲であるのだが、
「ああ なんて素敵な日だ」
というフレーズはまさにこの日のことを歌っているんじゃないかと思えてくる。つまり、ここにいる全ての人にとって「僕のこと」のように響く。そう思わせられるくらいの楽曲の力とボーカルの力。元からライブの完成度はズバ抜けていたバンドなだけに、このステージに立つのは決まっていたかのようであるが、インディーズの時のギターロック的なサウンドからポップなサウンドになっていくにつれて、何かと言われることも多々あった。そんな中で2年前の灼熱のLAKE STAGEでのライブのMCで大森は
「ミセス、変わっちゃったな…って言う人もいるけど、そういう人たちはMrs. GREEN APPLEの何を見てきたんだ!」
とキッパリと言い放った。その瞬間を覚えているからこそ、芯は変わらずに音楽性が多様になってきたということがこのバンドがこのスケールまで来れた理由なのかもしれない、と思った。実際にギターロックをやっていただけでは鳴らせなかった曲をこのステージで鳴らしている。
大森がステップを踏みながら歌うミュージカル的なサウンドの「Love me, Love you」からはそうしたギターロックからさらに広がりを見せるサウンドがGRASS STAGEに響く。それは最新シングル曲「ロマンチシズム」も、EDMを大胆に取り入れたパーティーチューン「WHOO WHOO WHOO」も。
そして藤澤による撫で肩ブームが今も継続中のメジャーデビュー曲「StaRt」にこのGRASS STAGEの景色を見せるかのようにあの最強の「ドレミファソラシド」の音階を鳴らすと、
「夏がずっと嫌いだったけど、このフェスに出るようになってから夏が好きになった気がする。僕の夏が今日からやっと始まったような気がします!」
と大森は言った。それを聞いて、かつて小学生や中学生の頃、毎年夏になると夏バテしていた、夏が嫌いだった頃の自分を思い出した。そんな自分が夏が1番好きになれたのもやっぱりこのフェスに来たからだった。もしかしたら、大森もそんな少年だったのかもしれないな、と思った。
そして最後に演奏されたのは、昨年は夜のLAKE STAGEという景色で鳴らされていた「青と夏」。
「夏が始まった合図がした」
というサビのフレーズを聞いていたら、もうとっくに始まっていた自分の夏、それは先週のこのフェスから始まったものであるが、そんなこのフェスの初日に出かける時から今この瞬間までに自分が見たさまざまな景色が頭の中に浮かんできていた。それは映画じゃない、僕らの夏だ。と思うには美しすぎるものだった。
演奏を終えると大森は、
「Mrs. GREEN APPLEでした。以降、お見知り置きを!」
と言ってメンバー全員で深々と頭を下げた。それは2015年にWING TENTに初出演した時から全く変わらない5人の姿と言葉だった。
毎年ロッキンでミセスのライブを見ると思う。他のバンドよりもはるかに若い、中学生や高校生くらいの人たちの中には、このバンドを見るために初めてこの場所に来たっていう人もたくさんいるんだろうな、って。
きっと自分が今10代でこのバンドに出会っていてもきっとそうしていたと思う。それくらいの力がこのバンドには宿っているし、そうしてここに来ることでいろんなバンドのライブを見て、幸せと思える貴重な時間が増えていく。今、若者としてこのバンドのライブを見ている人たちが心からうらやましく思える。
こうしてミセスがGRASS STAGEに出ることによって、今までGRASSに出ていたアーティストの中からLAKEやPARKになる人も出てくる。9mmやBase Ball BearなどはもうGRASSじゃなくなって何年も経つが、そうして同世代のバンドたちがGRASSに出れなくなっていくのはやっぱり寂しい。自分自身にも世代交代を突きつけられているような感じがしてしまうから。
でもミセスがこうしてGRASSに立って、その姿を見るために若い人たちがたくさんこのフェスに来てくれるのなら、それは意味のあることだと思える。そんな風に思えるバンドはこれまでにいなかったし、自分が大好きなこの景色を大森が「美しい!」と何度も言っていたのが本当に嬉しかったし、これからもずっとこのステージに立つこのバンドの姿を見れる予感しかしていない。
リハ.おもちゃの兵隊
1.WanteD! WanteD!
2.VIP
3.Speaking
4.インフェルノ
5.僕のこと
6.Love me, Love you
7.ロマンチシズム
8.WHOO WHOO WHOO
9.StaRt
10.青と夏
14:00〜 GLIM SPANKY [LAKE STAGE]
去年に続いてのLAKE STAGE出演となる、GLIM SPANKY。ロックンロールやブルースを主体とした音楽でこの規模のステージに立てるバンドはそうそういないだけに、このバンドの突出っぷりがわかる。
おなじみのサポートメンバーたちに続いて、亀本寛貴(ギター)、そして鮮やかな金髪に真っ赤なドレスという美しい出で立ちの松尾レミ(ボーカル&ギター)が登場すると、物語のオープニングテーマのような「Looking For The Magic」でじっくりと幕を開ける。亀本のギターも、松尾のハスキーなボーカルも実にブルージーで、いつも激しいバンドを見るのが中心であるLAKE STAGEの景色が少し違って見えてくる。
サウンドだけでなくこのバンドは精神性がロックンロールだな、と思わせてくれるような皮肉と反骨心に溢れた「TV Show」からは一気にサウンドもブルースからロックンロールへ転じ、「ONE PIECE」の劇場版の主題歌になった「怒りをくれよ」では松尾の歌い出しとともに大きな歓声が上がる。このロックンロールが広い場所まで届いているという実感を得ることができる。亀本は腕を振り上げて客席を煽っていたが、その亀本のギターソロになるとさらに大きな歓声が上がる。新たなロックンロールシーンのギターヒーロー的な存在なのは間違いないところだが、観客がそうした流行りかと言われれば全くそうではないこのサウンドを求めているのがわかる。
「ロックンロールを楽しみましょう」
と松尾が言うと、テンポを落とした重いサウンドが響く「愚か者たち」「ハートが冷める前に」という曲を連発。いわゆるフェスで盛り上がったり踊れたりするような曲では全くないけれど、このバンドはフェスでウケるためにそういう曲を作ったり演奏したりするようなことはしない。ただただ自分たちがカッコいいと思えるロックンロールを鳴らすだけ。そんな信念が演奏している姿から感じられる。
そんな思いを疾走感溢れるビートで加速させる「褒めろよ」はデビューシングルの曲だと考えると恐ろしいくらいにカッコいいロックンロールだし、それは経験や技術を重ねてさらにそう感じられるものになってきている。何よりも流行り云々とは違う土俵で鳴らしているからこそ、4年前の曲であってもこのバンドの音楽も全く古臭く感じない。
松尾の大人への思いを綴ったバラード的なブルース「大人になったら」はやはりこのバンドのメロディの素晴らしさを実感させてくれる曲だし、ライブでは毎回演奏している曲であるが、こうして鳴らされる場所が変わると感じるものも変わる。自分自身ももう年齢的には大人だし、それはまだ若手といえどGLIM SPANKYの2人もそうだ。でも大人になってもわからないことばかりだし、そもそも本当に大人になれているんだろうか?ということすらわからない。でもこのロックンロールがカッコいいということだけはわかる。いつもそうして自分自身やこのバンドの音楽と向き合わせてくれる曲。
そして最後に演奏されたのはバンドの決意を響かせる「アイスタンドアローン」。盛り上げまくって終わるんじゃないからこそ、余韻が強く残る。亀本のブルージーなギターは最高にカッコ良かった。
昔、このバンドのライブを初めて見た時、客席はいかにもロックンロールやブルースが好きそうなおじさんばかりだった。そういう人を今になっても虜にするのはそれはそれで凄いことだが、この日の客席には若い人もたくさんいた。それは年齢層が若いこのフェスだからだったのかもしれないけれど、このバンドのロックンロールが世代や年代を選ぶことのない普遍的なものだと証明していたかのようだった。
1.Looking For The Magic
2.TV Show
3.怒りをくれよ
4.愚か者たち
5.ハートが冷める前に
6.褒めろよ
7.大人になったら
8.アイスタンドアローン
14:40〜 さユり [SOUND OF FOREST]
このフェスではMY FIRST STORYとのコラボ曲「レイメイ」を同じステージで披露したりという話題もあった、さユり。今年はまだ陽射しが強い時間帯のSOUND OF FORESTに登場。
しかし、時間になるとステージにはマイクスタンドと譜面台、そしてアコギを持っておなじみのポンチョを身に纏ったさユりのみ。WING TENTでこのフェスに初出演した時から、昨年末のCDJに至るまでに共にしてきたガスマスクバックバンドの姿はない。
そんな弾き語りで歌い始めたのは「平行線」。ジャキジャキとしたギターストロークとさユりの歌のみ。だから蝉の鳴く音もステージからの音に重なってくる。それくらいにシンプルな形。さユりは髪が長くなって歌っている時の顔がほとんど見えなくなっているが、去年までは喉の調子が悪いのかな?と思ってしまうくらいに自分の曲を歌いきれていない感じがしていた。この日はその状態に比べたらだいぶ良くなっているように感じたが、そもそもそうなっていないと弾き語りという形態はかなり厳しいものだ。
RADWIMPSの野田洋次郎が提供した「フラレガイガール」も弾き語りという形であるがゆえに実にしっとりと聞こえてきたが、そもそも、さユりは今年になって所属していた事務所を辞めた。もしかしたらバンドがいないというのはそういう理由によるものもあるのかもしれない。
そうして1人だけになっても、それでも誰かに見つけて欲しくて歌う「ミカヅキ」の歌詞はこれまでで最も切実に聴こえたし、さユりのキャッチコピーであり始まりの曲である「酸欠少女」を今このタイミングでものすごく久しぶりに歌うことにしたのも今までとはまた違う決意の表れであると思う。
そんなライブの最後に歌い始めたのは、CDJの時には
「このフェスで見た景色を曲にした」
と言って演奏されていた「十億年」。
オリコンデイリーチャートで1位になったりもして衝撃を与えたアルバム「ミカヅキの航海」のリリースからもう2年。リリースペースはデビュー時からはかなり落ちているし、その当時にもっと大きなステージまですぐにたどり着くだろうな、と思っていた感覚は正直、少し薄れてきている。
でもこうしてこの曲の
「この向こうにはねぇ? 何が、あるのかな
この時代でこの場所で 何ができるだろう」
という歌詞を歌うさユりの姿を見ていると、やっぱりこの人はこうしてこの場所で歌うことしかできない人だと思うし、この日のライブからはそうしたこれからも歌い続けていくという決意をこれまでで最も感じさせた。炎天下の中であっても陽が当たる部分(SOUND OF FORESTは客席後方の日陰部分の方が埋まりがち)までたくさんの人が押し寄せていたが、ここにいた人たちはみんな彼女のこれからに期待し続けている。
1.平行線
2.フラレガイガール
3.ミカヅキ
4.酸欠少女
5.十億年
15:30〜 [ALEXANDROS] [GRASS STAGE]
タイムテーブルを呪いながら、LAKE STAGEのTHE BAWDIESがいきなり「KEEP ON ROCKIN’」をやっているのを横目にGRASS STAGEへ。
昨年は8月にZOZOマリンスタジアムでのワンマンライブがあったからか、このフェスには出演しなかった、[ALEXANDROS]。2年ぶりの出演である。
ドラムのサトヤスが病気療養中のため、春フェス時などと同様にこの日もBIGMAMAのリアドがサポートドラマーとしてステージに上がり、こちらも春フェスの前に足を骨折してしまったベースの磯部寛之はまだ松葉杖をついた状態。つまりバンドとしての完全体とはほど遠い状態であるのだが、川上洋平がいきなりハンドマイクになって歌い、コーラス部分では観客の合唱を煽る「Adventure」からスタートすると、いきなり川上はカメラ目線で歌い、このフェスではおなじみのカメラ目線からサビの直前でカメラを客席に向けるというパフォーマンスを見せるのだが、もはやこれは名人芸の域に達しているし、この巨大なステージだからこそ映えることでもある。
「アルペジオ」で一気にロックモードに転じると、曲間を繋ぐようにリアドがダンサブルなビートを叩き出す。それはそのまま「Starrrrrrr」のイントロに変わっていくのだが、これはもはやサポートメンバーのやることのレベルではないアレンジだ。正規メンバーの代わりにサポートメンバーが加わるとどうしてもやれる曲もやれることも限られてしまうものだが、このバンドにはそれは当てはまらない。改めて[ALEXANDROS]は本当に凄いバンドだし、リアドは本当に凄いドラマーだ。
この巨大なステージに見合うスケールを持つリフ主体のロックンロール「Mosquito Bite」ではそのリフを鳴らす白井眞輝と川上が隣り合うように立ってギターを弾く。その姿すらもこのキャパに当たり前のように立つべきロックスターの姿のように見える。
常々川上はこのステージに立つ喜びや気持ち良さを口にしてきたが、それはやはりこの日もそうで、歌っている時はもちろん曲間に挨拶する時ですらも満面の笑み。そんな川上が最後のサビ前でシャツのボタンをはだけさせる仕草に同性ながらドキッとしてしまう「Kick & Spin」ではなんと椅子に座ってベースを弾いていた磯部が何度か立ち上がって演奏する姿も。それもまたこのステージに立っているからこその魔力のようなものなのかもしれないが、磯部に関しては以前のように髪を振り乱しながらベースを弾く姿がそろそろ見れるようになるのかもしれない。
川上が
「フェスではあんまりやらない曲」
と紹介していた最新アルバム「Sleepless in Brooklyn」収録の「PARTY IS OVER」であるが、CDJでもやっていたし、むしろ他のアルバム曲よりもはるかにフェスでやっている気がするのはたまたま自分が足を運んだフェスでやっている、というだけなんだろうか。川上はハンドマイク歌唱なのでやはりカメラ目線パフォーマンスが冴えまくり。
そしてアクエリアスのCMタイアップで大量オンエアされている「月色ホライズン」はツアーを経てついに完成形に。このフェスで売られている公式スポーツドリンクはポカリスエットであるが、この日だけはそれをアクエリアスに変えてくれないだろうか、と思うくらいに晴れ渡る空によく似合う爽やかさであった。
ラストはやはり超ハイトーンなメロディであるにもかかわらず観客の大合唱が響き、飛び跳ねまくる「ワタリドリ」。昨年出れなかったからこそこのステージに立つ喜びを強く感じさせるものだったし、日本で1番大きなフェスの1番大きなステージはやはりナンバーワンを目指してきたこのバンドが最も輝ける場所だった。
バンドはさらに進化を続けている。しかしサトヤスはジストニアというかなり厳しい病気に見舞われてしまった。ドラマーにかかる人が多いと言われるこの病気、戻ってきた人もいるけれど、未だに戻ってこれていない人もいる。でもサトヤスならきっと大丈夫だと思える。そんな状態でもさいたまスーパーアリーナワンマン2daysを全くそんなそぶりもなくやり切った、不屈の精神力を持つ男だからだ。
前任ドラマーの時はイマイチピンとこなかった[Champagne]をこんなにも凄いバンドだと思えるようになったのは間違いなくサトヤスが入ったからだ。また4人とROSEでこのステージに立つ姿をずっと待っているし、そんな凄まじいドラマーの代役どころか、さらにバンドの進化を推し進めてくれるリアドには本当に感謝しかないし、なんとかBIGMAMAにこのリアドの思いと凄さと男気が還元されて欲しい。
1.Adventure
2.アルペジオ
3.Starrrrrrr
4.Mosquito Bite
5.Kick & Spin
6.PARTY IS OVER
7.月色ホライズン
8.ワタリドリ
16:20〜 MOSHIMO [BUZZ STAGE]
この後、BUZZ STAGEから1番近いGRASS STAGEにはモンスター級の動員力を誇るマキシマム ザ ホルモンが出演する。そう考えると他のステージの動員はかなり厳しいものになりそうなのだが、始まる前からBUZZ STAGEには人がテントの中に入りきらないくらいに溢れかえっている。そんな中に登場したのは、紅一点メンバーのボーカル&ギター・岩淵紗貴を中心とした4人組バンド、MOSHIMO。まさかこんな状態になっているとは、と驚かざるを得ないくらいの超満員っぷり。
なので登場するなり岩淵がテンション高く
「命短かし恋せよMOSHIMO!」
とコール&レスポンスをすると、その超満員の観客の怒号のような大合唱が返ってくる。そのコール&レスポンスの後に演奏された「猫かぶる」から、楽曲は実にポップだし、CDで聴いていてもそうしたイメージが強いバンドなのだが、今やライブでは完全にそんなイメージが消えて無くなるくらいにもはやラウドと言っていいようなサウンドを鳴らしている。
その最大の原動力は口が悪いと自分で言いながらオラつきまくる岩淵だが、当初は岩淵に対してかなり控えめというか、存在感が希薄だった一瀬貴之(ギター)、宮原楓(ベース)、本多響平(ドラム)の男性メンバー陣が見た目にも鳴らす音にしてもとてつもなくたくましくなってきている。
特にミュージシャン野球チームを持っている一瀬はまたしてもイメチェンをしてワイルドになっているが、その理由が「女の子にフラれたから」というもので、イメチェン前の写真を持ってきた岩淵にひたすらいじられまくる。
「OUT セーフ よよいのよいよい」
のコーラスを何度となく大合唱させ、宮原や一瀬もカメラ目線でコーラスを煽るのが楽しい「電光石火ジェラシー」と、満員であり、しかも盛り上がりまくっているがゆえにさらに楽曲やバンドの持つ力がさらに引き出されている。今のこのバンドのスタイルは人が多い方がはるかに楽しいということがこの日よくわかった。
岩淵の独特な感性によるラブソング「釣った魚にエサやれ」は今のMOSHIMOの本領発揮と言っていい曲なのだが、毎回のようにコール&レスポンスがやたらと長いからか、早くも最後の曲へ。最後の「命短かし恋せよ乙女」もやはり出来る限りにコール&レスポンスをしまくるのだが、このバンドのライブではおなじみの、最近フラれた女子を元気付けるための応援コール&レスポンスに変化。そうして客席はその女性を応援するという不思議な一体感に包まれていった。それはこのバンドのライブでないとなかなか体験できないものだ。
自分は全く知らなかったのだが、この後にこのステージに出演するアーティストが、人気のある声優のユニットらしく、それゆえにそのユニットを待っている人たちの存在もあってこの時間も超満員になっていたらしい。
確かに岩淵が尋ねたところ、初めてライブを見る人ばかりだったし、ホルモンの裏に差し掛かる時間帯にこのバンドがこんなにも動員できる理由はない。
でも、いくら動員が次のアーティスト待ちの人たちばかりだったとしても、この日のライブの盛り上がりっぷりはMOSHIMOのライブの力によるものだ。待っている人たちも何が何でも盛り上がるというわけではないだろうし、そのテンションと今のこのバンドのスタイルが上手い具合に噛み合っていた。
で、そういう景色を生み出せるのなら、いつか次のアーティストを待つ人たちがいなくても、自分たちだけの力でこの景色を見せてくれるようになるはず。そう思うくらいにこの日の盛り上がりっぷりは間違いなく本物だった。
1.猫かぶる
2.電光石火ジェラシー
3.釣った魚にエサやれ
4.命短かし恋せよ乙女
17:00〜 Rhythmic Toy World [WING TENT]
MOSHIMOのところでも触れたが、絶賛マキシマム ザ ホルモンの真裏という厳しい時間帯。果たしてその時間に違うステージでライブをするバンドがどんな状況なのか。前日のBUMP OF CHICKENの裏の時間帯もそうだったが、こういう状況で燃えるかどうかでそのバンドのこれからが決まると言っても過言ではない。
そんな状況であるにもかかわらず、GRASS STAGEからかなり距離のある
WING TENTはしっかりと埋まっている。そのステージに立つのはRhythmic Toy World。ロッキンオンのフェスでもすっかりおなじみの存在となっている。
BOOM BOOM SATELLITES「KICK IT OUT」のSEでメンバー4人が登場すると、ブレイク部分で「ASOBOYA!」というこのバンドのキャッチコピーが叫ばれ、「フレフレ」からスタートするのだが、かつては内田直孝(ボーカル&ギター)の三つ編みという奇抜な髪型がインパクトが強かったのが、今ではすっかりちょっとやんちゃな青年といった出で立ちになり、何よりも歌が物凄く上手くなっている。その歌声の素晴らしさと伸びやかさが聴き手に勇気を与える応援歌により一層説得力を持たせている。
さらに「s.m.p」では巨漢ベーシストの須藤憲太郎がガンガン前に出てきて煽りながら演奏し、それは岸明平(ギター)、磯村貴宏(ドラム)と全員の音がしっかり一つの塊となっている。ひたすらにライブをやって生きてきたのであろう、かつて自分が見た時は「見た目はインパクト強いけど音楽は普通」という感じだったのが、その比率が全く逆になっている。見た目ではなくて鳴らしている音でインパクトを与えられるようになっている。
そんな変化をしっかりとこのバンドは自分たちの音楽に落とし込めるようになっているな、と思ったのは、内田が
「去年このフェスに出て、帰りがめちゃくちゃ寂しかった。車の中でメロディが浮かんだんだけど、その時はちゃんと曲にならなかった。それを1年かけて曲にしました」
と言って内田の弾き語り的な要素も強い「電影少女」を演奏した時。
「世界が変わらなくても 僕の日々は変わった」
という歌詞はまさにこのフェスに出る前と出た後の心境の変化を感じさせるし、それは出演者だけではなく我々観客も全く同じである。
そしてこの会場からほど近い、このバンドがいつもお世話になっているという水戸LIGHT HOUSEへの思いを口にしてから演奏されたのは、その名の通りのライブハウス賛歌「ライブハウス」。それもまた実際にバンドが目にしてきた光景や場所がそのまま曲になっている。
最後に演奏された、人気アニメのタイアップ曲にもなった「僕の声」も含めて、デビュー時は面白い語感ではあれど、あまりそこに意味を感じさせなかった歌詞が確実に変わった。というかバンドそのものが変わった。
このバンドは自分たちの音楽をどんな人が聴いていて、どんな人がこうしてライブに来ているのかということをわかるようになっているし、そういう人たちに自分たちがどんな音楽や言葉を届けたいのかというものが凄く明確になってきている。そしてそれをちゃんと自分たちの音楽にすることができて、それを自分たちの望む形で鳴らすことができるようになっている。
この日、自分の前ではこのバンドのグッズに身を包んだグループの方々がライブを見ていたのだが、その中の1人が曲を聴きながらずっと泣いていて、他の人たちが肩に手を当てたり、抱き寄せたりしていた。彼に何があったのかは自分は知る由もない。でもそこまで感じるものがあったり、自身の思いを重ねることができるようなライブを今のこのバンドはできるようになっている。
「僕の声」を演奏する前に内田は
「またライブハウスで会おうなんて言わない。ここにしか来れないやつがいるのをわかってるから。だから、来年もまたここで会いましょう」
と言った。このバンドも日々ライブハウスで生きているバンドだし、そういうバンドが「またライブハウスで」と言うのは当たり前の挨拶のようなものだ。でもこのバンドはそうは言わなかった。実際にここでしか会えない人がいることを彼らはわかっているのだろう。そこにこのバンドの人間性が現れている。
自分はライブハウスでもまたこのバンドのライブを見たくなったが、それ以上に来年もこの場所で見たいと思うバンドがまた増えた。こんなにカッコいいバンドになっていたんだな。
1.フレフレ
2.s.m.p
3.電影少女
4.ライブハウス
5.僕の声
17:30〜 グッドモーニングアメリカ [LAKE STAGE]
CDJではCOSMO STAGEの年越しアクトを務めた、グッドモーニングアメリカ。ロッキンではずっと憧れ続けてきたLAKE STAGEに今年も出演。
グドモと言えばオープニングのたなしん(ベース)の登場という名の出オチが楽しみなポイントの一つであるのだが、この日は「タピオカの神さま」こと「タピしん」として、肌色のボディースーツに黒い球体をたくさんつけた、実に動きにくそうな出で立ちで登場。するとメンバーもステージに現れ、ハードな音像の「アブラカタブラ」からスタートし、金廣真悟(ボーカル&ギター)のテンポの良い単語のリフレインが癖になる「コピペ」と続くと、たなしんがタピしんとなったスーツを脱ぎながら「ファイヤー」をしようとするのだが、なかなか脱げなかったり体がベースに当たったりという段取りの悪さを見せ、渡邊幸一(ギター)に
「何年「ファイヤー」やってんだよ(笑)」
と突っ込まれてしまうハメに。「ファイヤー」の前の説明も初見の人がたくさんいたからかかなりウケていたイメージ。
その後に演奏された昨年リリースの現状の最新アルバムのタイトル曲である「YEAH!!!!」は
「明日こそレボリューション
どうすればサティスファクション」
という現状のバンドの葛藤をそのまま描いたような赤裸々かつ正直なメンバーの気持ちが伝わってくるかのようだ。
そのあとは「言葉にならない」から「突破していこう」という初期のこのバンドの持つパンクなイメージを強く感じさせる曲を連発するのだが、やはりこのバンドのライブは凄い。パフォーマー的な立ち位置だったたなしんはいつのまにかベースの弾き方をかなり変えて自分なりにに音楽的な面でもバンドに貢献しようとしているし、そのパンクなサウンドはどうしようもないくらいにロックの衝動を与えてくれる。今でもロッキンオンのフェスでなければダイバーが続出するようなライブをやっているのは、ダイブせざるを得ないくらいにこのバンドの鳴らしている音に心も体も突き動かされるからである。
今でも本当に凄い名曲を作ったなと思える「未来へのスパイラル」では金廣のキーに合わせた大合唱が巻き起こる中、その金廣が
「このステージで夕暮れの時間にライブができる日が来たらやりたいと思ってた曲をやります。俺がやりたいだけだからみんなが好きな曲かどうかはわからないけど」
と言って演奏されたのは「アカクモエテイル」。金廣の言葉通りに徐々に空が赤みを帯びてくるような時間帯なだけに、この曲は本当に似合っていたし、これまでは昼間や朝イチに勢いをつけるという立ち位置のバンドだったこのバンドはそうした時間だけじゃなくて夕暮れや夜も似合うようなバンドになったんじゃないかと思えた。それだけにいつかこのLAKE STAGEの夜に見てみたい、とも。
観客の合唱が再び轟いた「空ばかり見ていた」から最後に再会を約束するパンクナンバー「また会えるよね」まで…。金廣も渡邊もこのLAKE STAGEへの思いを口にしていたが、このステージは高校の同級生であるTOTALFATや、後輩であるBIGMAMAが先に立ってきたステージであり、自分たちもいつかはあのステージに立ちたいという憧れがグドモの最大の推進力になってきた。
それは実際にこのステージに立てるようになって、何回も立った今でも全く変わらない。このステージでライブができているという喜びが溢れている。かつてのこのステージに入場規制がかかるくらいだった頃とはもう違う。それはだいぶ前のことのように思えてしまうけど、それでもグドモにとってこのステージが特別な場所であり、これからも立つべきステージだ。
数年前、まだこのフェスに初出演を果たした
キュウソネコカミ、KEYTALK、グドモがフェスの増刊号で3者の対談をしたことがあった。茨城に住んでいるのでそのライブを見にきていた、グドモの渡邊の母親がずっと息子がバンドをやることに反対していたが、ライブ後に金廣に
「金廣くん、うちの幸一をこれからもよろしくお願いします」
と託されたというエピソードも語られたりしていたが、そこでキュウソネコカミのヨコタが
「数年後にGRASSに立ってるのは俺たちかもしれない」
と言っていた通りにキュウソとKEYTALKは去年、今年とGRASSに立った。当時は3組の中でグドモが1番大きいステージに立っていたし、1番GRASSに近いと思われていた。今は差がついてしまったが、グドモもまだ終わってない。ライブはそれを証明してる。
1.アブラカタブラ
2.コピペ
3.YEAH!!!!
4.言葉にならない
5.突破していこう
6.未来へのスパイラル
7.アカクモエテイル
8.空ばかり見ていた
9.また会えるよね
18:35〜 Base Ball Bear [LAKE STAGE]
2007年にこのLAKE STAGEに初めて立ち、GRASS STAGEに進出したこともあったが、1番多く立ってきたこのステージの4日目のトリを務める、Base Ball Bear。なんと今年で14年連続出演である。
おなじみのXTCのSEで3人がステージに登場すると、小出祐介(ボーカル&ギター)が光に群がる虫を払いのけるような仕草をする一方、バンドのムードメーカー的な堀之内大介(ドラム)はその虫を捕まえて食べるような仕草をし、観客と関根史織(ベース)はその姿にいきなり笑わされる。
そんないつもとはちょっと違う堀之内会議を経てから小出がギターをジャーンと鳴らして始まったのは「17才」。もう年齢的には17才の倍になったこのバンドであるが、今でもこの曲に宿るきらめきはそのままバンドのきらめきのように聞こえる。たまーに年齢を重ねたことを実感してしまうような時もあるが、ずっと見てきているからかもしれないけれどこのバンドはこのフェスに出始めた時からほとんど変わっていないように見える。いい意味で子供っぽいままというか。
ベボベの夏フェスと言えば夏曲。かつてこのステージに出た際はカップリング曲の「Summer Anthem」(今はもう聴けないだろうな…)も含めてひたすらに夏曲を連発したライブもあったが、この日もそんなベボベが夏バンドであることを示すように「真夏の条件」を演奏。3人編成になってから1年半くらい経つが、4人バージョンを数え切れないくらいに聞いてきたこの曲で物足りなさは全く感じないレベルに今の3人編成は研ぎ澄まされている。
そんな3人になった今のベボベの代名詞的な曲が、小出だけではなく堀之内と関根もボーカルを務める「ポラリス」。かつてこの場所でも何度も歌われてきた名曲たちのフレーズが散りばめられているのも楽しい。
すでに9月には新EPをリリースすることを発表しているが、それに収録されるであろう新曲も演奏。これが意外なくらいにストレートな、ベボベならではのギターロックな曲。2年前にリリースされた「光源」はそれまでにライブでギター、ベース、ドラムという従来の楽器だけで演奏するという縛りから解放されたような、ホーンや鍵盤などの楽器の華やかなサウンドを取り入れたアルバムだったが、小出が別プロジェクトのマテリアルクラブを立ち上げたことによって、そちらでそうした実験的な曲をできるようになったからであろう。
「ギターベースドラム 輝くフレーズ 結んだ先にポラリス」
という「ポラリス」のフレーズ通りに、今のベボベはこの3人でできること、この3人だからこそできることを限界まで突き詰めようとしている。だからこそ新曲がこんなにもストレートなギターロックなのだ。
そんなギターロックの後に演奏するのが小出のヒップホップへの傾倒っぷりがよくわかる「PARK」という流れもひねくれているというか一筋縄ではいかないこのバンドらしいものであるが、リハでやった「The CUT」のRHYMESTERのラップパートすらも小出が全てやるようになっているが、この曲も含めてもう30代になってもまだまだできることが増えていて、それをたくさんの人の前で示すことができている。同年代としてこれほど力をもらえることはない。
このフェスが今年で20周年ということで、お祝いを述べながらこれまでに出演してきた13年間を振り返るメンバーたち。フェスでこうして昔のことを振り返るのは実に珍しいが、ここ2年はPARK STAGEに出ていて久しぶりのLAKE STAGEなだけに、2007年に初めてこのLAKE STAGEに出た時のことを回想。
「その時に僕ら、浴衣着てライブしたんですよ。まだ演奏とかに自信がなかったのかな。悪目立ちする方を選んじゃって(笑)
しかもリハとか全然やらないでぶっつけ本番やったら、下駄を履いたらエフェクター踏めないわ、可動域が狭いわでめちゃくちゃキツかった(笑)
来年、今度はちゃんとリハとかやってもう1回浴衣でやってみますか(笑)」
と宣言して大きな歓声を浴びる。そうした話ができるのも、この場所にずっと立ち続けてきたバンドだからだし、我々見ていた側もやっていたバンド側もその時のことを鮮明に覚えているくらいに毎年特別な瞬間の連続だったから。
終盤は「LOVE MATHEMATICS」のカウントが夜のLAKE STAGEに鳴り響くと、「CRAZY FOR YOUの季節」では3人になってさらにタイトな音に、そしてリズムはさらに速く、堀之内の手数はさらに多くなってきている。この曲はこの日演奏された曲の中で唯一、2006年にWING TENTに初出演した時から演奏している曲なのだが、13年も経てば普通はバンドとしての初期衝動の時期はとっくに過ぎているし、ベボベはバンドの形も変わった。それなのにこうして13年後にこのステージで鳴らされているこの曲はこれまで数え切れないくらいに聴いてきた中でも間違いなく1番カッコよくて、思わず泣きそうになってしまった。色々あったけれど、続けてきてくれたから毎年このフェスに出演する姿を見れているし、バンドが進化し続けている姿を見ることができる。
そんな今年のベボベのロッキンでのライブは、小出が
「みなさんにとっていい夏になりますように。例えばこんな風に」
と言って演奏した「ドラマチック」の通りにドラマチックなものだった。
時間的にこれはアンコールはないかなと思っていた。ロッキンは時間に厳しいフェスだし、予定の持ち時間は本編で使い切っていた。しかし3人は再びステージに現れた。
「GRASS STAGEが時間押してるからアンコールやっていいって。UVERworldさん、ありがとうございます!(笑)」
と言って近年もCMで流れていたりしただけに、曲入りの小出の歌い出しで大歓声が起きた「BREEEEZE GIRL」を演奏。今まではまだ明るい時間に聴いてきた曲だったし、ベボベはその時間帯が似合うと思っていた。でもこの日、初めて夜のLAKE STAGEで聴いたこの曲は今までとは違う風が吹いているように感じた。ベボベはいつのまにかこんなに夜が似合うバンドになっていた。14回目のロッキンも、本当に夏かった。
「来年は浴衣で」
という話をしている時に、堀之内は
「まだ来年呼ばれるかわからないから!(笑)」
と突っ込んでいたが、もう毎年出るのが小出の中でも当然のフェスになっているし、アンコールをやらせてくれたのもフェス側からのこのバンドへの信頼感によるものも間違いなくあるはず。だから絶対に来年は浴衣でこのステージに立っている姿を、13年ぶりに見れるはず。
好きなバンドもロッキンで見たいバンドもたくさんいる。でもずっと出続けて欲しいバンドNo.1はBase Ball Bearだ。14年間、WING TENTの初出演や翌年の浴衣を着てのLAKEもGRASSに行った時も、その全てを見てきたから。ベボベをここで見るのが、自分にとっての真夏の条件。そうやって毎年少しずつ、一緒に歳を重ねていきたいのだ。
リハ.The CUT
1.17才
2.真夏の条件
3.ポラリス
4.新曲
5.PARK
6.LOVE MATHEMATICS
7.CRAZY FOR YOUの季節
8.ドラマチック
encore
9.BREEEEZE GIRL
文 ソノダマン