the telephones 「メジャーデビュー10周年、まだやったことのないバンドと対バンするツアー(決)」 渋谷CLUB QUATTRO 2019.11.3 the telephones, ドミコ
メジャーデビュー10周年である今年は初頭に「まだ行ったことのない場所に行くツアー」として、ライブをやったことがなかった都道府県を回り、春フェスと夏フェスでは休止前に出演していたフェスに帰還を果たした、the telephones。
そんなtelephonesの下半期は「まだやったことのないバンドと対バンするツアー」と題し、東名阪にて夜の本気ダンス、ENTH、そしてドミコという若手バンドとの2マンツアーへ。ファイナルとなるこの日の渋谷 CLUB QUATTROはあらゆるバンドから対バンに誘われまくっているドミコを迎え、チケットはソールドアウト。
場内はかつての赤い浦和レッズ仕様から今年の夏に販売されていたヴェルディ川崎仕様までtelephonesのサッカーシャツを着ている人が多く、それだけでtelephonesの歴史を感じさせる。
・ドミコ
ファイナルとなるこの日の対バンはドミコ。以前にはTHE KEBABSのゲストでもこのQUATTROでライブを見ているが、あらゆるバンドたちから引っ張りだこの2人組バンドである。
ステージには「Domico」という電飾が輝く中でさかしたひかる(ボーカル&ギター)と長谷川啓太(ドラム)の2人が登場すると、さっそくさかしたが自分で弾いたギターの音をループさせて重ねていく「WHAT’S UP SUMMER?」でスタートし、曲と曲の間を繋げながら、いつも以上にサイケデリックな空間を生み出していく。さかしたの髪の伸び方はthe telephonesの石毛輝のそれを彷彿とさせて実に親近感が湧くが。
そのサイケデリックさを強く感じたのはフェスの持ち時間の30分ではなくて60分近い長いセットでのライブだったからなのだが、やはりこのバンドはどこか独特の時間軸の中で生きているような感じがするというか、そうした持ち時間の長さであってもMCを長く入れたりはしないし、むしろそうした長い時間だからこそ自分たちの1番深い部分の音楽でコミュニケーションを取ろうというスタイル。なのだがそうした深い曲を全く飽きさせずに聴かせることができるのは曲間なくアウトロとイントロを繋げるテンポの良いライブアレンジと、2人組だからこそのさかしたのループを使ったサウンドの作り方あってこそ。それはthe telephonesが好きな人ならば石毛輝のソロなどでも体験することができている要素である。
そんな様子が少し変わるのは「united pancake」。ロック感が強いこの曲では長谷川のドラムが力強く響き、それまではじっと演奏を見てはその音の心地よさに身を任せていた客席からも腕が上がる。
しかしながらそこからは再びセッション的な繋ぎのアレンジも含めてさらに深いところに潜っていくのだが、「深海旅行にて」などはタイトルも含めて「まさに!」と膝を打つようにこの流れにふさわしいタイトルである。
するとここまで
「サンキュー」「ありがとう」
くらいしか口を開いていないさかしたが、
「あと2曲と…せっかくの機会なんでセッションっていうか、怖い先輩のカバーをやります」
とさらっと言うと、ギターの音が奏で出したのはthe telephones「sick rocks」のリフ。それを生かしながらもインストのドープなアレンジでドミコの音楽として生まれ変わらせてみせると、そのまま「Monkey Discooooooo」のリフまでも弾いて今度はリフで押し切るドミコ流インストロックとしてアレンジ。対バンを数えきれないくらいにこなしてきているとはいえ、こうして相手の曲をカバーするのを見るのは初めてで、そこには関係性の深いtelephonesへのこのバンドならではの愛情とリスペクトを感じさせた。
そんな流れの後に演奏されたのは、さかしたのボーカルがサウンドのロックさに合わせるかのようにクリアになっていく「こんなのおかしくない?」から、今やロックDJのパワープレイナンバーとなっている「ペーパーロールスター」というドミコの代表曲と言っていい曲の2連発。そこからは気怠そうにすら見える空気感の中にある確かなロックの熱量を感じさせたし、このバンドが2人組でありながらもエレクトロやダンスミュージックユニットではなくあくまでロックバンドである理由が垣間見えた気がした。
このバンドのライブを見るたびに書いていることであるが、2014年に米津玄師がシークレットライブを行った時の対バンとして自分はこのバンドのライブを見ている。その時にこのバンドがここまで進化するなんて全く想像だにしなかった。あの頃、米津玄師がシークレットライブで対バンしたバンドたちも今となっては活動していないバンドばかり。その中でここまで伸びるこのバンドを見抜けなかったのはまだまだ自分は未熟であった。
1.WHAT’S UP SUMMER?
2.わからない
3.My Body is Dead
4.ロースト・ビーチ・ベイベー
5.まどろまない
6.united pancake
7.くじらの巣
8.深海旅行にて
9.sick rocks 〜 Monkey D iscooooooo
10.こんなのおかしくない?
11.ペーパーロールスター
・the telephones
そして後攻のthe telephonesが東名阪という短いツアーのファイナルのステージへ。かつては6days連続ライブという常軌を逸した企画を強行したこともあるこのQUATTROで久しぶりのライブである。
おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」のSEでメンバーが登場すると、
「渋谷ー!埼玉県北浦和から来た、the telephonesです!みんな、両手を上げてくれ!そしてそのまま踊ろうぜー!」
と石毛輝(ボーカル&ギター)が挨拶して、いきなりの「Monkey Discooooooo」からスタートし、のっけから会場の気温が5°Cくらい上がるような客席の踊りまくりっぷり。活動再開してから今年はいろんなフェスやイベントに出てきたし、首都圏という意味ではバンドにとってホームである北浦和KYARAでもワンマンをやってきたが、東京のライブハウスでtelephonesメインのライブをやるのは本当に久しぶりだ。そんな「待っていた」という空気が溢れ出していて、早くもダイバーが出現するくらいの盛り上がりっぷり。
「Baby, Baby, Baby」ではカウベルを叩くノブ(シンセ)が客席に突入したり、客席とステージとの間にいる観客にカウベルを持たせて叩きまくったりという自由っぷりを見せる。フェスの広い会場でもそうだが、ノブのこの予測できなさはライブハウスでも全く変わらない。
「メジャーデビュー10周年です!」
と石毛が改めて活動再開することになった記念の年であることを口にすると、メジャーデビューアルバムである「DANCE FLOOR MONSTERS」の収録曲である「Dance With You」を演奏。ノブのシンセのサウンドがけたたましく鳴るディスコパンクであり、このアルバムはそうした要素が強い、telephonesのイメージを決定付けたアルバムとも言えるのだが、ここまでの3曲は全てその「DANCE FLOOR MONSTERS」の収録曲であるというのはそのメジャーデビュー10周年という記念の年であることを意識してのものなのだろうか。
さらにパンクな「White Elephant」も実に久しぶりにライブで聴く曲であるが、こうして不意に演奏されるとこの曲が初披露されたディファ有明での「Super Disco Hits!!!」のワンマンを思い出す。そうして1曲1曲にそれぞれ特別な思い出がある。
「俺たちはただ帰ってきたわけじゃないんだぜー!新曲やります!」
と言って演奏されたのは、突如として配信リリースされた新曲「Light Your Fire」。松本誠治(ドラム)の打ち込みのようでもあるドラムのリズムはtelephonesというバンドだからこそのアナログとデジタルの融合の形を見せてくれるが、telephonesが今年活動することを発表した時、もちろんメジャーデビュー10周年という節目ということはあるにせよ、絶対に新作あるいは新曲を作るだろうと思っていた。ただずっと過去の曲だけを演奏してかつてを振り返るだけの活動なんてしないバンドだと思っていたから。
だからいつか新曲が出るというのはわかっていたけれど、The Doorsには「Light My Fire (ハートに火をつけて)」という名曲があるが、この曲は「My」ではなくて「Your」。つまりバンド側ではなく我々観客や聴き手側に火をつけようとしている。それはなぜか。もうtelephonesのメンバーにはとっくに火がついているからである。その燃え盛る火ををバンドの演奏でもって我々にも広げていく。つまりはtelephonesはこれからも止まらずに活動していくことの宣誓だ。
再開してからのリリースの最初の曲がわかりやすい「DISCO」シリーズの曲ではないのもまた、telephonesとしての意志が見える。最近はインディーズ期の「JAPAN」の曲をライブでたくさんやったりしていたが、「JAPAN」にも「DISCO」がつく曲はない。それでいて名盤であるということはtelephonesが「DISCO」だけのバンドではないということ。前に進み続けるバンドであるということの意志を示したこの曲はこれまでのtelephonesを総括した上でこれからのtelephonesがやろうとしていることも示しているのである。
長島涼平による独特のベースラインが観客を踊らせる「electric girl」では間奏で石毛がドミコの「こんなのおかしくない?」のフレーズを演奏するというカバーへの小粋なお返しを披露して歓声を浴びていたが、ただ対バンに呼び合うだけでなくお互いへのリスペクトを音楽の中で示す。かつてのtelephonesの対バンは同世代のバンドが多かったけれど、これからはこうしてtelephonesを聴いて育ってきた世代との対バンも増えていくはずだ。
ノブによるきらめくようにポップなフレーズの「Just One Victory」はかなり意外な選曲であるが、続く「A.B.C.DISCO」との繋がりという意味で言うと実によくわかる。この辺りは前半の性急かつパンクなダンスサウンドではなく、ポップなメロディで踊るターム。もちろん「A.B.C.DISCO」では大合唱が起きる。
MCではドミコについて、
石毛「ひかるはかなり性格捻じ曲がってるからなぁ(笑)」
涼平「ひかるがさ、よく「キャンプしましょうよ」って連絡くれるのね。で「行く行く!」って言うと「この日はどうですか?」って日程を提案してくるから「その日はちょっと無理なんだよね〜」って言うとそれ以降返事が返ってこなくなる(笑)」
石毛「ひかるからしたら「なんでこっちが涼平さんに合わせなきゃいけないんだ」っていうことでしょ(笑)」
と関係が深い間柄だからこその独特なさかしたの感性を明かして笑わせる。
それにしても石毛本人も「エモくなってる」と言っていたように、この日のライブの盛り上がりっぷりは凄まじいものがあった。だからこそ「HABANERO」で石毛は歌詞を歌わずに
「ダー!」
と言葉にならない思いを叫んでいたし、ノブもそれにつられて全く同じことを叫んでいた。もはやテンションが思考を凌駕しているような状態である。
それは観客もそうで、「A A U U O O O」においてはサビの歌詞に合わせて頭の上で「A」「U」「O」の文字を作り、その一方でダイバーも次々に転がっていく。telephonesのライブでこんなにダイバーがいる景色を見るのも実に久しぶりな感じがする。
そして「ディスコ」のコール&レスポンスの後に演奏されたのは「Keep Your DISCO!!!」。やはりダイバーが続出する凄まじい熱気であるが、石毛は
「You can change the world」
のフレーズの後にかつて叫んでいた、
「世界を変えようぜー!」
という言葉を言わなくなった。かつて、休止する前のtelephonesでも世界(や音楽シーン)は変えられなかったのをわかっているから。
でもこうしてtelephonesがまた動き出して、ライブをやるようになったことで間違いなく変わったことがある。それは我々観客の人生において、また輝いて、楽しいと思えることができたということだ。telephonesの音楽は今でもそうして我々の人生や生活をもっとプラスな方向に変えてくれる。それはもしかしたら世界を変えることよりももっと大事なことなのかもしれない。
さらに「I Hate DISCOOOOOOO!!!」で客席はぐちゃぐちゃになりながら、ノブもステージ上ではしゃぎまくりながらの「ディスコ!」の大連呼。心なしかその声が野太く聴こえたのは男性の観客がたくさんいたからなのかもしれないが、だからこそ最後の
「ウィーアー!」「ディスコ!」
のコール&レスポンスでは文句のつけようがないくらいに大きなレスポンスが返ってくるも、
「凄いいい。でも声が低い!もっと高く!(笑)」
とみんなが石毛のハイトーンボイスのように甲高く声を張り上げまくる。もう翌日のこととか喉のことなんかどうでもいい、ただ今が最高であるように、とばかりに。
そして最後に演奏されたのはこうして足を運んでくれる観客や、かつても何度もライブをやったQUATTRO、そしてQUATTROも含めたライブハウスに愛とディスコを贈る「Love & DISCO」。もうライブで数え切れないくらいに聴いてきた。いろんな人(他のバンドのメンバーやイベントの主催者や観客)の笑顔をこの曲で見てきた。なんなら活動再開してからもすでに数え切れないくらいにライブで見てきた曲なのに、なんでこんなに感動してしまっているのだろうか。それは
「活動休止する前のライブを今のtelephonesで超えられている気がする」
という石毛の言葉通りに、今のtelephonesのライブが過去のこの曲が見せてくれた景色を更新するくらいに素晴らしかったからだ。だからきっとこれからもこの曲に感動を与えられ続けていくはず。telephonesがこれからも走り続ける限り。
アンコールで今回のツアーTシャツに着替えたメンバーが再び登場すると、
「リハの時に話しただけなんだけど、せっかくの対バンだからセッションを…」
と言うとドミコのさかしたひかるを招くのだが、まさかのtelephonesのサッカーTシャツを着ての登場。そのあまりの似合わなさに思わずメンバーも観客も笑ってしまっていたが、ドミコは基本的にこういうことをするバンドじゃない。そんなバンドがこうして一緒にステージに上がっているのはその相手がtelephonesだからだ。石毛はさかしたに対して最初は嫌な先輩だったらしいけれど、その石毛が自分のギターをさかしたに渡してハンドマイクに。と思ったらさかしたにはギターの位置が低いということでその場で調整。これがまた急遽決まったコラボであるということを如実に示している。
そのさかしたがギターを弾くのはドミコのライブではドープなドミコバージョンにアレンジされていた「sick rocks」。さすがにtelephonesのライブでは原曲そのままであるが、何度も石毛がさかしたを前に出してギターを弾かせようとするのにそれをかわそうとするさかしたの姿が実に面白い。最後にようやく石毛が普段から使っているお立ち台に立ってギターを弾いていたが、そんな姿も普段は見ることができないものだったはず。telephonesのメンバーも本当に楽しそうだった。
さかしたがステージから去ると、12月にZepp Tokyoで行われるワンマンライブの告知をしてから最後に演奏されたのは「urban disco」。最後のサビ前ではリズム隊だけの演奏と手拍子によって思いっきり助走をつけたサウンドがサビで一気に爆発していく。そしてやはり「DISCO」と叫ぶことの楽しさ。それは今聴いてもtelephonesによる発明だったと思うし、今でも色あせることは決してない。
演奏が終わるとツアー恒例の写真撮影へ。せっかくなのでとドミコの2人も呼んでの撮影なのだが、こうしたことをやったことがないドミコは観客を背にして写真を撮るということを全くわかっていなかったのが面白かったし、そんなバンドにこうしたことをやってもらえるのがやっぱりtelephonesの人間としての温かさや人懐こさなんだよなと思う。
かつてtelephonesはよく「フェスバンド」と呼ばれてきた。フェスをきっかけに大きくなったバンドという意味では確かにそうだ。でもtelephonesはフェスにだけ強いバンドでは決してなかった。人数が多いライブでも力を発揮するバンドだけれど、バンドへの愛が強い人がたくさんいるライブこそこのバンドは真の力を発揮する。それはつまりワンマンや主催ライブにこそ本質があったというバンドということ。
それはtelephonesが観客を盛り上げて、その観客の熱量や想いを受け止めてそれをバンドの力に還元されていくことによってより素晴らしいライブができる、どこまでも人間の力で成り立っているバンドだからだ。だから本当にtelephonesが好きな人たちが集まるライブは他のどのライブよりも最高に楽しいものになる。それはきっと12月のワンマンの時はさらにそう思えるはず。
石毛はこの日、これからもtelephonesが続いていくということは明言しなかったけれど、
「これから100年後くらいまでずっとよろしく!」
と言った。こんな日が1日でも多く過ごせるのならば、もっと長生きしないとなと思う。どんなに年老いても体だけじゃなく心もtelephonesの音楽で踊っていられるように。
1.Monkey Discooooooo
2.Baby, Baby, Baby
3.Dance With You
4.White Elephant
5.Light Your Fire
6.electric girl
7.Just One Victory
8.A.B.C.DISCO
9.HABANERO
10.A A U U O O O
11.Keep Your DISCO!!!
12.I Hate DISCOOOOOOO!!!
13.Love & DISCO
encore
14.sick rocks w/ さかしたひかる(ドミコ)
15.urban disco
文 ソノダマン