今年は春に開催されるツアーも中止になり、恐らくはその後も様々な若手バンドが出演する予定だったであろう、スペシャ列伝も全く開催することができなくなってしまった。
そんな中、配信ライブという形でスペシャ列伝が帰ってきた。出演者はKANA-BOON、2、リーガルリリーというかつて列伝ツアーに出演した経験のある3組。
ちなみにこのライブは「UNITED FOR MUSIC LIVE」というタイトルであり、視聴するためのチケット代などは音楽やイベント事業者への支援に使われる。
20時になると画面に「1st ACT」という文字が浮かび上がり、トップバッターのリーガルリリーがすでにステージ上にスタンバイしており、音を鳴らし始める。背後には「スペシャ列伝」のフラッグが飾られているのはこのイベントならでは。
バンドは2月に1stフルアルバム「bedtime story」をリリースしたものの、予定されていたツアーの序盤はたかはしほのか(ボーカル&ギター)の怪我で開催できなくなり、それに続いてコロナの影響で回復してもライブができないという事態に陥っていたため、実に半年ぶりのライブであるが、さすがにもはやそうした怪我の影響などは全く感じられない。
それぞれが単音を穏やかに鳴らしていたかと思ったらいきなり爆音になり、たかはしも少女性の強い声を張り上げるアルバムとしても導入曲的な意味合いが強い「ベッドタウン」からスタートし、裸足のたかはしがイントロからノイジーなギターをぶっ放す「GOLD TRAIN」へというアルバムのオープニング通りの流れ。鮮やかな金髪の海(ベース)、一時期の少年のような髪型からはだいぶ伸びた髪のゆきやま(ドラム)もコーラスを務める。
海の太いベースから始まり、たかはしのエフェクティブなギターが効果音みたいに鳴る「1997」は
「私は私の世界の実験台」
というフレーズ通りに不穏なメロからサビで一気にキャッチーになるという予測不能な展開は実にこのバンドらしいものであるが、さらにはポエトリーリーディングまでも導入され、そのフレーズも実に意味深であるし、どういう作り方をしたらこんな曲になるのかというくらいにぶっ飛んだ構成。
ゆきやまのエイトビートのドラムのイントロから、海もたかはし同様に裸足でうねるようなベースを弾き、その二つが絡み合って幻想的というか、きっとたかはし本人にしかその意味はわからないのであろうという歌詞が乗る「林檎の花束」と、ここまでは「bedtime story」の曲順そのままの流れなだけに、もしかしてアルバム丸々やるのか?とすら思っていると、
「リーガルリリーです。どうぞよろしくお願いします。約半年ぶりにライブをしています。生まれて初めて何かまた始めたことは初めてです」
という歌詞以上に意味がまるでわからないMCを始めると、
「小学校6年間のうち2年間ずっとゲームして学校に戻る、的な」
と半年ぶりのライブを例えるのだが、その例えも自分には全然わからない。
しかしながら、
「失ってからしか気づけないものを曲にしてきた。なくなったライブハウスとかもみんな思い出していくというか、そういうものに作られていたんだと思う。
音楽は伝えていきたいし、みんなの帰るところでありたい。こういう場を与えてくれて、生きていて良かった」
という言葉はストレートに自身にとって音楽がなによりも大切なものであるということを伝えているし、はっきりと意味がわからないような歌詞であっても、たかはしが人に伝えたいという思いを持って音を鳴らしているということがわかる。だからこそ彼女の作る曲からはいろんな想像をすることができる。
映画の主題歌として起用された「ハナヒカリ」が演奏されたことによって、「bedtime story」の収録曲ではないけれど、さすがにアルバムの曲を全て順番通りにやるわけではないということがわかったが、薄暗い照明の中にほのかな光を感じるというのはこの曲やリーガルリリーの音楽そのものである。
「戦闘機」「兵隊さん」
という単語はこれまでのこのバンドの曲にも使われてきたものであるが、普通のバンドにはまずそうそうは使われないようなこうした単語が出てくるというのはやはり米軍基地がある福生から出てきたバンドならではの見てきた景色によるものなのだろうか。
たかはしのハイトーンボイスのサビと、オルタナというよりはトリビュートアルバムに参加したアジカンの影響を感じさせるようなサウンドの「トランジスタラジオ」を演奏すると、
「今日は見ていただいてありがとうございました。また会いましょう」
とだけ告げて最後に演奏されたのは、イントロが鳴らされただけで空気が変わる大名曲「リッケンバッカー」。半年ぶりのライブとは思えないくらいに演奏はさらに強く進化しているよう。間奏はより強く間を意識したアレンジになっているが、それが一気にスピードと歪みを加速させてサビに突入していく。
リーガルリリーは、というかたかはしはもの凄く無垢であり、天然なバンドだ。ヒットするような曲を作ろうと狙えばきっといくらでも作れるようなポテンシャルを持ちながらも、全くそういう曲を作ろうという気すら感じられない。ただひたすら自分たちのやりたいことをやりたいように音楽にしていく。そんなバンド。だからこそ無観客であっても、半年ぶりであっても、配信であっても、ライブがこれまでに見たものとなんら変わるような印象がない。そのバンドの「自分たちがやりたいことをやりたいようにやる」という軸が全くブレていないから。
でもこの日は、普段のライブだとサラッと前半にやることも多々ある「リッケンバッカー」を最後に演奏した。紛れもなくリーガルリリーの代表曲であり、世に見つかるきっかけになった曲である。
そうした曲を最後に演奏するということは、自分たちでも見てくれている人たちがこの曲を大事にしてくれている、良い曲だと思ってくれているということがわかったんじゃないかと思う。それはこの日が久しぶりのライブだったからという特別な要素あってのことなのかもしれないが、もしかしたらこのバンドにとっては厳しい期間が明けた時にはリーガルリリーは軸はそのままとしても、これまでとは少し変わるんじゃないか、と思う。
一度すぐにステージから去ろうとしたたかはしが思い出したかのようにマイクの前に戻って視聴者や会場やスタッフに一礼する、というような天然っぷりは一生変わらないんだろうけれども、これは僕だけのロックンロールさ。
1.ベッドタウン
2.GOLD TRAIN
3.1997
4.林檎の花束
5.ハナヒカリ
6.トランジスタラジオ
7.リッケンバッカー
この配信ライブは事前収録なので、転換時間などもなくすぐさま次のバンドへ。画面には古舘佑太郎が歌い始める姿が映し出され、
「久しぶりのスペシャ列伝、2番手は俺たち2だ!よろしく!」
とバンド名に相応しく2番手の2がバンドがツアーを巡ったりする日々を描いた「フォーピース」でライブをスタートするが、今の2は古舘、銀杏BOYZのライブでもおなじみの加藤綾太(ギター)、金髪になったyucco(ドラム)の3人のみ。素肌にジャケットを着るというワイルドな出で立ちのベーシストであった赤坂真之介がこの期間中に脱退し、今はサポートベーシストを迎えてライブを行っている。
そうして形が変わったこのバンドのライブを見るのは初めてであるが、ひたすら前へ前へと衝動的に駆け抜けていくようなスタイルは変わらない。とはいえ、
「どっかのバンドで1人が失踪」
というフレーズをKANA-BOONの見ている前で歌うというのはなかなかに心臓が強い。もちろんKANA-BOONのことを歌っているわけではないのだけれど、それでも続いているバンドへの賛歌でもある。
続く「Anthem Song」からはリーガルリリーのライブとは異なり、古舘の顔のアップが映ることが多いが、今やバンドマンであることや古舘伊知郎の息子であることは知らなくても、映画などに出ていることは知っているというくらいに俳優としても活躍しているだけに、その画面に映る表情はより端正になったように見えるし、意識したカメラ目線も多くなっている。
古舘と加藤が間奏でギターをかき鳴らしまくる「SAME AGE」と突っ走ってきた流れを一度変えるように、
「夏は年々あっけなく終わっていくけど、次の季節の秋は年々色濃く自分の心に残る季節になっている」
と古舘が語ってから演奏された「FALL FALL FALL」は前半は古舘の歌と加藤のギターだけという形で始まるだけに、それが暑い夏を経て涼しげになっていく秋らしさを感じさせる。今のところはまだ全く秋っぽくない暑い日が続いているが、前半の衝動で押し切るような曲ではないだけに、古舘のボーカリストとしての表現力の向上を感じさせてくれる曲になっている。
古舘のボーカルからスタートすると、カメラを指差して
「届いてるかー!」
と叫び、さらには「イヤッホー!」とこうしてバンドで爆音を出せているのが嬉しくてたまらないという感情を素直に爆発させる「ルシファー」は
「友達の彼女に手を出したい」
というリアルならばかなり最低な歌詞であるが、黒い衣装で統一されたメンバーの演奏する姿が悪魔というテーマのこの曲に実によく似合ってしまっている。
「ヨ〜」という長い古舘の掛け声と加藤のギターでスタートする「SとF」はキメ連発のバンドの演奏と、加藤のオリエンタルなギター、yuccoの4つ打ちドラム、さらには歌詞の2人の不思議な関係性と、この流れで聞くと良いアクセントとして効いている。
「はいやり直し!」
のフレーズでカメラを指差す古舘の姿はバンドマンとしての衝動と俳優としての演技力を兼ね備えているという意味では実は配信ライブにめちゃくちゃ強いバンドになっているんじゃないかとすら思えてくる。
その古舘がハンドマイクで飛び跳ねながら歌う「ロボット」では古舘が動き回ることで、汗にまみれている姿がよりよくわかるが、そうして自在に動けるからこそ、カメラに寄っていってアップで叫ぶこともできる。なんだかもはやこうして画面越しに見ていることの方がリアルな感じすらするくらいだ。
タイトル通りに家族愛を歌った「Family」で再び衝動的なギターロックに転じると、古舘ならではの宇宙をテーマにした「ケプラー」と間が空くことの一切ない後半の畳み掛けっぷり。もともとイベントなどの持ち時間30分しかないようなライブでも平気で10曲くらいやってしまうようなバンドであるが、そのスタンスはまるっきり変わっていないというか、古舘にとってのライブとはそういうものなのだろう。
そして、
「この半年の間に作った新曲」
と言って最後に演奏されたのは
「あなたの好きな方へ行け」
と、こういう世の中の状況だからこそ個人それぞれの選択と意志が重要であるということを歌う新曲の「My Favorite Thing」。
決して激しくないというか、ボーカルを立てたクリーントーンのギターサウンドだが、間奏では加藤のギターソロも挟まれる。曲終盤の「タラッタ〜」というメンバーによるコーラスは本来ならばライブハウスでそこにいる人全員で歌うのを想定されているような。
今はそれは叶わないけど、自分にとっての「My Favorite Thing」はやはり音楽であり、ライブハウスなのである。この曲は決してそれに限定しているような曲ではないけれど、
「またいつか、ライブハウスで会いましょう」
と言って去って行った古舘の姿は、スクリーンや画面の中ではなく、そこがやはり古舘の生きる場所であるということを示していた。
古舘は実はスペシャ列伝ツアーに2回出ている。この2で昨年の2019年に出ているし、The SALOVERSの時代の2012年にも出演しているという実に珍しくもあり、スペシャに愛されている存在でもある。
冒頭で古舘が「久しぶりのスペシャ列伝」と言った時に、自分は2012年に見た赤坂BLITZでのThe SALOVERSとしての古舘の姿を思い出していた。あの時に一緒に廻ったのは、アルカラ、クリープハイプ、Over The Dogsという面々。
今となればクリープハイプだけ別格的な存在になってしまったが、アルカラもOver The Dogsも紆余曲折を経て今もバンドを続けているし、古舘はこうして新しいバンドで音楽を続けている。だからこうして今も歌っている姿を見ることができているし、こうして配信でのライブを見ていると、この自粛期間中にパワーアップしているとすら思えるくらいに古舘は変わった。
The SALOVERSがあまりに好き過ぎたし、その終わりがあまりにショックだっただけに、なかなかその時の熱量を持って2の活動に向き合ってこれなかったけれど、今ならばそれができるような気がしている。つまり、これまでで最も2を早くライブハウスで観たいと思っている。
青春の向こう側でいつか待ち合わせをしようと約束した時は今なのかもしれない。
1.フォーピース
2.Anthem Song
3.SAME AGE
4.FALL FALL FALL
5.ルシファー
6.SとF
7.ロボット
8.Family
9.ケプラー
9.My Favorite Thing (新曲)
「LAST ACT IS KANA-BOON」
という文字が映し出されると、すぐさま演奏が始まる。イントロのこのギターの音はいきなりの名曲「シルエット」だ。
古賀隼斗(ギター)は最初からステージ前に出てきてギターを弾く。それは観客がいてもいなくても変わらない彼のスタイルであるが、少しでも画面の近くで、観客の近くで、という気持ちの現れだろうか。
鮪は赤い柄シャツを着て歌っているが、この曲の歌詞にあるように、煌めく汗がこぼれる瞬間をライブハウスで実感したいとメンバーの演奏する姿を見ると思ってしまう。おなじみの存在になってきているサポートベースのエンドウマサミもコーラスを務めるくらいに、ただ弾くだけではないバンドのメンバーになっている。
ポップなサウンドとリリース時のCMタイアップがこのバンドの夏の代表曲であることを決定づけている「なんでもねだり」は、夏の野外フェスがなくなってしまった寂しさをそのサウンドで少しでも楽しい気持ちに転化してくれるかのような。
「あんあんああんあん」
のメンバーのコーラス部分では鮪がハミング的なフレーズを入れる。こうして歌えていることが本人としても実に楽しそうである。
なので鮪もテンション高めに
「みんな楽しんでますかー!」
と挨拶すると、
「列伝のバックフラッグを再び背負ってやってますけど、2月にこういう状況になる前に同騒会ツアーをやって。2014年以来にキュウソとSHISHAMOとバニラズと一緒にツアーを廻って。
でもあの頃からSHISHAMOと上手く話せなくて(笑)
若い女の子とどう接していいのかわからない(笑)
今日リーガルリリーが楽屋に挨拶に来てくれた時にやっぱり上手く話せなくて、6年前を思い出した(笑)
どうやって克服していく?合コンでも行く?(笑)」
とバンドとしては変わった部分もたくさんあるが、人間としては全く変わらない素朴な浪人生のようなイメージ。これだけメジャーで長くやってきて、いろんなフェスやイベントにも出てきてそこが変わらないというのは凄い感じもするけど。
このライブの収録時に鮪は配信ライブだとセトリを割と好き勝手にできるというか、普段はやらないような曲もできる、とレア曲を演奏していることを匂わせていたが、その言葉を証明するように演奏されたのは「街色」。(「ダイバー」のカップリング曲)
鮪が見てきた景色を綴った叙情的な曲であり、ビートはしっかりと強いながらも切なさを感じさせるというのはこのバンドだからこそ生み出せる隠れた名曲。リリース当時のインタビューでもよく「これカップリングに入れちゃうんだ?」と言われていたが、カップリングにも手を抜かないバンドだからこそ、この曲を含めたカップリング集というアルバムをリリースすることができたんだな、と思う。これは聴くことができて本当に嬉しかった。
小泉貴裕の力強いドラムから始まり、次々にメンバーの鳴らす音が重なっていくというアレンジで始まったのは「MUSiC」。この曲が収録されている1stフルアルバム「DOPPEL」のリリース当時の4つ打ちバンドというイメージはすでに過去のものになっているんだな、と思うくらいに音が重さと強さを感じさせるし、この曲とともに続く「春を待って」は7月のベストアルバムリリースを記念した配信ワンマンでもアンコールに演奏していたが、「MUSiC」もこの曲も音楽やそれに関わる人(もちろんそれは我々ファンも含めて)への応援歌である。音楽業界、エンタメ業界に少しでも早く春が訪れるように、みんなが諦めることなくその時を待てるように。今のKANA-BOONからはそうした覚悟のようなものを感じる。
古賀も驚いた、鮪によるいきなりのメンバー紹介で小泉がカメラに向かって手を振ると、
「未来への希望を絶やさないように」
と口にしてから「まっさら」を演奏。もともとはタイトルに合わせたアニメのタイアップ曲として書かれたものであるが、「シルエット」もそうだけれども、KANA-BOONのアニメのタイアップ曲はアニメの内容を知っていればすぐにそれと分かるが、そうした要素を強くアピールするわけではなく、あくまでアニメを知らない人が聴いても違和感を感じないような歌詞になっている。だからこそこうした特殊な状況下で聴くとまた違った聴こえ方がする。アニメの放送が終わっても長く聴かれる、心に残っていくというのは「シルエット」の愛されようを見ればわかるだろう。
とはいえこの「まっさら」のサビのコーラスは本来ならばメンバーだけではなく観客も一緒になって歌うべきパートだ。メンバー全員によるコーラスも力強いけれど、たくさんの人がこのコーラスに思いを乗せるのを早くまた聴きたいと思う。
小泉の4つ打ちのドラムに続いてカラフルなサウンドが加わり、
「またライブハウスで、いろんなところで会いましょう!」
と言って演奏されたのは「スターマーカー」。その金澤ダイスケの手掛けたサウンドがKANA-BOONのメロディの良さを引き出しているが、それはそのまま音楽やライブへの希望として我々の寂しい心を埋めてくれるかのようだ。間奏で古賀が手拍子をしてからギターソロを弾くのもこうして演奏しているのを心から楽しんでいるかのような。
「自分はタフなので、こんな状況下になっても頑張れると思ってたんですけど、日常の引っ掻き傷みたいなものがついていて、みんなピリピリしているから自分もピリピリして、嫌な水が溜まっていくような。
ライブはそういう嫌な水を抜く場所で。ステージに立つ、照明を浴びる、大きい音を出す場所があるのはロックバンドとして本当にありがたいけど、みんなが目の前にいないとその水はクリーンにならない。みんなにとってもライブがそういう場所であったら嬉しいし、僕たちがそういう存在だったら嬉しい。
僕たちはみんなの生活の中にいたい。その火を絶やさないようにつなぎ止めます。目の前にあなたがいればなんだってできそうな気がする。リーガルリリーとも2ともまた有観客で汗だくになりながらやりたいし、打ち上げをして関係を深めたい」
と鮪は希望を持っていることも、我々と同じように人間として弱い部分があることも素直に、真摯に語る。そうした言葉をしっかり口にしてくれるからこそ、このバンドのことを信頼できるし、それはバンドとしての形が変わらざるを得ない経験を乗り越えてきたのを見てきたからこそ、より一層そう思えるのだ。
まだ「ないものねだり」も「フルドライブ」もやっていない。ライブではほぼ間違いなく演奏されてきた曲たちだ。でもこの日最後に演奏されたのは、鮪のMCをそのまま曲にしたかのような「スタンドバイミー」だった。
「もう一度、一緒に歌おう
僕はやれる、君はやれる」
という歌詞は収録アルバム「Origin」におけるバンドの置かれていた状況への葛藤を抜け出すためのものだったが、今ではこの状況で鳴らされるために作られたかのようですらある。
リリース当時は「Origin」というアルバムの評価自体もそこまでの2作に比べたら高くなかったし、それは収録されていたこの曲もそうだった。しかしこうして聴くとやはりKANA-BOONが生み出してきた曲は名曲ばかりだと思えるし、
「飛び出せ世界 スタンドバイミー」
という最後の歌詞が感じさせてくれる希望や光は思わず聴いていて感動してしまった。今リリースされていたらきっとまた違った評価になっていただろうけれど、この曲をあの時にリリースしていたからこそ、KANA-BOONはこの状況でもタフでいることができる。もしかしたらこうしてこの曲が鳴らされたことによって、これからのKANA-BOONのライブの作り方は変わっていくのかもしれない。
1.シルエット
2.なんでもねだり
3.街色
4.MUSiC
5.春を待って
6.まっさら
7.スターマーカー
8.スタンドバイミー
配信ライブでこうして対バンイベントが見れる機会はそこまで多くない。どうしても今の状況的にはワンマンが多くなるのは仕方がない。でもこうしてこの配信ライブを見ていたら、かつていろんなバンドの若手時代のライブをスペシャ列伝で見てきたことを思い出した。それはスタジオとかではなく、ライブハウスがあるからこそ出来ることだ。
徐々にライブハウスでもライブが再開しているけれど、本当の意味で取り戻したと思えるのは、こういう対バンイベントを制限のないライブハウスで見れるようになった時なのかもしれない。その日が来ることをずっと待ち望んでいる。
文 ソノダマン