これまでにライブハウスにおいて「このバンドたちの対バン!?」という組み合わせを実現させてきたイベント、REDLINE。10周年を迎えた今年に集大成的なイベントを幕張メッセで開催。
これまでに出演してきたバンドたち総登場というようなタイムテーブルであるが、このイベントに出演した当時はライブハウスをメインにしていたのが今やアリーナクラスになったバンドもおり、成長とイベントの歴史を実感する。
左右2ステージが組まれたREDLINE STAGE、BEGINNING STAGEというメインステージと、向かい合うように組まれたBODY STAGE、SOUL STAGE、さらにその真ん中にオブジェのように置かれているRIOT STAGEという、9〜11ホールでのイベントとしては異例とも言える5ステージ構成で、やはり若手のパンク、ラウドバンドが多く顔を揃えているからか、観客も若い人が多く感じる。REDLINEというストリートのイベントらしく10ホールにはファッションブランドのブースも並んでいる。
12:15〜 FOMARE [BODY STAGE]
11ホール側のステージのトップバッターはFOMARE。今年は春から夏にかけても様々なフェスに出演してきたが、その中でバンドの編成の変化もあった1年である。
先にメインステージサイドであるREDLINE STAGEが始まっているので、Crystal Lakeの爆音が聞こえてくる中で暗転すると、ステージ後ろにはこのフェスのメインビジュアルであるバックドロップが迫り上がり、SEが流れてメンバー3人が登場。スクリーンに映ったアー写も3人での新しいものになっている。
そう、春にキノシタタクヤが脱退してからはアマダシンスケ(ベース&ボーカル)とカマタリョウガ(ギター&ボーカル)の2人で活動してきたが、先日オグラユウタの正式加入が発表されて再びスリーピースに戻ったのである。
白いパーカーを来たアマダが
「REDLINE、よろしく!」
と挨拶して「君と夜明け」から始まるのだが、やはりこのイベントの雰囲気やこの日の客層的に、このバンドのパンクな面が非常に際立つのは昼12時台とは思えないくらいにダイバーが続出する客席の元気さ。ドラムが正式メンバーになったことによってグッとサウンドが引き締まっているというのもこの盛り上がりっぷりと無関係ではないはずだ。
アマダがマイクから離れると
「愛していた!」
の大合唱が起きた「stay with me」を演奏すると、
「このイベントは俺たちのレーベルのボスが主催してるんだけど、そのイベントの10周年っていう記念すべきライブにこうして参加することができて本当に嬉しいです。2年前に初めてこのイベントに出たんですけど、その時は誰も歌えなかった曲を、今日はみんなで歌って欲しい!」
とありったけの思いを込めて感謝を告げてから演奏された「Lani」では
「カーテンの隙 灯る光
君の寝顔が綺麗で」
と歌い出しからほとんど満員と言っていい観客の大合唱が起こる。その光景はメンバー自身が自分たちの成長と、積み重ねてきたものが間違いないじゃなかったことを感じられたんじゃないだろうか。
もうこの日から12月という冬になってしまったが、秋の終わりを惜しむかのような「秋の夜」や「新しい歌」など、客席ではモッシュ、リフトからのダイブの応酬と激しいノリが展開される中にもメンバーの四季による感受性がそのまま反映された切なさを感じさせる曲が多く演奏されると、美しいメロディのバラード曲「タバコ」をそれまでとは違って歌に集中するように聴かせていく。フェスという場、しかもこの激しいバンドばかりが揃う場でこういう曲を演奏するあたりにこのバンドが多彩な曲調を持つバンドである(それこそACIDMANを対バンに呼んだりしているくらいだ)ことを示しつつ、ノリや激しさだけではなくメロディそのものに強い自信を持っていることを伺わせるが、
「本当は今の曲で終わりだったんだけど、時間あるからもう1曲!」
と言ってアマダとカマタが高くジャンプしてから鳴らされた「Continue」は、パンクバンドと括ることは憚られるバンドではあっても、間違いなくパンクのカッコよさを持っているバンドであることを示していた。
今やFOMAREはCDを出せばオリコンTOP10に入るくらいに売れているバンドだ。(サブスクに曲がないという要素もあるかもしれないけれど)
とはいえまだ大きなフェスではオープニングアクト的な立ち位置での出演も多いのだけれど、この日見えた景色や「Lani」の大合唱からはこのバンドがさらに広い場所で音楽を鳴らすような光景が頭に浮かんだ。3人になったことによってそこに向かう準備は整った。文字通りにContinueが始まったのである。
1.君と夜明け
2.FROZEN
3.stay with me
4.Lani
5.風
6.秋の夜
7.新しい歌
8.タバコ
9.Continue
12:50〜 Nothing’s Carved In Stone [BEGINNING STAGE]
この出演者の中ではベテランの域に入る、Nothing’s Carved In Stone。こうしたストリートに根差したイベントによく出演しているイメージがあるのはやはりそれぞれのメンバーの出自によるところもあるのだろうか。
メンバー4人がステージに現れると、会場の空気を一閃するかのようにそれぞれの音が激しくぶつかり合いながらも一つに調和していく。村松拓(ボーカル&ギター)が
「Now is everything!」
のフレーズを叫ぶようにして歌うというのはおなじみであるが、初っ端から間奏で生形真一のギターは唸りを上げ、ひなっちのベースはうねりまくる。やはり凄腕メンバーのスーパーバンドだからこその安定感のようなものを感じる。
9月にリリースされたばかりの最新アルバム「By Your Side」を引っ提げ、若手バンドたちを招いての対バンツアーの真っ最中であるが、そのアルバムからはリリース前から新曲として演奏していた「Who Is」を披露。ヒーローというテーマはどこかこのフェスに似合っているような気がするのは他にそのテーマで曲を作っているバンドがいるからだろうか。ステージ名的に新作から「Beginning」をやるんじゃないかとも少し思っていたけれど。
日本語の歌詞がストレートな強さを持って響く「Pride」を終えると、
「2010年の第1回以来の出演です。私ごとですが、先日友人が亡くなりまして。こうやってステージに立つ意味を今一度考えたりしました。騒げればいいのか、寄り添うだけでいいのかと。我々がやるのはただ命を燃やすということ。明日からみんながさらなる高みに登っていけますように」
と、最近は特に酔っ払うと面白いおじさん的なキャラになりつつある村松がいつにも増してシリアスなモードで語る。ひなっちも心境のアップダウンが激しい人だが、ステージに立っているとあまりそういう部分は感じない。でも村松は割とそうした自身の内面の状態がそのままステージ上でも出るような人だ。だからこの日は最近見たライブの中では実に真面目なというか、今一度自分たちがバンドとしてこうしてステージに立って音を鳴らすということに向き合っているように見えた。
生形が刻むギターのイントロから、間奏では「ダンスタイム」へと突入していく「Out of Control」、村松の英語歌詞の発音のスムースさを改めて感じる「Spirit Inspiration」と、アルバムがリリースされたばかりなのでもっと最新モードになるかと思いきや、バンドの代表曲を網羅するような内容になっている。
それはレーザー光線がステージから客席に向かって放たれるとともに、ぶつかり合う音の中から光が飛び散るような「Around the Clock」が持ち時間の短いライブにおいて久しぶりに演奏されたことからもわかるが、サビ前でまるで壁を作るかのようにリフトしている人たちが並んでいるのを見ると、このバンドが結成してすぐの頃のライブはこういう景色をこのバンドのライブでよく見ていたことを思い出す。もしかしたら初年度に出演していたイベントだからこその選曲だったのかもしれない。
そして大喜多崇規がドラム台から立ち上がると、同期のサウンドも使った秋の名曲「November 15th」へ。もうすっかり時期としては冬になってしまったけれど、日付けが近いからこの曲が聴けたというのなら(夏フェスではやっていなかったし)、このイベントがこの日に開催されたことに心から感謝である。
いやしかし、この安定感と爆発力を兼ね備えているのはさすがだし、こうしたイベントでダイバーが続出するのは実によくわかる。こうして目の前でこのメンバーが演奏していたら舞い上がるなというのが無理な話である。未だ若いバンドたちと対バンをして新しいものを吸収しようという姿勢もバンドのこれからがさらに楽しみになる。
1.Isolation
2.Who Is
3.Pride
4.Out of Control
5.Spirit Inspiration
6.Around the Clock
7.November 15th
13:40〜 SHANK [REDLINE STAGE]
イベント全体としても、このメインステージサイドとしてもパンク・メロコアバンドが居並ぶ中で先陣を切って登場するのは、長崎のスリーピースバンド、SHANK。リハで演奏していた「Time is…」がいつのまにかブルーハーツの「TRAIN-TRAIN」に変わっているというあたりにバンドの持つ無邪気さというか茶目っ気のようなものを感じさせる。
本編で3人がステージに現れると、松崎兵太(ギター&コーラス)が美しい旋律を奏でながら庵原将平(ベース&ボーカル)の男らしい歌声が響き、前へ前へと強く押すような「Set the fire」からスタートし、「Good Night Darling」「HOPE」とキラーチューンの連打に次ぐ連打っぷり。FOMAREのところでも触れたが、シンプルなスリーピースバンドのサウンドだと1人1人の音がはっきりと聞こえるだけに、池本雄季のドラムがメロコアならではのツービートの速さと重さを備えているのはこのバンドがこの規模のメインステージに出るにあたって実に大きな要素だと思う。
メインボーカルがベースであるということで松崎のギターはスカのリズムを取り入れたりというあたりのサウンドの引き出しの多さも魅力の一つであるのだが、このメインステージにはステージ中央から花道が伸びており、アウトロでそこに出て行った松崎に合わせて庵原もそこへ進んでベースを弾くのだが、こうした花道を全く使ったことがないのがすぐにわかるくらいに戻り方が不自然。それもまたこのバンドがそうしたものを備えていないライブハウスで生きてきたバンドだからである。
「次にやる時にはもうちょっと花道の使い方を練習してきます(笑)」
と自分たちでもその不慣れさをわかっていたようだが、ライブ自体は実にストイックであり、余計なMCや演出も一切ない。メロコアらしい美メロと泣きのギターが次々と押し寄せてくるのだが、
「リスペクトを込めて」
とこのイベントへの思いを一言だけ告げてから演奏された「Wake Up Call」はこのバンドの歌としての強さとダイブやモッシュが起こる曲だけがキラーチューンであり求められているわけではないというのがよくわかる名曲。
しかしながら曲数的にもそろそろ終わりだろうか?と思いながらそこからさらに畳み掛けるように3曲も連発できるというのはライブで生きているパンク・メロコアバンドだからこそ。モッシュやダイブが最初から最後まで発生しまくっているのは当たり前のように感じるが、このバンドはダイブが禁止のフェスなどにも当たり前のように出演しているし、そこに対して言及したりすることはない。客席にルールがあったとしても、自分たちがやることは変わらないということなんだろう。そうした精神も含めて実にカッコいいバンドだと思う。
リハ.Time is…
1.Set the fire
2.Good Night Darling
3.HOPE
4.Life is…
5.620
6.Departure
7.Take Me Back
8.Weather is Beautiful
9.Wake Up Call
10.Honesty
11.Movie
12.BASIC
・04 Limited Sazabys [BEGINNING STAGE]
リハからメンバーが出てきて曲を演奏していたフォーリミ。すでにアリーナクラスでのワンマンも経験しているだけあり、客席はそれまでよりもはるかに人が多くなっている。
おなじみのオリジナルSEでメンバーが登場して手拍子が起きると、GEN(ベース&ボーカル)が思いっきり拳を振り下ろした瞬間に音が鳴る「monolith」からスタートし、客席では激しいダイブ、モッシュ、さらにはサークルまでもが発生していく。
ショートパンクチューン「message」、ハードな音像にレーザー光線が飛び交う演出もあった「fiction」「Alien」とキラーチューンを連発しまくって場内の温度がグングン上昇していくと、
GEN「RYU-TAさん、今日のおすすめアクトはありますか?」
RYU-TA「KOTORI!」
GEN「丸かぶりしとるがな。今まさに向こうでやってる(笑)」
とフェスならではのタイムテーブルの被りっぷりについて笑わせると、昼飯時の時間にさらに食欲を増進させてしまうポップな「Kitchen」から、GENも
「いろんな先輩も後輩もたくさん出てるけど、その誰にも負けたくない」
と、このメンツが揃うフェスならではの気合いを感じさせてくれる「My HERO」はそうしたメンツが揃っている中でさえもフォーリミというバンドの存在がもはやここにいるたくさんの人にとってヒーローであることを示してくれる。
「昼だけど!」
と前置きされて演奏された「midnight cruising」は外の様子がわからない室内だからこそ流星群が降り注ぐかのような錯覚に陥るが、この日は明らかに最後ではないであろうタイミングで「Squall」をKOUHEIの激しいドラムの連打で演奏。そのメンバーの前のめりな姿勢からはまさに他のバンドに負けたくないというような意思の強さがそのまま音になっているかのようであるし、
「ずっとこのイベントの主催者チームとファミリーになりたかった」
というくらいに思い入れが強いイベントに出演できているからであろう。実際にフォーリミは主催者のレーベルに所属するバンドたちと数え切れないくらいに対バンしてきているし、彼らとのサウンドだけでなく人間性も含めた相性も合っていると言えるバンドだ。だからこのイベントのステージもホームと呼べるような空気になっている。
そして「Squall」の後に演奏できる曲というと…やはり「Buster Call」である。GENのハイトーンボイスが響き渡り、一気にバンドの演奏も激しく、テンポも速くなっていく。普段はそれぞれの道を行くバンドたちが今日だけは「REDLINE」という旗の元に集結する。まるでそうしたそれぞれの物語のテーマソングのようなこの曲が演奏されてもまだ時間が少し余ってるということで追加されたのは「Remember」。その姿や景色はやはりパンクバンドそのものであった。
今や様々なフェスで巨大なステージに立っているだけに、こうしたアリーナ規模であってもフォーリミはどこか見ていて安心感を感じる。もちろんバンドはそこに慢心したりしないというのは9月のさいたまスーパーアリーナのワンマンが売り切れなかったことを明かしたことからかもわかるが、何というかフォーリミのパンクがこのスケールにちゃんと定着したんだな、と感じたというか。最新シングル「SEED」に収録されている曲をやらなかったのは意外だったけれど。
そしてライブ後にはHIROKAZ(ギター)は白いパーカーのフードを目深に被り、マスクをして普通に客席を歩いていた。溶け込みすぎていて全く声をかけられていなかった。
リハ.Escape
リハ.knife
リハ.nem…
1.monolith
2.message
3.fiction
4.Alien
5.Kitchen
6.My HERO
7.midnight cruising
8.Squall
9.Buster Call
10.Remember
15:00〜 yonige [SOUL STAGE]
BEGINNING STAGEのフォーリミを見終わってから急いでSOUL STAGEへ移動すると、すでにyonigeが「リボルバー」を演奏しているところだった。茶色混じりの髪がより一層長くなって大人らしさを増している牛丸ありさ(ボーカル&ギター)の歌声はびっくりするくらいに伸びやかだ。
サポートギタリストの土器大洋の存在が音源で重ねているギターの再現性を増しながら、牛丸はちょくちょく歌詞を間違える、彼女たちの過ごしてきたであろう場所の景色が思い浮かぶギターロックな「最終回」と続くと、激しく体を揺さぶりながらベースを弾いていたごっきんは
「このイベントの主催者のKentaroさんはウチらにとっては東京の父親と言うような存在」
とFOMAREとともに所属するレーベルのイベントに出れる喜びと、そのレーベルの人たちとともに生きてきたバンドの歴史を感じさせるMCをし、そこからさらにアッパーに突き抜けるのかと思いきや、ホリエのドラムが実に複雑なリズムを刻む「往生際」からはまるでワンマンであるかのようにディープな、しかしこれが今のyonigeのモードであるということを示すかのように、曲と曲のアウトロとイントロをつなげるようなアレンジでもって「2月の水槽」「バッドエンド週末」と、まるで同じ時期にできた曲であるかのように繋いでいくライブアレンジを見せる。
かつてはライブが苦手と言っていたのが遠い昔のように今のyonigeはライブ巧者と言ってもいいバンドになっているし、春フェスの時点ではこうした曲を連発していたのは「初見殺し」とも言われていたが、今やyonigeの核はこうした曲にあるんじゃないかとすら思える。それくらいにパンクバンドやラウドバンドが顔をそろえるフェスであってもそこに合わせて行こうとするんじゃなく、あくまで今の自分たちがやりたいことやこれからやろうとしていることを見せている。それだけにこのフェスにおいては他のバンドとは違う方向に突出した存在になっている。
しかしながら「さよならアイデンティティー」を演奏したのはバンドの始まりの曲とも言えるこの曲を東京の父親と呼ぶような人の開催しているイベントで鳴らしたいという思いもあったのかもしれないが、牛丸は思いっきりサビの歌詞をすっ飛ばしていた。
そうして割と牛丸は歌詞が飛んだり間違えたりすることが多いけれど、それでも歌わなくなることはほとんどない。この場面でもハミングするかのように歌詞にならなくてもメロディを口ずさんでいた。そしてその歌声は本当に上手いボーカルだなと思えるものだったし、もしかしたらこの日の出演者の中でもトップクラスの歌唱力を持っていると言えるような存在になったのかもしれないと思うくらいの声量だった。これからその声でどんな歌を歌うのか実に楽しみだ。
そして最後に演奏されたのは、
「灰になってもうどれほど経つだろう」
という牛丸の歌声がサイケデリックな音像に乗って揺蕩う「最愛の恋人たち」。やはりみんなが知っているわかりやすい曲で終わるのではなく、自分たちだからできる空気をしっかり作って終える。曲が終わってメンバーが深く頭を下げてステージを去っても残っているギターの残響が、なかなかその場から体を動かそうとしてくれなかった。
1.リボルバー
2.最終回
3.往生際
4.2月の水槽
5.バッドエンド週末
6.さよならアイデンティティー
7.最愛の恋人たち
15:40〜 tricot [BODY STAGE]
先日までyonigeと2マンツアーをしていたこのバンドをyonigeの次の時間帯に配置するというタイムテーブルは実によくわかっている流れと言えるが、この日の出演者の中では異色な存在と言っていい、tricot。
その異色っぷりはキダ・モティフォがその場でステップを踏みながらギターをジャキジャキと刻んでスタートし、このバンドの代名詞とも言える変拍子連発の「Noradrenaline」からすでに顕著であるが、ステージ上手で中央の方を向きながら歌う中嶋イッキュウ(ボーカル&ギター)の表情がスクリーンにアップで映し出されると、男性だけではなく女性もその美しさに感嘆の声を上げていた。
しかしこのバンドの魅力はそこではなく、このフェスにおいてはダントツで複雑な構成の曲をいとも容易げにというか、それが普通であるかのように演奏することができる演奏力にあるのは周知の通りであるが、東京オリンピックの開催が決まる前から演奏されていたと思うと先見の明を感じざるを得ない「おもてなし」以降は最新シングルのタイトル曲にして、tricotがメジャーレーベル所属のバンドとしてここから再び勝負に出ようとする気概を感じさせる「あふれる」、どこか女性の情念のようなものをやや淡々としたリズムの上に乗せた「potage」と近年リリースの今のバンドのモードを見せつける。
そんな中でセッション的な演奏で一気に爆裂モードに突入すると、頭をブンブン振りながらギターを弾いていたキダがステージ前にいるカメラマンに近寄って至近距離で微笑みかけたりと、かつてネットでの「美人バンドマンまとめ」みたいなやつにイッキュウとヒロミ・ヒロヒロは紹介されていたのに1人だけスルーされて凹んでいたキダの可愛らしい一面を見ることができる。それはクールビューティなイメージのイッキュウとも、小柄で幼く見えるヒロミ・ヒロヒロ(ベース)とも違うタイプだと感じられるし、カメラが入っていてスクリーンがあるというこの広い会場でのイベントならではある。
その演奏の爆裂っぷりがそのまま曲に繋がるのは吉田のビートが踊らせまくる「爆裂パニエさん」、さらには激しく動き回ったがゆえに服がめくれてしまう瞬間もあったヒロミが
「かかって来いー!」
と叫び、イッキュウも
「幕張まだまだいけんのか!」
と煽りまくる「99.974°C」とバンド随一のアッパーな曲をありったけの熱量を込めて演奏するとダイバーも続出。その光景はこのフェスだからこそとも言えるが、間違いなくバンドの演奏がそうしたくなるような衝動を引き出している。
最後までメンバーは煽りまくると、イッキュウは演奏途中でギターをおろし、マイクスタンドをぶっ倒しながらステージから飛び降りて客席に突入する「MATSURI」という止まることを知らぬ爆裂っぷり。イッキュウはステージに戻ると自らが置いたギターを床の上で鳴らし、そのまますぐにステージを去っていった。近年はジェニーハイのメンバーの人というイメージが強くなりがちなイッキュウであるが、やはりこのバンドでステージに立つ姿は実にカッコ良かった。
先日のyonigeとのツアーではこの日の後半に演奏された爆裂曲はほとんど演奏されることはなく、最新のバンドの姿を見せるようなものだった。しかしフェスになるとやはり戦い方が変わるのはここまでの他のバンドの激しいライブを見てきたからだろうか。
この時点ではこの日のベストはこのバンドなんじゃないかと思っていた。それくらいに、可愛さとかそうした要素がどうでもよくなるくらいにただひたすらにカッコ良かった。
リハ.おやすみ
1.Noradrenaline
2.おもてなし
3.あふれる
4.potage
5.爆裂パニエさん
6.99.974°C
7.MATSURI
16:10〜 My Hair is Bad [BEGINNING STAGE]
REDLINEらしいバンドと言ってもいいバンドである、My Hair is Badがだいたい1日の真ん中くらいになるタイミングで登場。夏フェスもそこまで出演していなかっただけに、こうしてライブが見れるというのは実に嬉しい。もはやこのメンツでトリをやったりしてもおかしくはないレベルまで来ている。
リハからステージにいた3人はそのまま捌けることなくステージにとどまり、時間になるとすぐさまライブが始まるという実にスムーズなスタート。椎木知仁(ボーカル&ギター)が
「ドキドキしようぜ!」
と叫ぶと「アフターアワー」を演奏するのだが、曲間にも
「側にあるものが大切だっていうのなら、今日1番大切なのはお前たちだ!」
と曲に合わせた言葉を叫んですでに熱狂状態の客席をさらに熱くさせる。山本大樹も早くも高く足を振り上げながらベースを弾く。
「ドラマみたいだ」と続くというのはこのバンドのライブの常套パターンであるが、曲終わりで椎木が
「大丈夫?倒れてる人いたら起こしてあげて」
と言うとなかなかライブは再開されず、多数のスタッフが出てきて倒れてしまった観客の救助を行い、一歩ずつ後ろに下がるようにとのアナウンスまでも流れる。5分くらいは中断していただろうか。その間、メンバーは山田淳のドラムセットに集まって雑談するでもなく、ひたすらに集中力が途切れないようにしているように見えた。
ようやく再開の目処が立つと椎木は
「それでもライブハウスで続いてきたイベントなんだから、ここをライブハウスにしないと意味がないだろう!」
と全く自分たちのスタイルを変えることなくライブを続行することを宣言すると「告白」、
「このフェスで1番短いラブソング!」
という「クリサンセマム」、さらにはハードな音像と歌詞の「ディアウェンディ」とひたすらにアッパーな曲を連発。やはりどんどん人が前に押し寄せていくだけに少し不安になるところもあったが、今度は中断するような事態にはならず。
すると椎木がギターを弾きながら即興的な言葉を繋いでいってから最後に
「夏の匂い」
と結んでから演奏されたのはもちろん「真赤」。ライブハウスで続いてきたイベントで聴くからこそ、歌詞にあるような地下のライブハウスの景色と、そこを熱狂させるようなマイヘアの姿が浮かんでくる。
そして最後に演奏されたのは熱さだけではない、マイヘアの素朴な一面を感じられるラブソング「いつか結婚しても」。とはいえ「フロムナウオン」もなければ近作の曲もない、実にあっという間に終わったのは中断の影響もあったのだろうかと考えてしまう。
今のマイヘアくらいの規模になると、ライブに慣れてない人もスタンディングのライブにたくさんくる。そうするとどうしてもこういうことは起きる。(それはマイヘアに限った話ではない)
でもそれはバンドサイドからはどうしようもないことであるし、ライブ中に主催者がアナウンスを連発するのもライブの流れを寸断してしまう。それだけに客席にいる側がどうにかしないといけない。好きな理由や考え方は違えど、ここにいた人はみんな「マイヘアが好き」ということは変わらないはず。全員と仲良くするなんてのは絶対無理だし、理解するのも無理だ。ただ、そういう人たちが対立するような構図はなるべく見たくないのだが…。
1.アフターアワー
2.ドラマみたいだ
3.告白
4.クリサンセマム
5.ディアウェンディ
6.真赤
7.いつか結婚しても
17:00〜 ROTTENGRAFFTY [REDLINE STAGE]
20周年イヤーを迎えてより精力的に、というよりも最近はどんなフェスにも出ているような気さえする、ROTTENGRAFFTY。年末には自身の主催フェスも控えているが、それに合わせてライブが減るということは全くない。
5人がステージに登場すると、NAOKIとNOBUYAの2人がいきなり歌い始めた「This World」で手拍子が起こり、髪の半分が金、半分が黒という派手な出で立ちのKAZUOMIが煽るとコーラスでは大合唱が起きる。もはやすっかりこの曲はロックフェスにおけるアンセムと言っていい存在になっている。
「STAY REAL」と続くと早くもNOBUYAは花道に走り出してから客席に突入し、完全に季節外れの「夏休み」ではNOBUYAに合わせて観客が両手を左右に揺らす。どうやら季節関係なくこの曲はフェスでは演奏されるようだし、こうしてたくさん人がいる場所の方が映える曲だ。
20年間走り続けてきたバンドが10周年を迎えたこのイベントのことを讃えると、会場には女性のアナウンスが。12月に新曲がリリースされることを告知すると、そのままその新曲「ハレルヤ」を披露。これが20年目のこのバンドの中でもトップクラスにラウドな曲であり、これからも変わらぬバンドの姿勢を感じさせるが、まだリリースされてない曲とは思えないくらいにもう何年間もずっと演奏されてきたかのようなクオリティをすでに見せてくれるのはさすがである。
同期の電子音が流れるとHIROSHIもドラムセットに立ち上がってノリノリで踊りまくる「D.A.N.C.E.」ではNAOKIの先導によって観客を全員座らせてから一気にジャンプさせるのだが、その座った時の観客の姿がスクリーンに映ると、みんな本当に楽しそうな顔をしていた。それは20年間かけてこのバンドが手にした最も大きなものなのかもしれない。
NOBUYAは隣のBEGINNING STAGEまで行って歌うという自由っぷりを見せるが、NOBUYAだけでなくKAZUOMIも両ステージの間まで移動し、NAOKIと侑威地(ベース)は花道まで出て行って演奏するなど、一瞬ステージ上にはHIROSHIしかいないという状態で「金色グラフティー」を演奏。
フェスではこの曲で終わることも多いため、これで終わりにしては早いな、と思っていたら最後にトドメとばかりに「Error…」へ。この日の出演バンドの中ではトップクラスのベテランであるが、全くそんなことは感じさせないエネルギッシュさであった。
今でこそこうしていろんなフェスの大きなステージに立つようになったバンドであるが、そうなったのは20年間のうちのここ数年のことだ。もちろん盟友である10-FEETの京都大作戦に出演し続けたことによってロックファンに発見されたと言ってもいいけれど、長い年月を日の当たらない場所で過ごしてきた、やめなかったというよりもやめられなかったバンドだからこそ、こうしてライブで生きていくことがどういうことなのかというのをその姿は教えてくれる。
1.This World
2.STAY REAL
3.夏休み
4.ハレルヤ
5.D.A.N.C.E.
6.金色グラフティー
7.Error…
17:40〜 ハルカミライ [BODY STAGE]
BODY STAGEは、というか向かいのSOUL STAGE側までも超満員。そんな中でリハでボーカルの橋本学を除く3人、関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)がリハから「ファイト!!」を連発して大合唱とダイブの嵐を巻き起こしていた、ハルカミライ。翌週にはなんとこの幕張メッセでの360°ライブを行う(しかもチケットはソールドアウトしている)という状態なだけに期待の大きさが溢れかえっている。
本編で橋本も登場すると、「君にしか」からスタートし、「カントリーロード」とストレートなパンクロックでコーラスをするメンバーに負けじと観客も大合唱をする。みんな、ハルカミライの存在を、曲を、歌詞を完璧に知っている。MONGOL800やWANIMAのライブがそうであるように、合唱という人の声が重なるからこそ生まれる感動のようなものに会場はあっという間に包まれていく。
「俺にも歌わせろー!」
と、リハにいなかった橋本が言うやいなや、「ファイト!!」を歌うよりも客席に突入していく橋本。関はスピーカーによじ登ってギターを弾き、須藤はベースを引きずりながらステージを歩き回る。よく「ライブは自由だ」と言うバンドがいるけれど、ハルカミライは誰よりもメンバーが自由だ。だから平気で「ファイト!!」を2回も演奏するし(リハも合わせると計4回)、橋本はメンバーが演奏している間に観客の上を泳いでBODY STAGEとSOUL STAGEの真ん中にあるRIOT STAGEまでたどり着くと、まるでここが「世界の真ん中」だと言わんばかりに「春のテーマ」を歌い始め、しかも観客の1人をステージに上げて肩を組んで歌う。
それだけではなく観客を小さいRIOT STAGEに次々に上げていき、もう乗り切れなくて収拾がつかなくなったところで戻っていくのだが、
「目立ちたがりやはそのままそこで見てていいから!」
と言い残してRIOT STAGEから去っていく。結局ライブが見づらいからか、観客はみんなステージからは降りていたが。
橋本は再び観客の上を泳いでステージまで戻るのだが、
須藤「長いよ〜。戻ってくる間に1曲やっちゃうよ〜」
と言ってその間にショートチューン「Tough to be a Hugh」を演奏し、結局普通にステージに戻るよりもさらに激しい中で戻ることになる。
そしてステージに戻った橋本はTシャツを脱いで上半身裸になると、
「元気な歌で強くなろうぜー!強い歌で優しくなろうぜー!優しい歌で前に進もうぜー!」
と観客に呼びかける。誰もが理解できるくらいに簡単な言葉だけれど、これは橋本以外の誰にも言えない言葉だ。なぜなら橋本は元気な歌を、強い歌を、優しい歌を、前に進める歌を歌っていて、その歌に自身の持つ感情を最大限に込めることができる力を持っているボーカリストだからである。だから歌を聴いていてどうしても涙が出てしまうし、このMCを聴いていてもそう。周りでも泣いている人がたくさんいたということはその歌の力がしっかりと伝わっているからである。
そしてリリースされたばかりの最新シングルのタイトル曲「PEAK’D YELLOW」もすでに合唱が起こるくらいのアンセムとなっているのは恐ろしいところであるが、所属レーベルにしてこのイベントの主催レーベルのコンピレーションアルバムに収録されたショートチューン「フュージョン」と持ち時間35分とは思えない怒涛の勢いでジェットコースターのように目まぐるしい展開のライブを見せると、
「幕張メッセ、また来週〜!」
と橋本が翌週のワンマンへの期待をさらに高まらせると、
「眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ」
という歌詞がこのバンドのパンクへの目覚めの瞬間を想起させる「アストロビスタ」を最後に最大の大合唱でもって鳴らすと、
「眠れない夜に俺たち、REDLINEに来たんだー!」
と叫んだ。究極に人間的であり続けた35分であり、このバンドが新たなパンクヒーローであることを示した35分だった。
ライブ猛者しかいないこのイベントにおいても、このバンドはちょっと何か次元が違うというか、ただライブが良いというだけではない何か特別な力を持っている。今はまだ自分にはその力がなんなのかがわからない。わからないから、ただ僕は正体を確実を知りたいんだ。このバンドを見ていてこんなにも涙が出てしまう理由を。だから、幕張メッセまた来週。来週、様々なバンドが立ったこの会場は、このバンドだけのものになる。
リハ.ファイト!!
リハ.ファイト!!
リハ.ラブソング
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺たちが呼んでいる
5.ファイト!!
6.春のテーマ
7.世界を終わらせて
8.Tough to be a Hugh
9.エース
10.PEAK’D YELLOW
11.フュージョン
12.アストロビスタ
18:40〜 クリープハイプ [REDLINE STAGE]
メンバー全員でリハを行っている時から違和感というか、あれ?これは光の加減によるものなのか?という感じはあった。実際に本編でSEもなしにメンバーが登場すると、やはりそうだった。これまでは黒髪マッシュヘアがトレードマークだった尾崎世界観(ボーカル&ギター)が金髪になっている。
そんな見た目のインパクトに気を取られていると、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れた「鬼」の「津田沼の6畳間」を
「幕張の6畳間」
と総武線の数駅間で歌詞を変えるという幕張バージョンに変えて歌い、歌い出しから満員の観客の悲鳴にも似た歓声が起こる「栞」、同期のサウンドとともにライブならではのイントロアレンジが施されてよりダンサブルになった「イト」とキラーチューンを連発すると、
「My Hair is Goldです」
と自らの金髪を後輩バンドの名前をもじって紹介する尾崎。黒のイメージが強いだけに最初はもっと違和感が残ったままかと思いきや、髪型自体は変わっていないからかもうこの辺りではそこまで違和感は感じていなかったというか、馴染んでいた。なぜ今になってガラッとイメチェンをしたのかはわからないけれど。
小川幸慈がギターを今まで使っているのを見たことがないものに変えて、尾崎もギターを弾かずにボーカルのみという形で披露されたのは新曲の「愛す」。これで「ぶす」と読むというのが実に尾崎らしいけれど、サウンドはもはや完全にR&Bであり、ひたすらに引き算された音数の少なさ。それだけに小泉拓(ドラム)と長谷川カオナシ(ベース)のリズム隊は強さを要求されるところであるが、そこをしっかりと超えているあたりにこのバンドの地力の演奏力の高さと、このメンバーになって10年以上続いてきた経験と絆を感じさせる。何をやってもこのメンバーならクリープハイプになるという自信というか。
「エゴサーチをするのが趣味なんですけど、今日見てたら
「クリープハイプの前あたりで帰るんだけど誰かリストバンド安く買いませんか?」
みたいなツイートがあって。そんなアフターシックスパスポートみたいに扱われたくないっていうか。気に入らないんだったらそのまま帰ればいいし。今残ってくれてる人に言ってもしょうがないんだけど(笑)
このイベントには1年前からオファーをもらっていて、我々出演者も主催者もずっと準備をしてきたので。そんな半端な気持ちでアフターシックスみたいに譲らないでください」
と何度となく出演していて、こうした記念の舞台にも自分たちを呼んでくれるこのイベントへの感謝を実に尾崎らしい形で語ると、「イノチミジカシコイセヨオトメ」で
「生まれ変わったら何になろうかな
生まれ変わってもクリープハイプのボーカルになってREDLINEに出たい!」
と曲においてもその思いを叫ぶ尾崎。ラブシャでも同じように歌詞を変えて歌っていたが、ずっとバンドを続けてきた中で大事な場所がたくさんできたからこそ、そうやって歌えるようになったのだろう。
そのまま「手と手」へとアウトロとイントロを繋げていく流れはメジャー1stアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」の収録順と同様であるが、やはりこの流れが1番ハマっているように感じるというか、インディーズバージョンの「イノチミジカシコイセヨオトメ」ではできなかったことを今のメンバーになってできるようになったという歴史も含めてそう感じさせるのかもしれない。
そしてカオナシが急いでステージ中央まで出てきてイントロのベースを弾き始めた「HE IS MINE」では当然
「セックスしよう!」
の大合唱が起こるのだが、そのままサビへ行かずに合唱前のフレーズに戻ったため、何かあったのか?と思ったら尾崎が
「今日のイベントはサガミがスポンサーになっているので、コンドームがあるからもう1回ヤれます」
と言ってこのイベントならではの2回連続の「セックスしよう!」の大合唱。
尾崎の金髪姿というトピックスもあったが、それ以上にこの日だからこその忘れられないライブを見せてくれたし、それは新曲も含めて改めてクリープハイプの凄さを物語っていた。このステージに立っているバンドの中ではパンクさもラウドさもほとんどないバンドだけれど、鳴らす音の強さはそうしたバンドたちに全く負けていない。
リハ.左耳 (サビ少し)
リハ.愛の標識
リハ.二十九、三十
1.鬼
2.栞
3.イト
4.愛す
5.イノチミジカシコイセヨオトメ
6.手と手
7.HE IS MINE
19:30〜 MAN WITH A MISSION [BEGINNING STAGE]
BEGINNING STAGEのトリはMAN WITH A MISSION。究極の生命体として今や日本のアリーナクラスのみならず世界各国でライブをしているバンドである。
サポートギタリストのE.Dヴェダーを含めた6人編成でステージに現れると、壮大なサウンドとジャン・ケン・ジョニー(ギター&ボーカル)のハイトーンボイスが響く「Emotions」からスタートし、DJサンタモニカがステージ前まで出てきて踊りまくり、カミカゼ・ボーイ(ベース)は早くも花道から客席に突入していく「Get Off of My Way」とキラーチューンを連発すると、最近は割とバンドの新たな一面を見せるような曲が多かったイメージの中でこれぞマンウィズのど真ん中のミクスチャーロックと言える最新シングル曲「Dark Crow」と新旧交えた、実にフェスらしいセトリに。
「このイベントには10年前の第1回から出させてもらっています」
というジャン・ケンのイベントへの感謝を告げるMCからはこのバンドが南極から発見されてシーンに登場した衝撃からもう10年も経っているという事実にしみじみとしてしまうが、その10年の中でひたすらに名曲ばかりを作ってきたということが少年たちの群像劇というタイアップの性質を踏まえると抽象的な歌詞に具体性を感じることができる「Raise your flag」、このバンドの持つダークな面をジャン・ケンとトーキョー・タナカのツインボーカルがキャッチーに感じさせる「Take Me Under」と続いていくことによってわかるし、見た目は愛くるしさを感じるけれども実に正統派かつ骨太なミクスチャーロックバンドであるということもわかる。フェスでこのバンドを見る中でもトップクラスにダイバーが多いというのもこのイベントならではだろうか。
そして今年を代表する曲であり、マンウィズの持つメロディの美しさを改めてお茶の間にまで響かせた「Remember Me」にはついつい聴き入ってしまう。この曲はこれまでにヒット曲を連発してきたこのバンドのこれからにとっても実に大きな存在の曲になるだろうし、もしかしたらこの曲をきっかけにしてこのバンドのことを知った人も多いかもしれない。そんな曲を実に丁寧に、しかし熱量溢れるように演奏していた。
そんなライブの締めはやはりトーキョー・タナカがイントロから飛び跳ねまくり、カミカゼは花道に歩き出す中で踊りまくるサンタモニカの目が発光するというオオカミならではのギミックを活かした「FLY AGAIN」。この曲をライブで聴いた時のこの無上の楽しさはなんなんだろうか、と思うし、きっとこれから何度ライブで聴いても全く飽きることがない曲だと思う。
しかしこうして並べてみると凄まじいセトリである。それはヒットしたという事実もそうであるし、このバンドの代表曲はそのまま今の日本のロックシーンのアンセムでもあるということ。シーンに出現してからの10年は2010年代の日本のロックシーンの10年でもある。もしかしたら2010年代の日本のロックの象徴はこのバンドの存在なのかもしれない。
1.Emotions
2.Get Off of My Way
3.Dark Crow
4.Raise your flag
5.Take Me Under
6.Remember Me
7.FLY AGAIN
20:20〜 SiM [REDLINE STAGE]
そして長いようでいてあっという間だった1日もついに最後のアクトの時間に。このイベントの大トリはSiM。自身で大型野外フェスも主催しているだけに、こうした猛者揃いの中でトリをやることには慣れているはず。
まるでラスボスのような風格すら感じさせるメンバー4人がステージに登場すると、
「REDLINE最多出演のSiMだー!今日は俺たちとREDLINEの辿ってきた歴史を示すように、これまでのアルバムから順番に演奏する!」
とMAH(ボーカル)が言い、いきなりの「KiLLiNG ME」からスタート。それはいつも通りのようでいてコンセプチュアルなライブをやるということの宣言であるが、さすが現在の日本のラウドロックシーンの首領とも呼べるバンド、疲れなど全く感じさせないくらいに観客はモッシュ、ダイブ、サークル、ツーステなど思いっきり体を動かしてバンドの鳴らす重い音に反応していく。
SHOW-HATE(ギター)とSIN(ベース)が楽器を振り回しまくる「Amy」ではスクリーンが4分割されて4人が演奏する様子が同時に映し出される。他のバンドでは見れなかったスクリーンの使い方であるだけに、このバンドがこのイベントから本当に愛されていることがわかる。
MAHがROTTENGRAFFTYのNOBUYA同様に横のBEGINNING STAGEまで歩いていくと、そっちのステージの周りにいる人たちに
「お前ら楽そうだな」
と言いながらその前に伸びる花道に出て行って歌うのだが、そこにファンが殺到して本来出ていない側のステージの客席でもダイブが起きるという事態に。なんならもうステージにはなんのセッティングもされていない、撤収待ち状態のステージなのに。
「なんで俺たちがトリなのかわかるか?至極簡単なことだ。俺たちが1番カッコいいからだー!」
という言葉をリアルなものにするべく「WHO’S NEXT」、SHOW-HATEがシンセを操りながら会場一面にモンキーダンスを起こす「GUNSHOTS」と、本当に各作品からキラーチューンを順番に演奏していくのだが、フェスでは敢えてバラード曲を演奏して多様性を見せることによってワンマンのライブハウスへ誘うというスタイルを取ってきたバンドであるが、この日ばかりはそれは少し違うようだ。
なので夏フェスで演奏していた新曲「Baseball Bat」や今年リリースされてすでにライブ定番化してきていた「DiAMOND」というあたりの曲は演奏されず、大合唱を巻き起こした「Crows」、GODRiの叩き出すツービートが曲に疾走感を与える「MAKE ME DEAD!」と本当に休む暇もなければ疲れを実感する余裕すらない怒涛の展開なのだが、MAHはここで感謝を告げながら主催のKTR氏をステージに招くと、そのまま客席に生まれていたウォールオブデスの真ん中に突き落として「f.a.i.t.h」を演奏。まさかバンドマンではなく主催者がこうして餌食になるとは思わなかったが、KTR氏がダイブをしてステージに戻ってくる光景も含めて、10周年のREDLINEの集大成に相応しいと思えるようなライブと1日だった。
1.KiLLiNG ME
2.Amy
3.Blah Blah Blah
4.WHO’S NEXT
5.GUNSHOTS
6.Crows
7.MAKE ME DEAD!
8.f.a.i.t.h
何度も書いてきたように、このイベントはパンク・ラウド系のバンドが多く出演している。でも共通項というか、軸はそこじゃない。ライブがカッコいいバンドという部分だ。こういうイベントがあるのはライブ好きにとって本当に嬉しいし、余韻だけで何日でも生きていけるような。そしてやはりバンドって何よりもカッコいいよなと思える1日だった。
文 ソノダマン