One on One 〜special〜 TOISU&DISCO!!! POLYSICS / the telephones 1000CLUB 2021.6.29 POLYSICS, the telephones
2010年の3月にPOLYSICSがカヨ在籍時の4人として最後のライブとなる日本武道館ワンマンを行った日、自分たちのツアーを地方で行っていたthe telephonesはステージ上で
「先輩にDISCOとトイスを送ろうぜー!」
とエールを送っていたという。
それ以降もUKFCなどで毎年共演してきた、先輩後輩というよりも兄弟分と言っていいような2組の対バンが横浜の1000CLUBで開催とあっては行かないわけにはいかないのである。例えばトイスとDISCOを我々が叫ぶことができなくても。
検温と消毒を経て中に入り、この日限定のコラボグッズである「TOISU×DISCO Tシャツ」も抜かりなく購入すると、すでに場内からは音が聞こえている。オープニングアクトの、ギター×2に女性ボーカルという、超能力戦士ドリアンと同じ編成のpeanut buttersがライブを開始していた。
その編成ゆえにドラムとベースというリズムは打ち込みであるが、こんなにもドリームポップという言葉が似合うバンドは日本においては珍しい。ボーカルからはかつてのSUPERCARのフルカワミキにも似た声質を感じる。
「まだ詳細は言えないですが、今度POLYSICSのカバーを音源化します…」
という男性ギタリストのMCがめちゃくちゃ控えめだと思っていたら、曲終わりで
「今日はthe telephonesとPOLYSICSという凄い先輩方に呼んでいただいて本当にありがとうございました。来月に自主企画ライブもやりますんで、もしよければチェックしていただければと思います」
と言ったのでもう1曲やって終わりかと思ったら話し終わってそのままステージを去って行った。え!?これで終わり!?と見ていた誰もが思ったことであろう。
・the telephones
先月にツアーファイナルを終えて16年目に突入しても走り続けるべくこの日のステージに立つthe telephonesが先攻。この1000 CLUBは昨年アルバム「NEW!」のリリース前に収録曲を全曲演奏するという久しぶりのワンマンを行った会場である。
おなじみのSEが鳴ってメンバーが登場すると、もうその段階からメンバーのテンションが実に高いことが伝わってくるのだが、「NEW!」のオープニング曲にして、すでに今のtelephonesのライブの幕開けの曲になった「Here We Go」ではメンバーが歌う声に合わせて観客が両腕を上げてこのライブが開催されたこと、始まったことの喜びを交歓する。
間奏では長島涼平(ベース)がハイトーンのフレーズを弾き、石毛輝(ボーカル&ギター)がその真横で品定めするように弾いている姿を見ている。ワンマンよりも漲っているような感すらある。
早くも演奏された超キラーチューン「Monkey Discoooooo」では石毛が歌詞を「横浜」や「One on One」とこの日だからこそのものに変えて歌い、ブリッジギターも決めてシールが貼られて立ち位置が決まっている床の上で踊りまくる観客たちのテンションをさらに上げてくる。DISCO!で叫ぶことはできないけれど、こうしてtelephonesが目の前で鳴らしている音楽で踊れているということが何よりも楽しいのだ。
1000 CLUBはライブハウスの中でもかなりステージが高い会場であるが、キャパとしてもそれなりに広くて見やすいし、だからこそステージ自体もそこそこ広い。なので石毛の衰えぬ身体能力を発揮するロンダートも悠々できる「HABANERO」で観客を飛び跳ねさせまくると、
「POLYSICSと対バンするのは8年ぶりです」
と石毛が話し始める。
涼平「関東では対バンしてないよね?」
石毛「いや、群馬でやってる。群馬は関東じゃないと?」
涼平「うわ〜!俺こんなので嫌われたくない〜!(笑)」
という記憶力がハッキリしている石毛とボンヤリしている涼平というメンバーの違いが浮き彫りになりながらも、松本誠治(ドラム)のラジオDJ的な歌唱もいつも以上にハッキリと大きく聞こえるのも対バンゆえのテンションの昂りなのかもしれないが、その誠治の歌唱部分でノブ(シンセ)を中心に石毛と涼平も揃ってステップを踏むのが見ていて楽しいライブ会場限定販売曲「Caribbean」のトロピカルなサウンドが癒しに感じるくらいに、涼平の独特なベースラインのイントロが踊らせてくれる「electric girl」でも石毛が叫ぶようにして歌う部分が随所にあるなど、本当にこの日はメンバーのテンションがめちゃくちゃ高かった。そのメンバーのテンションの高さによって観客側もさらに熱くなれる。それはライブハウスでの対バンという、今までは当たり前のように行って生きてきたものがこの状況下になって久しぶりに行うことができていることの喜びによるものだろう。特にtelephonesは本来ならば対バンを迎えて行うはずだったツアーをワンマンにして行っただけに。
すると曲間には何やらスタッフがマイクスタンドなどを忙しなく準備し始める。今までだったら「お〜!?」という声が上がってもおかしくない展開にも無音というのがこの状況ならではであるが、この日の特別コラボとして自身のライブでおなじみの黄色いツナギを着たPOLYSICSのハヤシがギターを持ってステージに登場。しかしハヤシとメンバーとの会話は
涼平「今までハヤシさんに誠治くんの髪型を決めてもらってたじゃないですか?今の誠治くんの髪型がめちゃ嫌いなんですけど、どう思います?(笑)」
ハヤシ「髪が長いのは別にいいんだけど、両手で束ねるみたいに髪をかき上げるのは見たくないよね(笑)」
石毛「ツアーだと櫛で髪を梳かしてるのが本当に嫌なんですよ!(笑)」
ハヤシ「だからアフロにした方がいいってずっと言ってるのに!(笑)」
誠治「髪を切りに行くのがめんどくさいから2年くらい行ってないってだけなのに、そんなに言われたら髪を触れなくなっちゃうじゃん(笑)」
とひたすら誠治の髪型いじり。telephonesはかつて年末のワンマンで誠治が髪型を変える(モヒカンになったりした時もあった)という企画をやっていたが、その髪型を決めていたのがハヤシだったからこそである。
そうした誠治いじりから、ハヤシがイントロのギターを弾くという形で始まったコラボ曲は「urban disco」。ハヤシはギターだけでなくコーラス、さらにはボーカルまでをも石毛と分け合うのだが、普段はコーラスをメインに担当するノブはコーラスに合わせてPOLYSICSの「BUGGIE TECHNICHA」の腕の振りをするという愛の溢れるパフォーマンス。そして最後のサビでは発明と称された
「I am disco」
のフレーズを
「TOISUとDISCO!」
に変えてメンバー全員で叫ぶ。そこにはこの2組だからこその絆を確かに感じさせた。ハヤシは最後にしっかりと「トイス!」をやってからステージを去って行った。
そして最新のDISCO曲「Do the DISCO」でノブが腕を上下に振ったりして観客も同じ動きでさらに踊らせまくると、
「こうして来てくれる人やライブハウスのスタッフがいるからこうやって俺たちはライブができている。その全ての人たちに愛とDISCOを送ります!」
と言って演奏されたのはやはり2000年代最強のダンスアンセム「Love & DISCO」。それは観客側は一緒に叫び、歌うことはできなくても言葉通りにこのライブに関わる全ての人に向けて演奏されていたが、Dragon Ashのkjも
「俺たちがライブをしないと仕事がなくなってしまう人たちがいる。俺たちが何もしないで待ってるうちにその人たちがいなくなったら、いざライブをやろうとしてもライブが出来なくなってしまう。今はその人たちのためにライブをやってる感覚が強い」
とインタビューで言っていた。それはtelephonesも間違いなくその意識を持って今この状況の中でもライブをやっているのだろうし、全ての今ライブをやっているバンドたちが抱えている思いなのかもしれない。ライブハウスで働いていた人たちで始まったtelephonesのライブでの愛と感謝を込めた曲だからこそ、そうしたいろんな想いを感じることができる。ずっと特別な曲であり続けてきた「Love & DISCO」は今になってより特別で大切な曲になっている。
telephonesはかつてもツアーを行う際は必ずと言っていいくらいに対バンを迎えた2マンで回っていた。Zeppや新木場という大きな会場でもそうだった。ワンマンをやるのはディファ有明やラフォーレミュージアムやさいたまスーパーアリーナみたいな、いわゆるライブハウスではない会場で年末にやる「SUPER DISCO HITS!!!」の時だけ。
それくらいにライブハウスの対バン文化を愛してきたバンドの、本当に久しぶりの対バンライブ。その相手がPOLYSICSで本当に良かったと思えるライブだったし、こうしていろんなバンドとコラボしたり、相手のライブに刺激をもらって燃えたり。そんなライブシーンが早くまた当たり前のものになりますように。
1.Here We Go
2.Monkey Discooooooo
3.HABANERO
4.Caribbean
5.electric girl
6.urban disco w/ ハヤシ (POLYSICS)
7.Do the DISCO
8.Love & DISCO
・POLYSICS
そして後攻のPOLYSICS。コロナ禍になってからは昨年のぴあアリーナでのBAYCAMPでライブを見ているが、ライブハウスで見るのは実に久々である。
賑やかなSEに合わせて黄色いツナギにバイザー装着というおなじみの出で立ちでメンバー3人が登場して楽器を持つと、そのSEから繋がるような形でそのまま「Digital Coffee」でスタートし、サビでハヤシに合わせて観客が腕を左右に振って踊りまくる。このスムーズな入り方はさすがであるし、久しぶりのライブでも全く錆びることがないのはライブの感覚が体や脳に染み付いているからだろう。
観客の手拍子とジャンプが起きる「Let’sダバダバ」は間奏部分で最前の観客にマイクを向けたりして合唱させるのがおなじみの曲であったが、今はそれができないだけにフミ(ベース)がひたすら歌い、ヤノ(ドラム)が「Let’s」を言い続ける中で、コアファンの楽しみ方でもある、ヤノの「Let’s」に合わせて観客みんながジャンプするという声が出せないからこその手法に変化。POLYSICSはすでに20年以上の活動歴を誇るバンドなだけに、観客も決して若くはない人も多いのだが、メンバーの演奏する姿も観客の跳躍力も、全くバンドのことを知らない人が見たら20代前半の若手バンドのライブと思ってもおかしくないくらいである。
そんな熱いライブをさらに熱くするのはアニメタイアップ曲としてキュウソネコカミのヤマサキセイヤをゲストボーカルに迎えた「走れ!」。さすがにセイヤはこの日は来なかっただけにハヤシが1人でセイヤのパートも含めて歌うのだが、POLYSICSだけで演奏されることによって、時にはウルトラ怪獣をテーマにしたアルバムを作るくらいにシュール(人によっては意味不明)な歌詞を生み出してきたPOLYSICSの歌う
「明日へ振り絞って
奮い立たせ進め
決してその光 絶やさないで」
というストレートに熱い歌詞はPOLYSICSというバンド自身が持ち合わせている要素であることがわかる。
そんな熱い歌詞を書いたハヤシがヴォコーダーマイクで歌い、シンセを操るというPOLYSICSのライブならではの風景が見れるのはBAYCAMPでも披露されていただけにライブではすでにおなじみになっている、観客を揺らしまくる新曲の「Stop Boom」。
さらにヴォコーダー越しのボーカルのループがどんどん激しいサウンドに展開していく「MEGA OVER DRIVE」と続くのだが、何人かのスタッフがハヤシの前のモニターをかなり焦った様子でいじったりしていたので、なんらかのサウンドトラブルがあったのは間違いない。それでも全く意に介することなくシュール極まりない歌詞の「DTMK未来」をそのまま演奏していくというのは今までにこうしたトラブルを数え切れないくらいに経験してきたであろうバンドの強さを感じる。なんなら過去には夏フェスで演奏中にメンバーが倒れるという事態にも見舞われたバンドだけに。(その経験で夏フェス時に着用するツナギは半袖になったり通気性が良くなったりという進化を遂げてきた)
すると、ライブ開始時から気になっていた、ヤノのドラムセットの前に置かれている、明らかにこのバンドのメンバーが誰も使っていないエフェクターボードがハヤシとフミの間に置かれると、その前にマイクスタンドも置かれる。先ほどのお返しとばかりに今度はthe telephonesの石毛輝がギターを持って登場するのだが、鮮やかな青いツナギを着用するというPOLYSICSバージョンの出で立ち。わざわざこのためにZOZOで買ったのだという。
ハヤシ「やっぱりこういう対バンだと一緒の楽屋にtelephonesもpeanut buttersもいるから楽しいよね」
フミ「誠治の髪型の話だけで1時間くらい盛り上がってたもんな(笑)」
とステージ上だけでなく楽屋でも誠治の髪型をいじっていたことが明かされるが、
「石毛の新たな一面を引き出したい」
ということでコラボ曲に選ばれたのはPOLYSICSの中でもDEVOの影響が強い「Moog is Love」という意外な選曲。確かにもっとディスコパンクっぽい曲で一緒にギターを弾いて歌う(「Shout Aloud!」とか)曲を想像していたが、そうした曲であるが故に石毛のジャンプしての演奏や、この曲の間奏でも披露されたブリッジギター(ハヤシが石毛の腹の上に足を置いていたのが地味に面白かった)など、石毛の新しい一面を引き出すというよりも、石毛によってこの曲の新しい一面を引き出した、というようなコラボだった。だからこそこれからも何度でもこういうコラボが見たくなる。そのためにはまた対バンしてもらわないと。
そして「トイス!」を声に出して言えない観客に音声アプリで音を出すように指示し、最終的にはサンプラーから録音された「トイス!」を流すことで「トイス!」のコール&レスポンスをこの状況下でも成立させると、イントロのガラスが割れるような音が流れるとハヤシが大きくジャンプしてギターをかき鳴らす「シーラカンスイズアンドロイド」からは壮絶なラストスパートへ。
観客がハヤシとフミに合わせて両腕を交互に上げる「Young OH! OH!」から、コロナ禍になる前はPOLYSICSのライブで最もダイバーが出たりという衝動を引き出す激しいノリを生み出してきた「SUN ELECTRIC」と、キラーチューンの中のキラーチューンを演奏するのだが、この曲たちはみんなPOLYSICSの曲の中でもパンクという要素が強い曲である。POLYSICSの中にはポップなサイドのキラーチューンもたくさんある。(「Baby BIAS」しかり「Electric Surfin’ Go Go」しかり)
そんな中でもこうしたパンクな曲を選んできたのはこれがライブハウスでの対バンライブであり、その対バン相手がディスコパンクをライブハウスで鳴らしてきたthe telephonesだからというところもあるんじゃないかと思っていたが、独特の振り付けが多いPOLYSICSのその景色が、声を出したり汗まみれになったりはできなくてもライブハウスに戻ってきたんだなと思った。それはこの状況下でもメンバーと同じツナギを着てライブハウスに来ている人を見るだけでもそう感じる。
アンコールで3人が再びステージに登場すると、
ハヤシ「peanut buttersのニシハラ君、下手にいたギターの彼ね。2012年のPOLYSICSの沖縄のライブに来てくれて、出待ちまでしてたくらいにPOLYSICSのファンなんだって(笑)」
フミ「お!ついにPOLYSICSのフォロワーが!20数年活動してきて全く出て来なかったのに!(笑)」
ハヤシ「そうやってライブに来てくれてた人と同じライブに出てるって凄いよなぁ。やっぱりライブっていいよね〜」
と新たな出会いにも感激していたが、フォロワーがいなかったのはPOLYSICSの音楽やスタイルが他の人には絶対に真似できないものだったからだ。(実際にpeanut buttersも音楽性はだいぶ違う)
それを証明するのは20年以上活動してきても落ち着いたりすることなんか絶対ないどころか、これからもひたすらにより加速していくという意思を示すかのような「Speed Up」がアンコールで演奏されたからだ。タイトル通りに疾走するパンクなビートとPOLYSICSならではのキャッチーなメロディと電子音。やっぱりこれは誰にも真似できない、追いつけない。ハヤシが去り際にサンプラーを押して「トイス!」を響かせてから「おやすみ!」と言って変えるところも含めて。
POLYSICSはいったい今までにどれくらいのアーティストと対バンをしてきたのだろうか。もはや本人たちですら把握しきれてないだろうが、そうした対バンで相手のバンドのファンが見ても「面白い」「カッコいい」と思えるバンドだからこそこうしてずっとライブシーンの最前線を、どれだけ形が変わったりしても走り続けてきた。
それはフェスでもそうだが、19年間連続で出演してきた今年のロッキンにはPOLYSICSの名前はない。それは状況的に仕方がないことであるが、冒頭で触れた2010年3月の武道館ワンマンを終えて3人になったPOLYSICSは活動休止を発表したが、出演し続けてきたその年のロッキンのGRASS STAGEのトップバッターという舞台で活動を再開した。ロッキンに出るために帰ってきてくれたのだ。その時の渋谷陽一社長の
「夏冬合わせて17回目!僕らのフェスの顔!」
という紹介は今も忘れられない。あの頃、POLYSICSは間違いなくロッキンオンのフェスの象徴だった。いや、今でもそう思ってる。2年前のLAKE STAGEの初日のトップバッターとして20周年のフェスの始まりを告げたライブの素晴らしさを今でも覚えているから。来年はひたちなかでも会えますように。
1.Digital Coffee
2.Let’sダバダバ
3.走れ!
4.Stop Boom
5.MEGA OVER DRIVE
6.DTMK未来
7.Moog is Love w/ 石毛輝
8.シーラカンスイズアンドロイド
9.Young OH! OH!
10.SUN ELECTRIC
encore
11.Speed Up
文 ソノダマン