the telephones 15th Anniversary “Tour We Go” 「十万石 DISCO!!!」 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3 2021.3.12 the telephones
活動再開後初のアルバム「NEW!」を11月にリリースし、年末にはduo music exchangeで「SUPER DISCO HITS!!!」を3daysを開催したりという活動はしていたが、6月〜7月に予定していた、活動再開後初となる本格的なツアーは結果としては中止になってしまった。(そもそもはアルバムも春にリリース予定であり、リリースツアーという形だった)
しかしバンド15周年イヤーにツアーをやらないわけにはいかず、この日を皮切りに改めてツアーを開催。これまでthe telephonesのツアーには初日かファイナルをバンドの地元の北浦和KYARAで行ってきたが、北浦和KYARAがなくなってしまったということで、今回は北浦和からすぐのHEAVEN’S ROCKさいたま新都心で初日を開催。
検温と消毒を経て実に久しぶりのHEAVEN’S ROCKの中に入ると、客席はスタンディングであり、床には前後左右の観客とかなり距離を取って立ち位置が記されているという感染対策。なんならduoの時の座席有り公演よりも周りとの距離は保たれている。
緊急事態宣言延長に伴って開演時間が早まったことによって、18時30分になると場内が暗転しておなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」が流れると、ステージに置いてある衝立のようなものを乗り越えるようにして先陣を切ってノブがステージに現れると、おなじみのアフロのカツラを着用して3人も続いてステージへ。
客席に向かって投げるような素振りを見せながらカツラをステージ袖に向かって投げると(ノブは思いっきり長島涼平(ベース)に向かってカツラを投げていた)、
「埼玉ー!今日は来てくれて本当にありがとう!両手を上げてくれー!」
と石毛輝(ボーカル&ギター)が独特のハイトーンボイスで叫んで観客が両手を上げる。
「Put your fuckin hands up」
というメンバー全員で歌う冒頭のフレーズの通りの光景が広がる中で始まったのは「NEW!」の1曲目ということもあって、「ここから始まる!」という期待を強く抱かせる、ライブのオープニングにこれ以上ないくらいにふさわしい「Here We Go」。この曲はこれからも間違いなくtelephonesのライブの始まりを告げる曲になっていくはずであるし、冒頭からのノブのステージを自由に動き回る姿を見ていると、15周年というベテランらしさを感じざるを得ない経歴が本当に?と思ってしまうくらいに見た目も含めてフレッシュそのもの。
すると何とここでまさかの「Love&DISCO」のイントロが流れて、本当に演奏に突入していく。客席にいた誰もが「え!?ここで!?」と思ったのは間違いないが、特に活動再開してからはこの曲をほとんど毎回最後に、あるいはアンコールにやってきた。それくらいに強い曲であり、個人的には「2000年以降の名曲」という企画で曲を選べるなら間違いなくこの曲を入れる、というくらいの曲であるが、だからこそある意味では決まり切った流れになってしまうという懸念もある。それを良い意味で見事なまでにこちらの期待を裏切るようなセトリを組んできたことによって、このツアー、ひいてはこれからのtelephonesのセトリの幅がこの上なく広がったと言えるだろう。やはり我々はタイトルを叫ぶことは今はできないが、
「All the party people…」
のフレーズでは石毛が
「マジでありがとうtelephones people!」
と、この状況下、しかも平日に時間を繰り上げても来てくれた観客への思いを叫ぶように変えて歌ったことにより、やはりライブハウスの中は愛とディスコで満ちていく。
「愛の次はHateを!」
とノブが暴れまくるディスコパンク「I Hate DISCOOOOOOO!!!」と真逆の曲が続くという流れもメンバー間で練りに練ってきたものであることが伝わってくる。
「この2曲続けたら面白くない?」
ってわいわいしながらリハをしているバンドの様子が頭に浮かんでくるようだ。声は出すことはできなくてもそんな空気を感じさせるメンバーの演奏している姿を見ているだけで本当に楽しい。
フェスでも演奏されるくらいに早くも「新しいtelephonesのディスコパンクの代表曲」となりつつある「Changes!!!」ではサビの
「Punk rock song was playing on TV」
というフレーズの通りに、今目の前で鳴らされている曲の音がパンクロックとしての衝動を与えてくれる。「NEW!」の曲はリリース前に全曲お披露目ライブをやっていたこともあってか、リリースされてからはそこまでライブで演奏する機会があったわけではないけれど、もうずっと演奏してきたかのようにすでにバンドが仕上がっている。
この状況であってもライブに来てくれた観客への感謝を石毛が改めて言葉で伝えると、そんな観客への感謝としてこの日からのツアー会場で限定販売が始まった(感謝はしてもお金は取る)、新曲の「Carbbean」を早くも披露。
なんと松本誠治(ドラム)のボーカルから始まるという、「NEW!」というアルバムの後ですらも新しい要素によって始まり、涼平のベースが心地良いグルーヴを生み出す、タイトルとおそらく
「Catch the wave」
と歌っているであろうメンバーによるコーラスの通りにカリブ海沿い(行ったことないからあくまでイメージだが)の風景が浮かんでくるような、「DISCO AGE MONSTERS!!!」における南国の要素とはまた違う曲であるが、そうした新しさを感じるような曲ですら演奏している姿を見ているとtelephonesならではの曲というか、telephonesじゃないと生まれない曲だよなと思える。曲中にはカウベルも叩くノブのアメリカのラッパーのようなダンスにはマスク越しでも笑ってしまうけれど。
そうした新しい要素を見せながらも、活動休止前もワンマンでは観客を踊らせまくり、タイトルフレーズを歌わせてまくってきた「oh my DISCO!!!」、さらには石毛が決して広くはないステージの上でも見事なロンダートを決め、その瞬間に石毛のギターを持っていたローディーの方がしっかりギターを弾いていた「HABANERO」と、telephonesの歴史を彩ってきた代表曲たちが次々に演奏されていく。
結果的に「NEW!」のリリースツアーは出来なくなってしまっただけに、「Here We Go」のタイトルをもじったこのツアーでは「NEW!」の曲をメインに演奏するツアーになるのかと思っていたが、それ以上に15周年という要素の方が強いツアーであるようだ。
だからこそバンドの歴史を作ってきた、telephonesの15周年を祝う際に欠かすことができない曲がセトリに連なっているということであろうし、それは同時に15周年という節目に居合わせてくれている観客への感謝という面もあるのだろう。観客それぞれにきっとtelephonesと出会った時期の曲や思い入れの強い時期の曲があるだろうから、幅広い年代の代表曲を網羅しようとしているような。
そんなtelephonesの歴史の中で避けては通れないのが2015年の活動休止であり、その直前にリリースされたアルバム「Bye Bye Hello」のリード曲である「Something Good」ももちろん演奏される。
このライブハウスのすぐ隣にあるさいたまスーパーアリーナで2015年11月に開催された「Last Party」でも演奏されていたし、そこに至るまでの2015年に出演したフェスでも最後の曲として演奏されていた。それだけにこの曲を聴くとその頃の喪失感を思い出してしまうところもあるのだが、今はその曲をメンバーが本当に楽しそうに、まさに今の自分たちが「Something Good」であるというかのように演奏されている。そうした楽しい記憶で上書きしていきたいから、いつかコロナが明けて、ライブハウスに満員の人が入れるようになったら「Bye Bye Hello」の曲を全曲演奏するツアーをやってもらいたいものだ。
石毛「セトリも今回は目新しいというか「Love&DISCO」を2曲目にやるって初めてだよね。前に1曲目にやったことはあったけど」
涼平「そういうセトリの振り返りって普通はライブが終わってからやるもんじゃない?(笑)」
石毛&ノブ「その通り!正しいです!」
涼平「いや、今日俺がハッキリさせたいのは、誠治くんは「まぜそば屋の人がバンドをやってる」なのか「バンドマンがまぜそば屋をやってる」のかどっちなんだってことですよ」
誠治「最近は完全にまぜそばの稼働日の方が多いけど(笑)、もちろんどっちも全力で打ち込んでますよ!」
というMC恒例の誠治いじりもあり。石毛も「飲食店は厳しい」と言っていたが、こういう状況じゃなければ誠治が大宮でやっているまぜそば屋にもっと頻繁に行けるのに、って思えるくらいに「まぜそば誠治」は美味しい。
石毛がボーカルにエフェクトをかけると、その音に合わせるかのようにノブがロボットダンスを披露する「New Phase」は同じメロディとフレーズのループがどんどん激しくなっていくという新しいtelephonesのダンスミュージックの形であり、それは生でバンドサウンドで鳴らされているのを見るとより一層このバンドのリズム隊のグルーヴの強さを感じる。石毛のタッピング的なギターも含めて、やはりtelephonesは演奏力という土台をしっかり持っているバンドだからこそこうしていろんなタイプの曲を作って演奏することができるのだと思う。
その「New Phase」の後に演奏されるのがリズム的にすごくしっくり来るというか、DJが曲を繋げるかのようにスムーズに繋がっていたのが「Tequila,Tequila,Tequila」。ステージ背面のバンドのバックドロップの下あたりから客席に向かって放たれる緑色のレーザー光線が実に美しいし、物理的に跳ねるようにベースを弾く涼平とシンセを弾くノブの姿が観客をより踊らせてくれる。
そのノブのシンセがまさに客席をダンスフロアにしてしまうのが「SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!」。さいたまスーパーアリーナで開催されているVIVA LA ROCKなどでもよく演奏されているが、telephonesの埼玉への愛が我々を踊らせてくれるような曲だ。ここはおそらくこの日が埼玉だったからであるし、ツアー中に曲が変わる可能性が非常に高いと思われる。
曲終わりではノブが自身の目の前の壁に貼ってあるセトリを2ページ目にカッコいい感じに入れ替えるのだが、そうしたところにまでカッコつけるのは
「○○の○○さんが「どれどれ?」って感じでセトリ見てたら嫌じゃない?ロックスターだから」
ということだが、それが誰を例えにしていたのかは会場に来ていた人だけの思い出ということで。
石毛「15周年ツアーだけど、50周年になるくらいまでやりたいね」
誠治「俺、その時には88歳になってるな〜」
ノブ「え?88歳はおかしくない?誠治君今何歳だっけ?」
誠治「あ、50周年だから35年後か!今から50年後かと思った(笑)」
涼平「88歳でバンドやってたら間違いなくシーン最年長だよ!(笑)」
という誠治の天然っぷりが炸裂したやり取りには客席からも思わず笑い声が漏れていたが、なんだかこうしてこの4人がライブをしている姿を見ていると、50周年を迎えてもこうして変わらずに今と同じようなライブをやっているような気さえしてくる。その頃まで我々もずっとライブに行けていたらいいなと思う。
そんなtelephonesらしいMC(とはいえこの観客が声を出せない状況下でのMCはまだ探っている感もあったが)から、声は出せないけれど涼平に合わせて観客も「D.A.N.C.E」の人文字を作ることはできる「D.A.N.C.E to the telephones!!!」でディスコパンクに振り切れると、
「バカみたいに踊ろうぜー!」
と、タイトルに意味がない(けれどこのタイトルは今でも実に秀逸だと思う)からこそ何にも考えずに踊りまくることができる「A.B.C.DISCO」と後半はさらに代表曲を連発していく。声は出せなくてもやはりどんどん楽しくなってくるというのはtelephonesの曲とメンバーの人間性あってこそである。
そして猿のように踊りまくる「Monkey Discooooooo」からはいよいよクライマックスへ。場所が決まっているとはいえ、やはり椅子がないというのは自由に踊れるな、ライブハウスってこういうものだよなということを再確認させてくれる中、最初の歌い出しの時に石毛が最前列でライブを見ていた自分の方を指差したような気がしたのは自意識過剰だろうか。でも石毛の間奏でのブリッジギターを含めてそうしたアクションが、決して声は出せなくても心の中でディスコを叫びたくなる。
そして最後に演奏されたのは「NEW!」収録の、最新のディスコ曲である「Do the DISCO」。この曲もまたこれからのライブでも他のディスコ曲と同様にこうしてクライマックスを担っていくようになっていくのだろうし、ライブハウスでのワンマンで最後にこの曲を演奏するということは、これからもtelephonesはライブハウスでこうしてディスコを鳴らしていくという意志の表明であるのだ。
アンコールを待って手拍子を鳴らす観客に応えるようにメンバーが登場すると、全員がツアーTシャツに着替えているのだが、なんだか走ってステージに登場したし、やたらと慌てて楽器を手にすると、
「時間がないから!」
と言ってすぐさま「NEW!」収録の「Route17」を演奏したのだが、これは埼玉県内を通る国道17号線を車で走るという曲であり、埼玉のライブハウスだからこその選曲だろう。演奏するまでを急いでいたからか、演奏自体もテンポが速くなっており、それが曲の持つパンクさをより一層強くしている。アウトロではさらに加速していて笑ってしまうくらい。これは状況がそうさせた偶然の産物か、あるいは今後も見れるライブならではのアレンジか。いずれにせよ埼玉でtelephonesを見るという楽しみがまた一つ増えただけに、見れるならばできる限りこうして埼玉でライブをやるときは見に来たいものである。
やはり急ぎ気味に
「ディスコを叫ぼうぜー!」
と言って演奏された「urban disco」はやはり何度聴いてもライブで聴けるのが嬉しくて仕方ないのだが、ノブは涼平の近くに置いてあったジュラルミンケースを持って踊り、最後にはスマホを持って演奏するメンバーの姿を撮影するというくらいにやりたい放題。その映像はノブのツイッターで公開されていたが、撮られていることがわかったメンバーはみんな爆笑していた。それだけに完全にノブの思い付きのパフォーマンスだったということだろうか。
そして石毛は時間がない中でもライブハウスへの思い、ライブハウスにライブを見に来てくれる観客への思いを口にすると、最後に演奏されたのはライブハウスで始まったバンドの夢を歌った「Small Town Dreams」。ダンスロックというよりはシンプルなギターロックというようなサウンドの曲であるが、きっとこれからこのツアーで回る各地のライブハウスで最後にこの曲を鳴らすのだろう。そこには石毛が最後に
「ライブハウスで生まれてライブハウスで死んでいくバンド、the telephonesでした!」
と言ったように、オーディションとかではなくてライブハウスで始まってライブハウスで生きてきたバンドとしての矜持があるからだ。アリーナのような会場でもライブをやってきたこともあったけれど、やはりtelephonesが生きる場所はライブハウスなのだ。5月の新木場での15周年最終日まで、この状況でも、いや、この状況だからこそtelephonesはそれを自分たちの音楽で鳴らしに行く。
それなりにいろんなライブを観てきたりしたけれど、自分の人生の中においてtelephonesは活動休止があったにしても1,2を争うくらいにたくさんライブを観てきたアーティストだ。だからこそ、この状況でもこうしてtelephonesの4人がライブハウスでライブをやっているということにこの上ない安心感を覚えるのだ。
石毛は
「こういうことがあったっていうことを忘れちゃいけないなと思って。高校生の子達が今ライブハウスに行きたいと思っていても行けなかったら20歳になった時にライブハウスに行きたいとはならないと思う」
と、残酷なようでいてリアルでしかない意見を口にしていた。ライブハウスに行きたくても行けない人がいて、何年もそうした状況が続いたらその人からライブハウスへの想いは消えてしまうかもしれない。でもライブハウスの灯はきっと消えることがない。telephonesのようなライブハウスで生きるバンドがこれから先何十年経ってもライブハウスで音楽を鳴らしているからだ。
そんなバンドの存在に救われ続けてきたからこそ、見れる限りはその活動を観続けていきたいのだ。お互いに歳を取っても50周年の時に「変わらないなぁ」なんて言って、周年を祝えたら。
1.Here We Go
2.Love&DISCO
3.I Hate DISCOOOOOOO!!!
4.Changes!!!
5.Caribbean (新曲)
6.oh my DISCO!!!
7.HABANERO
8.Something Good
9.New Phase
10.Tequila,Tequila,Tequila
11.SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!
12.D.A.N.C.E to the telephones!!!
13.A.B.C.DISCO
14.Monkey Discooooooo
15.Do the DISCO
encore
16.Route17
17.urban disco
18.Small Town Dreams
文 ソノダマン