2日目。この日も快晴。なのでやっぱり暑いけれど、風が吹くと涼しいので、ドリンクブースに並ぶだけで1アクトくらい潰れるくらいの列になっていた去年よりはまだマシなように思える。
10:30〜 アルカラ [LAKE STAGE]
この日もスタートはLAKE STAGEなので、山崎洋一郎の前説から。前説の内容自体は前日と全く同じものであったが、トップバッターのアルカラのボーカルである稲村太佑(ボーカル&ギター)は山崎洋一郎の高校の後輩(だいぶ年齢は離れているし、別に仲良くはないと前に言っていた)ということで、バンド側も気合いが入るはず。
サポートギターの為川裕也(folca)を含めた4人がステージに登場すると、いきなり「アブノーマルが足りない」「チクショー」というアッパーかつハードな代表曲で灼熱のLAKE STAGEをさらに熱くするという流れはこのバンドがフェスの存在をも背負っているMURO FESの時の流れと同様であるが、やはりLAKE STAGEはこうした激しいサウンドのバンドが似合うよなぁと思うし、今の状況からするとなかなか厳しいところもあるけれど、アルカラにはこのステージに立っていて欲しいと思う。為川と下上貴弘(ベース)も向かい合って大ジャンプしたりと、ギターの脱退という厳しい出来事もあったけれど、このバンドの持つ刃は全く錆びていない。
すると稲村が
「ロッキン20周年っていうことで、特別なカバーを」
と言ったので、ネコフェスを主催するなど交友関係が非常に広いアルカラのことなので、てっきり仲間のバンドの曲をなんかしらカバーするのかと思いきや、披露されたのはなんと同じ時間にGRASS STAGEでライブをしている、欅坂46の「不協和音」。アルカラらしいメタリックなサウンドになっているし、稲村は時々歌詞が飛んだりしていたが、丸々1曲をしっかりカバーしていたし、
「僕は嫌だ」
というフレーズを下上が言うなど、完全にタイムテーブルが発表されてからメンバー全員で練習に励んだのであろうことがよくわかる。(最後の4人固まってのポーズも含めて)
そうした、さすがロック界の奇行師っぷりを遺憾なく発揮したと思っていたら、稲村がギターの音を出しながら、
「この音があるやん?この音と仲が良い音があるねん。それがこの音。これが和音になる。でもこの音と仲が良くない音もあって、それを当てるといわゆる不協和音になる。これはジャズとかでは使われたりする組み合わせなんやけど、俺たちは17,8年前からずっとこういう不協和音を使って音楽を作ってきた。音楽ってめちゃ面白くない?そうやって音と音の組み合わせ、その音にどんな言葉を乗せるのかの組み合わせで全く変わる。日本の米は!?」
観客「世界一!」
稲村「今、PARK STAGEで打首獄門同好会がやってるんで、みんなは欅坂46と打首獄門同好会っていう被ってるアーティストを両方見れたことになります(笑)
でも18年くらいやってても、そうやって音楽ってめちゃオモロイやん!って思う。だから新しい曲を作るのが楽しい」
と、アルカラというバンドが「不協和音」を自分たちの音楽に取り入れて活動してきたことをものすごくわかりやすく解説したのだが、単なる裏のアーティストのカバーではなく、そこにその曲をカバーした意味がしっかりとある。そしてそれをメンバーが1番楽しんでいる。やっぱりアルカラはすごいバンドだ。
そんなアルカラの10月に出るアルバムに収録される新曲のうち、「誘惑メヌエット」はMURO FESでも演奏されていた、曲の途中で稲村がギターからヴァイオリンにスイッチするという新しいタイプの曲。一方のタイトル未定であるがゆえに「ROCK IN JAPANに出た瞬間」と紹介された曲は、歌詞に何度も「瞬間」という単語が出てくる、音楽をはじめとしたなにかと出会った瞬間の気持ちを音楽にした曲。サウンド自体は実にアルカラらしい曲であるが、その歌詞の内容からは音楽への衝動が未だに失われていないことがわかる。
そうして18年を超えてもこのバンドにまだまだ期待を抱かせると、「キャッチーを科学する」で合唱を響かせ、ラストは今やバンドの代表曲と言っていいレベルにまで成長した「さすらい」。この日も本当にKAGEKIにやってくれたアルカラであった。
ライブ後、マネージャー氏があげていたカバー曲演奏中の動画がかなりバズっていた。欅坂46のファンの人がそれを見て「カッコいい」って思ってくれたら嬉しいし、そうしたことでこのバンドの存在を知ってくれた人がいるのなら、このライブの意味がさらに大きくなる。今でもこのLAKE STAGEくらいは満員になってしかるべきバンドだと思っているから。
1.アブノーマルが足りない
2.チクショー
3.不協和音 (欅坂46のカバー)
4.誘惑メヌエット
5.ROCK IN JAPANに出た瞬間 (仮タイトル、新曲)
6.キャッチーを科学する
7.さすらい
11:45〜 NICO Touches the Walls [GRASS STAGE]
2012年にトップバッターとしてGRASS STAGEに進出して以降はずっとこのGRASS STAGEに出演してきた、NICO Touches the Walls。今年もGRASS STAGEに帰ってきた。
サウンドチェックでストレートなアレンジの「THE BUNGY」を演奏していたので、「この曲を本編でやらないということは今回はリリースされたばかりのアルバム「QUIZMASTER」の曲を軸にしたものになるのだろうか?」と様々な予想が浮かぶのは、NICOがこのステージで毎年全く違う内容のライブをやってきたからである。
ある年は代表シングル曲連発だったり、ある年は「damaged goods 〜紫煙鎮魂歌〜」を筆頭にバンドの幅広さを全方向に見せるようなライブをやったり…なので終わってみるまでこのバンドのこのフェスでのライブはどうなるのかわからないのである。
メンバー4人がステージに登場すると、光村龍哉(ボーカル&ギター)が夏フェス仕様なのか、長かった髪を切って少しさっぱりしており、サングラスを着用という出で立ちで最初に演奏されたのは、古村大介のギターのイントロがこの大草原に似合うスケール感を響かせる「バイシクル」。かつて2012年に初めてGRASS STAGEに立った時に1曲目に演奏された曲もこの曲だった。渋谷陽一社長の朝礼では光村がめちゃ緊張していたと話していたが、あの日も本当に暑かった。きっとメンバーもあの時のことを覚えているから、20周年のこのフェスの1曲目をこの曲にしたんじゃないかと思う。
さらに「手をたたけ」とバンドの代表曲がいつも以上にストレートなアレンジで演奏され、観客が手をたたく中で光村は
「それじゃそのままSayハロー」
のフレーズを
「ひたちなかにお帰りー!」
と変えて叫ぶ。2005年にこのフェスに初出演して以降、毎年のように出演してきたこのバンドだからこそ言える言葉であるし、無事に今年もこのステージに立つ姿が見れて嬉しいと思える。
そんな序盤だったので、今回は代表曲連発セトリか?と思いきや、ここで「QUIZMASTER」収録曲である、坂倉心悟(ベース)と対馬祥太郎(ドラム)によるリズムがグルーヴィーな「マカロニッ?」を披露。アルバムリリース前の春フェス時点でも演奏されていたが、光村によるスキャット的なコール&レスポンスは春フェス時よりもはるかに戸惑いなく浸透しており、ワンマンの時のようなリアクションの良さに感じた。
すると光村が歌い出しのサビのフレーズを歌い始めただけで歓声が上がった「ホログラム」、さらにはアコギを軸にした、さらに爽やかなアレンジで演奏された「夏の大三角形」と、とりあえず見てみるくらいの感じだった人たちからも「これ聴けて良かった〜」的なリアクションを感じる。ちゃんとみんなが知っている曲をNICOは持っているし、その曲たちがこのバンドをこのステージまで連れてきたのである。
そんな中で「QUIZMASTER」から演奏されたのは夏の野外でやるとは思っていなかった「MIDNIGHT BLACKHOLE?」。しかしこれがこの後に続く「天地ガエシ」「Broken Youth」というロックなサウンドの曲と実によく合っていて、この流れでやるのはこの曲だったんだろうな、と納得。シングル曲にはキメ部分などで細かいアレンジはなされていたが、光村が
「欅坂の時みたいにもっとどーんと来い!」
と煽っただけに、バンドの演奏もズドンと観客のミットにストレートに収まる。
そしてこのフェスと集まった観客に感謝を告げてから最後に演奏されたのは、光村がアコギを弾きながら歌う「QUIZMASTER」の「18?」。
「何度も夢を見るよ 諦められないんだ」
「何度も夢を見るよ 信じてたいんだ」
という曲中のフレーズは、我々ファンがNICOにずっとGRASS STAGEに立ち続けて欲しいという夢を見ていることをそのままバンドが歌ってるかのようだった。代表曲を連発しながらも最後をこの曲に託した意味が、確かに見えていた。
この日、PARK STAGEにはKing Gnuや打首獄門同好会、SUPER BEAVERというGRASS STAGEに立っていてもおかしくないようなバンドたちが出演している。きっと、単純に動員力だけならNICOよりもあるだろうし、NICOファンもそれをわかっている。だからこそいつもこれがGRASS STAGEに立つのは最後かもしれないと思いながら見ている。
でもそう思いながらもNICOはずっとGRASS STAGEに立ってきた。9mmやBase Ball Bearという同年代でかつてGRASS STAGEに立っていたバンドたちももうGRASSではないステージに出るようになって何年も経つ。そんな中でGRASSにNICOが出続けてきたのは運もあるだろうけれど、何よりもバンドの演奏と光村の歌唱力がこのGRASSで響くべきスケールを持っているということをフェス側もわかってくれているからだ。
何よりも、GRASS STAGEが1番持ち時間が長い。NICOは曲にライブアレンジを施したりする特性上、持ち時間が長い方が真価を発揮できるバンドだと思っているし、たくさん曲が聴ける。そうした理由でもやっぱりGRASSに立っていて欲しいし、後ろの方のイスゾーンやテントゾーンで座ったりしている人にもこのステージの音は届く。音さえ届けば、きっとこのバンドの凄さをわかってくれる人はたくさんいる。それができるのはこのGRASS STAGEだけと言っていいだけに、何とか来年もこのGRASS STAGEに立っていて欲しい。こうしてたくさんのバンドが出るフェスで見ていても、やっぱりこんな凄いバンドは他にいないなって思えるから。LAKEを埋めるのにも何年もかかったのを見てきて、初出演から7年経ってようやく掴んだこのステージに立ったのをずっと見てきた同世代として、ここに立ち続けるNICOの姿に何度も勇気をもらってきたんだ。
リハ.THE BUNGY
1.バイシクル
2.手をたたけ
3.マカロニッ?
4.ホログラム
5.夏の大三角形
6.MIDNIGHT BLACKHOLE?
7.天地ガエシ
8.Broken Youth
9.18?
13:00〜 04 Limited Sazabys [GRASS STAGE]
2年連続でのGRASS STAGE出演となる、フォーリミ。リハで東京スカパラダイスオーケストラのトリビュートアルバムに参加してカバーした「銀河と迷路」を演奏するなど、気合いとサービス精神に満ちている。
おなじみのオリジナルSEでメンバーが登場すると、早くもステージからは水が噴き出したりするという演出に迎えられ、GEN(ボーカル&ベース)が思いっきり腕を振りかぶる「monolith」からスタート。
「2年連続のロッキンのGRASS STAGEは」
と早くも歌詞を変えて歌うと客席から大きな歓声が上がる。昨年は
「ロッキンのGRASS STAGEですよ!」
と高揚感に満ちていた歌詞の変え方だったが、良い意味でフラットな状態でステージに立てているのだろう。
おなじみの「fiction」では水ではなくスモークがステージから噴き出すという演出もあり、パンク・メロコアのバンドというとひたすら無骨に曲を連発するというタイプが多いし、このバンドもライブの流れ自体はそういうものではあるのだが、こうした演出はそうしたパンクバンドのライブの在り方を変えていくような気もするし、何よりもただただ夏の野外フェスの大きなステージでフォーリミのライブを見れているという感覚を強く味あわせてくれる。
「knife」「Alien」というパンクというよりもハードな音像の曲を続けると、GENが
「最近、ポケモンGOをようやく始めたんですよ。そしたら今年のロッキンの物販ってポケモンとコラボしてるんですね。イーブイがドラム叩いてるTシャツを友達に代行頼まれた(笑)」
というタイムリーなんだかよくわからないMC。GENより先にポケモンGOを始めていたRYU-TA(ギター)はイーブイをエーフィーに進化させたという。
「未来からの、メッセージ」
とファストなメロコアの「Message」、GRASS STAGEというヒーローが立つべき舞台にパンクヒーローとして立っているフォーリミが鳴らす「My HERO」と加速すると、カメラ目線のRYU-TAのダンスが笑いを誘う、GENの愛猫家っぷりが炸裂している「Kitchen」、雲一つない真昼間の空の下でも何か流星群ではないものが空に輝いているようにすら感じる、RYU-TAとKOUHEI(ドラム)が2人でカメラ目線をしながらキメを打つ「midnight cruising」とテンポよく曲を連発。こうして持ち時間が長いとたくさん曲が聴けるというのは実に嬉しいし、その中にはここにいる一人一人にとって好きな曲、特別な思い入れがある曲もきっとあるはず。
「今年は1番暑い時間帯じゃないですかね。そんな時間にこうして集まってくれたみなさんに、暑中見舞い申し上げます!」
と言って演奏されたのはもちろん「Letter」であるが、さらに「Terminal」という激しさだけではなく切なさを含んだ曲を連発。このフェスはダイブはもちろん、モッシュも禁止されているフェスだけれど、だからこそこうした激しさだけではないこのバンドの持ち味を噛みしめることができる。
そして、平日考えすぎている我々に送る「Squall」で普段モヤモヤしていることを忘れさせ、さらに前に進む力をくれると、最後はやはり水が大量に噴き出し、このステージの中を泳いでいるかのような感覚にさせる「swim」。やっぱりめちゃくちゃ暑い時間帯だったけれど、それがこのバンドには凄く似合っていた。
と、これで終わりかと思いきや、
「名古屋の04 Limited Sazabysでした!みんな覚えた?不安だなぁ」
と言って、覚えさせるために最後に「Remember」を演奏した。覚えたどころか、ここにいた人たちはこの夏のことを絶対に忘れないはず。
フォーリミはCDJにはブレイク前から出ていたが、ロッキンはまだ今回で4回しか出ていない。初出演でLAKE STAGEだったから、小さいステージからこのGRASS STAGEにたどり着いた、という物語も持っていない。
でも2年連続でこのGRASS STAGEに出たのを見ると、このバンドは今はもうこのフェスを、このステージを、そしてこのフェスにおけるパンクを担っている。WANIMAなどもこのステージに立っているけれど、このバンドがGRASSに立っている姿を見ていると、ダイブが禁止されて以降に危ぶまれていたパンクの炎が決してこのフェスから消えてはいなかったことを感じる。
リハ.銀河と迷路
リハ.escape
リハ.days
1.monolith
2.fiction
3.knife
4.Alien
5.Message
6.My HERO
7.Kitchen
8.midnight cruising
9.Letter
10.Terminal
11.Squall
12.swim
13.Remember
14:00〜 9mm Parabellum Bullet [PARK STAGE]
13年連続出演の9mm。去年は夕暮れのLAKE STAGEに出演していたが、今年は陽射しが厳しい時間のPARK STAGEに登場。
この日はサポートギターチームのうち、為川裕也もアルカラのサポートですでにライブをしているが、ここはサポートを務めるのはHEREの武田将幸。登場時はサングラスをかけていた滝善充(ギター)はギターを持つと同時にサングラスを外していた。
「みんな、無事かー!?」
とあまりの暑さによってか、菅原卓郎(ボーカル&ギター)の第一声も観客を気遣うものになっていたが、そんな中で1曲目に演奏されるのが涼しくするどころか着火する「ハートに火をつけて」という容赦のなさ。間奏部分での中村和彦(ベース)も含めた3人によるステップはクスッとさせるが、この曲を作曲した和彦が低い位置のマイクスタンドで叫びまくる「Cold Edge」、
「みんなで行こうぜー!」
と卓郎がこのステージに集まってくれた人たちを連れて行こうという意思を見せる「キャリーオン」、これぞ9mmなギターサウンドを滝と武田、卓郎の3人で絡ませ合う「ガラスの街のアリス」と、暑くても全く容赦なくこれまでの9mmの歴史を彩ってきた曲たちを連発していく。
しかし白いTシャツを着た卓郎以外は武田も含めて全員上下ともに黒ずくめな出で立ちをしており、なんでこんなに暑い日により暑くなるような格好をしているんだろうか、と不思議になる。
卓郎がこのフェスに出続けてきたからこその20周年を祝うコメントから、不在時には和彦やサポートメンバーが担ってきた滝によるイントロのギターのサウンドが木々に囲まれたPARK STAGEに実によく似合う「黒い森の旅人」へ。もっと暗くなった時間帯にこのステージで聴いたらもっと似合いそうでもあるが、でもやっぱり何度も立ってきたLAKE STAGEの方がこのバンドの激しいロックサウンドは合っているように思う。
最新シングル曲にして、
「生き延びて会いましょう」
「来週も会いましょう」
というフレーズが毎年このフェスのステージに立ってきたこのバンドだからこそ、来年もまたこのフェスでの再会を約束するかのように鳴らされた「名もなきヒーロー」から、合唱を生んだ「新しい光」で後半になるにつれてステージも客席も暑さでバテるどころか、さらに熱さを増していく。卓郎も、
「俺たち欲張りだからさ!」
と言ってすでにカンカンに照りつける太陽をさらに求める「太陽が欲しいだけ」という9mmアンセム連打となった今年の最後に鳴らされたのは、
「ROCK IN JAPAN FES.にたどり着いたぜー!」
と卓郎が叫び、少なからずいたであろう、次にこのステージに登場する人気バンドのファンたちも全てまとめて仲間入りさせるような「Black Market Blues」。今の9mmはやはりライブを見終わった後の圧勝感がとてつもない。それはこのフェスに出始めた頃よりも、今の方が強く感じる。混迷の時期にあっても決して止まらなかったこのバンドを毎年このフェスで見ることができて本当に幸せだ。
かつて立っていたGRASS STAGEではないステージに出るようになってから3年ほどか。9mmは初出演の2007年にWING TENTに出演すると、翌年には一気にLAKE STAGE、さらに翌年には早くもGRASS STAGEと、あっという間に駆け上がっていった。だからこそ、当時は9mmがGRASSに立つのが当たり前だった。
でもGRASSに出れなくなり、同年代でGRASSに出ていたバンドたちもLAKEやPARKになるにつれ、GRASSに立っていたのは当たり前なんかじゃなくて、本当に特別なことだったんだと気付いた。実際にGRASSで見ていた時はそれがわからなかった。
もちろんPARKやLAKEに出る、というかこのフェスに毎年出ること自体が特別なことだと言えるし、デカいステージに立つことが全てじゃない。でもGRASS STAGEで「Termination」を演奏した時にスクリーンに映った観覧車の美しさも、あのステージだから演奏された「グラスホッパー」のことは今でも忘れられない。
何よりもこんなに激しくてうるさい音を鳴らしていて、メンバーがステージ上で暴れまくっているようなバンドが日本で1番デカいフェスの1番デカいステージに立っているのは本当に痛快だった。
そんな特別さを、きっと今ならあの頃以上にちゃんと感じることができる。9mmがあのステージで鳴らす1曲1曲を、あのステージに立つ一瞬の連続を、あの頃よりも大事にすることができる。9mmにも色々あったのを見てきて、それでも続けてきたのも見てきたから。年々GRASSが遠く感じてしまうようになってきているけど、自分はまたいつかあのステージに9mmが立つ日が来るのを諦めていない。そう思わせてくれるくらいに9mmは今でも最高にカッコいいから。
1.ハートに火をつけて
2.Cold Edge
3.キャリーオン
4.ガラスの街のアリス
5.黒い森の旅人
6.名もなきヒーロー
7.新しい光
8.太陽が欲しいだけ
9.Black Market Blues
14:40〜 SIX LOUNGE [SOUND OF FOREST]
前年のBUZZ STAGEから今年はSOUND OF FORESTに進出。今やロッキンオンが主催する若手主体のサーキットフェス「JAPAN’S NEXT」ではメインステージを引っ張るバンドの1つである。
出演しているアーティストたちがみな一様に「暑い」と言うこの日の昼間の時間帯、しかもステージには直射日光が当たる中であってもヤマグチユウモリはいつもと全く変わらぬ黒い革ジャンを着用というわかりやすすぎるくらいにロックンローラーな出で立ちで、ロックンロールに叫びまくる「Lonely Lovely Man」、スイートなロックンロール「天使のスーツケース」と最新シングル収録曲を連発。
ただでさえリリースペースが早いバンド(すでに次のシングルのリリースも決定している)であるし、こうしてカップリング曲もフェスという場で演奏するタイプのバンドであるだけに、セトリも最新の自分たちのモードを見せるようなものになる。それは新しく出てくる曲がいずれもそれまでを上回っているという自信がさせることだろうし、それは決して大袈裟ではないと思うくらいにソングライティング力は眼を見張るレベルで上がっている。
だからこそ「天使のスーツケース」に連なるような「ふたりでこのまま」「メリールー」という、ロックンロールの荒々しさだけではない、ナガマツシンタロウ(ドラム)のロマンチックな歌詞と、ユウモリのスイートなボーカルがライブの中心に位置しているし、何よりもこういう曲たちを若い人たちが涙ぐみながら口ずさんでいる。懐古主義的なロックンロールではなくて、今この時代の最前線を生きる者によるロックンロール。その光景を見るだけでついついウルっとしてしまう。
かと思えば「DO DO IN THE BOOM BOOM」「LULU」とファストなロックンロールを続け、イワオリク(ベース)は自身のアンプの上に立ち上がってベースを弾く。MURO FESの時ほどではないが、ルールが厳しいロッキンでできるギリギリの無茶っぷり。
そしてユウモリは
「ロックンロールはロックスターのものでも、俺たちのものでもない!この世を生きる全ての人たちのものだ!」
と叫んで「トラッシュ」「僕は撃て」というキラーチューンを連発した。その姿は紛れもなくロックスターそのものだったけれど、このバンドの鳴らすロックンロールはユウモリの言葉通りに、このフェスのもっと大きなステージで、ロックンロールを必要とする全ての人の前で鳴らされる予感しか感じない。こんなにカッコいいロックンロールバンドが現れたことを本当に嬉しく思うし、このバンドにこのフェスのROCKの部分を担うようになって欲しい。
1.Lonely Lovely Man
2.天使のスーツケース
3.ふたりでこのまま
4.メリールー
5.DO DO IN THE BOOM BOOM
6.LULU
7.トラッシュ
8.僕を撃て
15:10〜 the band apart [LAKE STAGE]
2004年にこのLAKE STAGEで初出演、2008年にはGRASS STAGEにも立ち、このフェスの歴史を作ってきたバンドの一つである、the band apart。近年はSOUND OF FORESTに出演していたが、実に久しぶりにこのLAKE STAGEに戻ってきた。
時間になるとすでにステージにメンバーがスタンばっている中、原昌和(ベース)によるイントロが鳴らされると後ろの方で座っていた人たちも一気に前に駆け出したのは「Eric.W」。「この曲で始まるの!?」という驚きと喜びによって観客は踊りまくる。
実は爽やかな夏ソングもこのバンドにはあるんだぞ、ということを思い知らせるかのような「Waiting」を演奏すると、近年は体調不良というニュースを目にすることもあった荒井岳史(ボーカル&ギター)が変わらぬ美声を響かせていたと思いきや、
「ちょっと待って!」
と言ってイヤモニの調整をし、その間にスキンヘッドになった木暮栄一が
「最近は冷房の効いた部屋で日本語ラップの映像をずっと見ていますが、北関東は怖いなって思います。この茨城も北関東ですよね。でも怖くないです、愛しか感じないです!」
とすかさず間を埋めるMCを見せるのはさすがの経験を感じさせる。
荒井が演奏の準備を終えると、原が叫ぶというよりも奇声を上げまくる「Castaway」で変わらぬバンドのキレ味を見せつけ、続いて演奏されたのはリリースが決定したばかりのepに収録される予定の新曲。バンアパはこれまでにもこのフェスで何度もリリース前の新曲を演奏してきたが、そうした最新の自分たちの姿を見せる姿勢というのはベテランになっても全く変わっていない。
かつては
「俺が金持ちだったらこのステージに屋根をつけてやりたい」
「もうあまりにも暑すぎて言いたいことなんか何にもない」
とこのLAKE STAGEを何度も笑わせまくってきた原のMCは今回も
「なんでバンドなんか始めちまったんだろうね。まぁバンドやってりゃ女にモテるかもしれないっていう深層心理みたいなものがほんの少しはあったからかもしれないけど、それは神話でした。前に曲がり角で女性とぶつかりそうになった時に、黄色くない声を上げられたことがあります」
と相変わらずの朴訥とした語り口で笑わせてくれる。
しかしひとたび演奏が始まるとやはりそのグルーヴとキレは素晴らしい。ギターロックにジャズやボサノバ、パンクにファンクなどを抜群のセンスでミックスさせたバンアパサウンドはKEYTALKらが多大な影響を受けていることもあり、今でもシーンに与えているものの大きさは計り知れない。
まだ明るさしか感じない時間帯であっても「夜の向こうへ」では大きな歓声が上がっただけに、リリース時に賛否両論の意見が上がった日本語歌詞への挑戦がバンドにとって間違いなくプラスであったことがわかる。
「ホットスナックコーナーってコンビニにあるじゃないですか。アメリカンドッグとかをホカホカの状態で提供するための什器なんですけど。
あの中にオッさん4人を入れて弱っていく様子を観察するというショーが終わりを迎えようとしています。アディオス」
と原が最後に爆笑を巻き起こすと、最後に演奏されたのは「beautiful vanity」。原が木暮のドラムセットに近づいて演奏すると、アウトロでは川崎亘一(ギター)があっという間にギターを置いてステージから去る中、残った3人はセッション的な演奏を見せて卓越した演奏技術を遺憾なく発揮し、バンアパ健在をこれでもかとアピールした。演奏を終えると木暮が笑顔でスティックを客席に投げ入れた。見た目はかなりいかついおじさんになってきたが、やはりこのバンドはみんな本当に優しい。今でも被災地で開催されているKESEN ROCK FESTIVALの中心的な存在であるだけに。
原の数々の迷言も含めてこのフェスの歴史を作ってきたバンドであるバンアパも、やはり今やLAKEでは明らかに広すぎると感じてしまうようになってしまった。でも今になってバンド主催でフェスを開催したりと、まだまだ面白いことをやろうとしているし、このバンドから影響を受けてバンドを始めたという若手バンドも後を絶たない。だからこそできるならこうしてデカいステージに立って、また満員の観客がこのバンドのライブで踊りまくっている景色が見たい。
1.Eric.W
2.Waiting
3.Castaway
4.新曲
5.ZION TOWN
6.夜の向こうへ
7.beautiful vanity
16:20〜 THE PINBALLS [BUZZ STAGE]
この日はSIX LOUNGEも出演しているが、共にロックンロールバンドの新たな旗手としてそのSIX LOUNGEを自身の主催イベントに招いていた、THE PINBALLSもこの日のラインアップに名を連ねる。
しかしながらその主催イベントは古川貴之(ボーカル&ギター)の喉の不調によって中止となり、バンドはライブ活動を休止せざるを得ない状況に追い込まれた。そのTHE PINBALLSが復活の舞台に選んだのが、初出演のこのフェスのステージである。
入念にサウンドチェックをしていたのはようやく掴んだこのフェスに出れるチャンスという気合いもさることながら、やはり久しぶりのライブということが大きいのだろう。間違いなくこの日演奏すると思っていた「真夏のシューメイカー」を本編ではなくこの段階でやってしまうというのはちょっと意外だったけれども。
本番でメンバーが登場すると、古川は手をグッと握って集まってくれた観客たちに気合いを示し、金髪のギタリスト・中屋智裕が体を反らしながらギターを弾きまくる「片目のウィリー」でスタート。記念すべき初のロッキンの1曲目にして、復活後最初の曲に選んだあたり、この曲への思い入れはかなり強いのだろう。実際に自分もこのバンドに出会った最初の曲はこの曲だった。それだけにこうしてこのフェスでこの曲が鳴らされているのを目の前で見れているのは実に感慨深いものがある。
アニメのタイアップになった効果もあるのか、「劇場支配人のテーマ」ではイントロが鳴っただけで観客がグッと前に押し寄せていく。サングラスをかけた森下拓貴(ベース)も煽ったりするが、それ以上に自発的に観客が「オイ!オイ!」と拳をあげる。みんなこのバンドのライブを待っていたというのがよく伝わってくる。
森下が真ん中に移動して歌い、そこに古川も寄っていって2人で1本のマイクで歌うというパフォーマンスの「CRACK」と、ライブを止めていたとは思えないくらいのロックンロールのエネルギーの漲りっぷりだし、古川の喉もここまでは不調を感じさせないものだったが、「アダムの肋骨」のサビでのハイトーンな部分は少しキツそうにも感じた。かといってそれが良くなかったかというと全くそんなことはないのだが。
曲間での観客の「おかえりー!」という温かい声に思わず古川は喉を詰まらせそうになっていた。しかしそれでも決して涙は見せず、カッコいいロックンロールバンドとして、
「俺はただただこの4人でひたすら熱くなりたい。これからもそうでありたい」
とこれからもこのバンドで歌い続けていく決意を口にして、フェスという場に合わせた選曲らしさを感じた「CARNIVAL COME」から、石原天のロックンロールにパンクのエッセンスを注入したかのようなけたたましいリズムの「七転八倒のブルース」と、さすがにワンマンでは90分足らずで20曲も演奏するバンドと思わせるようなテンポの良さを見せると、最後に演奏されたのはこのバンドをメジャーの舞台、長い歴史を持つ音楽番組の主題歌としてお茶の間にまで引っ張り上げた「蝙蝠と聖レオンハルト」で最後の最後に盛り上がりはもちろん、バンドの演奏までもピークに持ってくるような熱さを見せつけた。クールな中屋と石原をよそに、先にステージから去った古川はやりきったような、メンバーの中で最も観客のことを見ている森下は安堵の表情を浮かべてステージから去っていった。
きっと、バンドにとって本当に出たかったフェスだ。だからこそステージから言いたいこともたくさんあったかもしれないけれど、それ以上に言わなくてはならないことができてしまった。
売れるためには運やタイミングが重要、と歌ったのはキュウソネコカミであり、それは間違いなくその通りだ。でもこのバンドは悔しくなるくらいにそうした運やタイミングを持ち合わせていない。自分たちの主催イベントを中止にしなくてはいけなかったし、この日のライブだってどうなるかわからなかった。
でも運やタイミングは持っていなくても、このバンドはカッコいいバンドでい続けるためにもっと大事なものをちゃんと持っている。それはロックンロールのカッコよさと、普段のライブハウスの規模感からするとそこまでたくさんいるような感じがしないこのバンドのファンたちが、こんな場所まで古川に「おかえり」という言葉をかけるために集まってきてくれたというファンとの信頼関係である。
中屋もライブ後に
「きっと、この4人でいるのが1番自然なんだと思う」
とあくまでクールにツイートしていたが、主催ライブが中止になった時の森下のツイートによると、バンドをこれから続けていくかということまで話し合ったという。きっと、そこで4人はこれからもこのバンドで生きていくという決意を改めて固めたはず。今年の春のツアー時にそれまでよりはるかに素晴らしいライブを見せてくれたが、今回はそれをさらに上回るようなものだった。そうさせたのは4人のその決意に他ならない。
全く順風満帆ではないどころか、この場所までたどり着くのに本当に長い年月が経ったけれど、このバンドは絶対大丈夫だ。もっといける。この日のライブからはそうした未来への光しか感じなかった。そう思えたんだから、止まってしまっていた時間も決して無駄なものではない。
リハ.蛇の目のブルース
リハ.真夏のシューメイカー
1.片目のウィリー
2.劇場支配人のテーマ
3.CRACK
4.アダムの肋骨
5.失われた宇宙
6.CARNIVAL COME
7.七転八倒のブルース
8.蝙蝠と聖レオンハルト
16:45〜 WANIMA [GRASS STAGE]
2年ぶりのこのGRASS STAGE帰還となる、WANIMA。最初にこのステージに出演した時は、LAKE STAGEに出演予定だったのがSuperflyのキャンセルによって代打的にこのステージへ、というものだったが、今やこのステージのトリをやっても全くおかしくないレベルにまで到達している。
BUZZ STAGEのTHE PINBALLSを見終えてからGRASS STAGEにたどり着くと、すでに「BIG UP」を演奏中で、凄まじい盛り上がりになっている。KENTA(ボーカル&ベース)、KO-SHIN(ギター)、FUJI(ドラム)の3人ともさらに派手な髪色になっており、見ているだけで夏フェスらしくなるが、自己紹介でいきなり直前にこのステージに出たPerfumeのモノマネをしたり(KENTAが裏声を使う結構本気のモノマネ)、テレビで使われる映像用にウェーブを客席に起こしたり(客席左右でかなり時間差があったけど)といきなりやりたい放題。
そんな中でも「アゲイン」の真っ直ぐなメロディと歌詞はこうしてこのフェスのこのステージでWANIMAのライブを見ているということの特別さを感じさせてくれ、「つづくもの」ではまだまだ暑い中をものともせずKENTAがベースを置いてステージ左右に伸びた道を思いっきり走りながら歌う。
WANIMAには夏を連想させるような曲が多い。MVもそうした景色で撮影されたものが多いし、実際に歌詞のテーマも夏のものがたくさんある。それはこの3人が持つ陽性のエネルギーが他のどの季節よりも夏に似合うからというのもあるだろうけれど、その夏の切り取り方も曲によって全く違うというか、「サブマリン」から観客のリクエストを募ってから演奏された(ツアーでもそうだったけれど、リクエストと言いながらもすでにやる曲は決まっているはず)「オドルヨル」というあたりは夏だからこそこのバンドが掲げる「ワンチャン」に期待を抱かせるような、エロい夏ソングたちであり、これも間違いなくWANIMAの持つ魅力の一つである。
その夏らしさをエロモードではなく爽やかな方へ振り切った大ヒット曲「ともに」もしっかり演奏してくれるというのがフェスでのWANIMAの戦い方だが(ワンマンではやらないときも多くなった)、FUJIによる長渕剛のモノマネも最低限の曲紹介だけにとどめて演奏された「夏のどこかへ」はそんなWANIMAの正統派な夏の最新ナンバー。リリースされたばかりとはいえ、すでにたくさんの人が口ずさんでいるという光景に今のこのバンドのいる位置を改めて確認させてくれる。
KENTAがリアルに袖にいるスタッフと目を合わせたり、会話をしていたりした様子からすると、
「残り3曲だったけど、時間がもうないから!」
と言っていたのはマジだったのかもしれない(時間押した要素は最初のMCやウェーブくらいしか思いつかないが)けれど、そんな中でKENTAが歌い出しにベースでの弾き語り的なフレーズを追加してこの曲の持つ切なさを倍増させる「1106」は今でもこのバンドが出てきた時(それこそこのフェスのSOUND OF FORESTに出演した時も)を思い出させてくれるし、KENTAの個人的な思いを歌った歌が6万人もの人の大合唱によってそれぞれの自分の歌になっていく。最後のコーラス部分で観客が手を振る様子がスクリーンに映ったのを見ていたら、まるで最初からこの規模で演奏されるのが決まっていたかのように思えた。
そしてラストはまた新たなスタートをここから始めるかのような「シグナル」。演奏が終わるとリアルに時間がないからか、かなり駆け足だったが写真撮影もしっかり行っていた。この夏の面影が、きっとバンドにとっても見ていた我々にとっても、焼き付いて離れないんだ。
このフェスにおいて、そのバンドと出演時間が被るとキツいと言われているバンドがいくつかいる。常連組だとBUMP OF CHICKENやマキシマム ザ ホルモンのように、その時間にライブをしている裏のアーティストの客席がかなり寂しいことになってしまうという景色を何度も見てきた。
もう今のWANIMAもそんな状況だ。GRASS STAGEが満員どころか、通路にはみ出すくらいに人が溢れかえっている。去年のサザンオールスターズを見ているかのようだった。きっと来年以降はこの後の時間、つまり夜に90分の持ち時間でこのバンドを観れる日が必ず来る。
1.BIG UP
2.アゲイン
3.つづくもの
4.サブマリン
5.オドルヨル
6.ともに
7.夏のどこかへ
8.1106
9.シグナル
WANIMAを見終えてLAKE STAGEに行くと、Hump Backの中盤あたり。林萌々子は夏らしくTシャツ姿でその声を澄み渡った空に響かせる中、ぴかと美咲のリズム隊は日焼け対策なのか長袖。
昨年、このバンドはWING TENTでこのフェスに初出演した。それからたった1年でLAKE STAGEにまでたどり着いたし、何よりも林の歌とバンドの演奏は別バンドじゃないかというくらいに劇的に進化した。
「デカいところでやるのが夢じゃなくて、この2人と一緒にバンドをやるのが私の夢」
と、一人きりになったこともあるこのバンドを救ってくれた2人への感謝を林は述べていたが、デカいところでやるのが目標ではなくても、デカいところに導かれていくバンドはいる。このバンドも間違いなくそう。このロックシーンに綿々と連なる何かに、このバンドが憧れてきたような人たちにこのバンドは選ばれたのだ。
WANIMAの裏だからか規制がかかるほどの満員とはいかなかったが、それでもやはりHump BackはLAKE STAGEを埋めていた。今年、これまでにこのLAKE STAGEに何度も立ってきたアーティストたちをこのステージで見れるのは嬉しいことだったけれど、客席を見ると寂しく感じることも多かった。このバンドの時みたいに、人で埋まったLAKE STAGEの景色が本当に好きだった。だからできればそんな景色を見ていたい。
18:35〜 忘れらんねえよ [LAKE STAGE]
昨年、広くなったPARK STAGEに初めて出演し、ロッキンのフェスで2番目に大きいステージに出演できることの喜びを新たなメンバーたちとのパンク・オルタナ魂を炸裂させたサウンドで表していた、忘れらんねえよ。今年はついに、数々のバンドたちが伝説的なライブをしてきた、LAKE STAGEのトリという位置に。
メンバー全員が揃ってのサウンドチェックで銀杏BOYZ「BABY BABY」を歌ったり、もはや自分の曲にしようとしているんじゃないかと思うくらいに[ALEXANDROS]の「ワタリドリ」をこの日もいたって普通に演奏していたり(柴田は英語の歌詞の部分を全く分かっていなかったが)していたが、最近はSEで使っている「ワタリドリ」をサウンドチェックで演奏したということは今回のオープニングは果たして?
と思っていると、ステージに現れたのは柴田1人。弾き語り的に「バンドワゴン」を歌い始めるという、ものすごく真面目なスタートであるが、
「高速道路のその先にデカいステージがある
いつかたどり着ける」
というフレーズに続いて、
「ロッキンのLAKE STAGEにたどり着いたー!」
と歌う柴田はやはりこのステージに立つ気合いというか、いつもとは違う心持ちでいたことだろう。
そして曲の途中からは同じバンドワゴンに乗る、ヒトリエのイガラシ(ベース)、爆弾ジョニーのロマンチック☆安田(ギター)とタイチサンダー(ドラム)も合流してバンドサウンドに。これまでもずっと柴田と忘れらんねえよを支えてきてくれた仲間たちだが、タイチは忘れらんねえよ初のLAKE STAGEというめでたい場だからか、白い袴みたいなものを羽織っている。
初期のストレートなパンク曲「この街には君がいない」もこのメンバーによる演奏になるとグッと引き締まったものになっているし、下手なバンドならではの味を持ったバンドだった忘れらんねえよが音楽集団として進化を果たしている。そこにあの頃とは違うけれどしっかりと衝動を感じさせてくれるのはこのメンバーによるものでもあり、この場所が与えてくれる力でもあるかもしれない。
柴田ならではの逆ギレソング「あの娘に俺がわかってたまるか」はリリースされたばかりではあるが、その柴田の逆ギレエネルギーをもってして客席も新曲とは思えない盛り上がりとなり、もうずっと前からこうしてライブで演奏されていた曲であるかのよう。
そんな中で素直に名曲と言える「この高鳴りをなんと呼ぶ」では
「明日には名曲がひたちなかに生まれんだ」
と歌詞を変えて歌い、大きな歓声を浴びる。思わず柴田も、
「今まで出てきたロッキンの中で今日が1番幸せだー!」
と叫ぶ。気づくともうすっかり空は暗くなってきている。
しかしそんな特別と言っていいライブであってもユーモアを忘れないのがさすが柴田。おなじみの「ばかばっか」で一気飲みするビールをステージに運んできたのは、なんと柴田の母親。渡されたビールを飲み干すと柴田は
「産んでくれてありがとうー!」
と叫んでいたが、とても柴田の母親とは思えないくらいに穏やかそうな(顔つきはどことなく似ている)感じの方だったので、ステージ上でどう振る舞えばいいのかわかっていない感じだったのが地味に面白かった。
さらに「踊れひきこもり」では合間の西野カナみたいな曲が流れるパートで、前日にこのフェスに出演した、オメでたい頭でなによりのボーカルの赤飯がステージに登場し、ファルセットを駆使してハイトーンな女性ボーカルパートを普通に歌いこなす。この辺りは色物バンドとして見られることも多いオメでたが卓越した技術を持つメンバーによるバンドであるということを実感させてくれるが、歌い終わってステージを去る際に赤飯は柴田から思いっきりキスをされていた。逆に言うとそれくらいのことができる両者の間柄ということである。
そんなネタ的な流れもあったが、「俺よ届け」では柴田の
「絶対 俺変わったりしないから」
というサビのフレーズが切実に響くと、
「俺たちはビジネス的なオシャレフェスからは全く呼ばれない(笑)本当にオファーが来たことがないし、人気者になれるわけでもない。
でも、そんなことはどーだっていい。人気者になれなくたっていいんだ。俺はただこうしてここにいてくれるあんたらのヒーローでありたいだけ」
と、思わず涙腺が緩むような柴田のMCは間違いなくこの場所に立ったからこそ言えることだろうが、そんなオシャレなフェスには全く呼ばれないし、流行りの音楽を器用に取り入れたりすることができない柴田の人間性が「だっせー恋ばっかしやがって」で爆発すると、最後に演奏された「忘れらんねえよ」では柴田だけでなくメンバー全員に加え、さらには観客も大合唱し、客席ではスマホライトが輝きながら揺れていた。ステージから捉えた客席の景色は本当に綺麗で、忘れらんねえよがこんな景色を見れるバンドになったんだな、と思うとついつい合唱する声も涙が含まれてしまった。ライブが始まる時は少し寂しかった客席も、気づいたらしっかりと埋まっていた。
「すぐアンコール出てくるから!」
と柴田は予告したが、本当にすぐに走ってステージに戻ってくると、忘れらんねえよの始まりの曲と言える「Cから始まるABC」をパンクに演奏。歌詞に登場するBLANKY JET CITYはもちろん、チャットモンチーのことももう見ることはできない。でもそんなバンドたちの思いを受け継いで、忘れらんねえよはこれからもロックを鳴らしていく。最後に大急ぎで記念写真を撮ったが、どんなに時間がなくてもこの景色だけは絶対に写真に残しておきたかったんだろうな。
ライブが終わると、今年から追加された火柱と花火がLAKE STAGEにも上がった。(去年まではGRASS STAGEのみだったが、今年からLAKE STAGEとPARK STAGEでも上がるようになった)
それを見ながら、忘れらんねえよが初めてこのフェスに出演する前に柴田と話した時のことを思い出していた。
まだキャパが拡大する前のPARK STAGEのトップバッター。
「ロッキンオンが完全に俺たちのことを応援する体制に入ってくれている」
と柴田はこのフェスに出れることを本当に嬉しそうに話していた。
それからずっとこのフェスに忘れらんねえよはどんなに形が変わりながらも出演し続けてきた。そしてあの頃よりもはるかに大きなステージの、大事な位置を担うようになった。それはこれまでに忘れらんねえよがこのフェスのステージで残してきたものを主催者もファンもちゃんと見てくれたからこそであるが、あの頃よりもロッキンオンもファンも忘れらんねえよのことを応援する体制に入っている。がんばれ柴田。
リハ.BABY BABY
リハ.バンドやろうぜ
リハ.ワタリドリ
リハ.ばかもののすべて
1.バンドワゴン
2.この街には君がいない
3.あの娘に俺がわかってたまるか
4.この高鳴りをなんと呼ぶ
5.ばかばっか
6.踊れひきこもり
7.俺よ届け
8.だっせー恋ばっかしやがって
9.忘れらんねえよ
encore
10.Cから始まるABC
本当にロッキンらしい、あまりにも暑くて熱い2日間だった。今年はなんとそれをあと3日間も味わうことができる。こんなに楽しみなことはないけれど、それだけに終わってしまった帰り道の寂しさも今までで1番大きくなるかもしれない。
文 ソノダマン