前日の長野に引き続き、a flood of circleの「CENTER OF THE EARTH」リリースツアー。この日の水戸LIGHT HOUSEを終えると後は来週の赤坂BLITZを残すのみ、つまりこの日はツアーセミファイナルとなる。
朝から雨が降っていただけに(開演前にはほとんど止んでた)かなり肌寒さも感じる中、LIGHT HOUSEは前日の長野や初日の千葉に比べると男性客が多い印象。どことなくその男性客の年齢層も若いような気がして、各地方ごとの違いをそうした客席の様子からも伺うことができる。
18時になるとおなじみのSEとともに黒の革ジャン姿の佐々木亮介を中心としたメンバーが登場し、「CENTER OF THE EARTH」の1曲目に収録されている「Flood」からスタートして…という流れは前日の長野、初日の千葉と同じなので、それぞれのライブレポも参考にしていただきたい。
しかしながらその客層ゆえか、あるいは治安が悪いというイメージが強い水戸の地域性ゆえか、この日は前日の長野に比べてもダイバーが1曲ごとに飛んでいくわ、モッシュが激しいわで同じツアーであるはずなのに見える景色やそこから繋がるライブのイメージは全く変わる。バンドよりも客席から
「かかってこいやー!」
「もっと来いよー!」
という声が飛びまくるライブはそうそうない。
そんな中、千葉では「Backstreet Runners」が、長野では「Drive All Night」が演奏された5曲目のいわゆる「ぶっ飛ばし」ゾーンではこの日は最新シングル「The Key」のカップリングに収録された「Backstreet Runners II」に。アルバム出した直後のシングルで早くも同じ曲の続編的な曲を収録しているというのもすごい話であるが、アルバム収録曲の方が全速力で走り抜けるようなタイプの曲であるのに対し、「II」はどこかバイクなどに乗って周りの風景を確認しながら進んでいくような、速さだけではないものを含んでいる。それはアルバムバージョンよりも落としたBPMとそれによるサウンドの重さから感じることなのかもしれないが。
同じく前日の長野では「ベイビーそれじゃまた」が演奏されていた8曲目は千葉の時と同様に「Youth」に戻っていたが、
「グレッチもアップルも君に敵わない」
というフレーズに続いて、
「フェンダーもヤマハもギブソンも」
と楽器メーカーの名前を続けたが、これはフラッドから我々ファンに対する思いを込めた応援歌であるのと同時に、我々がフラッドに対する愛情をバンド側が語源化してくれた歌詞でもある。
「頑張れ 言わないけど
頑張れ 言えないけど」
と亮介の弾き語り的なメロから「Youth」というタイトルの通りに衝動を感じさせる激しいバンドサウンドになるサビでは歌われるが、言われなくてもフラッドのライブを見ていると、またこうしてライブを見るために頑張ろうと思えるのだ。
「姐さん七夕!」
というこの日だからこそのわけのわからない歓声がHISAYOに向かって飛ぶ中、客席ではスマホとタオルを落とした観客が声を上げ、みんなで捜索するという一幕も。亮介からは
「失くしすぎじゃない!?(笑)」
と笑われていたが、観客がみんなで協力して探そうとする姿に安堵の笑みを浮かべているようだった。
亮介「アルバムとシングルのリリースツアーですけど、新しいあるモノを作りました。それがなんなのかはまだ言えないんだけど、それの宣伝の写真を今日水戸で撮ろうと思って。すぐそこに水戸黄門の銅像があるじゃん?そこで印籠を押したら黄門様のありがたいお話みたいなのが流れるんだけど、地元の中学生っぽい集団にもの凄く冷めた目で見られてた(笑)この田舎者どもが、みたいな(笑)」
テツ「あの黄門様の話、めちゃ音量デカくない!?しかもめちゃ話長いし(笑)」
亮介「校長先生の話みたいに言うな(笑)」
と千葉LOOK同様によく訪れている水戸だからこそのエピソードを話して笑わせるのだが、しかし水戸は本当にノリが激しいというのが、千葉の時や前日の長野では「この曲やるのか!」的なリアクションが強かった「プリズム」においてもモッシュが起こることからもわかるし、このLIGHT HOUSEは都内だと渋谷のO-WESTよりもちょっと狭いくらいの横に長いタイプのハコであるだけに客席の中央はほとんどモッシュエリアと化していたのだが、狭いながらに2階席もあり、モッシュやダイブなどをして楽しみたい人とバンドの演奏をじっくり楽しみたい人との棲み分けができているのはこのキャパにしては珍しい。
そんな観客が前日の長野同様に、過去曲よりも今の最新のフラッドを待ちわびているということがよくわかったのが「The Key」〜「光の歌」という最新シングルとアルバムの収録曲が続いた流れ。みんな完全に曲の構成が頭の中に入っているからサビでぴっしりと腕が上がるし、「The Key」のサビでは
「Hello, hello new world」
というフレーズを口ずさむ人も多かったように思えた。
そんな中で先日誕生日を迎え、この日の序盤から「おめでとうー!」という声が上がっていたテツはただでさえ近い客席の最前列に乗り出すようにしてギターを自身の左太腿に乗せて弾きまくる。その姿はサポートメンバーでは見ることができない、このバンドに骨を埋める覚悟を持った正式メンバーだからこそのものであるし、これまでに何度も思ったことであるが、バンドに加入してくれてありがとうといつかテツに直接伝えたくなる。
そのテツは「ハイテンションソング」ではスピーカーの上によじ登ってギターを弾きまくるというハイテンションっぷりを見せ、この日のMVPにして今のフラッドの最大の推進力がこの男のギターと存在であることを証明する。曲終わりでは怪我する危険性も厭わずにもちろんスピーカーからステージに大ジャンプ。ツアーに参加するのは3本目だが、やはり会場が変わるとこうして見ることができる景色は変わるし、そうした一つ一つのアクションがこの日のライブをさらに楽しい、忘れることのできないものにしてくれる。
そのテツが亮介と並んでギターを弾きまくる「Dancing Zombiez」からはクライマックスへ。ダイバー続出の「シーガル」では亮介が最後のサビで
「歌え!」
と言ってマイクどころかマイクスタンドごと持ち上げて観客に合唱させるのだが、スタンドから完全にマイクが外れ、スタンドをステージに置くとマイクがそのまま落下。慌ててスタッフがマイクを元に戻すのだが、そんなことを一切気にする素振りのない亮介の姿はロックンローラーとして実にカッコいいと思えるし、バンドを止めることなく続けてきたことによってこうした場面を何度となく経験してきたんだろうなぁと思う。
そしてラストはやはりアルバムのタイトル曲である「Center Of The Earth」。
「ツアー何本回ってきたかわからないけど、今日が1番楽しかった!水戸最高!」
と口にした通り、この曲が最強のフラッドで鳴らされたことによって、この日も地球の中心はこの場所だった。飛び跳ねながらギターを弾く亮介とテツの姿はこの日が最高に楽しかったということを身をもって示していた。
アンコールではこのツアーではおなじみのテツと渡邊がツアーTシャツに着替えて登場すると、選曲もおなじみの東京事変「群青日和」から、
「君はそのままで、自由でいてくれ!だって世界は君のものだから!」
という「世界は君のもの」ではイントロでHISAYOがリズムに合わせて手拍子をしながら、間奏で亮介とテツが一本のマイクでギターリフを口ずさむというハイテンションっぷりを見せ、最後にはこちらもハイテンションが振り切った観客による
「飛ぶだけ!」
の大合唱が響き、その通りにダイバーたちが転がっていった。その瞬間はこの日も、地球の中心はここであり、世界はその中心にいた我々のものだった。
千葉も長野もアンコールは一回だけで終わりだった。でもこの日はきっとまだあるだろうな、と思っていた。それは治安が悪いというかまだまだ!とばかりに観客がさらなるアンコールを求めていたのもあったが、本編でやった曲がこの日は1曲少なかったから。
なのでやはりメンバーが再びステージに現れると、亮介がギターを弾きながら歌い始めたのは、この日は本編では演奏されなかった「春の嵐」。アンコールだからというのもあってか、前日までよりもはるかにテンポが速くなった高速バージョンの中、この日唯一テツが下手、HISAYOが上手に入れ替わって演奏し、間奏終わりで元のポジションに戻る時にすれ違い様に2人がハイタッチをしていた。その姿にフラッドが本当にこの4人のバンドであるということを改めて実感させられたし、そうして4人のバンドになれたからこそこうして最強と最高をさらに更新できているんだよな、と思えた。
つまりは、前日も本当に楽しかったのに、たった1日経っただけなのに、昨日よりはるかに凄いと思えるライブを見せてくれた。本当に何なんだろうか、このバンドは。
自分はフェス以外ではそんなに遠征をしない。ましてや同じツアーを何本も行くくらいなら、ほかのバンドのワンマンを見たいというスタイルである。でも今のフラッドはそうしたスタイルすらもぶっ壊してくれるくらいに、もっとライブを見ていたいし、見ておかないといけないと思わせてくれる。
ワンマンに行こうと思えるバンドは音楽や曲が好きで、カッコいいと思えるのは当然として、ライブが良いと思う存在だからこそ。初めてライブを見てからもう10年以上経つけれど、フラッドがそんな存在であり続けるだけではなく、それ以上の存在になってくれているのが本当に嬉しいし、ツアーに何箇所も付いていくのがこんなにも楽しいと思えるのは他の誰でもなく、過去のフラッドでもなく、今のフラッドだからだろう。だからこそ、長野も水戸も直前までチケットが取れる状況であるということに悔しさを感じてもしまうのだけれど。
1.Flood
2.The Beautiful Monkeys
3.Vampire Killa
4.Blood Red Shoes
5.Backstreet Runners II
6.Rodeo Drive
7.美しい悪夢
8.Youth
9.スノードームの夜
10.プリズム
11.The Key
12.光の歌
13.ハイテンションソング
14.Dancing Zombiez
15.シーガル
16.Center Of The Earth
encore
17.群青日和
18.世界は君のもの
encore2
19.春の嵐
文 ソノダマン