9mm Parabellum Bullet 〜15th Anniversary〜 「6番勝負」 浜松窓枠 2019.6.14 9mm Parabellum Bullet, the telephones
今年結成15周年を迎え、それを記念して開催された東京と大阪でのフリーライブは応募者が殺到して急遽2部制になるという、もはやベテランに突入しているくらいのキャリアになってもこのバンドの音楽を求めている人がたくさんいるというのを自らの力で証明してみせた、9mm Parabellum Bullet。
その15周年の第何弾になるのかわからない記念となるのが先週から始まった「これまでに対バンしたことのある盟友的なバンドを呼んでの2マンツアー」である「6番勝負」。
この日の対バン相手はこれまでに何度となく対バンを果たしており、9mmの昭和女子大学人見記念講堂でのライブ時には石毛輝がサポートギターで参加した、the telephones。この2マンを見るのはかつて新木場STUDIO COASTでやはり9mmがtelephonesを招いた時以来。
会場の浜松窓枠は浜松駅から割と近い場所にあるライブハウスで、キャパ的には渋谷O-WESTくらいの感じだろうか。この2組は過去にこの会場が今の場所に移転した時のこけら落としライブも同じ組み合わせで行なっており、特別な場所での特別なライブとなる。
・the telephones
先攻のthe telephones。19時になると会場BGMが徐々に大きくなって暗転すると、おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」のSEが流れてステージに置かれたミラーボールが輝き、4人がステージに登場。ノブはこの日のライブ限定の9mmの物販で売られている、the telephonesの名前も入ったTシャツが黄色だからか、黄色いタンクトップを着て登場。
「浜松ー!埼玉県北浦和から、ここをディスコにするためにやってきました、the telephonesです!」
という石毛輝のおなじみの挨拶から、いきなりの大合唱が轟く「I Hate DISCOOOOOOO」からスタート。telephonesの中でも随一のハードな曲であるが、初っ端から長島涼平は躍動感ある動きでベースをうねらせて観客を踊らせまくる。石毛は珍しく最後のフレーズを
「I love DISCO, I love you very much!!!」
と「hate」を「love」に変えて歌っていたことからもこの日をどれだけ待ち望んでいたのかがよくわかる。
そこまで広くない中で石毛の後方宙返りも華麗に決まった「HABANERO」で曲の象徴的なシンセを弾いていたノブがダンス指南をするのは「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」では
「今日は9mmと対バンだから、「Black Market DISCO」だー!」
と叫ぶと、石毛と涼平が慌てて松本誠治のドラムセットに集まって打ち合わせをすると石毛のギターが「Black Market Blues」っぽいリフを奏でる。ノブいわく
「普通のバンドはリハでちゃんと確認するんだけど、それをしないのが俺たちだから!」
と言っていたが、確かに実にtelephonesらしい。よって
ノブ「Black Market!」
観客「DISCO!」
のコール&レスポンスが起こるも、観客を自由に踊らせるための指南をしていたノブがステージ上で汗を流しながら誰よりも自由に踊っている。
すると観客の1人が「輝ー!」と石毛を下の名前で呼び、
「俺のことを輝って呼ぶのは細美(武士)さんとdustboxのSUGAさんと卓郎とART-SCHOOLの木下理樹さんだけ。みんな普通の人じゃないっていう(笑)
この浜松窓枠はここに移転してきた時に9mmがこけら落としをやって…まぁ姫始めみたいな?(笑)
それのゲストに我々を呼んでくれたんだけど、ゲストで先にライブやったから、事実上のこけら落としは俺たちなんだよね(笑)」
とこの場所への思いを語る。特別感もあったが、ここにライブをしに来るのはかなり久々であるとのこと。
telephonesのダンスの部分の象徴とも言える「electric girl」から「Yeah Yeah Yeah」へのシームレスな繋げ方は曲をよりダンサブルにしているが、ノブによる久々の9mm卓郎のモノマネで爆笑を巻き起こすと、
「俺たちも9mmもいろいろあった。でも今こうして揃って笑いあっていられる」
という石毛の言葉には決して順風満帆ではなかった両者だったからこそ、こうしてまた2マンを見れているのが本当に特別なことに感じられる。
その特別なことをさらに特別にするのがやはりこの2組。石毛の紹介でステージに呼び込まれたのは9mmの滝。間違いなくギターを弾くために出てきたはずなのにノブのシンセを触りまくるので、一瞬そっちを演奏するのかと思ったが、石毛からギターを受け取る(自分のではなく石毛のを弾いた)と、あのイントロのギターを滝が弾き、石毛はハンドマイク状態での「urban disco」。滝のギターに引っ張られるようにリズムが今まで見た中で最速というくらいの超高速バージョンになっていたのだが、顔を見合わせてリズムを合わせる涼平と誠治の笑顔を見ているとそれすらも楽しそうだし、telephonesの持つパンクな部分が滝のギターによってより引き出されていた。石毛がハンドマイクを滝の顔の前に差し出して滝に
「I am disco!」
と叫ばせていたのも含めて、ものすごく楽しいのは間違いないんだけど、その前の石毛の発言を思い返すと、活動休止をしていたtelephonesがこうしてステージに立ってまた演奏をしていて、負傷によって9mmのライブに参加できなかった時期があった滝が戻ってきてこうして9mm以外の場所でもギターを弾いている。そしてその姿をこうして自分の目でまた見ることができている。そう思うとなんだか感動なのか、泣けてきてしまった。
やはりシンセをいじりまくりながら滝が石毛にギターを渡してステージから去ると、「urban disco」でのパンクさをそのまま継ぐように「sick rocks」が演奏されるのだが、なんと曲の後半で9mmの中村和彦がステージに。ベースを弾くわけではなく、ステージ上をはしゃぎ回ると、涼平のマイクスタンドの位置を普段の自身の位置にまで低く下げてシャウトしまくり。その和彦はtelephonesのTシャツを着ていたのだが、普段はなかなか見えない表情が楽器を演奏しないことによって(あと髪が短いなったことで)はっきりと見えた。その表情は「和彦ってこんなに子供みたいに笑うような人だったのか」とびっくりしてしまうくらいの笑顔だった。DJをやる時は必ずと言っていいくらいにtelephonesの曲をかけているし、和彦は本当にずっとtelephonesのことを好きでいてくれている。音楽はもちろん、メンバーの人間そのものも。それが顔を見ていると本当に伝わってくる。もはや仲が良いというような簡単かつ単純な関係ではないものがこの2組には確かに存在している。
和彦が着ているtelephonesのTシャツを見せつけるかのようにしてステージから去ると、石毛が
「多分、感傷的になるのが嫌だったんだろうけど、俺たちのラストパーティーに9mmが出てくれた時、卓郎が
「telephonesがいなくなったら焼け野原じゃなくて焼けディスコになってしまう」
って言ってて。「焼きディスコ」って今聞いてもわけがわからないんだけど(笑)
でも9mmがずっと続けていてくれたから俺たちも戻ってこれたっていうのは間違いなくあります」
と改めて9mmへの感謝を告げ、その感謝を表すように
「いけるかー!」
と卓郎のマネをして観客を煽ると「Monkey Discooooooo」でこの日最大級の熱狂を巻き起こし、
「9mmと9mmのスタッフと窓枠のスタッフ、そしてみんなに愛とディスコを贈ります」
と言って最後に演奏されたのは「Love & DISCO」。数え切れないくらいに聴いてきた曲だけど、この曲がこの日見せた表情はいつもとはまた違っていた。この曲もこうして9mmとの対バンで演奏されるのを喜んでいるかのような、そんな愛とディスコに溢れていた。
1.I Hate DISCOOOOOOO
2.HABANERO
3.Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
4.electric girl
5.Yeah Yeah Yeah
6.urban disco feat. 滝善充
7.sick rocks feat. 中村和彦
8.Monkey Discooooooo
9.Love & DISCO
・9mm Parabellum Bullet
そしてそんな盟友の愛を受け取った9mm Parabellum Bullet。おなじみの「Digital Hardcore」が流れてテンションが漲っているのがわかるメンバーがステージに登場。この日のサポートギタリストはfolcaの為川裕也。
その為川と滝、卓郎のトリプルギターによる迫力抜群の「Discommunication」でスタートすると、もうtelephonesのライブで完全にメンバーも我々も火がついている状態なのにそれをさらに燃やし尽くそうとする「ハートに火をつけて」ではメンバーのステップが実に面白いが、そのアウトロから一瞬で「Cold Edge」のイントロに繋がるというアレンジは震えるくらいにカッコいいし、telephonesもそうだがこうして昔からある曲をライブでアレンジすることによってバンドも曲も今でも進化していると実感することができる。
卓郎のモノマネをしたノブにお返しするかのように卓郎がハイトーンボイスで石毛のモノマネをすると(普通にそのまま歌えそうなくらいに上手く、本人も「意外とできるもんだな」と言っていた)、「キャリーオン」から最新シングル「名もなきヒーロー」というバンドが常に更新を続けていることを示す近作のモードへ。
我々、9mmを聴いている人たちに向けられた応援ソング「名もなきヒーロー」はこの日はどこかtelephonesに向かって演奏されているように感じたし、
「生きのびて会いましょう」
というフレーズは両者がともに生きのびてまた会ったこの日だからこそ、いつもとはまた違う説得力が生まれていた。
アラバキでのセッションライブ以降フェスでも演奏されるようになった「Bone To Love You」では間奏の祭囃子的な部分で卓郎と滝が演奏に合わせてゆっくり動くのが実に面白いが、それが最後のサビの一気に高速化し激しくなるパートとの良いコントラストになっている。
滝によるライブならではのギターのイントロが演奏されただけで歓声が上がった「黒い森の旅人」は浜松の人たちが本当に9mmがこの街に来てくれてライブが観れるのを心待ちにしていたんだな、と思う瞬間だったのだが、telephonesのライブの時に石毛が
「telephonesと9mmの対バンは何かが起こる」
と言っていたのをtelephonesのクチビルサングラスをかけた卓郎も言うと、石毛がステージに登場。卓郎がハンドマイクとなり、卓郎のギターを石毛が担う形で演奏されたのは「Supernova」。かつて9mmがさいたまスーパーアリーナでライブをした時には
「さいたまスーパーノヴァ!」
と言って演奏された曲であるだけに、埼玉出身のtelephonesと一緒にやるのはこの曲だったんだろうか。間奏では石毛と滝と為川が一斉に前に出てきてギターを弾く。石毛はもちろん、滝と為川も本当に楽しそうだった。
するとギターを卓郎に返しても石毛は
「まだいていい?」
とそのままステージに残って演奏されたのは9mmが演奏する「Monkey Discooooooo」。telephonesのトリビュートアルバムで9mmがカバーしていた曲であるが、telephonesが自身のライブで演奏していただけに今回はやらないかもな、と思っていたのでこれは本当に嬉しいサプライズだった。
9mmの演奏なので原曲よりもさらにメタリックなサウンドになり、ハンドマイクの石毛は不意に和彦にマイクを向けて和彦が驚いたり、滝がコーラスを完璧に務めていたり、石毛が間奏でいつものブリッジしながらギターを弾くのをエアギターでやっていたりと、見所しかなかったが、これはもうメンバーたちが楽しむために演奏していたかのようだった。
石毛を迎える前に卓郎は
「俺たちはtelephonesに何か返せているんだろうか」
と言っていた。その言葉は9mmの「BABEL」ツアーの昭和女子大学人見記念講堂でのライブの時に石毛がサポートギタリストとして9mmのことを助けてくれたからということがあったからこそのものだが、石毛が言っていたように9mmが困難に見舞われてもずっと止まることなく活動してきたのをサポートという立場もあって石毛はずっと見てきたし、telephonesのメンバーもそれぞれ休止中もずっと9mmの姿を見てきたはず。
活動再開するきっかけとしてその9mmの姿がバンドを動かした部分も間違いなくあるだろう。だから9mmが活動してきたことがそのままtelephonesへのお返しになっているし、9mmが止まらなかったことがこの日に結びついた。卓郎もそれはきっと自分でもよくわかっているはず。
そして大合唱が響いた「新しい光」から、ラストは滝のタッピングが冴えまくる「ロング・グッドバイ」へ。改めてこの2連発は9mmがとんでもなくカッコいいバンドであるということを証明していたし、
「僕には君がいれば何もいらなかった」
というフレーズは紛れもなくtelephonesに向けられていた。先週のライブではこの曲は演奏されていなかったらしいから。
そしてアンコールでは再び卓郎が石毛のモノマネを連発すると、
「信頼していた友達に窓枠のこけら落としライブをかっさらわれた(笑)」
と石毛のMCへのお返しで笑わせてからイントロでマラカスを振りまくる「talking machine」で客席は狂乱のダンスフロアと化し、ラストの轟音「Punishment」では最後のフレーズを演奏している時に石毛とノブがステージに現れるとそのまま客席へダイブ。和彦と滝が参加して、9mmがtelephonesのことが大好きなのはめちゃくちゃ伝わってきたが、やっぱりtelephonesも9mmのことが大好きなのだ。あの頃とはいろんなことが変わったけど、それだけはずっと変わらない。それはきっとこれから先もずっと。ピックを投げる和彦の顔はやっぱりとびきりの笑顔だった。
卓郎はこの日、特別な関係性であるtelephonesのことを
「同じ時代を生きてきた仲間」
と評した。ただ仲が良いというのを超えた存在なのはそこなんだと。そしてそれはバンド同士じゃなくて、9mmと同じ15周年である窓枠も、こうしてライブに来ている我々もそうだと。
同じ時代を生きてきた、同世代という存在だからこそ、両バンドがデビューしてからずっと見続けることができた。それが本当に幸せだったということが実感できた1日だった。だからこそ、これからもずっと同じ時代を生きていきたい。そうすればその中でまたこういう日が必ず来る。そう思えばいろんなことを乗り越えてきた2組と同じように、我々も日常のいろんなことを乗り越えていける。また生きのびて会いましょう。
9mmのライブはいつも「何に勝ったのかはわからないけど、今日は勝った」っていう感覚を味わせてくれるということをこれまでもライブレポで何回も書いてきた。でもこの日は何に勝ったのかが明確にわかっていた。この日、ここに来ることがなかった場合の自分自身にこの日ここにいることができた自分は間違いなく勝った。だからこそ、いつにも増した充足感に包まれていた。
1.Discommunication
2.ハートに火をつけて
3.Cold Edge
4.キャリーオン
5.名もなきヒーロー
6.Bone To Love You
7.黒い森の旅人
8.Supernova feat. 石毛輝
9.Monkey Discooooooo feat. 石毛輝
10.新しい光
11.ロング・グッドバイ
encore
12.talking machine
13.Punishment
文 ソノダマン