ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019 day3 国営ひたちなか海浜公園 2019.8.10
週が変わって3日目。今年は月曜日が祝日なので、久しぶりの3days。
開場前にひたちなか海浜公園に着くと、薄い雲に覆われている。なので先週ほどは暑くはないが、この日は5日間の中で最も動員力があると思われるBUMP OF CHICKENが出演するということで、朝から物販は長蛇の列。
10:30〜 dustbox [LAKE STAGE]
前説のロッキンオン総編集長・山崎洋一郎から、
「2007年にWING TENTに初出演して以降はずっとLAKE。LAKEの主です!」
と紹介された、dustbox。昨年もそうだったが、数々のパンクバンドたちが主戦場としてきたLAKE STAGEのトップバッターを担う。
おなじみ「New Cosmos」のスペイシーなSEが流れ始めると、SUGA(ギター&ボーカル)、JOJI(ベース&コーラス)、YU-KI(ドラム)の3人が肩を組んでステージに登場。トレードマークだった「焼きそば」と言われていたパーマヘアをガッツリカットしたJOJIはパッと見では誰かわからないレベルに変化している。
このバンドを他のメロディックパンクバンドと一線を画す存在にしているSUGAの美しいハイトーンボイスが響き、最後のタイトルフレーズでは観客も叫びながら飛び跳ねる「Riot」からスタートすると、次々にバンドの代表曲かつライブの定番曲を演奏していく。
「みんなが最初にこのステージを選んでくれて、ここに来てくれたことが本当に嬉しい」
と強力なアーティストと同じ時間にライブをやっているにもかかわらずここに集まってくれた観客にSUGAが感謝を告げると、今年リリースされた最新作にしてバンド20周年記念アルバムとなった「The Awakening」から、JOJIの野太いコーラスに観客の声も重なる「Farley」、20年間ひたすらにパンクを愛し続けてきたこのバンドの生き様をそのまま曲にしたかのような「One Thing I Know」と、最新モードを見せることも忘れない。進化し続ける姿を毎年このステージで示してきたこのバンドの戦い方である。
しかし、20年間もひたすらにパンクを続けてきて、飽きたりしないんだろうかとも思う。いや、それは邪推でしかない。スタイルとしてのパンクを取り入れたりするのではなく、本当にパンクが好きで仕方ないし、それが今も変わっていないから20年も経ってもずっとパンクを鳴らしている。そしてその瑞々しさや衝動は今でも全く失われていない。
観客によるタイトルのコーラスの合唱から曲に突入した「Here Comes A Miracle」はバンドとファンが築いてきた信頼の証であるし、「Hurdle Race」の歌詞は学生だったリリース当時よりも社会人になった今の方が響く。毎回ツアーに行ったりするような存在ではないけれど、このバンドは変わらないままでずっと自分の人生に寄り添ってくれていたんだな、と思う。
「ここにいるみんなのために!」
と「Tomorrow」、さらに
「みんながいてくれるから20年間続けることができた」
と、その言葉からはやはり平坦な道ではなく、様々な紆余曲折があった20年だったことを伺わせたが、サウンドからはそんな日々の肯定と未来への希望しか感じない「You Are My Light」で終了するのかと思いきや、
「時間まだあるから、もう1曲!ライブハウスと同じように!」
と言って「Just One Minute」を急遽追加した。数々のパンクバンドたちがこのLAKE STAGEを主戦場としてきたのは、どこかこのステージが持つ雰囲気がライブハウスに近いものがあるからだ。この時間も、ちょっと大きいライブハウスのようだった。
2007年に初出演して以降、ロッキンはダイブが禁止になったし、dustboxもドラムが変わった。フェスもバンドも変化し続けていくが、このバンドがこのステージに立っていることは10年以上ずっと変わっていない。
ダイブ禁止のフェスになって以降、出なくなったパンクバンドもたくさんいる中で、このバンドとGOOD4NOTHINGが変わらずにこのフェスに出続けてきたことによって、それはそのままこのフェスにおけるパンクの歴史になった。そしてそれはこれからも続いていく。20周年本当におめでとう。
1.Riot
2.Try My Luck
3.Bittersweet
4.Farley
5.Rise Above
6.Bird Of Passage
7.One Thing I Know
8.Here Comes A Miracle
9.Hurdle Race
10.Tomorrow
11.You Are My Light
12.Just One Minute
11:45〜 キュウソネコカミ [GRASS STAGE]
メンバー全員が登場してのサウンドチェックの段階から
「こっち空いてるからもっとこっち来た方がええで!」
と空いている上手に観客を誘導して笑わせていた、キュウソネコカミ。2年連続のGRASS STAGE出演である。
メンバー5人がステージに登場すると、ヤマサキセイヤが
「西宮のキュウソネコカミです」
と挨拶して「ビビった」からスタートするのだが、ヨコタシンノスケのシンセのフレーズが印象的に響く「メンヘラちゃん」、イントロで大歓声が上がった「ファントムバイブレーション」と続くと、メンバーに気合いが漲りまくっている。
「去年初めてGRASS STAGEに出れて、去年だけかと思っていた。だからこうして今年もこのステージに戻ってこれて嬉しい」
という、日本で1番大きなフェスの1番大きなステージに自分たちが立っているからこそそうして気合いが漲っているのがよくわかる。
キュウソはこのフェスに出演し始めた時からずっと大きなステージを目指してきたし、2年前にGRASSに出れなかった時は本当に悔しそうにしていて、そうした悔しさをエネルギーにしたライブをしていた。そうして大きなステージを目指していたのは、自分たちがナメられたりバカにされてきた過去があるからだ。かつての自分たちに「間違ってない」と声をかけてやるためにキュウソはこのステージを目指し、それを自分たちの力で叶えてきた。もちろんそこに至るまでにより悔しい思いをしたのも散々見てきたけれども。
セイヤがハンドマイクでヘドバンやダンスをしまくりながら歌い、ステージ背面のモニターには曲の歌詞が映し出された「KENKO不KENKO」ではキュウソの韻の踏み方なども含めた歌詞の面白さを存分に味わうことができるし、それは令和バージョンになった「ギリ昭和」も同様。決して派手な映像を使うわけではないが、だからこそあくまで曲の魅力(この場合はこのバンドにしか書けない独特な歌詞)を伝えるためのものになっている。
「去年このステージに出た時も新曲をやったんだけど、その攻める気持ちは忘れたくない」
と言って今年も新曲を演奏したのだが、その新曲は日比谷野音のワンマンでやっていたものとは違うもの。「冷めない夢」というタイトルのこの曲は「The band」や「越えていけ」に連なる、キュウソの熱いバンドサイドのものであり、タイトル通りに今もバンドを続ける理由について歌った曲。そしてこのステージでこの曲を演奏したということは、その冷めない夢の一つがこのステージであるということである。リリースはもちろんレコーディングの予定すらも未定らしいが、昨年キュウソの天才っぷりを改めて証明した「ギリ平成」というアルバムを経てもなお、このバンドの創作意欲は衰えることはない。
ヨコタがステージ横の花道を走り回る、こうしてフェスの大きい舞台に立っている姿を見るとより一層歌詞に共感が増す「推しのいる生活」から、「DQNなりたい〜」へと繋がるのだが、ロッキンのようなダイブが禁止のフェスでは普段のこの曲を演奏する時のような、セイヤが客席に突入するというパフォーマンスはできないし、日比谷野音の時にやったような、メンバー全員が楽器を弾かずに「ヤンキー怖い」を全力で叫ぶというものもなかった。そうなるとこの曲をやらなくても、という選択肢もあったはずだが、逆にそういう状況のライブだからこそ、演奏だけで成り立たせるというキュウソのライブにおける地力の強さを最もよく表せるのがこの曲であるし、何よりもキュウソがインディーズだった時代から代名詞的な曲であったこの曲を日本で1番大きいフェスの1番大きいステージに連れてきてやりたかったんじゃないかと思う。実際にこの曲は去年もこのステージで演奏されている。オカザワ(ギター)は間奏時に花道を全力ダッシュし、キュウソの元気な部分をしっかり見せてくれる。
そしてセイヤが寝転がりながらギターを弾きまくる「ハッピーポンコツ」からはさらにこのバンドの熱い部分を見せていく。再び中央のスクリーンに歌詞が映し出された「The band」でこのGRASS STAGEに真っ向勝負を仕掛けて見事にそれに勝利して大団円かと思いきや、
「KING BROTHERS、あいみょん。西宮に捧げます」
と、この週にともにこのフェスのラインアップに名前を連ねる西宮出身の同郷アーティストの名前を挙げてから演奏されたのは、その西宮への思いを曲にした新曲。KING BROTHERSの地元と聞くと途端に治安が悪そうなイメージになってしまうが、
「住みやすい」
という歌い出しとともにキュウソが地元への感謝と愛を素直に曲にした歌詞を聴いていると、機会があれば西宮に行ってみたいし、そこでキュウソのライブを見てみたいと思う。しかし最後に新曲をやるという勇気は本当に素晴らしい。
ヨコタは
「甥っ子が見に来てくれるはずだったんやけど、風邪ひいて来れなくなってしまった。GRASS STAGEに立ってる叔父さんの姿を見せたいから、来年もこのステージに立てるように頑張ります!」
と来年のこのステージでの再会を約束し、セイヤは観客に
「いつも俺たちに感動をくれてありがとうー!」
と言った。いや、いつも感動をもらっているのはこっちなんだ。キュウソのライブを数え切れないくらいに見てきて、何回感動させられてきたことか。そこには悔しい涙が出てしまうようなこともあったけれど、それを乗り越えてこのステージに立っている姿はやはり我々を感動させてくれる。お互いにそうやって感動を分かち合えるバンドはそうそういない。
かつてデビュー時にこのバンドは
「ロキノン系にはなれそうもない」
と歌っていた。自分たちみたいなバンドがこのフェスにいないのをわかっていたからだ。だから自分たちもそこに入ることはできないと思っていた。でもキュウソは自分たちで道を切り開いて、ロキノン系のバンドたちが集まるフェスを代表する存在になった。また来年もこのステージで見れますように。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
1.ビビった
2.メンヘラちゃん
3.ファントムバイブレーション
4.KENKO不KENKO
5.ギリ昭和
6.冷めない夢 (新曲)
7.推しのいる生活
8.DQNなりたい、40代で死にたい
9.ハッピーポンコツ
10.The band
11.新曲
12:35〜 The Mirraz [BUZZ STAGE]
直前にGRASS STAGEに立っていた、キュウソネコカミにも多大なる影響を与えているバンド、The Mirraz。何度となくこのフェスに出演しているが、去年に続いて2年連続でのBUZZ STAGE出演。ちなみに近年ロッキンオンのフェスに出演した際は毎回販売されていた、マニアには人気のアイテムであった山崎洋一郎Tシャツは今回は作られていない。
サングラスにキャップといういつも通りにファッショナブルな畠山承平(ボーカル&ギター)が髪の色を緑に染め、基本的に髪が長めな佐藤真彦(ギター)は夏らしく短髪になっている。ケイゾー(ベース)は何年経っても全く見た目が変わっていないけれど。
メンバーが演奏し始めたのは性急なリズムに乗せて畠山がマシンガンのように言葉を連発していく「check it out! check it out! check it out! check it out!」。
「そんな裏話はロッキンオンですればいいじゃん」
というフレーズがロッキンオンのフェスで歌われているのは痛快であるし、ミイラズの代表曲の一つであるとはいえ、この曲でライブを始めたのは畠山なりのこのフェスへの愛情表現だろう。
過激な歌詞が並ぶ「ふぁっきゅー」、
「ふざけんなってんだ」
の大合唱が響く「ラストナンバー」、前方ブロックでは激しいモッシュも発生している「スーパーフレア」…ミイラズのライブに初めて行く人にこれを聴いておけという曲を挙げるなら、という問いに真っ先に浮かぶ、これまでのこのフェスのステージでも演奏されてきた曲たちが次々に演奏されていく、まるでベスト盤(いつか勝手に出されたなんの愛も意味もないベストアルバムではなくて)のような選曲。
今のミイラズはかつてと違ってひたすらに曲を連発していき、MCはほとんどしないというスタイルであるだけにこの日も短い持ち時間の中にできるかぎり曲を詰め込むという内容のものになっていたのだが、畠山は現在バンドが行なっている、漫画アプリとコラボして新曲をリリースしていることを軽く告知。なのでそのコラボした新曲の中からどれか一つをライブ初披露するのかと思いきや、今回はそれはなし。せっかくだから1曲くらいは新曲を聞きたかったところではあるけれど。
そんな畠山がサングラスを外して言葉数が溢れ出すように多い歌詞を歌う「僕らは」では真彦とケイゾーの、長い年月ずっと畠山とミイラズを支えてきた2人(気づいたらこの2人は歴代のどのメンバーよりも長くこのバンドにいるメンバーになっている)のコーラスがしっかりと楽曲の土台を支える。
ミイラズはライブの本数自体はかなり少ないバンドである。最近もこのフェス以外はほとんどライブがない。(制作期間なのかもしれないけど)
それにもかかわらず今のバンドのライブはそうした本数が少ないというブランクを一切感じさせない。あまりそういう面を出すバンドではないが、入念にリハをやってからこのフェスに臨んでいるのだろう。今や数少ない、たくさんの人にライブを見てもらえるチャンスであるだけに。
そしてラストはやはり「CANのジャケット〜」。ケイゾーのベースのイントロが鳴った瞬間、後ろの方で見ていた人たちも最前ブロックに駆け出してくる。みんな、普段はどこで何をしてるんだろうか。この日、BUZZ STAGEは明らかに去年よりたくさんの人が集まっていて、「埋まっている」と言ってもいいくらいのレベルだった。で、みんなちゃんとミイラズの曲を知っている感じだった。昔聴いてて久しぶりにライブを見たという人もたくさんいたかもしれないけれど、今や千葉LOOKですらも売り切れるのが難しくなってしまったミイラズが、こんなにたくさんの人を集めることができる。その景色を見たからであろう、畠山の笑顔を見ていたら、またいつかこのバンドを満員のLAKE STAGEで見てみたいと思った。もう何年も前のことだけれど、確かにこのバンドはその位置まで行ったのである。
今となっては信じられないことだけど、ミイラズも昔はいろんなフェスに出ていた。人気があったからかもしれないけれど、呼んでくれるフェスがたくさんあった。
でも今の状況になり、独立して後ろ盾も権力もない今のミイラズにかつて呼んでくれていたフェスたちは見向きもしてくれなくなった。でもそんな中でもロッキンだけはずっとミイラズを呼んでくれているし、誌面でインタビューもしてくれている。それは山崎洋一郎がミイラズと仲が良いからというのもあるだろうけど、その仲の良さはミイラズの音楽を山崎洋一郎が認めてくれているからこそだ。
動員力のあるアーティストを呼ぶフェスというイメージが強い部分もあるけれど、こうしてミイラズをフェスのステージに立たせてくれていることが自分がロッキンオンを信頼し続けている理由の一つである。
1.check it out! check it out! check it out! check it out!
2.ふぁっきゅー
3.ラストナンバー
4.スーパーフレア
5.プロタゴニストの一日は
6.僕らは
7.CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
13:00〜 KANA-BOON [GRASS STAGE]
デビュー直後の初出演がガッチガチに入場規制がかかったWING TENT、翌年も超満員のLAKE STAGE、それ以降はずっとGRASS STAGEに出演してきたKANA-BOONだが、今年はこれまでのGRASS STAGEとはちょっと違う。
先日世間を賑わせた、めしだ(ベース)の失踪騒動による活動休止により、初めて4人でのライブではなくなったからだ。めしだの代わりにベースを務めるヤマピーことヤマシタタカヒサはかつてバンドがともにスプリット盤を出したシナリオアートのメンバーであり、このフェスに出演した経験もある。
いつものようにふらっとステージにメンバーが登場すると、そのサポートのヤマシタはスケスケの服を着ているという今までのKANA-BOONでは見ることができなかった奇抜なファッションをしている中、谷口鮪(ボーカル&ギター)はギターを弾きながらいきなり歌い始めたのは「ないものねだり」。まさかの選曲に観客も大歓声を上げるが、ああいうテレビすら賑わせてしまった出来事があっただけに、人が集まらないかもしれないという不安もあったのだが、それは全くの杞憂で、例年と変わらないくらいにたくさんの人がこのバンドを見るために集まっている。なのでこの曲ではおなじみのコール&レスポンスもいつもと変わらない迫力。
MVでメンバーたちが面白いダンスを踊っていた「なんでもねだり」を鮪は
「夏の曲」
と言って演奏していたが、そこから真逆の季節の曲である、バンドの新しいポップな一面を見せた「ネリネ」、小泉の駆け抜けるようなドラムに一層力強さが増している「彷徨う日々とファンファーレ」と、どちらかといえば近年リリースの曲を中心に据えた前半。ヤマシタのベースはめしだとはまた違うタイプであるが、自分なりのベースのスタイルを見せながらもKANA-BOONの楽曲をしっかり支えてくれている。
そこにはただ技術があるというだけではなくて、これまでのKANA-BOONの曲をちゃんと知っていて、メンバーが人間性をしっかりわかっているからこそヤマシタに託したという部分もあるのだろう。そこに計算やしがらみみたいなものは一切ないし、KANA-BOONはそういう損得感情で動けるような器用なバンドじゃない。今でもかつて自身のホームであったライブハウスに一緒に出ていたバンドたちとともにライブをやったりと、人間同士の繋がりをずっと大切にしてきたバンドであるし、だからこそこうしてその場しのぎの助っ人ではなくて、全てをわかった上で力を貸してくれる人がいるのである。
中盤は鮪の怒涛の言葉が押し寄せる「盛者必衰の理、お断り」からギアを一段と上げると、その鮪のボーカルの凄さを改めて思い知らされる、歌うのが実に難しい名曲「シルエット」から、古賀のギターがタイトル通りにスピード感をもたらす「フルドライブ」と続き、鮪がバンドを続けていくことの決意をしっかりと口にしてから演奏された「バトンロード」はこれまでとはまた違う響きを持って鳴っていた。前もこの曲にはバンドを続けていくというメンバーの思いを託されていたけれど、それがさらに強く乗るようになっている。
そしてラストは春フェスの時にも最後に演奏されていた「まっさら」。今のKANA-BOONがかつてのように、いや、かつて以上に名曲量産モードに突入していることを証明するような曲。初期の曲ではなく、最後に演奏するのをこの曲にしているというのはバンドの現在への自信の表れであるし、それは曲を聴けばすぐにわかる。
人がたくさん集まって安堵したというのもあるけれど、それ以上にこの日のライブからは、止まったり辞めたりしてもおかしくないような状況になったこのバンドのライブをこうして見ることができているという観客側の喜びと、そうして待っていてくれる人たちの前でライブができるバンド側の喜びが交差しているような感覚があった。
前に進み続けることをメンバーたちは選んだだけに、めしだとは歩幅が合わなくなったかもしれない。それでも、どんなにヤマシタが上手くてもこのバンドのベーシストはめしだなのだ。これまで、一気に階段を駆け上がってきたのも、その後の苦悩も全て共有してきたのが4人のメンバーたちだから。だから決して3人はめしだを置いていくようなことはしないし、何よりもあの騒動でたくさんの人にとってKANA-BOONが大事なバンドであるということが改めてわかった。だから、決して悪いことばかりではないし、いつか「あの時はどうなるかと思ったな〜」って4人が笑い合いながら、あのいつもと変わらぬ仲の良い姿を見せてくれるのを、こうして進み続けるバンドのことを見ながら待っている。
1.ないものねだり
2.なんでもねだり
3.ネリネ
4.彷徨う日々とファンファーレ
5.盛者必衰の理、お断り
6.シルエット
7.フルドライブ
8.バトンロード
9.まっさら
14:15〜 クリープハイプ [GRASS STAGE]
もはやこのGRASS STAGEではおなじみの存在となっている、クリープハイプ。KANA-BOONとはまた違う理由で若干世間を賑わせたりもしているけれど。
どんなに大きいフェスであってもサウンドチェックにメンバーが全員で登場し、結構がっつり曲を演奏してくれるというのはクリープハイプの変わらぬスタイルであるが、SEなしで登場するというのも変わらぬクリープハイプらしいスタイル。髪が長いイメージが強い長谷川カオナシ(ベース)は長さこそ短くなっているが、部分的に金髪に染めていて、むしろ今までより派手に感じる。
「感動なんかいらないから気持ちよくなりたい。セックスの曲を」
と尾崎世界観(ボーカル&ギター)がいきなり口にすると、「HE IS MINE」からスタートし、
「セックスしよう!」
の大合唱が家族連れもたくさんいると思われるこのフェスのGRASS STAGEに響き渡るという非常に教育によろしくないスタート。
歌詞を
「ひたちなかの6畳間」
に変えて歌われたグルーヴィーな「鬼」、カオナシのコーラスが映える「おばけでいいからはやくきて」と続くと、そのカオナシが
「非常に暑いですけれども、ネットで炎上するよりはいいんじゃないでしょうか」
と言って自身がセクシーなメインボーカルを務める「火まつり」と曲を連発していく。
キュウソが歌詞を映し出したように、バンドによっては中央にあるスクリーンを上手く活用しているのだが、このバンドは全くそういうことをしない。ただひたすらに自分たちの音楽を演奏し、それを聴いてもらう。ホール以上のキャパになると自身も曲に合わせた映像などを上手く取り入れたりすることもあるが、そんなストイックさすら感じるようなステージである。
爽やかなイントロから小川幸慈の唸りを上げるようなギターのサウンドが響く「週刊誌」はたまにライブで演奏されることはあれど、こうしてフェスで代表曲やシングル曲と並んで演奏されても遜色ないくらいにクオリティが高い曲であり、なぜカップリングに収録したのかと今でも疑問に思ってしまう。隠れた名曲と言うにはあまりにもったいなすぎて。
そして毎年このステージにこのバンドならではの夏らしさを運んできた「ラブホテル」ではやはり最後のサビ前で思いっきりタメにタメた尾崎が、
「最初に感動なんていらないって言っちゃったけど、やっぱり感動いる、欲しい(笑)
なんであんなこと言っちゃったんだろうって思うようなことも、全部…」
と言ってから
「夏のせい 夏のせい」
と自身の冒頭の発言への後悔も全て夏のせいにしてしまうというさすがの上手さ。
しかしこの発言も含めて、このフェスに出始めた頃(2012年にWING TENTで初出演)や、GRASSに進出した頃も尾崎はかなりギラついていたというか、こうしてライブを見ている観客も含めて安易に馴れ合わないような空気に満ちていた。それが今やこんなに観客なりまわりにいる人たちを信用しているように感じるようになっている。アルバムにもそうした、こんな変なバンドを応援してくれる人たちへの感謝の気持ちを込めた歌詞があったりしたが、バンドを続けてきた上で見えるものが変わってきている。
カオナシの跳ねるようなビートを中心にしたイントロのアレンジが施された「イト」から、
「季節外れの曲だけど」
と「栞」、さらには
「ピンサロ嬢の曲」
と言って演奏が始まると大歓声が起こり、尾崎の最後の「好き」というフレーズがこの曲の主人公の女性へ抱く切なさをさらに倍増させるように叫ばれる「イノチミジカシコイセヨオトメ」とキラーチューンを続けていくと、最後に演奏されたのは決してアッパーな夏ソングではない、でもやはりキラキラした感覚を与えてくれる「憂、燦々」。
「連れて行ってあげるから」
というフレーズを愛おしく歌うような尾崎の姿を見て、また来年もこのバンドにこのステージまで連れてきて欲しいと思った。
今やこのGRASS STAGEに出演するバンドの中でも立ち位置的にも動員力という点でもこのバンドは中堅的な位置にきている。他のステージになるようなイメージは一切ない。それでも去年だか、尾崎は
「大きすぎてなかなか埋めるのは難しいけれど」
とこのステージからの景色を見て言っていた。でも、このステージまで来てもその満たされない感覚があるからこそ、このバンドがさらなる名曲を生み出す原動力になっていると思う。あえて夏フェスに出演しない年を設けて、後で後悔しているような発言もあっただけに、できることならこれからも毎年ここで見ていたい。
リハ.愛の標識
リハ.大丈夫
1.HE IS MINE
2.鬼
3.おばけでいいからはやくきて
4.火まつり
5.週刊誌
6.ラブホテル
7.イト
8.栞
9.イノチミジカシコイセヨオトメ
10.憂、燦々
15:30〜 UNISON SQUARE GARDEN [GRASS STAGE]
先月末には大阪で15周年記念ワンマンを行なったばかりの、UNISON SQUARE GARDEN。フェスに出まくるというタイプのバンドではないが、このフェスにはよく出演している。しかし今回は初のGRASS STAGE。去年まではあえてGRASS STAGEに立たないようにしていたフシもあったが、幕張メッセや横浜アリーナなど、大会場でのワンマンを経て、満を持してこのGRASS STAGEに立つ。
おなじみのイズミカワソラ「絵の具」のSEでメンバーが登場すると、「まぁいくら毎回ライブでセトリを変えるバンドとはいえ、15周年ライブをやったばかりだし、そこで演奏された曲から抜粋した感じの選曲になるだろう」という自分の予想は、半分くらいは当たっていたけれど半分くらいは外れていた。
そもそもが1曲目に演奏されたのがその時には演奏されなかった「Cheap Cheap Endroll」なのである。1曲目にいきなり「Endroll」というタイトルの曲を演奏するというのも実にこのバンドらしいが、その曲のサビの歌詞が
「君がもっと嫌いになっていく」
というものなのがさらに痛快だ。
しかし続くのは15周年バージョンに歌詞が一部変えられた、
「それでもまだちっぽけな夢を見てる」
というバンドを続けることへの想いが感じられる「プログラムcontinued」だったのはさらに意外。てっきりこの曲は15周年ライブだからこそあの大阪で演奏された曲だと思っていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。つまり、今年はこの後もいろんな場所でライブをするが、そうしたところでも今まではなかなかライブで聴くことができなかったこの曲が聴けるということである。
近年はフェスではほとんど演奏されなかった「オリオンをなぞる」が演奏されたのも15周年記念ライブあってこそのものだろうが、さすがにこの規模になるとアルバム曲まで完全に知っているという人たちばかりではないであろうだけに、この前半でこうしてたくさんの人が知っているであろう曲を演奏したのは計算していたのかはわからないけれど実に良い選曲だと思う。実際にやはりこの曲のイントロのギターが鳴っただけで客席の後方の方まで歓声が上がっていた。
同期の華やかなサウンドが流れる「君の瞳に恋してない」では田淵智也(ベース)がリズムに合わせてちょこまかと動き、ギターソロを弾く斎藤宏介(ボーカル&ギター)の目の前に行ってギターを凝視。斎藤も思わず笑ってしまっていたが、その田淵の動きに爆笑が巻き起こったのは、独特のステップで踊りまくる姿がスクリーンに映し出された「instant Egoist」。一応はベースを演奏しているわけだが、その姿に爆笑が起こるというベーシストはなかなかいない。
「オトノバ中間試験」も記念ライブで演奏されていた曲ではあるが、イントロではセッション的な演奏が追加されており、ただでさえ演奏技術がものすごく高いバンドなのでそういう部分が観れるのは実に楽しいし、「10% roll, 10% romance」の、きっと歌うのがものすごく難しいんだろうな、と素人ながらに思ってしまう譜割りとテンポのメロディを軽やかに歌いこなす斎藤の姿を見ていると、やはりこの規模のステージに立つべきバンドだよな、と思わせられる。それくらいにこの規模の遠くの方まで全ての音がしっかり響いている。
2曲目からは記念ライブで演奏されていた曲が続いていたが、「BUSTER DICE MISERY」という、そこでは演奏されていなかった意外な曲も追加される。しかしこうしたフェスで追加される曲がことごとくシングル曲ではなくてアルバム曲であるというのは実にユニゾンらしい。もちろんそこにクオリティの格差は全くないけれど。
そして「天国と地獄」で客席のテンションも田淵のアクションもピークに達する中で最後に演奏されたのは、おそらくみんなが最も待っていたであろう「シュガーソングとビターステップ」。フェスでも毎回100%演奏されるようなことはないけれど、客席の嬉しそうに踊る観客たちを見ていると、バンド側もほんのちょっとだけはそうした期待に応えたんじゃないか、と思った。
演奏後に鈴木貴雄(ドラム)は記念ライブと同様に着ていたジャケットの裏地を客席に誇らしげに見せつけたが、初のGRASS STAGEとはいえ特別なこともそれらしいMCも一切ない(というかMC自体もない)、普段通りのユニゾンのライブだった。
きっとこのステージに立つ感慨とかももしかしたらこのバンドにはないのかもしれない。でもWING TENTに初出演時に斎藤が、厳しいタイムテーブルの中で集まってくれた人たちに対して
「今ここにいる人たち、みんな幸せにするから」
と言っていたのも、SOUND OF FORESTですら埋まらなかったのも、LAKE STAGEでのライブがONE OK ROCKと時間が被り、途中で抜けて移動していく人たちに斎藤が
「今「完全感覚Dreamer」やってる頃だと思うから。ワンオクによろしく!」
と言っていたのも。もう長い出演歴の中でこのフェスに刻まれてきた歴史を見てきた。だからこそバンド側に感慨はなくても、それを見てきた観客にはついにこのGRASS STAGEにユニゾンが立ったという感慨が確かにある。それが決して特別なことはなかったライブであっても、特別な感情を抱かせる。それはきっとこのバンドがこのステージに立ち続ける限りは続いていく。
1.Cheap Cheap Endroll
2.プログラムcontinued
3.オリオンをなぞる
4.君の瞳に恋してない
5.instant Egoist
6.オトノバ中間試験
7.10% roll, 10% romance
8.BUSTER DICE MISERY
9.天国と地獄
10.シュガーソングとビターステップ
16:20〜 宮本浩次 [PARK STAGE]
CMのタイアップなども含めてついに本格化した、エレファントカシマシの宮本浩次のソロプロジェクト。これまでのライブではエレカシの曲なども含めた弾き語りというスタイルだったりしたが、今回のライブはバンド編成。しかもそのメンバーが
ギター:横山健 (Ken Yokoyama, Hi-STANDARD)
ベース:Jun Gray (Ken Yokoyama)
ドラム:Jah-Rah (ソウル・フラワー・ユニオンなど)
という、何事!?という事態になっており、これはほんの少しだけでも目撃しなければ!ということで、他のステージとの兼ね合いもあってかなり厳しい時間の中でPARK STAGEへ。
メンバーが登場すると、本当に宮本浩次と横山健が並んでいる。2人ともいつもとなんら変わらない、宮本は白シャツ、横山は黒いTシャツにディッキーズパンツ。Jun GrayもKen Yokoyamaのライブの時と同じ出で立ちである。
すると宮本が
「ワン、ツー、スリー、フォー」
とカウントし、まさか?と思っていたらそれはやはりエレカシ「悲しみの果て」のイントロであった。つまり、横山健が「悲しみの果て」でギターを弾いているのだ。なので原曲のままのテンポやアレンジではあるのだが、もちろんこの曲にパンクかつラウドな要素が加えられていく。何よりも間奏での
「ギター、横山健!」
と宮本が紹介してからのギターソロはこれは果たして現実の出来事なのだろうか?と自問自答せざるを得ないくらいの光景であった。
続くCMでおなじみのロックナンバー「going my way」では横山健もJun Grayも
「ハイ!ハイ!ハイ!」
というコーラスを務めているのだが、その横山健のマイクに寄っていって1本のマイクで歌う宮本と横山健。やはりこれは本当に現実の出来事なのだろうか?と思わざるを得ない…。
MCで宮本は
「この4人でバンドなんです。本当はバンド名をつけたかったんだけど、私がMYJJっていうバンド名を出したら、Jun Grayから「宮本さん、ネーミングセンスない」ってダメ出しを食らいまして(笑)なので宮本浩次という名義でやっております」
と説明していたが、それはそのまま宮本のソロがバンド編成でライブを行っていくという意思表示だ。自分はここまでしか見れなかったのだが、この後に「今宵の月のように」「ファイティングマン」というエレカシ曲もこのメンバーで演奏していたらしい。
もちろん、ずっとこのメンバーで、というわけにはいかないだろう。でもそうしたメンバーの編成(他の人が入るとしてもこれくらいすごいメンバーになる可能性が高い)によって、同じ曲でも全く違う聴こえ方をするはず。
エレカシの30周年を経て、バンドは今まで通りに続きながら(エレカシももちろん最終日にこのフェスに出演する)、新しい宮本浩次の音楽活動と表現を見ることができる。もうこのフェスにおいてもトップクラスの大ベテランの活動にこんなにもドキドキさせられている。それは自分のようなリスナーだけでなく、背中を見ているミュージシャンたちにも多大な影響を与えるはずだ。
16:45〜 あいみょん [GRASS STAGE]
去年、「マリーゴールド」リリース後にこのフェスに初出演し、BUZZ STAGEはテントから溢れるくらいの超満員だった。それから1年で文句なしにGRASS STAGEへ。かつてBUZZ STAGEの翌年にGRASS STAGEに立ったアーティストがいただろうか。そんな予想だにしないような状況を作った、あいみょん。初のGRASS STAGE出演。
sumikaのゲストメンバーである井嶋啓介(ベース)や、個人的にはメレンゲのクボケンジのソロ時の相棒として馴染み深い山本健太(キーボード)らの後に続いて、長い髪をなびかせて赤いTシャツを着たあいみょんが登場し、アコギを持つとブラックミュージックの要素も取り入れた「愛を伝えたいだとか」で始まり、あいみょんの凛とした歌声がGRASS STAGEの広大なエリアに響き渡っていく。
バンドによるイントロで大歓声が上がった「君はロックを聴かない」が、ほとんどの参加者がロックを聴いているであろうこのフェスのメインステージで鳴らされるというのは、普段は周りにロックを聴かない人ばかりの環境で生きている我々にとっては実に感慨深いものがあったし、そもそもやはりこの曲はこの規模で鳴るべき大名曲だと思う。
あいみょんのアコギの弾き語りを最低限の音でバンドメンバーたちが支えるというアレンジの「ふたりの世界」ではちょっとだけ歌詞が飛んだりもしたが、それがライブの印象を良くない方向に持っていくことは全くない。むしろライブならではのリアルな場面を見れてラッキーだな、とすら思えてくる。
観客がリズムに合わせてする手拍子が完璧に揃っているのがこの曲がお茶の間にまで完全に届いていることを実感させる「今夜このまま」、弾き語り形式で歌われた「恋をしたから」と6万人(この日のGRASSの出演者の中でもトップクラスの動員力だったと思う)もの人があいみょんの歌声に酔いしれる中、そのあいみょん本人は
「すごい人の数ですね〜。みんなタオルとか持ってて。なぜか大谷翔平選手のタオルをこっちに掲げてる人もいるけど(笑)確かに私、大谷翔平選手と同い年やけど(笑)」
と至って自然体。このGRASS STAGEに立つことへの過度な気負いみたいなものが全くない。というかどこか本人も6万人の前に立っているという事態を自分のこととして捉えていないようですらある。それくらいに自然体だった。
自殺した少女のことを歌った過激な歌詞が怒涛のように放たれていく「生きていたんだよな」は
「鳥になって 雲を掴んで
風になって 遥遠くへ
希望を抱いて飛んだ」
というフレーズがこのGRASS STAGEの上に広がる青空(朝の曇りっぷりはなんだったのかというくらいに晴れていた)によく似合っていて、彼女が飛んだ空もこうして晴れ渡っていたんだろうか、と思わせる。
リリースされたばかりの最新シングル「真夏の夜の匂いがする」はライブで全くやっていないということもあるからか、イントロが合わずにやり直すという場面もあったが、シングル曲としてはこれまでになかった感触を与えてくれる楽曲であり、あいみょんの引き出しの多さとこれから一体どんな曲が出てくるんだろうか?という期待はより一層強くなる。
そしてバンドによる演奏がテンポをさらに速め、ライブならではの疾走感を持ちながらも「死ね」というフレーズがこんなにもキャッチーに聴こえる曲はそうはない「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」から、ラストはあいみょんをこのステージまで押し上げる最大の原動力となった夏の花の曲「マリーゴールド」。このひたちなか海浜公園は春と夏の間にはネモフィラの花が咲くことで有名だが、そのエリア(フェス開催期間中は入れない)に行くとこの時期はマリーゴールドが咲いていたりするのだろうか。そんな思いとこのライブの思い出を忘れないように、抱きしめて離さない。
去年、BUZZ STAGEに出た後に「来年はGRASSにまで行くんじゃないか?」という話を参加者の間でしていた。当時はまだ半信半疑ではあったが、年末くらいにはもう出るんならGRASSしかないというところまであいみょんはあっさり到達していた。しかも初のGRASSがトリ前という位置。それは何を意味しているかというと、すでにこの人はGRASSのトリすらも射程に捉えているということ。
ミスなどがありながらもグダグダな印象に全くならないのはこの人が持つ不思議な魔力のようなものによるのかもしれないし、今の時代を背負っているオーラのようなものによるものかもしれない。あいみょんがこのステージで90分のライブをやるんなら、リハでやっていた「ジェニファー」や、この日は演奏されなかった「ハルノヒ」が本編で聴けるかもしれないな、と考えていた。
リハ.ジェニファー
1.愛を伝えたいだとか
2.君はロックを聴かない
3.ふたりの世界
4.今夜このまま
5.恋をしたから
6.生きていたんだよな
7.真夏の夜の匂いがする
8.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
9.マリーゴールド
17:30〜 ROTTENGRAFFTY [PARK STAGE]
この時間はそれぞれのステージがそろそろトリを迎える時間帯である。GRASSやLAKEに先駆けてトリが登場するのはPARK STAGE。この日のトリはこのフェスと同級生、つまり20周年を迎えたROTTENGRAFFTY。
その名の通りにいきなり切り札を切るかのような「切り札」から始まったのは、この日のこの時間がかなり厳しいものであるということも間違いなくあっただろう。それだけに先制攻撃というか、先頭打者ホームランを狙うかのような立ち上がりである。
そのこの時間が厳しい理由というのは、18時5分からGRASS STAGEはBUMP OF CHICKENが始まるからである。そもそもこのバンドは2016年にもBUMP OF CHICKENの真裏のLAKE STAGEのトリを務めたことがあるだけに、その普段の動員とは全く異なる状況になるということを身をもって知っている。
でもそれはある意味では「このバンドならBUMPの裏でも大丈夫」とこの時間を託されたということだし、日割りが発表された時は自分も最初はBUMPの裏でもそこまで人が全部流れることなく戦えるのはこのバンドだろうな、と思っていた。(それぞれの客層なども含めて)
しかし今のこのバンドの動員力を考えたら、普通の時間なら後ろまで満員になるであろう客席はやはり埋まっているとはなかなか言い難い状況だった。それはジャンルがだいぶ離れているバンドのファンすらも飲み込んでしまうBUMPの集客力の凄さを改めて思い知らされるものであったが、この状況で「人が少なくてヤル気がなくなるか」「この状況だからこそ逆に燃えるか」のどっちになるかでそのバンドの今後は全く変わるし、これまでをどう生きてきたのかはすぐにわかる。
で、ROTTENGRAFFTYはどうかというと、間違いなく後者である。この状況だから燃えるバンド。というよりもどんな状況であっても常に100%の力を出してきたバンドだからこそ、20年間バンドを続けてこれた。そういう生き方をしてきたバンドなのである。
だから「夏休み」でのコーラス部分だけならずNOBUYAとNAOKIの両ボーカルは両サイドの花道を走りながら煽り、KAZUOMI(ギター)も時にギターを置いて煽りまくる。侑威地(ベース)とHIROSHI(ドラム)のリズム隊もしっかりとバンドの土台を支えながら、客席を見る表情はやはり笑顔だ。
いったん観客を座らせてから一気にジャンプさせる「D.A.N.C.E」以降はフェスのトリという位置にふさわしいキラーチューンの連発となったが、そんな中でNAOKIが口を開く。
「ロック界隈もいろいろある。でも後ろは見ない。前を見るだけ。戻ってきた時には迎えてやりたい。仲間だから」
という言葉は、ともにライブバンドとして生きてきたJESSEとKenKenに向けてのものであったし、それはそのまま今年のこのフェスの大トリを務めるDragon Ashへのエールでもあった。
そしてバンドの地元である京都をレペゼンした「響く都」のコール&レスポンスから、ラストはやはり「金色グラフティー」。いつも以上に
「集まってくれて本当にありがとう!」
と言うNOBUYAの姿を見て、ライブバンドが好きで良かったと思えたし、このバンドの生き様を見た気がした。
1.切り札
2.PLAYBACK
3.夏休み
4.D.A.N.C.E
5.世界の終わり
6.This world
7.STAY REAL
8.「70cm四方の窓辺」
9.響く都
10.金色グラフティー
18:35〜 四星球 [LAKE STAGE]
BUMP OF CHICKENの真裏。そんな動員がめちゃくちゃ厳しくなる時間は口には出さなくてもなるべくなら避けたいというアーティストも多いだろう。(本人たちがBUMPを見たいというのもあるだろうし)
そんな中で日割りが発表された時から、
「ロッキンオン様には大変お世話になっているので、BUMP OF CHICKENの裏を誰もやりたがらないなら我々が責任を持ってやらせていただきます」
と宣言し、本当にその通りにBUMPの裏を務めることになったのがコミックバンド、四星球である。
時間になるとまず聞こえてきたのは、ギター・まさやんによる影アナ。その内容は他の3人がBUMPを見たいがためにGRASS STAGEへ行ってしまったというもので、1人でLAKE STAGEにちなんだ白鳥の湖の出で立ちで登場、思った以上のベタな衣装に最初は失笑気味であったが、なんやかんやでGRASS STAGEに行った他の3人もこのステージに登場すると、しっかり全員白鳥の出で立ちをしているというヤル気を見せてくれる。
使い勝手抜群のツッコミソング「言うてますけども」でスタートし、サビではいったん演奏を止めて
「カッコいい!カッコいい!」
コールを要求するのだが、北島康雄(ボーカル)が
「とか!」
と振ると
「言うてますけども 言うてますけども」
とバンドの演奏が入るこの曲、最後に北島が「とか!」と振ってもメンバーが全く反応せず、
「時空が歪んでしまったかのようだ!
返事もロクにしなかった!」
とBUMP OF CHICKEN「天体観測」のフレーズを口にするとバンドが「天体観測」を演奏するというとんでもない大ネタをいきなりブッ込んでくる。
確かに北島は
「確実に「天体観測」を聴きたい方は僕らを見に来てください」
とツイッターで予告していたが、いきなりやるとは思っていなかったし、その入り方も入念に計算されたものになっているのはさすがだ。
「天体観測」の演奏が終わるとやりきったような表情で
「さー、GRASS STAGEに行くぞ!」
とステージを去ろうとする、北島、U太(ベース)、モリス(ドラム)の3人。その度にまさゆきがとどめて「アンコール!アンコール!」とアンコールに応えてメンバーが再びステージへ、という小芝居を連発し、
「僕の甥っ子が茨城大学に通っているんで、今日招待したんですよ。この時間、GRASS STAGE見に行ってます!(笑)」
とMCでも爆笑させるあたりはさすがコミックバンドを名乗るだけはあるのだが、ただ面白い、笑えるというだけでは終わらず、
「チケット代とか考えたら、この時間にLAKE STAGEにいる人って頭イかれてるし、マイノリティの中のマイノリティですよ!
でもそもそもロックって、そういう頭イかれてる、マイノリティの人のものだと思うんです!つまり、今このLAKE STAGEがROCK IN JAPAN FES.で1番ロックな場所です!」
と、ここに集まった全ての人たちを肯定してみせる。面白いだけだったらバンドじゃなくていい。音楽があって、曲があって、バンドとしての信念がある。だからこのバンドのライブに行く人が増え続けているのである。
「クラーク博士と僕」を終えるとまたしてもステージを去って、GRASS STAGEに行こうとするメンバーたち。しかし、
「まだあの曲やってないやろ!」
とまさゆきが声を張り上げると、「アンコール!」ならぬ「ダンボール!」のコールが起き、そのまさゆきを讃えるための曲「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」ではまさゆきがガチのバク転を披露するというパフォーマンスで観客を仰天させながら、エアギターで右に左に動きながら観客を踊らせまくる。これは逆にこのステージが規制がかかるくらいの満員という状況ではなかったからこそこんなにも自由に動けたことであるけれど、ライブが始まった時よりもはるかにたくさんの人が客席にいた。もしかしたらBUMPの裏じゃなかったら満員になっていたかもしれないと思うほどに。
そんな客席には後方の段差エリアで座っている人もたくさんいたのだが、北島が
「この曲でエアギターやったらみんな立ち上がると思ってたんだけどなぁ!」
と言うと、本当に座っていた人たちが立ち上がる。ただ「立って!」と言われてもそこに説得力がなかったらわざわざ立ち上がることなんかきっとない。ただ、ここに集まっていた人たちはその言葉に何かしら体や心を動かされたから立ち上がったわけで、それは四星球がこの35分くらいの時間をかけて見せてきたものがちゃんと伝わっていたという証である。すぐに
「もう座っていいですよ〜」
と言っていたのは面白かったけど。
そして北島は
「ROCK IN JAPANに出ると毎回、ステージが大きくなっている。それは嬉しいことなんだけど、コミックバンドである以上、そんなありきたりなストーリーに乗っかっていいのかと思うし、僕らはステージの大きさに興味はない。
だから僕らのストーリーじゃなくて、ここにいるみんなのストーリーにしてください。そのみんなのストーリーで、GRASS STAGEまで一緒に行きましょう」
と、自身がコミックバンドであるからこその理由でGRASS STAGEへの思いを口にした。それは本当に自分たちが立ちたいというよりも、こうして自分たちを信じてくれる人たちが間違っていなかったということを証明したいのだろうし、まだ誰もやったことがないことをやりたいと北島は常々口にしてきた。エアバンドでも楽しいバンドでもなく、コミックバンドがGRASS STAGEに立つ。そんな、誰も見たことがない光景をこのバンドは作ろうとしている。
それをいつか見てみたいな、と思いながら最後に演奏されたのは「発明倶楽部」。このバンドの曲の中では笑いの量が少ない、北島のリーディング的な歌詞の曲である。なぜ最後にこの曲を?と思っていると、
「発明倶楽部の発明によって、時間を少しだけ巻き戻すことができます。どこに戻るのでしょうか?」
と言い、戻ったのはまさかの冒頭の
「返事もロクにしなかった!」
と言って「天体観測」を演奏したシーン。なので最後にまた「天体観測」を演奏したかと思いきや、それで終わるわけはなく、「天体観測」の終わりで
「とか!」
と北島が振ると「言うてますけども」のサビに突入して爆笑。やっぱりさすがだ、というか昨年のJAPAN JAMやVIVA LA ROCKでのライブを見て思ったことでもあるが、やっぱりこのバンドは天才の集団だった。
LAKE STAGEのトリは他のステージと少し雰囲気が違う。光に照らされた湖の幻想的な景色に憧れてストレイテナーはそのスロットを志願したし、かつてはELLEGARDEN、RADWIMPS、サカナクション、SEKAI NO OWARIという、のちにGRASSでトリをやることになるバンドたちが若手時代に伝説のライブを見せてきたシチュエーションである。この日、もしかしたら四星球はその歴史に連なるようなライブをしたのかもしれない。そう思ってしまうくらいにこの時間にこのステージを選んだことに一片たりとも後悔はなかった。
この日、熱い言葉を残しまくった北島はこのフェスの20周年を祝いながら、
「こんなバンドだからいつ呼ばれなくなるかわからない。だから先に言っておきます。ROCK IN JAPAN FES.、30周年、40周年、50周年おめでとうございます!」
とこのフェスがこれから先の未来で迎えるであろうアニバーサリーをフライングで祝った。その言葉を聴きながら、自分はその瞬間にこの場所にいることができているだろうか、と思った。10周年の年もここに来て祝って、20周年の今年もこうしてここに来て祝えている。この先の周年イヤーもこうして祝っていたい。それだけでも、長生きする理由には充分なるような。四星球は面白さはもちろん、そう思わせるような熱さで勝った。そこにはこのバンドの本質があった。
1.言うてますけども 〜 天体観測
encore
2.妖怪泣き笑い
encore2
3.マイクイズマイフレンド
4.クラーク博士と僕
danbore
5.鋼鉄の段ボーラーまさゆき
6.発明倶楽部 〜天体観測 〜 言うてますけども
自分はライブを見ることができなかったが、この日、SOUND OF FORESTには初出演のlynch.、2年連続のthe GazettE、常連バンドのMUCCという、いわゆるV系と呼ばれるバンドたちが名を連ねていた。それらのバンドたちはグッズも目立つだけに、誰を見に来たのか一目でわかる。
そういうグッズを身に纏った人たちを、あいみょんやユニゾンのライブの客席で見た。目当てだけ見たら帰るんじゃなく、他のステージに出るアーティストのライブも見る。それはあらゆるジャンルのアーティストが集まるフェスならではの光景だと言えるし、やはりこういう場所に来る人たちはみんな「音楽が好き」なのだ。
常連のPlastic Treeもそうだし、今年はDEZERTも出演しているけれど、このフェスにおいてはV系と呼ばれるバンドたちはアウェー感が強い。ワンマンの規模を考えればみんなGRASSやPARKに立っていてもおかしくない。
そんなアウェー感があっても彼らがこのフェスに挑んでくるのは、自分たちをそんな場所まで応援しに来てくれる存在がいるということを知っているからだろうし、何よりもそういう人たちが自分たちのバンドだけではなくて、音楽が好きな人たちであるということをわかっているからなんじゃないかと思った。
文 ソノダマン