音楽専門チャンネル、SPACE SHOWER TVが主催する夏フェス、SWEET LOVE SHOWER。かつては日比谷野音で開催されていたが、2007年に山中湖で開催されてからはスペシャならではのラインナップと抜群のロケーションによって毎年チケットが即完するフェスになっている。
今年は例年の
LAKESIDE STAGE
Mt. Fuji STAGE
FOREST STAGE
WATERFRONT STAGE
に加え、GOOD VIBES AREAという新たなステージが登場してさらに巨大化。開催当初の「全ての出演者を見ることができる」(多少の被りはあれど)というコンセプトは薄れてしまったが、ラインナップの幅はさらに広がった。
初日のこの日はあいにくの雨。山の中という立地上、これまでにも何度も雨と共存してきたフェスではあるが、朝からこの雨というのは2年前だかに、ぼくのりりっくのぼうよみが「僕が客ならもう帰ってる」と言っていた時くらいの状況。それでもこの日は平日とはいえ、ラウド系のバンドも多いからか、雨を物ともしないTシャツ姿の観客の姿も多い。
9:55〜 FOMARE [FOREST STAGE] (Opening Act)
すでにWATERFRONT STAGEではオープニングアコースティック枠が行われており、通常のステージでのオープニングアクトとしてこの日の始まりを告げるのは、FOMARE。春フェスで見た時は3人だったが、ドラムが脱退したことによってアマダシンスケ(ベース&ボーカル)とカマタリョウガ(ギター&コーラス)の2人になり、ドラムはサポートに。
FOREST STAGEは朝からの雨によって地面がぬかるんだり、泥になっている部分が多いのだが、「君と夜明け」からスタートするとストレートなメロディックパンクサウンドに呼応してそんな足元の状態を一切気にしない元気な、こうしてフェスが始まるのを心待ちにしていた観客たちが次々にダイブしていく。当然のように戻ってきたダイバーたちは泥にまみれたりしているのだが、そんなこと全く関係ないとばかりにいつも通りに楽しもうとする姿が最高だ。
しかもライブが始まると雨が止んだのもまたこの場所やここに集まった人たちの思い、さらにはもしかしたらFOMAREは新たな晴れバンドなんだろうか?とすら思わせるような力が働いているように感じるが、あまりに朝早い時間帯だからか、アマダは高音が出づらいような印象で、実際に声が裏返るというかひっくり返るような部分も多々あった。しかし、
「俺たちもみんなと同じ。速いのが好きで、うるさいのが好きで、ゆっくりしたのも歌モノも好きでこうしてここに来てます。だから俺たちみんな仲良くなれるって思ってます」
と初めてライブを見てくれる人も多いであろうフェスのオープニングアクトという位置ならではの挨拶をすると、まさに雨が止んでひたすら爽やかに感じるような(強くなると音が流れがちだったりするが)風を感じることができる「風」から、最新アルバム収録の「Frozen」と、METROCKで見た時はバラード曲の「タバコ」を演奏したりしていたが、この日はひたすらアッパーに突っ走っていく。それはオープニングアクトといういつにも増して短い時間だからこそのセトリだろう。
そして「夢から覚めても」から最後は観客にボーカルを委ねて合唱が巻き起こった「Lani」。アマダはこのフェスに出れたことを本当に嬉しそうに話していたし、来年はオープニングアクトではない通常の枠で帰ってきたいとも話していた。去年、ロッキンに初めて出演するのが決まった時もアマダはツイッターで喜びを爆発させていた。フェスが当たり前にあって、そこできっと自分たちもたくさんの素晴らしいライブを見てきたからこそ、自分たちがそこに出れることを心から喜んでいる。これからも「Lani」はきっといろんなフェスでみんなで歌える曲になっていくだろうし、それはもっと大きなステージで見ることができる景色になるだろう。
リハ.新しい歌
リハ.5cm
1.君と夜明け
2.Continue
3.風
4.FROZEN
5.夢から覚めても
6.Lani
10:25〜 キュウソネコカミ [Mt.Fuji STAGE]
天気が良い日はステージ背後から富士山が見えるという抜群のロケーションを誇る、Mt.Fuji STAGE。そのステージのトップバッターであり、オープニングアクトではないフェスの実質的なトップバッターはキュウソネコカミ。これまでもこのフェスで数々の名場面を作ってきた、おなじみのバンドである。
最近おなじみのハードロックというかメタルチックなSEでメンバーが登場すると、
「朝イチはこの曲でしょー!」
と言って「MEGA SHAKE IT!!」で文字通りに朝10時台というフェスとしてもかなり速い時間に集まった観客の目を覚ます。
「今日は30分しかない!」
とヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)が持ち時間が短いことを告げながら「ビビった」と畳み掛けながら、ヨコタシンノスケ(キーボード)は
「ツアーバスが遅れたりしてまだ着いてない人とか、今日来れなかった人もいるだろうけど、そういう人の分までみんなで楽しもう!」
と、交通網的に毎年渋滞が発生してしまうこのフェスの特性をわかっており、そこに対するケアができるのは何度も出演してきたフェスだからこそ。
カワクボタクロウが工藤静香「嵐の素顔」の手を顔の前で動かすダンスをしたりする細かいパフォーマンスもありながら、「ギリ昭和」では間奏でショルダーキーボードになったヨコタがオカザワカズマ(ギター)と背中を合わせるようにして演奏。何げない場面のようでいてこれまでに数々の悔しさを味わってきたこのバンドのストーリー(このフェスでも3年前に開催直前に出演が決定したかと思えば一番小さいFOREST STAGEだったり)を思うと、こうしてメンバーが楽しそうに演奏しているというのは実に胸が熱くなるような光景である。
「朝イチからケガすんなよー!って言いながら突っ込んじゃうけどね!」
と言ってセイヤが客席に突入して観客に支えられながら歌ったのは「TOSHI-LOWさん」。まさにBRAHMANのライブよろしく、ダイバーたちはラウドなサウンドに呼応してセイヤ目掛けてダイブしていくのだが、ダイバーを殴るTOSHI-LOW(これはTOSHI-LOWなりの愛情表現だが)とは違い、セイヤは拳を合わせてステージの方へダイバーを流していく。こうした部分にもこのバンドの掲げる「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」というモットーが見えるし、バンド自身がそれを一番大事にしていることがわかる。そのセイヤは観客に支えられながらTシャツを脱いで上半身裸になるという、まさにTOSHI-LOWのような姿になり、鍛えているからか体格も少しずつではあるが近づいてきている気がする。
持ち時間が短いだけに、ソゴウダイスケによるドラムのイントロが鳴り響く「ハッピーポンコツ」が始まるとライブももう終わってしまうんだな、短いな、もっと見たいな、と思ってしまうが、ファンのそういう気持ちを察してか、
「次はもっと遅い時間に出てやる!」
と宣言。LAKESIDEとはいかなくても、Mt.Fujiでもトリなら持ち時間は長くなる。このフェスでもっと長い時間キュウソのライブが観れるように。それはファンだけでなくバンドも意識を共有している。
そしてラストはロックバンドの熱さ、ライブの素晴らしさを歌う「The band」。演奏前にLAKESIDE STAGEの方へ移動し始める客もおり、ヨコタはそういう人たちの方向まで駆け出しながら、
「この曲聴かないでいくの、もったいない!」
と言っていたが、本当にその通り。面白くて楽しいというだけではないキュウソの魅力が全て詰まった1曲だから。そういう人たちにもこの曲を聴いてもらえるような時間帯でこのバンドのライブが見れたら、より一層「ライブが見れるの最高だね」って思えるようになるはず。
FOREST STAGEのトリとして初出演した2014年にはMt.Fuji STAGEでトリを務めたサカナクションとタイムテーブルが被り、
「サカナクションの方に向かって「ヤンキー怖い」コールせえやー!一郎聴こえてんのかー!」
と爆笑のパフォーマンスでしっかりと爪痕を残した。あれから5年、キュウソはもうこのフェスには欠かせないバンドになっている。ちゃんと自分たちの音楽で勝負するバンドとして。
1.MEGA SHAKE IT!!
2.ビビった
3.ギリ昭和
4.TOSHI-LOWさん
5.ハッピーポンコツ
6.The band
11:05〜 ヤバイTシャツ屋さん [LAKESIDE STAGE]
昨年はMt.Fuji STAGEのトップバッターだった、ヤバイTシャツ屋さん。今年はLAKESIDE STAGEのトップバッターとしてこのフェスのメインステージの幕を開ける。
おなじみの「はじまるよ〜」のSEが流れていつも通りにげんきいっぱいな3人が登場すると、いきなりの「かわE」でスタート。もはやヤバTの最大の代表曲の一つと言っていいレベルの曲であるが、フェスで1曲目に演奏されることはあまりない。持ち時間的にもほかのフェスとなかなか差別化がつけにくいところではあるが、毎回どんなライブでもセトリや内容を変えるヤバTだけにこのフェスならではの特別な予感がする。もちろんそうするのはメンバー自身はもちろん、毎回ライブを見に来てくれるファンを飽きさせないように、という意識によるものだろう。
なのでヤバTのパンク魂炸裂な「Tank-top Festival 2019」も演奏しつつ、ライブ定番曲である「無線LANばり便利」という曲も演奏されるのは、フェスという場だとまだまだライブを見るのが初めての人がたくさんいて、そういう人たちが聴きたい曲をちゃんと演奏するという姿勢によるものだ。
やはり地面はぬかるんでおり、足場はかなり悪いとはいえ雨は止んできているが、早朝が土砂降りの雨だったことを受けてか、こやまは母親から
「伝説作ろうな」
というLINEが来たことを明かして爆笑を巻き起こす。確かに豪雨の中のライブというのはとかくいつもとは違う力をバンドから引き出したりするし、それはヤバTメンバーも京都大作戦などで見てきただろうけれど、この場においてはそういうシチュエーションにならなくて良かったと思う。
リリースされたばかりの最新シングル「癒着☆NIGHT」も完全にすでに代表曲と言ってもいい受け入れられ方をしているが、しばたありぼぼのハイトーンボイスはどんなに朝が早くても全く変わらない。人によっては朝イチだと声が出にくかったりするが、そんなことが一切ない。ベースの演奏も含めて、しばたがバンドのサウンド面での安定感を担うようになっており、これは頼もC超えて頼もDである。
「USB」こと「Universal Serial Bus」ではその激しいツービートのパンクサウンドで次々に観客がステージの方へ転がっていくと、近年は「ヤバみ」→「ハッピーウェディング前ソング」という2曲をライブの締めとして演奏するパターンが多いのだが、今回はそれを逆の順番で演奏。それは最後に「あつまれ!パーティーピーポー」を演奏するための流れだったのだが、こやまは演奏前に、
「SPACE SHOWER TV、2016年11月のPower Push!」
と紹介した。去年のライブでも同じように紹介していたが、もう3年も前のことを今でもこやまはしっかり覚えている。ずっとスペシャを見て育ってきて、MV監督としても活躍するこやまの礎を作ったのはきっとスペシャだ。そんなスペシャで自分たちの曲が流れまくった(Power Push!の曲は2時間に1回くらい流れる)嬉しさを今でも忘れられないのだろう。
そうした部分にヤバTの義理堅さというか、人間性の素晴らしさを感じることができるし、そうしたきっかけの一つ一つがその日のライブを特別なものにしていく要素になっていく。去年は10-FEETの「goes on」でこやまがギターを弾いたりもしたが、今年のラブシャでのライブもやっぱりラブシャでしか見れないものだった。素晴らC超えて素晴らDだった。
リハ.KOKYAKU満足度1位
リハ.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
1.かわE
2.Tank-top Festival 2019
3.無線LANばり便利
4.Tank-top of the World
5.癒着☆NIGHT
6.Universal Serial Bus
7.ハッピーウェディング前ソング
8.ヤバみ
9.あつまれ!パーティーピーポー
11:40〜 teto [FOREST STAGE]
このフェスには初出演、teto。雨上がりのFOREST STAGEに登場。今年は出演していない夏フェスもあっただけに、ライブを見るのは6月の渋谷でのワンマン以来。
ギターの山崎陸が短髪で金というか銀というか、みたいな色に髪を染めているのが目立つ中、「高層ビルと人工衛星」でスタートすると、小池貞利(ボーカル&ギター)はいきなり客席に突入したりという衝動炸裂っぷり。
さらには「拝啓」ではステージに組まれた鉄枠によじ登り、そこから客席にダイブしたりするというとんでもないやりたい放題っぷり。
「これだけたくさん人がいるんだから、それぞれの感じ方、それぞれの楽しみ方があるはずです!」
と小池は言ったが、本人のパフォーマンスが何よりもそれぞれの楽しみ方を実践している。
tetoの曲は言葉数が非常に多い、言いたいことを性急なビートに乗せるギターロックであるが、ライブとなると小池は客席に突入したり、ステージで暴れまくったりしているだけに原曲通りに歌うことはほとんどない。それは小池が水の入ったペットボトルを客席に向かって放り投げた「暖かい都会から」においてもそうだが、それこそがtetoのライブをtetoたらしめている。ただ上手く演奏するだけならそうできる人もたくさんいるだろうけれど、この人たちじゃないと絶対できない、絶対こうならないというライブをtetoは毎回やっている。
すると小池が
「今年の夏、実家に帰ったんですよ。おじいちゃんがいるんですけど、アル中でもうボケも入ってんのかな?僕の名前をもう覚えてないんです。適当な名前で僕のことを呼ぶんですよ。
でもtetoのCDをおじいちゃんが聴くと、
「サダくんは本当に良い曲作るね」
って僕の名前を覚えていてくれる。音楽の力って人の力なんだなって思いました」
とこの夏に実家に帰省した際に会った祖父の話をするのだが、tetoの音楽はまさにその人の力の音楽であり、それはこの日のライブやこれまでのどのライブでもそうだった。その、この4人でしかない人の力に何度も感動させられてきたが、ついにそれを小池自身が言語化できるような出来事があった。それは決して良い出来事だったわけではないけれど、その後に演奏された、小池のアコギの弾き語りからバンド編成へと途中で切り替わり、なぜか小池が客席の泥沼に突っ込んで行って自ら泥だらけになった「光るまち」の演奏は小池の夏の経験のように、自分の親族のことを思い出させるような感覚があった。それもまた曲を演奏するメンバーの人の力によるものだ。
そして最後は8月の終わりだからこその「9月になること」という実に粋な選曲。4月リリースの最新シングル「正義ごっこ」収録曲も、10月リリースのアルバムからの新曲もやらないという意味では音楽的には今のモードではなかったかもしれないけれど、ライブ自体には間違いなくtetoの今が刻み込まれていた。その音楽の力と人の力を信じているからこそ、このバンドが持つその力がどこまで届くのかをこれからもこの目で確かめなくては。
1.高層ビルと人工衛星
2.拝啓
3.暖かい都会から
4.光るまち
5.9月になること
12:40〜 TRIPLE AXE [LAKESIDE STAGE]
今年の夏フェスをジャックするべく、SiM、coldrain、HEY-SMITHの3組が合同ツアータイトルである「TRIPLE AXE」としてこのフェスにも出演。3バンドで35分のライブというのはいったいどういうものになるのだろうか?先にほかのフェスにも出演しているが、ある意味では今年のこのラインナップの中でも目玉的な存在と言えるかもしれない。
元から各バンドともなにかと機材が多い(SiMはシンセ、coldrainはギター×2、ヘイスミはホーン隊)が、ステージにはずらっと全員分、つまりドラムセットが3つと、各々のアンプが置かれており、この広いLAKESIDE STAGEがどことなく小さく見える中、最初に登場したのはHEY-SMITHで「Dandadan」を演奏すると、入れ替わりでSiMが登場して昨年は観客にギターを弾かせるというパフォーマンスを行った「KiLLiNG ME」、さらにcoldrainが登場して「ENVY」と、代わる代わるそれぞれの曲を演奏していく。
通常、ゲストが出てきたりコラボライブ的なものになると、入れ替わり時にMCをしたり、転換に時間がかかったりしてライブ自体のテンポが悪くなってしまうことも多々あるが、さすがそこはライブ猛者であるこの3バンドなだけに重々承知済みで、本当に入れ替わっているのかと思うくらいに曲間は一切ない。
とはいえ、こうして交代交代で曲をやるんならそれぞれが別々に出た方が間違いなく1組あたりの曲数は増えるわけで、この名義でわざわざ出演している意味とは?と思っていると、
「さっきは邪魔されたからな!」
と言って野球のバットを持って再登場してきたMAH率いるSiMの新曲「Baseball Bat」からは全員が入れ替わるのではなく、ボーカル陣がコーラスを務めたりというコラボ形式に。さらにこの曲では「TRIPLE AXE」と書かれた巨大風船が客席を転がり、メンバーたちは野球の試合でもたまに見られる、バズーカで圧縮されたTシャツを客席にぶっ放すというサービス精神あふれるパフォーマンスを見せる。
HEY-SMITH「Radio」以降はかなす、イイカワケン、満というこのバンドのホーンセクションメンバーたちがcoldrain「The Revelation」、SiM「GUNSHOTS」といった曲たちに華やかなホーンサウンドを加えていく。それによって普段とは全く違う聞こえ方になるだけに、この編成でのMVPはこの3人であると言っていいかもしれない。
猪狩「なんで俺たちがこの名義でやろうってなったかっていうと…」
MAH「こいつら日本語わかんないから言ってもムダだ」
猪狩「え?そうなん?じゃあちんこ!って言ってもわからへんの?」
とあくまで意味は口にせずにひたすら曲を演奏するというスタイルだったが、coldrain「24-7」ではウォールオブデスが、HEY-SMITH「come back my dog」では激しいサークルモッシュが巻き起こり、全バンドのメンバーだけでなく、この日の他の出演者たちまでステージに集結するというカオスな空気に。それがより一層お祭り感を盛り上げていたが、こんな凄いことができるのなら今年の夏だけっていうのは実にもったいない気がする。
まだ3組とも全然有名ではなかった2012年の4月に赤坂BLITZでこの「TRIPLE AXE」の3マンが行われた。まだ当時は自分はHEY-SMITHをちゃんと聞いたことがないというくらいに3バンドともまだまだ若手という立ち位置だった。
しかしそのライブはソールドアウトし、スペシャで放送されたライブ映像は「これからこのバンドたちみたいな音楽がロックのメインストリームで鳴るんじゃないか?」と思うには充分すぎるものだった。
そして実際にこの3組を筆頭に、ラウドロックという音楽がこうしてフェスのデカいステージで鳴らされるようになった。「TRIPLE AXE」はそういう意味でも紛れもなく日本のロックシーンを変えたと言ってもいい存在だ。それぞれに色々あった中で今でもこうして集まって、特別なことができている。それを見れているのも当たり前ではないということをこのバンドたちは教えてくれたし、毎年これをやるわけにはいかないだろうけれど、またいつかこの形でも見てみたい。もちろん、自身がフェスを主催している身であるMAHが
「フェスで終わることなんて何一つないからな!」
と言ったように、やはりここからライブハウスに向かわせるという意識が今回の3バンドの集結した意味だったと思う。
1.Dandadan
2.KiLLiNG ME
3.ENVY
4.BASEBALL BAT
5.Radio
6.The Revelation
7.GUNSHOTS
8.24-7
9.come back my dog
13:15〜 ハルカミライ [FOREST STAGE]
このフェス初出演、今年は春から様々なフェスで爪痕を残しまくっている、ハルカミライ。もう始まる前からFOREST STAGEはたくさんの人が集まっている。初出演とはいえもう集客力としてはこのステージに出るようなレベルではないだろう。
おなじみの「君にしか」で橋本学(ボーカル)がその男らしくも温かみのある声を響かせると、その橋本は「カントリーロード」からは客席に突入し、それ以降ほとんど観客に支えられながら歌っていた。なので必然的にステージよりも客席の方に目がいきがちなのだが、ステージに目を向けてみると、関大地は「それ落ちたらマジでヤバいって!」と思ってしまうくらいに高い位置にまで鉄枠をよじ登ってそこでギターを弾いているし、須藤俊はベースを床に置いてステージを歩き回っている。そんな各々がやりたい放題にやりまくっている中で小松謙太は思いっきり力を込めてドラムを叩きまくり、このバンドの曲の土台を支えている。
「朝、めちゃくちゃ雨降ってたけど、今はもう降ってない。俺たちが止ませたんだぜー!」
と橋本が観客に支えられながら叫ぶか、本当にそうなんじゃないか、と思えるような力がこのバンドにはある。この前に出たtetoの小池が言っていたように、このバンドもまた音楽の力は人間の力というのをその身を以て実践してきたバンドだ。
「そこ、やべーな」
と橋本が観客の上から指差した部分には先程tetoの小池がダイブした泥沼があるのだが、橋本は服を汚したくないからか、靴を脱いだ上でそこに突入。
「お前らさっきまでここを避けてたくせに、なんで俺が入るとこんなに集まってくるんだよ!」
と観客とコミュニケーションをとるのだが、その一環の中でダイブしてきた観客を呼び止め、
「一緒に歌おう。あ、でも曲知らないかもしれないな。じゃあちょっとそこで踊っておいて!」
と言って、自身はすぐに客席に突入していき、ダイバーに無理矢理躍らせるのだが、ノリがめちゃ良いのか普通にステージの下で踊りまくり、その姿がカメラに収められていただけに爆笑が巻き起こる。こんなことができるバンドがほかにいるだろうか。
そして橋本は観客に支えられながら、
「みんながこうやってライブを見にきてくれて、ハルカミライすごい良かった!とか、優勝!って言ってくれる。それが何よりも俺たちの力になってるんだぜー!」
と叫んで、「アストロビスタ」の大合唱を生み出す。
今でもこうしてこのバンドのライブを見ているけれど、きっと自分が今10代だったらこのバンドを追いかけるような人生になっていたんじゃないかと思う。というかそうやって生きていたり、このバンドから力をもらっている若い人はたくさんいるはず。でもそれは若い人にしか届かないものじゃない。自分のようにメンバーよりも年上だったり、自分よりさらに年上の人にもきっと響く。だからこのバンドは今年、幕張メッセでワンマンができるところまで来た。本当に何よりも、これがカッコいいんだってたくさんの人と話ができたら、それだけで。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!
4.俺たちが呼んでいる
5.春のテーマ
6.それいけステアーズ
7.Tough be a high
8.世界を終わらせて
9.アストロビスタ
14:15〜 04 Limited Sazabys [LAKESIDE STAGE]
若手にはこのフェス初出演のバンドも多い中、もうすっかりおなじみのフォーリミ。そう感じるのは毎年出演するようになったということに加え、GENがスペシャの「ヨルジュウ」でレギュラーとなり、スペシャファミリーの一員というイメージになっているからというのもあるだろう。
おなじみのオリジナルSEでメンバーがステージに登場すると、ロッキンの時は演奏していなかった「Feel」からスタートするというあたりにライブでいろんな曲をすぐに演奏することができる状態にあるというこのバンドのライブをして生きているというバンドの在り方を感じさせるが、もうすっかりライブ定番曲となった「Kitchen」、早くも序盤で演奏された、山中湖で演奏されるとより一層タイトルが似合うような気がする「swim」と曲を連発していくのだが、GENはこのフェスだと本当に歌いやすそうだ。ライブによっては高音がキツそうに感じるような時もあるが、このフェスで見る時は全然そんな感じがない。
それは日頃からこの山中湖にあるスタジオで曲を作っているという(その様子はかつてのドキュメンタリー映像でも見ることができる)、GENが「産地直送」と言うように演奏される曲が生まれた場所がこの山中湖だからという部分も間違いなくあるだろう。自分の子供のような存在である曲たちを故郷に連れてきている感覚というか。
ショートパンクチューン「Message」、照明やレーザーが派手にステージを彩る「fiction」と続くと、「Galapagos」では間奏でいったんブレイクが入り、GENが
「スペシャから酷使されている。着いた瞬間に櫻井食堂のカレーを食べさせられたり、TRIPLE AXEのステージに出されたり。慌ただしすぎてトイレに行く時間すらなかった(笑)」
とレギュラーとして出演時間以外も収録をしているという忙しさをうかがわせるが、その間にカメラを向けられたKOUHEI(ドラム)はカメラに向かってひたすら鼻をほじるという仕草で笑いを誘う。
なのでGENは疲れているのかと思いきや、「Alien」からはさらにギアを上げたように感じ、日頃考えすぎている我々を自分らしく生まれ変わらせる「Squall」と続くと、ラストは激しいサークルモッシュが客席中で展開された「monolith」で終了…かと思いきや、
「俺たちが名古屋の04 Limited Sazabysでした!覚えた?不安だなぁ…」
と言ってさらに「Remember」を追加し、最後の最後により一層激しいサークルモッシュとダイブというこのフェスだから観れる景色を生み出していた。
GENはスペシャに対する愚痴を口にしていたが、その話をしている時の表情は楽しそうだった。バンド仲間であるハマ・オカモト(OKAMOTO’S)や渋谷龍太(SUPER BEAVER)だけでなく、Creepy Nutsやあっこゴリラというヒップホップアーティストともともに司会をやるようになり、もともと幅広い音楽知識と興味を持つGENにとっては願ってもない仕事となった。
さらにそこに矢本悠馬や三原勇希というスペシャでレギュラーにならないと出会えなかったような新しい仲間とも出会えた。忙しいかもしれないけれど、少年ジャンプで言えばONE PIECE的なMy HEROバンドであるフォーリミに仲間が増えていくのは必然と言えるし、それは本当に楽しそうに見える。GENも
「最初に出た時はラブシャにライブをしに行くっていう感じだったのが、今は迎えてくれるホームになった」
と話していた。今このバンドが帰る場所は自分たちが主催しているYON FESだけじゃない。ここも間違いなくそうだ。
リハ.Remember
リハ.nem…
1.Feel
2.Kitchen
3.swim
4.Message
5.fiction
6.Galapagos
7.Alien
8.Squall
9.monolith
10.Remember
14:50〜 Creepy Nuts [FOREST STAGE]
ラウド・パンクバンドが多く居並ぶこの日の中では異質な存在と言える、Creepy Nuts。とはいえ2年連続でのこのFOREST STAGEへの出演であるし、MCのR-指定はGENと同様に「ヨルジュウ」のVJとしても活躍している。
2人が登場してDJ松永が曲をプレイし始めると、そこにR-指定がラップを乗せる「板の上の魔物」からスタートするのだが、観客からは「おめでとうー!」という声が上がる。その声の理由は、松永がDJのスキルを競う日本大会で優勝したからであり、かつてMCバトルで優勝したことがあるR-指定とともに「日本一のMCと日本一のDJのユニット」になったことになる。
そのR-指定のスキルを見せつけるような高速ラップの「助演男優賞」、スペシャの「ヨルジュウ」が夜10時からということでそのテーマソングとして聴くこともできる「よふかしのうた」を披露すると、R-指定が自分たちがなぜヒップホップという音楽を選んだのかということを語り始める。不良でもイケてる奴らでもない自分たちが選んだヒップホップ。それはロックと同じように内に抱えてる思いを爆発させたいという思いであり、同業者に舐められないようにスキルを磨き続けてきたという2人の努力が日本一というところまでたどり着いたことを伺わせる。
その自身のヒップホップへの思いを曲にした「トレンチコートマフィア」、観客全員が待ち望んでいたであろう大歓声が上がった「合法的トビ方ノススメ」と連発すると、この日出演するパンクやラウドバンドのTシャツを着た人たちがみんな曲を全部ちゃんと知っている。だからこその盛り上がりはパンクやラウドの中にあってもヒップホップが決してアウェーではないということを感じさせてくれる。それはこの2人のヒップホップ、ロックスピリットあってのことでもあるのだが。
そしてラストは自身たちの生き様を曲にした「生業」。以前まではおなじみだった、R-指定の聖徳太子スタイル(観客からお題を集めてそれをフリースタイルでラップするというもの)こそやらなかったが、それはそうした一見さんを引き込むようなことをしなくてもこのフェスの観客を曲だけで引き込むことができるという今のCreepy Nutsの存在を示していた。これだけたくさんの人を集めることができるのなら来年はMt. Fuji STAGEでこの2人のヒップホップが鳴っているかもしれない。
1.板の上の魔物
2.助演男優賞
3.よふかしのうた
4.トレンチコートマフィア
5.合法的トビ方ノススメ
6.生業
15:50〜 マキシマム ザ ホルモン [LAKESIDE STAGE]
昨年に続いての出演となる、マキシマム ザ ホルモン。今やフェスの中でもトップクラスの動員を誇るバンドであり、LAKESIDE STAGEはスタンディングエリア後方のシートゾーンや椅子エリアにまで人で溢れかえっている。
メンバーが登場すると、ゴリゴリサウンドの「What’s up, people?!」からスタート。マキシマム ザ 亮君の健康的な痩せた風貌も今ではすっかり見慣れたものになっているが、もう地面が揺れまくっている。野外で地面がここまで揺れるという経験もそうはできない。全然関係ない人が通りがかったら地震が起きているかと勘違いしてしまいそうなレベルだ。
最新作からは「maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜」が演奏されるが、目まぐるしく変わる曲展開に合わせてナヲ(ドラムと女声)が前に出てきてアイドルかのように歌ったりする中、スクリーンに映し出される映像もライブの映像が加工されたものになっていたりと、スペシャでは類を見ない長寿番組となっている「モンスターロック」のVJとしてスペシャを支え続けてきたナヲとダイスケはんへのスペシャ側からの愛の強さを感じさせる。
かつてナヲはこのフェスのMC中に「いすずのトラック」のCM曲を歌って、実際に自身の歌ったものがCMで流れるようになったという経緯があるが、この日は
「どこま〜でも どこま〜でも 果てしない空〜」
のフレーズでおなじみの専門学校・立志舎のCMソングを全力で歌ってCM第2弾ゲットを狙うという場面も。例年MCが長くなりすぎてライブ時間が押すというパターンになりがちだが、今回はMCはやや抑え気味。
「便所サンダルダンス」以降もスクリーンにはオリジナル映像が映し出されるので、ステージだけでなくそっちも見ないといけないという視覚的な忙しさがある中、けん玉の達人でもあるベーシスト・上ちゃんをフィーチャーした「上原 〜FUTOSHI〜」、この日のラウド界の首領的な立ち位置のバンドでありながらもこのバンドが持つポップさを最大限に発揮した「チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ」と、フェスではあまりやらないがバンドの中でも人気の高い曲を演奏。
去年とかもフェスシーズン前にファンに聴きたい曲を募ったりしていただけに、この辺りの選曲はそうしたファンへの感謝的な意味合いも強いのだろう。あまりそういうことを口にするようなタイプのバンドではないが、最近は何かと炎上じみたこともあり、そうした時にもファンの声や存在の大事さを痛感してきたはずだ。
前日にナヲと亮君がダウンタウンDXに出ていたこともあり、「視聴者は見た!」のコーナーのパロディ的な感じで上ちゃんの目撃情報をネタにしたりしながら、「包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ」で再びラウドに振り切ると、最後はMVのダンスがアニメーションとして映し出された「恋のスペルマ」で観客一面がダイスケはんに合わせて踊るという異様な光景を生み出した。
ナヲとダイスケはんはいつもこのフェスでは
「スペシャには縁もゆかりもないから、なんで呼ばれているのかわからない」
と言っている。もちろんそれはネタでしかないのだが、VJが入れ替わっていくサイクルがあるスペシャにおいてこの2人が今のスペシャの顔と言っていいはず。いろんなフェスに強い思いを持って臨んでいるバンドだが、このフェスにもきっと特別な思いを持っているはず。
1.What’s up, people?!
2.maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜
3.便所サンダルダンス
4.上原 〜FUTOSHI〜
5.チューチュー ラブリー ムニムニ ムラムラ プリンプリン ボロン ヌルル レロレロ
6.包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ
7.恋のスペルマ
16:25〜 the chef cooks me [WATERFRONT STAGE]
湖畔に作られたWATERFRONT STAGE。MORNING ACOUSTICが行われていることも含めて弾き語り的なイメージが強いし、それが似合うステージでもあるのだが、the chef cooks meはフルバンド編成で登場。
ギター、ベース、ドラム、キーボード、シンセ、コーラスという小さいこのステージなだけにかなり密集したような編成の中、アジカンのサポートキーボードとしてもおなじみのシモリョーはほぼボーカルに専念という形。
10年以上前にデビューした時はダンスロックバンド的なパーティー感が強く、アジカンのゴッチに見染められてバンド再生を果たしてからは元からシモリョーが持っていたポップさを強く押し出したものになっていたが(当時はゲスの極み乙女。ブレイク前のちゃんMARIがキーボードで参加したりしていた)、今のモードは世界のポップミュージックのエッセンスも取り入れ、経験や技術を重ねたからこそできる、落ち着いたポップミュージック。
だからこそこのステージの景観にもよく合っているのだが、選曲も含めて完全に現在のモードを強く打ち出したものになっている。座って聴いている人もたくさんいるが、そうした聴き方が似合っているというか。
アジカン「踵で愛を打ち鳴らせ」もそうしたバンドの今のモードでカバーされたのだが、祝祭感の強いアジカンバージョンとはまた違う魅力を感じさせてくれるのはさすがゴッチに
「このまま埋もれさせてはいけないくらいの天才」
と評されたシモリョーだからこそ。
そのシモリョーは、
「最後まで楽しんでください。僕はまた明後日、アジカンのサポートで来るんで、またそこで会いましょう」
と3日目の再会を約束して「Now’s the time」を演奏。初期からはだいぶ変化したが、それはシモリョーのその時々の趣向をそのまま反映していると言える。バンド再生後にはアジカンのツアーやNANO-MUGEN CIRCUITに出演した際にアジカンファンからも大絶賛されていたが、そのさらに外側へとこうしたフェスへの出演で広がっていって欲しいと思う。
1.Ukiyo
2.CP
3.最新世界心心相印
4.環状線は僕らをのせて
5.踵で愛を打ち鳴らせ
6.Now’s the time
17:05〜 SUPER BEAVER [Mt.Fuji STAGE]
この8月後半からのフェスの直前、バンドはドラマー藤原”31才”広明の病気療養を発表した。それに伴って出演をキャンセルするのではなく、サポートを迎えてフェスに出演することも。
だからこそメンバーが登場した時も「本当に大丈夫なんだろうか?」という心配そうに見守るような雰囲気も感じられる中、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と渋谷龍太が歌い始める「27」からスタートすると、このライブもこのフェスも人生すらもあっという間に終わってしまうことを歌う「閃光」と演奏され、渋谷は
「1人いないからダメだ、って思われたらそれまでのバンドだっていうこと」
と3人で臨んだライブへの強い思いを感じさせる。
以前も藤原は少し離脱した期間があったし、その前にはギターの柳沢亮太も病気で療養したことがある。今でこそアリーナ規模の会場が即完するようなバンドになっているが、そこに至るまでにはいろんな逆境があった。とはいえ、4人の意志がそのまま音楽と鳴らす音そのものになっているSUPER BEAVERなだけに、発表があった時には出れなくても仕方がない、くらいにすら思っていた。だがバンドは出演するという選択をした。
「チャンスは逃すとすぐになくなってしまう」
と渋谷が言っていたように、ライブを飛ばすということがどれだけ失うものがあるのかということをわかっているバンドだからである。だからこそバンドは柳沢離脱中も決して止まることを選ばなかった。
それはこうしてライブに出ることが楽しい予感がするということを感じさせてくれるような「予感」から、満員の観客の両腕が高く上がる「青い春」と続くと、古くからの知り合いであるというこの日のサポートドラマーである河村吉宏を紹介し、
「ステージに出る前に俺と藤原でやる儀式みたいなのがあって。ケツを叩いてから行くぞ、ってやるんだけど、今日もエアーでやってきた。5人でライブに臨んでるつもりだから。
大切な人の存在に居なくなってから気付くっていうのは我ながら未熟だな、って思うんだけど気づかないよりは良かったなって思う」
と実に渋谷らしい言葉で藤原の存在を口にすると、「秘密」のコーラスの合唱部分では曇り空の中から夕陽が顔を見せた。そのあまりのタイミングの良さについ感動してしまったのだが、渋谷は
「陽が出てきたけど、俺たちの力じゃないですよ」
と謙遜していたが、このライブを見ていた人はみんなSUPER BEAVERの力によるものだとわかっていたはずだ。じゃないとあのタイミングで夕陽が出るわけがない。
そしてラストは渋谷の歌声と歌詞のメッセージが1人1人の胸に刺さっていく「人として」。藤原の状態の詳細はわからないけれど、こうしてバンドが進み続け、SUPER BEAVERでしかないライブを見せてくれるのは変わらないし、それは戻ってきた時により一層強固なものになると思う。
渋谷は「ヨルジュウ」のVJも務めるようになっており、このフェスに欠かせない存在になっている。だからこそ、来年は4人でこのフェスのステージに立っている姿を見ることができるはずだ。
1.27
2.閃光
3.予感
4.青い春
5.秘密
6.人として
17:50〜 THE ORAL CIGARETTES [LAKESIDE STAGE]
初出演時はオープニングアクトとして、それから出演を重ねるごとに重要な位置を担うようになり、今年もこのLAKESIDE STAGEのトリ前という位置になった、THE ORAL CIGARETTES。すっかり陽が落ちてきた時間帯での登場である。
V系の音楽をもルーツに持つこのバンドのダークな一面を見せる「PSYCHOPATH」でスタートし、山中拓也がその艶やかな声を響かせると、序盤から早くもキラーチューン祭りなのかと思うような、山中がギターを弾きながら歌う「狂乱Hey Kids!!」から「カンタンナコト」と連発すると、MVでは山中がキレキレのダンスを見せていた「ワガママで誤魔化さないで」ではタンバリンを叩きながら歌う。
すると去年MCで話題になった、あきらかにあきら(ベース)の父親の話になるのだが、そのあきらは家族と前泊してからこの日のライブに臨んでいるという話から、
「みんな、父親と晩酌してる?した方がいいで。父親には勝たれへんからな。昔、俺も父親と大喧嘩して血まみれにさるて家を追い出されて、そのまま一人暮らししたんやけど、タクシーの運転手のおっちゃんに「兄ちゃん、人を殺ったんか?」って言われた(笑)」
と何故か父親トークになるのだが、そうした話ができるのは山中が言うようにこのフェスをホームだと感じているからこそ。
ブラックミュージックのエッセンスも取り入れたコーラスが響く「What you want」から、朝に雨が降っていたからという理由で演奏された「透明な雨宿り」という選曲も含めて、あまりフェスらしくはない流れではあるが、それもまたホームと呼べる場所だからこそどんな曲でもできるということなのだろう。
そして最後は「容姿端麗な嘘」で大合唱を轟かせながら、「BLACK MEMORY」のこのバンドならではのダークなロックサウンドが薄暗くなった山中湖に響いた。
かつては山中がこのフェスで涙を流したこともあったし、このフェスを特別な場所であるとして普段は演奏されることがほとんどない「エイミー」を演奏したりもした。それくらいにこのフェスを特別な場所だと思っているバンドが狙っているのは間違いなくこのステージのトリ。フェス側としてもオープニングアクトとして始まったこのバンドがメインステージのトリを務めるというのはフェスの物語として実に素晴らしいものになるが、この日のトリであるサカナクションなど、そこの壁はかなり高い。しかし今の勢いを見ていると、いずれこのバンドが夜のこのステージに立つ瞬間を見る時が来る予感がしている。
1.PSYCHOPATH
2.狂乱Hey Kids!!
3.カンタンナコト
4.ワガママで誤魔化さないで
5.What you want
6.透明な雨宿り
7.容姿端麗な嘘
8.BLACK MEMORY
18:45〜 SHISHAMO [Mt.Fuji STAGE]
去年こそ出演しなかったが、このフェスではおなじみのSHISHAMO。宮崎朝子は今年から新設のGOOD VIBES AREA以外の4ステージ全てに出演したことがあるという、ミス・ラブシャと言ってもいいような存在である。
メンバーが登場するとその宮崎が先に挨拶するのだが、宮崎は「Mt.Fuji STAGE」をいきなり噛んでしまうというハプニングもあったのだが、「君と夏フェス」でスタートして一気に夏フェス感を高めると「恋する」、アニメーションの映像がスクリーンに流れる中で観客がぐるぐるタオルを回す「タオル」とフェスでもおなじみのギターロック的な曲を連発。
「野外のフェスでトリをやるのが初めてだったから、誰もいなかったらどうしようって思ってたけど、こんなにたくさん残ってくれてて嬉しい」
と宮崎は言っていたが、そもそもが2年前まではLAKESIDE STAGEに出ていたし、このMt.Fuji STAGEのトリはLAKESIDE STAGEに出るのと同じくらいにプライオリティが高い(かつてはサカナクション、[ALEXANDROS]という今年のLAKESIDEのトリバンドから、RADWIMPSや山下達郎も出演したスロットである)位置なだけに、そこを任されておかしくないバンドになったということである。
そんな中ですでにリリースが決定しているシングルから、なぜかカップリングに収録される方の新曲「君の大事にしてるもの」が演奏される(宮崎も「タイトル曲じゃないんかい、っていう」とセルフツッコミを入れていた)のだが、曲の内容が、君の大事にしてるものはギター、という歌詞であるだけにこのフェスという音楽好きが集まる場で演奏されるのはこの曲がふさわしいんじゃないかという判断によるものだったんじゃないかと思われる。
そして夜の時間帯ならではの選曲だな、と感じさせてくれたのがミドルテンポの「夏の恋人」。アッパーに上げていくだけではない、夏の時間の儚さを感じさせてくれる曲だが、こうした曲をフェスで演奏することができるくらいの演奏の説得力を今のSHISHAMOは持っている。
そして宮崎の演奏する姿をカメラが後ろから捉えることによって、宮崎が見ている客席の光景を我々も観ることができるスクリーンの使い方をする「明日も」から、ラストは力強いコーラスが響き渡る「OH!」までを一気に駆け抜けてみせた。アンコールもなし、トリだからといって特別なことをするわけでもなくステージを去っていくという潔さが実にSHISHAMOらしいなと思った。
去年、SHISHAMOは夏フェスに出なかった。自分たちの初のスタジアムワンマンに夏の全てを賭けていたからである。しかしそれは残念ながら中止になってしまった。そのリベンジ的なさいたまスーパーアリーナのワンマンが月末にあるが、そうして出演しない中でもメンバーはこのフェスにわざわざ遊びに来ていた。もうどんなことがあっても「ラブシャに来ない」という選択肢はこのバンドにはないのだろう。
そんな特別な思いを抱く場所だからこその初めての野外フェスでのトリは、デビュー時は演奏面で頼りない部分もあったSHISHAMOがこのスケールとシチュエーションにふさわしいバンドになったことを自らの手で証明するものになった。やはりこのバンドはミス・ラブシャ。
1.君と夏フェス
2.恋する
3.タオル
4.君の大事にしてるもの
5.夏の恋人
6.明日も
7.OH!
19:35〜 サカナクション [LAKESIDE STAGE]
2011年以降は毎年のようにこのフェスの夜に登場してきた、夜の山中湖のヌシ、サカナクション。ついに今年はアルバム「834.194」をリリースしてからの出演となる。山口一郎全面プロデュースによる番組「NF」でもスペシャに新たな風を吹かせていたが、GOOD VIBES AREAに登場したNFのスーパーボールすくいコーナーはあまりの難しさによってゲームとして成立しないレベルになっていた。
メンバーが登場すると、岡崎英美(キーボード)のサングラスと派手な衣装が目を惹く中、いきなりの「アルクアラウンド」で一気に山中湖はダンスフロアと化し、山口一郎も観客を煽りまくり。江島啓一(ドラム)によるBメロ部分での観客のリズムに合わせた手拍子もバッチリである。
山口のコブシをきかせたボーカルが響く「陽炎」では間奏でギターソロを弾く岩寺基晴に山口が密着するという微笑ましいパフォーマンスで笑わせるが、ミュージックステーション出演時にも話題を呼んだ「モス」からは一気に「834.194」のモードに。
「忘れられない夜になりそうですね」
と言って歌い始めた山口が、自身が出演するCMほどではないにしろ、誰よりも1番自由に踊りまくる「忘れられないの」、大量のスモークが噴き出す中でサウンドがどんどんノイジーになっていく「ワンダーランド」と新作曲を連発するのだが、去年まではリリースがほとんどなかっただけに、大きくセットリストが変わることがなかった。それだけに1年ごとの差別化が図りにくいところもあったのだが、今回は紛れもなく2019年のサカナクションによるラブシャのトリとして忘れられないものになる。それはもちろん「834.194」が紛れも無い、待った甲斐のある名盤だからである。
スモークが噴き出す中でセットチェンジが行われて出現したのはおなじみのラップトップ。そこに横並びになった5人が「ミュージック」を演奏すると、最後のサビ前でバンド編成に切り替わるというのはいつも通りであるが、やはりこうしてライブで観ると気分が高揚するし、飽きることはない。そのまま「アイデンティティ」に繋がって大合唱が起こるという流れも含めて。
山口が
「今ので最後の曲だったんだけど、今日はアンコールの時間をもらってます。でも捌けてまた出てきて、ってやるのも時間の無駄だから、このままやります」
と言って捌けることなく突入したアンコールで演奏されたのは「新宝島」。レーザーがステージに反射する様が実に美しかったが、それも含めてやっぱりサカナクションは強すぎるな、と改めて思っていた。
この日のラインナップはラウド・パンクのライブで勝ち上がってきた猛者たちばかりである。でもそんな日にトリを務めたのはサカナクションである。それはサカナクション自身がそうしてライブを勝ち上がってメインステージに出るようになり、こうしてトリをやるのが当たり前というポジションを掴んだからである。それを改めて実感させられるくらいにやっぱりサカナクションは凄かった。アルバムリリース後のツアーも是非行きたいが、これはスケジュールを観ると幕張メッセあたりで当然追加公演ありますよね?
1.アルクアラウンド
2.陽炎
3.モス
4.忘れられないの
5.ワンダーランド
6.ミュージック
7.アイデンティティ
encore
8.新宝島
20:25〜 DJ石毛&ノブ (the telephones) [CLOSING DJ]
今年からGOOD VIBES AREAに場所を移した、CLOSING DJ。この日はラブシャの守護神こと、the telephonesの石毛&ノブ。
Earth, Wind & Fire「September」やDaft Punk「ONE MORE TIME」などの海外のダンスミュージックの名曲を流しながら、ノブは昨年までより広くなったステージで踊りまくり、石毛もそれに合わせて前に出てきて踊る。
さらにはノブは客席に突入したかと思うと子供を連れてステージに戻ってくるというやりたい放題っぷり。それはthe telephonesのライブでもDJでも変わらない。
電気グルーヴ「虹」でモードが変わると、やはり最後にかけたのは「Love & DISCO」。去年も一昨年も最後はこの曲だったが、去年までは「特別に」と言ってかけていた。the telephonesのライブが見れない中でDJとしてこの曲をかけることはほとんどなかったから。
でも今年はもう特別ではない。それは翌日にthe telephonesが4年ぶりにこのフェスのステージに戻ってくるから。たくさんの人と大合唱する中、きっと翌日はもっとたくさんの人とバンドの演奏で大合唱できるはず、そう思いながら初日は幕を閉じた。できることなら来年以降もこの2人には守護神としてこのフェスの最後を締めてもらいたい。やっぱり最高に楽しいから。
当初、この初日はずっと雨予報だった。しかし蓋を開けてみれば、ライブが始まると全く雨は降らず、むしろ夕方には晴れるという場面すらあった。
この日の出演者にはスペシャでレギュラー番組を持つ、スペシャファミリー的な人も多いが、その人たちにこの山中湖を最大限に満喫してほしい。そんなこの場所の思いが雨を止ませたかのようだった。
かつてもDragon Ashが「Run to the Sun」を演奏したり、9mm Parabellum Bulletが「太陽が欲しいだけ」を演奏した時に曇天の中から太陽が顔を出すという奇跡をこの場所で見てきた。強い思いがあればいつも応えてくれたこの場所の持つ特別な力を改めて感じた1日だった。
文 ソノダマン