“Let’s go to the 30th LUCKY” カントーロード 〜30周年SPECIAL.2〜 THE BAWDIES / SIX LOUNGE / モーレツアタック 千葉LOOK 2019.9.18 SIX LOUNGE, THE BAWDIES
今年で30周年を迎えた千葉の老舗ライブハウスの千葉LOOK。前週のTOTALFATとKEYTALKの対バンもそうだったが、普段ならこのキャパでは見れないようなバンドたちが次々に出演。
この日はTHE BAWDIESとSIX LOUNGEという転がり続けるロックンロールバンド同士の共演。同じロックンロールという旗を掲げながらもこれまではあまり一緒になるイメージがなかった両者はどんな一夜を作り出すのだろうか。
ちなみにこのライブはMy Hair is BadとBLUE ENCOUNTの対バンと同様に「カントーロード」と題され、千葉LOOKとともに30周年を迎える水戸LIGHT HOUSEとの2daysライブとなる。
到着したのが19時くらいだったために、オープニングアクトのモーレツアタックはもう終わっていた。どうやらTHE BAWDIESとはデビュー前からの付き合いがあるバンドらしいだけに見てみたかった。
・SIX LOUNGE
最近はいろんなフェスやイベントに出まくっているのでライブを見る機会も多い、SIX LOUNGE。なので2日前にライブを見たばかりというタイミングであるが、フェスやイベントよりも長い持ち時間でライブを観れるのは嬉しいところだ。
おなじみのSEで3人が登場すると、いつものように革ジャン姿のヤマグチユウモリ(ボーカル&ギター)が、
「千葉LOOK、30周年おめでとうございます!大分からSIX LOUNGEです!」
と挨拶して、いきなり大きく声を張り上げる「Lonely Lovely Man」からスタートし、タイトルフレーズのリフレインが曲に疾走感をもたらす「ZERO」「LULU」と2日前とはガラッと変わったセトリでありながらもやはりロックンロールバンドそのもの。
このバンドはフェスやイベントでの短い時間のライブでもそうしてセトリが変わりやすいバンドだが、それはリリースペースの速さによるところも大きいし、普段からどんな曲でもライブでできるような状態にあるということもある。なので、
「周年を祝うっていうのは俺たちにとっては初めての経験なんだけど、今日がどんな日なのかみんなちゃんと知ってるな!素晴らしい!」
とこのロックンロールな日に集まった観客のセンスを称えながら甘さを感じるロックンロール「天使のスーツケース」、さらには「SHEENA」と続くあたりは長い持ち時間ならではの選曲だと思えるが、この辺りからナガマツシンタロウのドラムの強さにさらなる頼もしさを感じられるようになってくる。ロックンロールというスタイルはリズム自体はシンプルなものが多いだけにそこにその人らしさを感じられるかというのは難しいところでもあるのだが、シンタロウのドラムからは確かにそれを感じることができる。
さらに「Under The Cloud」というレア曲ではユウモリが客席に身を乗り出すようにしてギターを構えて、ラモーンズ「電撃バップ」の
「Hey ho, let’s go!」
の有名すぎるコーラスで観客とコール&レスポンス。ロックンロールバンドでありながらもそれだけではないパンク精神もこのバンドからは感じられるし、それを確かに持っていることを感じさせてくれる。
「トラッシュ」でさらに疾走感を増すと、チケット即完で満員なのにも関わらずどうにも大人しめな観客へユウモリが、
「みんなあれですか、THE BAWDIESまで体力を温存している感じですか」
と言っていたが、The Mirrazがこの千葉LOOKでライブをすると畠山承平がいつも
「千葉は盛り上がりが微妙」
と言うように、千葉LOOKは割と大人しめの観客が集まりがちだ。キャパが小さいだけにチケットを手に入れることができた人がみんなそういうタイプだった、という可能性もあるが、自分も実際に同じツアーで千葉LOOKと水戸のライブハウスに行くと千葉は非常に大人しく感じる。それが県民性なのかと言われたらそれも千葉県民としてはまた微妙なところだが。
しかし
「じゃあ温存できる曲をやります」
と言って演奏された最新シングル曲「幻影列車」がもうイントロからして名曲確定の素晴らしいミドルチューン。続いて演奏されたカップリング曲の「星とメロディ」も含めて、これからこのバンドはロックンロールな曲だけでなく、こうしたメロディが際立つような曲を評価されていくような予感がしている。
さらにそうしたタイプの曲を歌う際のユウモリのボーカルの艶っぽさたるや。「天使のスーツケース」リリース時あたりから急激にそうした激しいだけではない声の良さを感じるようになってきたが、それがさらに向上しているからこそこうしたタイプの曲を名曲と感じられるようになってきている。
そして「DO DO IN THE BOOM BOOM」で再びロックンロールモードへ転じると、最後に演奏されたのはキラーチューン「僕を撃て」。今のこのバンドの勢いからすると、めちゃくちゃ盛り上がった、という感じのライブではなかったけれど、だからこそ堪能できるものがあったライブだった。
今やこのバンドはフェスやイベントでは毎回満員になるくらいの動員力を持つようになってきているし、「なんでみんなこのバンドの曲そんなに知ってるの?」と思ってしまうくらいの状況になってきている。
それも納得するくらいに、今のこのバンドは楽曲もライブも凄まじい進化期に突入してきている。全く流行りではないロックンロールというサウンドのバンドが間違いなく今の時代に呼ばれ始めてきている。それはこの後に出てくるバンドがかつてそうだったように。そんなことばっか考えてる。
1.Lonely Lovely Man
2.ZERO
3.LULU
4.天使のスーツケース
5.SHEENA
6.Under The Cloud
7.トラッシュ
8.幻影列車
9.星とメロディ
10.DO DO IN THE BOOM BOOM
11.僕を撃て
・THE BAWDIES
そしてTHE BAWDIES。千葉県民としてはこうして千葉LOOKに立つ姿を見れるのが実に嬉しいところだ。
おなじみの「ダンス天国」のSEでメンバーが登場すると、スーツが一新されている。やや薄茶色のジャケットに黄色いシャツ、緑色のネクタイ。少し落ち着いた感じの配色になっているが、それがバンドの新章突入を予感させる。ツアー初日とかじゃなくてこのタイミングで!?という感じもしなくはないが、その瞬間を見ることができるのは嬉しいこと。
「千葉LOOK、30周年おめでとうー!乗り遅れないようについてきてくださいね!乗り遅れたらこうなりますよ!」
と「IT’S TOO LATE」でスタートし、曲の締めではROYが強烈な超ロングシャウトをかます。このROYの鋼の喉はキャパが大きかろうが小さかろうが全く関係ないようだ。
SIX LOUNGEのユウモリは
「THE BAWDIESのために体力温存ですか」
と言っていたが、THE BAWDIESになってもそんなにめちゃくちゃ激しい盛り上がりを見せていたわけではなかったので、やはりこれはこの日の客層によるものだろう。
だからいつもよりもじっくりとすぐ目の前でTHE BAWDIESのライブを見ることができたのだが、新しいスーツもさることながらライブの内容自体も新章突入を強く感じさせるものになっている。ちょっと前までは新曲をガンガン披露するという名目のツアーを行っていたし、アルバムのリリースも正式に発表された。なのでライブで披露される新曲はそのアルバムに収録されるのだが、すでに配信リリースされている、一度聞けばサビのコーラス部分を誰しもが歌うことができるであろう「LET’S GO BACK」、タイトル通りのTHE BAWDIESのロックンロールのカッコよさが詰まった「SHE’S MY ROCK’N’ROLL」と新曲を連発。ここまでTHE BAWDIESがライブで新曲をやるようなことは今までなかった。それだけにリリースが決まったアルバムにはきっと強い手応えを持っているはずだ。
JIMのエフェクティブなギターのサウンドもベスト盤リリース時に新たなバンドの扉を開いたきっかけになった「FEELIN’ FREE」を終えると、ROYが
「モーレツアタックとはデビュー前から知り合いなんですけど、SIX LOUNGEはフェスとかでは何度も一緒になってるんですけど、こうして対バンするのは初めてで。まだちょっとよそよそしい感じがする(笑)
でも千葉LOOKが30周年ということで、本当におめでたいことですよ。我々THE BAWDIESも僕とJIMとMARCYが出会ってからちょうど30周年になります。(JIMから「そうだっけ?」と軽いツッコミが入る)
そしてTAXMANさんと出会ってからは22年くらいですかね?そんなTAXMANさんは膝に爆弾を抱えてまして。ライブの時に膝にサポーターを巻くようにしてから3周年を迎えました!」
と相変わらずのメンバーいじりで笑わせる中、ストリングスのサウンドが同期で流れる「HAPPY RAYS」、さらに観客が腕を左右に振る「KEEP YOU HAPPY」と会場の中に幸福感が満ち溢れていく。最近は「KEEP YOU HAPPY」をまたライブでやることが増えてきているが、THE BAWDIESのそもそも持つ曲の良さをTHE BAWDIESだからこそのソウルフルさを持って感じさせてくれるこの曲がライブで聴けるのは嬉しい。
すると
「初めて我々を見る方はびっくりするかもしれませんが、我々は「HOT DOG」という曲の準備に入ります」
と言ってステージが暗転すると、最近よくやっていた学園ラブコメではなく、ROY、JIM、TAXMANがおもちゃ、MARCYがおもちゃの持ち主の子供を演じるというトイストーリー的な小芝居に。おもちゃ役の3人のなりきりっぷりが芝居のクオリティをさらに上げているし、これもまたバンドの新章突入を感じさせる要素になっている。
その「HOT DOG」ではJIMが間奏で客席に身を乗り出すようにしてギターソロを弾きまくると、さらなる新曲「BLUES GOD」へ。タイトル通りにTHE BAWDIESの持つブルースを感じさせてくれる曲だが、やはりこうしてリリース前からライブで演奏されるだけに実にキャッチーな曲。
そして合唱を巻き起こす「SING YOUR SONG」から、ラストはオープニング同様にROYがロングシャウトを響かせながら、最後のサビ前には改めて
「千葉LOOK30周年おめでとうー!」
と叫ぶ「JUST BE COOL」という鉄壁っぷり。この曲がこうしてライブの最後を担えるようになったのは本当に大きいと思う。大人しかった客席もこの曲のサビではかなり飛び跳ねるようになっていただけに。
アンコールではジャケットを脱いだメンバーたちが登場すると、この新調したスーツについて
JIM「クリーニングに出して縮むの嫌だな〜」
ROY「大事に着ていきましょう」
JIM「でもこの色、なんかかぼちゃみたいだね(笑)」
と笑わせながら
「千葉LOOKはこれから150年くらいずっと続いていくと思います!我々もこれからも転がり続けていきます!」
という意志を示すかのような「KEEP ON ROCKIN’」で、この日もやはり最初はコール&レスポンスの声が小さくて、千葉LOOK30周年なので30倍でやり直すという流れも含めて、最後にはROYもとびきりの笑顔を見せるくらいの大合唱を引き出した。やはりこのバンドはさすがだ。そして本当に楽しい。
演奏が終わると恒例の大将ことTAXMANによる「わっしょい」が行われるのだが、その時間にTAXMANがステージが消えており、全員で探しているとステージ袖から法被を着たTAXMANが登場し、しっかりわっしょいを決める。アルバムのリリースツアーと、11月に新木場で行われる360°ライブがより楽しみになった。
THE BAWDIESは割とライブでやる曲が変わらなかったりする。それでも全然飽きることがないし、それはそれだけライブが素晴らしいということだが、今のTHE BAWDIESはそれを意識的に変えようとしている。それでもロックンロールという軸は全くブレることがない。果たして「Section #11」はどんな作品になっているのだろうか。そのタイトルも含めてこんなにリリース前から気になって仕方がないTHE BAWDIESのアルバムは初めてだ。
1.IT’S TOO LATE
2.NO WAY
3.LET’S GO BACK
4.SHE’S MY ROCK’N’ROLL
5.FEELIN’ FREE
6.HAPPY RAYS
7.KEEP YOU HAPPY
8.HOT DOG
9.BLUES GOD
10.SING YOUR SONG
11.JUST BE COOL
encore
12.KEEP ON ROCKIN’
千葉には幕張メッセというライブをやる会場があるし、柏とかにもライブハウスはそれなりにあったりする。そんな中で千葉LOOKはとてもステージが見やすいライブハウスというわけではない。むしろ最前にでも行かないとドラムはほとんど見えなかったりする。
でも幕張メッセにライブを観に行っても「千葉に来てくれた」という感覚は薄いが、千葉LOOKで観ると「千葉に来てくれた」という感覚を得られる。それは千葉LOOKが地元のライブハウスとして30年間続いてきたから。その歴史と、千葉LOOKでツアー初日をやると巨大なポスターを飾ってくれるという粋な計らい、今でも自らカウンターに立ち続けるサイトウ店長の存在…そうした要素の一つ一つの積み重ねが、こうして普段ならこのキャパに来ることのないバンドたちが今でもライブをしに来てくれる理由になっている。
昔はあまりにもステージが見にくかったからあんまり好きなライブハウスじゃなかったけど、今では千葉LOOKで好きなバンドのライブが観れるのが本当に嬉しく思える。30周年おめでとう&ありがとう。これからもずっとよろしく。
文 ソノダマン