この若洲公園で開催されていたROCKS TOKYOのインフラを引き継ぐ形で2013年から開催されている春フェス、METROCKももう今年で7年目の開催。現在はVIVA LA ROCKを主催している鹿野淳がROCKS TOKYOを開催していた時代は豪雨に見舞われたりしたこともあったが、このフェスは毎年夏フェスかのような暑さとなっており、この日も5月とは思えないくらいの猛暑日。
今年も
WINDMILL FIELD
SEASIDE PARK
NEW BEAT SQUARE
の3ステージという構成も、SEASIDE PARKとNEW BEAT SQUAREの時間が被っているというタイムテーブルも変わらないが、前週に開催された大阪会場においては厳格なダイブ、さらにはサークルモッシュも全面禁止という新たなルールを導入している。(一応去年までも形式上は禁止だったが)
11:30〜 フレデリック [WINDMILL FIELD]
昨年はSEASIDE PARKに出演したフレデリックが今年のWINDMILL FIELDのトップバッター。
テレ朝主催のフェスであるだけにテレ朝の女子アナ(去年までの弘中アナではない)とフテネコの作者などでおなじみの芦沢ムネトが登場して前説をすると、「フレデリック、はじめます」というSEとともにメンバーがステージへ。
緑色の中華服っぽい出で立ちの三原健司が登場すると、疾走感のあるダンスビートを高橋武が叩き出し、そこに三原康司のベースが乗るというライブならではのアレンジからいきなりの「オドループ」でスタート。踊ってない夜どころかまだ昼の12時にすらなっていない時間帯であるが、高橋はイントロだけでなく曲中にも細かいアレンジを施し、健司は赤頭隆児とともに間奏のギターソロ前でカメラ目線。このフェスはAbema TVで生中継されているということもあるからか、いつにもましてこの2人はちょくちょくカメラに目線を向けていた。
「40分1本勝負、フレデリック始めます」
と健司が言うと、ギターを置いてハンドマイク状態になって「飄々とエモーション」へ。「オドループ」や「夜にロックを聴いてしまったら」など、とかく夜のイメージが強いバンドであるが、この曲の爽やかな風が吹くようなサウンドは快晴の青空の下で聴くのが実に気持ち良い。
「METROCK、遊ぶ?遊ばない?遊ぶ?遊ばない?遊ぶよな!」
という健司の不敵な言葉からの「KITAKU BEATS」、まさかリリース時はこんなにもフェスでやるようになるとは思っていなかった、現代社会への警鐘や皮肉を含んだ「まちがいさがしの国」、それに続いて健司がハンドマイクで歌うのが様になっているというか、ずっと昔からこのスタイルで歌ってきている人であるかのようにすら感じる、高橋の細かく刻むビートの「シンセンス」と、
「モッシュやダイブは禁止されていますけど、踊るのは禁止されていません!」
という言葉通りに、こうしたルールを持つフェスに最もふさわしい存在のバンドなんじゃないかという感じもする。
フレデリックは春フェスに軒並み出演していて、各地で今年リリースのフルアルバム「フレデリズム2」の曲を多く演奏して、バンドの最新モードを見せてきたのだが、この日は後半に
「君とバックれたいのさ」
というフレーズがクセになるフレデリックらしい言葉使いの「逃避行」、どちらかというとギターロック色が強いためにフェスでも盛り上がる「エンドレスメーデー」という2曲を披露。「シンセンス」や「飄々とエモーション」もシングルで先行リリースされてはいるものの、アルバムにも収録されているので半分が新作収録曲。
そこから披露する曲は各地で出演時間や持ち時間、状況などによって変えてはいるが、リリース直後からこうしてライブで演奏されて鍛え上げられているために、年明けの横浜アリーナでのワンマンの時にはとんでもない状態になっていそうだ。
そして健司の
「いろんなアーティストのライブをたくさん見て、オンリーワンな1日を過ごしてください」
という言葉の後に演奏されたのは「オンリーワンダー」。
健司は最近フェスに出るとよく他の出演者や、フェス以外でのライブのことにも言及する。もちろん自分たちが1番になりたいという思いは強く持っているだろうけれど、それ以上に音楽という自分たちがずっと愛し続けてきたものの楽しさや素晴らしさをもっとたくさんの人にわかってもらいたいという意識を感じる。それはこうしてフェスでメインステージに立つようになったからこそ芽生えた自覚や責任感なのかもしれないが、ひたすらに「音楽のこと」を歌い続けてきたこのバンドがそうした立場になったのは実に心強いことだ。
リハ.リリリピート
1.オドループ
2.飄々とエモーション
3.KITAKU BEATS
4.まちがいさがしの国
5.シンセンス
6.逃避行
7.エンドレスメーデー
8.オンリーワンダー
12:20〜 go! go! vanillas [SEASIDE PARK]
2015年以来、4年ぶりの出演となる今年は様々なフェスに出まくっている、go! go! vanillas。4年前はNEW BEAT SQUAREに出演していたが、今年は一つ大きいSEASIDE PARKへ。
おなじみの「We are go!」のSEでジェットセイヤのドラムセットが下手側という3人編成だからこその横並びスタイルで登場すると、事故で療養中のプリティのベースの音を同期させる「平成ペイン」を最初に演奏することによって、平成の次の時代に突入していることを示す。
「俺たちのロックンロールの魔法にかけてやるぜー!」
と「マジック」、さらにはかなりの時間で立ったままドラムを叩くジェットセイヤがプリティの代わりに手拍子を促す「エマ」とご機嫌なロックンロールが続く。
するとVIVA LA ROCKやJAPAN JAMという令和になってからのフェスでは最後に演奏されていた、牧達弥と柳沢進太郎がツインボーカル的に歌う「No.999」をこのタイミングで演奏。
「デスからアゲイン」
というこの曲のフレーズはプリティが事故でいないという今のこのバンドの状況をそのまま表しているだけに、牧も
「俺たちを救ってくれた曲」
と言っていたので、当面は最後に演奏されるものだと思っていたのでそこを担わせなくなったのは意外だった。
柳沢が
「みんなー!今日5月25日は何の日か知ってるかー!今日はターミネーターの日です!」
と完全に会場が「?」となるようなことを言うと、恒例のコール&レスポンスでは
「シュワルツェネッガー!」
というやはり「?」なコール&レスポンスを繰り広げると、
「I’ll be back プリティ!」
とプリティの帰還を願うコール&レスポンスに繋げてみせたので一安心。
そのコール&レスポンスから「カウンターアクション」を演奏すると、最後に演奏されたのは発売されたばかりのニューアルバム「THE WORLD」のリード曲「パラノーマルワンダーワールド」。これまでのMVではメンバーが秀逸な演技を見せてきたが、この曲ではメンバーではなく役者さんがメインで出演している。それもまたプリティ不在時だからこその手法であるが、この曲を最後に持ってきたことがメンバーの「THE WORLD」への自信や確信を感じさせる。この曲のサビは
「LIGHT MY FIRE」
というフレーズで締められるが、このバンドのロックンロールの炎はさらに燃え盛り、広がり続けている。
最後に牧はアルバムのリリースツアーの告知をしていたが、果たしてそのファイナルでは4人で笑い合うことができているのだろうか。
1.平成ペイン
2.マジック
3.エマ
4.No.999
5.カウンターアクション
6.パラノーマルワンダーワールド
13:00〜 KEYTALK [WINDMILL FIELD]
このフェスにおいては何年も前からメインステージでおなじみとなっている、KEYTALK。毎年昼前後の時間に出演してきたが、今年もこのステージの2番手として登場。
今日は「物販」のSEで登場(VIVA LA ROCKの時の「YURAMEKI SUMMER」のエレクトロバージョン的なSEは何だったんだろうか)すると、おなじみの「桜花爛漫」から「Love me」という春らしさを感じさせるポップな曲を続ける。巨匠の歌声の伸びやかさはもちろん、先日地上波のテレビ番組で鉛筆を舐めて種類を当てるという特技を披露した男・首藤義勝も鮮やかな赤い髪色よりも歌やカメラ目線での明るい表情が目立つ。
その義勝のバキバキのスラップ奏法のベースが炸裂して踊らせまくる「MATSURI BAYASHI」から、リリースされたばかりの最新シングル「BUBBLE-GUM MAGIC」へ。レーベル移籍第1弾シングルであり、新しいKEYTALKを見せる曲というだけあって、EDM的なサウンドを取り入れた大人のポップという曲であるが、ライブで聴くとEDM的な要素は薄く、むしろ武正が間奏で弾きまくるギターがKEYTALKのそもそも持つロックバンドらしさを強く感じさせる。
というかこの日は武正が他の春フェスでのライブに比べると明らかにギターを弾きまくっており、この広いWINDMILL FIELDが一面ダンスフロアと化した「MONSTER DANCE」でもそうだったが、何よりも義勝メインボーカルの「トラベリング」は「こんなサウンドだったっけ?」っていうくらいに武正のギターが前面に出まくっているし、過去曲を今だからこそ弾けるフレーズでアップデートしまくっている。未だにアイドルバンド的な見られ方をされることも多いし、本人たちも自分たちのその部分を上手く利用してきたところもあるが、こういうところからはこのバンドの揺るぎないライブバンドとしての強さを感じさせる。
しかしその武正と巨匠の漫才的なMCは「何言ってるの?」レベルでスベりまくり、さらには
「もはや今日は春フェスじゃなくて夏フェス」
という言葉をバックステージで残したというドラマー・八木の3歳児キャラもビックリするくらいにスベっていて、これは逆に暑さを緩和させるためにやっていたんだろうか、とすら思えてくる。このキャラは継続して使用していくのだろうか。
そしてKEYTALKといえば現在のロックシーンきっての夏バンド、ということでラストは「YURAMEKI SUMMER」から、義勝とともにパリピサングラスをかけた巨匠がダンスを踊る(ダンスの元ネタがわからない)「Summer Venus」でやはりこの日を夏フェスにした。マイクスタンドごと抱えて歌う巨匠も義勝も野太い声で歌うフレーズもあったが、普段は汗を全くかかない義勝ですら汗をにじませる(本人は「汁」と言っていた)くらいに、この日が夏フェスであり、夏の野外フェスにはもはや欠かせないバンドだなと思った。いつかはこうした野外フェスのメインステージで夜に見れる日が来るのだろうか。
1.桜花爛漫
2.Love me
3.MATSURI BAYASHI
4.BUBBLE-GUM MAGIC
5.MONSTER DANCE
6.トラベリング
7.YURAMEKI SUMMER
8.Summer Venus
13:50〜 夜の本気ダンス [SEASIDE PARK]
メインステージにこそまだ出たことはないが、こちらもこのフェスの常連にして、初出演時のNEW BEAT SQUAREから毎回確実に爪痕を残してきたバンド、夜の本気ダンス。今年は昼の時間に登場。
ドラマー・鈴鹿が登場するなり、
「踊る準備はできてるかー!」
と言うと、ボーカルの米田も
「クレイジーに踊ろうぜー!」
と「Crazy Dancer」からスタートし、本気ダンスタイム的なシームレスにアウトロとイントロを繋ぐわけではないが、それでも曲間がほとんどないようなライブでのアレンジにしているのはさすが。
すると鈴鹿が、
「日本に来てるトランプ大統領もビックリしてるんじゃないか、っていうくらいに暑いなー!
毎年言ってますけど、あのメインステージにある風車!あれは俺たちとみんなの熱量で回ってるんやでー!今はあんまり回ってないけど、KANA-BOONの時にはフルドライブするくらいに回そうぜー!」
とさすがのMC。前に同じ日にサカナクションが出演した時は、
「あの風車は、多分、風で回ってると思うで!」
と言っていたが、この鈴鹿の風車MCはもはやこのフェスの一つの風物詩と言っていいだろう。
そんな流れから、
「クールな新曲」
という、6月にリリースされるニューアルバム「Fetish」収録のリード曲「Take it back」を披露。独特な色気を振りまくギタリスト・西田のカッティングやサイケデリックなエフェクトを自在に切り替える、確かにアッパーに踊らせまくるというよりはクールなダンスナンバー。だからこそメロディのキャッチーさが際立つし、この曲のクオリティを踏まえると「Fetish」はバンドにとって決定打的なアルバムになってもおかしくない。
そんなクールな「Take it back」との対比でより一層アッパーに感じる4つ打ちダンスロック「WHERE?」から、JAPAN JAMではやっていなかった「TAKE MY HAND」も演奏。ドラマ主題歌としてバンドの存在を広く世の中に知らしめた曲でもあるが、鈴鹿のスネアの音の気持ち良さを含め、マイケルとのリズム隊の多彩なパターンを持った明らかな進化がこの曲がバンドにもたらした最も大きなものだろう。
そしてラストは観客を全員座らせてから一気にジャンプさせることによってさらなる熱狂を生み出した「戦争」。
「マジで マジで 来ないで戦争」
というあまりにストレート過ぎるこの曲のサビのフレーズは、鈴鹿がチラッと口にしていたトランプ大統領へのメッセージ…と思ってしまうのは完全に考え過ぎだ。
1.Crazy Dancer
2.By My Side
3.Take it back
4.WHERE?
5.TAKE MY HAND
6.戦争
14:30〜 SHISHAMO [WINDMILL FIELD]
過去にはSEASIDE PARKに出演していたことがかなり昔のことに感じられるくらいに、このメインのWINDMILL FIELDがおなじみの存在になっている、SHISHAMO。去年は自身初のスタジアムワンマンが荒天で中止になってしまったが、そもそもは本人たちも晴れバンドと言っていただけに、この快晴の空が実によく似合う。
3人が順番にステージに登場すると、白いTシャツに緑のハーフパンツというライブ女子的な出で立ちの宮崎朝子が
「メトロック東京!SHISHAMOです、よろしくお願いします!」
と挨拶して、いきなりの「君と夏フェス」でやはりもうこの日が夏フェスであるという感覚がKEYTALKを経てのこのバンドなのでさらに増していく。
松岡彩が曲紹介をして始まった「タオル」では客席ではタオルがぐるぐると回り、スクリーンにメンバーが演奏する姿とともにおなじみのアニメーションが映し出されるのだが、メンバー3人のアニメーションのTシャツには「メト」「ロック」「東京」とそれぞれ書かれており、この日このライブのためにアレンジされているというこのバンドがこのフェスを愛していて、このフェスもこのバンドを愛しているという相思相愛っぷりがよくわかる。そしてスクリーンがメインステージにしかないこのフェスにおいて、このバンドがその規模にふさわしい存在である位置を自分たちの手で掴み取ったということも。
最新シングルのカップリング曲である、
「もう子供には戻れないけれど
大人も悪いことばっかじゃなさそうだ
きっとどこにだって行けるし
今日は土曜だし空は晴れ」
という歌詞がまさに土曜日に快晴の空の下での野外フェスに羽を伸ばしに来ている大人たちの気持ちを代弁しているかのような「ハネノバシ」は宮崎のギターからも、複雑なリズムパターンからもメンバーの演奏面での進化や成長を強く感じさせるし、そんな難しい演奏の曲でもメロディは超ポップかつキャッチーというのがSHISHAMOの凄さ。特に「ずっと自信がなかったから、言いたいことが言えなかった」というドラムの吉川美冴貴は精神面でも大きく成長したように見える。
それは「ねぇ、」「BYE BYE」という近作のシングル曲でも感じる部分であるが、さらには宮崎の作詞家としての力量の高さも感じさせるような音への言葉のハマり具合。この日のコール&レスポンスでは「浪人生!」という声に反応した男性を
「来ちゃった?勉強しなきゃいけないのにフェス来ちゃったか〜。明日からまた頑張ってください」
といじっていた。
そして今やこのバンドにとって最大のアンセムとなった「明日も」で月火水木金働いたり学校に行ったりして、土日にこうしてフェスに来てる人たちの背中を強く押すと、最後に演奏された最新シングル曲「OH!」ではタイトルフレーズを大合唱させるのだが、パンクと言っていいくらいのツービートの曲。まさかSHISHAMOからこんな曲が生まれるとは思っていなかった(実際に宮崎もパンクを全然通っていないと明言している)が、
「ありのままの君 全部抱きしめてやるよ」
というサビの最後のフレーズを歌った時に「ふふっ」という笑顔を宮崎が見せると、演奏中に笑うことがほとんどないだけにちょっとキュンとしてしまった。その瞬間も含めて、忘れられない夏になるかも。
前にこのフェスのトリをくるりが務めた時に、自分がライブを見ていたすぐ前で見ていた女性が近くにいた女性に気づいて声をかけて、
「まさか会えるなんて思ってなかったー!」
と言いながら手を取ってはしゃいでいた。
「こんな広いステージでたまたま知り合いに会えるってすごいな」
と思っていたのだが、なんだかその2人は何度も見たことがある人によく似ていた。でもさすがにこんなところにいないだろうと思っていたのだが、後に本人たちのツイートを見たら、その2人はSHISHAMOの宮崎朝子とさめざめの笛田さおりだった。
宮崎はそうしたエピソードをステージから言ったりしないけれど、出演者ではない時の思い出が確かにこの場所にはある。だからバンドとフェスがより一層相思相愛であると感じることができる。
1.君と夏フェス
2.タオル
3.ハネノバシ
4.ねぇ、
5.BYE BYE
6.明日も
7.OH!
15:10〜 ハルカミライ [NEW BEAT SQUARE]
今年は春フェスから各地に出ずっぱりの八王子の4人組パンクバンド、ハルカミライ。このフェスには初出演となる。
春フェスではYON FESとVIVA LA ROCKでこのバンドのライブを見ているのだが、その時は観客はもちろん、メンバーが積極的に客席に突入しまくっていた。COUNTDOWN JAPANではダイブ禁止のルールに従って全くそういうことはしていなかったのだけど、果たして今回はどうだろうか?と思っていたらやはり観客もメンバーも全くダイブせず。
では大人しかったり、普段よりも持ち味が出せていなかったのかというと全くそんなことはなく、メンバーはステージ上をところ狭しと動き回るというか、走り回るというか、転げ回るというか。とにかくステージを降りる以外のあらゆる方法で溢れる衝動を炸裂させまくっていた。
それは上半身裸になった橋本学(ボーカル)が関大地(ギター)と須藤俊(ベース)を自身に密着するようにマイクスタンドごと呼び寄せて肩を組み、まるで本当にこのステージが世界の真ん中であるかのように演奏された「春のテーマ」からより顕著になっていく。
「こんな日なんだからさ、みんなで歌おうぜ」
と橋本が言うと客席でも次々に観客たちが肩を組んで大合唱を始める。ダイブやモッシュができないなら違う楽しみ方をする。それができるバンドだし、メンバーがそれを率先して示す。だからみんな本当に楽しそうな顔をして歌っていた。
最近のフェスでは2回演奏されるのが定番化してきている「ファイト!」はこの日も2回もあいつのことをぶっ飛ばすかのように演奏されると、
「YouTubeで好きなバンドの動画を見ると、カッコいいと思う。好きなバンドなんだからな。でもなんだか感動はしないんだよな。なんでだろうって思うんだけど、その答えはわかってる。君たちがここにいる理由と同じだ」
と、Abema TVで生中継されているフェスのステージで他にこんなことを言う人がいるだろうか、ということを橋本は言う。画面の向こう側にいる人たちにもなんとかしてこっち側まで来てもらいたいのだ。そうしないと伝わらないものがあることをこのバンドはわかっているし、このバンドはそれを伝えるためにこうしてステージに立っている。
そして「世界を終わらせて」、橋本の歌がさらにノビを見せる「それいけステアーズ」と終盤にキラーチューンを畳み掛けると、
「テレビ朝日がこの公園にライブハウスを作ってくれたぜ!本当にありがとう!でも、テレビで流れない音楽が本物なのか?テレビで流れる音楽が流行るのか?そんなのどうだっていい。目の前で鳴ってる音楽こそが生き残るぜー!」
とこのフェスの主催であるテレビ朝日に感謝を告げながらも、やっぱりテレビでは伝わらないものがあることを示すように演奏されたのは、
「眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ」
とパンクロックに出会った時の原体験を歌う「アストロビスタ」。
このバンドのメンバーも自分も、ブルーハーツのライブをリアルタイムで見れた世代ではない。きっとテレビから流れてきたのを聴いてブルーハーツに出会った。でもきっと、ブルーハーツのライブにも映像では伝わらないものが確かにあったんだろうな、と思う。世界中のいろんなライブがネットで見れる時代になったけれど、もしも叶うのならば、映像ではなくてこの目でステージに立っているブルーハーツを1度見てみたかったと思うけれど、今目の前にはきっとあの頃のブルーハーツのような輝きを放っているバンドが立っている。こういうバンドがいるからこそ、自分はパンクが好きだって胸を張って言えるし、本当にライブが良いバンドはモッシュやダイブをしなくたって心を震わせることができる。このバンドは間違いなくそういうバンドだ。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!
4.俺達が呼んでいる
5.春のテーマ
6.ファイト!
7.世界を終わらせて
8.それいけステアーズ
9.アスタロビスタ
16:00〜 KANA-BOON [WINDMILL FIELD]
このフェス開催初年度にNEW BEAT SQUAREに初出演。翌年にSEASIDE PARK、その次にようやくこのWINDMILL FIELDにたどり着いた、KANA-BOON。このフェス皆勤賞バンドにして、全てのステージに立ったことがあるバンドである。
SEもなしに4人がステージに登場すると、谷口鮪がギターを弾き始めたのはいきなりの「ないものねだり」で早くも踊りまくる。例えばKEYTALKの武正がそうだったように、古賀も音源よりも一層ギターを弾きまくっているが、このバンドもまた全都道府県ツアーなど、ライブをやりまくっているバンドであるだけにそこでブラッシュアップしてきたものもあるのだろう。
たまにKANA-BOONは予期せぬ曲というか、特段フェスなどでやるような代表曲でもなければシングル曲でもない曲が演奏されることがあるのだが、この日はこのタイミングで2ndアルバム「TIME」の「タイムアウト」が演奏された。きっと持ち時間がもっと長ければフェスでもこうした曲をガンガン演奏するんだろうな、とも思う。
初期のKANA-BOONの代名詞的なサウンドだった軽快な4つ打ちの「ウォーリーヒーロー」から、鮪が改めてこのフェス皆勤賞であり、自分たちがこのフェスを愛していることを告げると、そんなフェスに自分たちの今の姿を見せるように昨年リリースされた「ネリネ」を演奏。これだけ暑い日となると若干季節が合っていない(ネリネは冬盤としてリリースされた、冬の花である)気もするけれど、今のKANA-BOONの純粋なソングライティング力の高さを感じさせる。
後半は代表曲にしてこのフェスでも何度となく演奏されてきたアンセムを連打。イントロでライブならではのアレンジが追加された「フルドライブ」では夜の本気ダンスの鈴鹿が言っていた通りに後ろの風車もフルドライブ状態に。
このフェスではダイブも禁止されているし、前週の大阪会場ではサークルを広げた人すらも連れて行かれるくらいに厳しいサークル禁止のルールが加わった。しかしこのKANA-BOONの時は普通にサークルができていたし、そこに対して特に注意されたりとかもしていなかった。
ただ、これまでにもこのフェスに出演した際などに鮪は
「できれば演奏中はこっちを見ていて欲しい」
とサークルに対する苦言を呈していた。ここまでの出演者の中でサークルが出来たりしたのは見なかっただけに、よりによってKANA-BOONの時なのか、とは思ってしまった。そうした本人たちの言葉は届かない人には本当にびっくりするくらいに届かないということはわかっているけれど。
そんな中で最後に演奏されたのは来月リリースのニューシングル「まっさら」。まだ歌詞の全貌はわからないが、これまでにもKANA-BOONは多数のアニメタイアップ曲を手がけてきていて、そのどれもが(「シルエット」なども)そのアニメへのリスペクトに溢れたフレーズがありながらも、アニメを全然知らない人が聴いても全くわからないということにならない絶妙なバランスの上に成り立っている曲だった。
で、「さらざんまい」というアニメのタイアップであるこの曲も間違いなくそういう曲なのだろうし、その曲のクオリティの高さ的にもう右肩上がりの若手バンドという立ち位置ではないKANA-BOONが今こそ最も脂が乗っている時期を更新し続けているということを示している。
開催初年度にKANA-BOONがNEW BEAT SQUAREに初出演した時のことを今でもよく覚えている。まだミニアルバム「僕がCDを出したら」しかリリースしていないにもかかわらず入場規制がかかる超満員。今とは全く髪型が違う鮪。(その髪型は「ないものねだり」のMVなどでも見れる)
その期待を一身に集める状況の中で鮪は最後に
「来年は向こう(WINDMILL FIELDを指差して)で会いましょう」
と言っていた。実際にこのWINDMILL FIELDに立ったのは2年後であったが、まだデビューした直後のド新人だった時から、鮪にはここにたどり着けるという自信があった。
でも、その頃よりも今の方がはるかに自信に満ち溢れているように見える。そんな今のKANA-BOONをフェスではない場所でももっとたくさんの人に見てもらえたら、と思う。
1.ないものねだり
2.タイムアウト
3.ウォーリーヒーロー
4.ネリネ
5.シルエット
6.フルドライブ
7.バトンロード
8.まっさら
17:00〜 BLUE ENCOUNT [SEASIDE PARK]
2年ぶりの出演となる、BLUE ENCOUNT。かつても立ったこのSEASIDE PARKのトリ前という位置での出演。
出で立ちからして(特にベースの辻村)夏を感じさせるメンバーがステージに登場すると、田辺が
「はじまるよー!」
と高らかに挨拶して、6月5日にリリースされる新作「SICK(S)」からすでにMVが公開されている「ハウリングダイバー」でアッパーにスタートすると、「アンバランス」「ロストジンクス」という初期の曲を連発。この辺りの曲は最近の曲と聴き比べると音源ではまだ甘い部分も見えるのだが、さすがライブバンドとしてライブで演奏しまくってきた曲たちなだけに最新曲の後に演奏されても全く違和感ないくらいにビルドアップされている。
BLUE ENCOUNTと言えば田辺のMCもライブの一つの大きな要素であり持ち味だが、この日は中盤まではMCどころか曲間すらも挟まずに曲を連発。見ていて実にテンポが良いし、熱量が曲を重ねる度にさらに増しているのがわかる。
そんな中で田辺が
「2年ぶりの出演とかそんなのどうだっていいんですよ。ただ俺たちは目の前のあなた1人1人に全力で歌うっていうことだけ!」
というこの日の実にシンプルかつストレートだけど最も大切なライブの動機を口にすると、その思いを込めたのはインディーズ時代の曲である「PLACE」。実に珍しい選曲であるが、こうしたレアな曲がこういうフェスのステージですぐに演奏できる、ましてや自分たちの感情や思いを乗せる曲として、というところにこのバンドのライブでの強さを実感する。
そして
「いつも俺たち弱いからさ、力貸してくれって言ってんの!そう言うの全然恥ずかしくないんだよ。ただあなたに歌って欲しいんだよ」
と田辺が観客と一緒に歌うことを選んだのはやはり「もっと光を」。満員の観客の振り絞るような大合唱に江口も、ドラムセットから立ち上がるように観客を見渡す高村も満面の笑顔。だからこそ田辺は
「すげぇよ!UVERworldにも負けてねぇ!」
とこの後にメインステージに控える大物・UVERworldの名前を出すくらいにこのステージを包んだ大合唱を称えた。
そしてラストはバンドがこれからもこうしたフェスのステージで馴れ合いではなくてバチバチに挑んでいくことを示すような、オリエンタルさも含んだ江口のギターが印象的な「VS」。
メインステージに立てないことの悔しさもあったかもしれないが、田辺はそれを口にしなかった。でもライブからは田辺が言うこのバンドの弱さではなくて、強い部分しか感じることはなかった。
1.ハウリングダイバー
2.アンバランス
3.ロストジンクス
4.DAY × DAY
5.Never Ending Story
6.PLACE
7.もっと光を
8.VS
17:40〜 UVERworld [WINDMILL FIELD]
今年は春からフェス稼働しまくりのUVERworld。以前はフェス出演というと事件くらいのレベルだったが、それも変わりつつあるんだろうか。このフェスには去年も出演しているので2回目の出演となる。
SEが鳴る中でドラムの真太郎を先頭にメンバーが登場すると、最後に走ってステージに出てきたTAKUYA∞はそのまま大きくジャンプするというのっけから身体能力の高さをフルに発揮。真太郎の後ろにはこのバンドのライブ時限定のLEDビジョン(バンド側の持ち込み?)があり、そこに
「UVERworld SPECIAL LIVE 2019」
という文字が映し出されると、「7th Trigger」からスタート。TAKUYA∞はその持てる身体能力、肺活量を最初からすべて出すかのようなボーカルを轟かせ、その後ろでは歌詞を中心としたバンドの世界観を余すことなく伝えるための映像が流れているだけに目が実に忙しい。
基本的にはEDMを取り入れた「ODD FUTURE」などの最近リリースのシングル曲中心という流れ自体はJAPAN JAMと同じ、というのはTAKUYA∞の
「今俺たちの1番自信がある、聴いてもらいたい曲を演奏する」
という姿勢とその曲の存在がブレていないからであるが、映像があることによってイメージは全く変わる。
それは前述の通りに映像に歌詞が映し出されているからというのが大きいのだが、UVERworldの楽曲(とりわけ歌詞)の構造が他のバンドとは全く違うというのがそれによってよくわかる。UVERworldの歌詞はひたすらにTAKUYA∞の信念を歌ったものだからである。だから他の登場人物が1人称だったりする曲が全然ない。それは少年や少女の視点で描いた曲が多い日本のロックバンドの歌詞とはまるっきり異なる。それによって受け入れられるかどうかというのも全く変わるし、この歌詞を受け入れる人=TAKUYA∞の信念や思想を受け入れられる人ということでもある。つまりびっくりするくらいに音楽が鳴らしている人間そのものなバンドである。
「いろんなアーティストを見にきてる人たちがいるだろうし、俺たちのことを全然知らない人もいると思う。俺も見たいアーティストがいるし…って言ってもそんなにいないか(笑)
夜の本気ダンスは見るとMCでネタにされちゃうから(笑)
でも今日のフェスが終わった時にここにいた人たちが「みんな良かったけど、UVERworldの音楽が頭から離れないんだよな〜」って思わせたい!それができるかどうかは、やって確かめりゃいいだろう!」
というMCもTAKUYA∞の信念そのものだが、それがそのまま楽曲に直結している「PRAYING RUN」はそのままTAKUYA∞のストイック過ぎる生活スタイルが自身の音楽になっている。いわゆる朝まで打ち上げで酒飲んで酔いつぶれて…的なよくあるバンドマンのスタイルとは全く真逆。それが良いか悪いかはまた別の話だが、この男は自分がそうした生き方を選んだ理由をしっかり音楽に落とし込めている。
誠果のサックスが吹き荒れる「Touch Off」から、曲中のキメの部分でメンバーの演奏に合わせてTAKUYA∞も体を動かす「IMPACT」、そしてラストは観客の大合唱が轟く「0 CHOIR」。その声の大きさの凄さは
「ねぇ Baby この世界はまだ汚れて見えるけど
やっぱり僕は産まれてこれて
幸せだと思ってるよ」
という歌詞の通りに、UVERworldという名の世界に生きる人たちとその世界を作り上げたバンドとの絆の証そのもの。
そしてTAKUYA∞の信念そのものであると書いたが、その歌詞をメンバーもマイクを通さずに歌っている。それはTAKUYA∞だけでなく、メンバー全員の信念そのものでもあるのだ。
最後にTAKUYA∞は
「フェスってやっぱり最高だなー!またフェスが大好きになっちゃったよ!」
と笑顔で口にした。これから訪れる夏にもこのバンドはフェスに数多く出演する。そこでも凄まじいIMPACTを残すだろうけれど、
「人はしてもらえたことはすぐ忘れがち」
というならば、こうして今年の春に見たこのバンドのライブを忘れないように、そしてもらったものを返せるように、東京ドームでの男祭りというやつにも行ってみたいなとも思っている。
1.7th Trigger
2.Don’t Think. Feel
3.ODD FUTURE
4.EDENへ
5.ALL ALONE
6.PRAYING RUN
7.Touch Off
8.IMPACT
9.0 CHOIR
18:30〜 yonige [NEW BEAT SQUARE]
このフェスは初出演の若手バンドはどれだけすでに大きな支持を獲得していてもこのNEW BEAT SQUAREから出演、というしきたりみたいなものがあり、それこそこの日出演したKANA-BOONしかり、すでにYON FESを主催していたフォーリミしかり、「ともに」をリリースして大ブレイク中だったWANIMAしかり、去年のヤバTしかり、そしてトリとはいえ、すでに夏には武道館ワンマンを控えているこのyonigeしかりである。
なので客席は当たり前のように超満員の中、今月からの新たに土器大洋(ギター)を加えた4人編成で登場すると、おなじみの「リボルバー」からスタートするのだが、VIVA LA ROCKやJAPAN JAMで見た時と全く違う。一瞬でそう思うくらいに牛丸ありさの声がめちゃくちゃ良く出ている。その二つのフェスが昼の時間帯での出演だったからというのもあったのだろうが、さすがにバンド名がyonigeというだけあって本領を発揮できる時間帯ということか。
だからこそ牛丸のその声に引っ張られるようにバンドのグルーヴも高まっていき、「our time city」のようなポップな曲では満員の観客のたくさんの腕が上がる。yonigeのライブは本人たちも認めるくらいに盛り上がらない時は本当に棒立ちしてる人しかいない時すらあるだけにこの日は演奏で観客を完全に掌握していた。
なのでバラードというにはサイケデリック過ぎる「沙希」のような曲でも観客の集中力は凄まじいものがあった、というか引き込むようなバンドの演奏力が本当に凄かった。もうこの段階で前のフェス二つを完全に凌駕していたのだが、
ごっきん「最近は春フェスでは早い時間帯の出演が多かったから、昼間なのにyonigeっていう名前ですいません、って言ってたのに今日はトリですよ」
牛丸「やっぱ夜の方がなんか生き生きするな」
ごっきん「適切な時間になりましたね」
とやはり本人たちも手ごたえを感じていたようだ。確かに見るからに2人とも朝が弱そうなイメージがあるけれど。
「じゃあ新規向けな曲やりまーす」
と「センチメンタルシスター」とアッパーなダンスロックの「アボカド」を演奏してもいたが、今のこの編成で表現したいのはそういう曲よりも最新作「HOUSE」の収録曲やそれに近い平熱なサウンドや何気ない日常を牛丸ならではの目線で切り取った曲であろう。
だから最後に演奏したのは「HOUSE」収録の「春の嵐」だったし、嵐というにはあまりに穏やかな、部屋の中から外を見ているかのようなサウンドが駆け抜けたのではなくゆっくり通り過ぎた今年のyonigeの春を象徴していた。嵐が過ぎ去った後だから、メンバーがステージを去るとスタッフがすぐに撤収作業を始めた。つまり、アンコールはなかった。
トリであるこの時間がやはりyonigeの本領発揮的な時間だとするならば、「一世一代のお祭り」と言ってもいい8月の日本武道館公演がやはり夜からなのは願ってもないこと。というかyonigeのワンマンが毎回良かったと思えるものだったのもやはり夜のライブだったからというのもあるのだろうか。
1.リボルバー
2.our time city
3.どうでもよくなる
4.沙希
5.センチメンタルシスター
6.アボカド
7.春の嵐
19:40〜 [ALEXANDROS] [WINDMILL FIELD]
[ALEXANDROS]、2年ぶりにこのフェスに帰還。もはやこのステージのトリは定位置と言っていいくらいに過去に何度もトリを務めている存在である。
しかし「Burger Queen」のSEでメンバーが登場すると、何度となくこの場所で見てきたこのバンドとは少し違う。まずドラムのサトヤスが腰の治療で療養中ということで、BIGMAMAのリアドが他のメンバーに合わせてスーツを着て代打を務める。さらにはベースの磯部が足を負傷しており、登場する時は松葉杖、ステージには椅子が置かれていてそれに座っての演奏という満身創痍状態。
果たしてこれで満足なライブができるんだろうか、とメンバーが出てきた時は少し不安であったが、それは全くの杞憂であった。
いきなりの大合唱を巻き起こした「Starrrrrrr」からいつもと全く変わらぬ[ALEXANDROS]のライブ。確かに磯部は椅子に座ってベースを弾いているからいつものように動き回ったりはできないけれど、サウンドに関してはなんら違和感がないし、なんなら座って弾く方が難しそうですらあるのにこうして演奏できているのは普通なように見えるけれど凄い事である。
リアドのドラムも全くと言っていいくらいに違和感がないというか、もちろん細かい部分はサトヤスとは違うけれど、そのリアドなりのアレンジが曲を大幅に変えることはないけれど新たな一面を見せてくれる。先日のBIGMAMAの母の日ライブでも「リアドが最も頼もしく見えた」と書いたが、それはサポートという立場でも同じくそう思えるし、かつて何度となく一緒にツアーを回ったりした間柄とはいえ短期間でこのバンドの曲をこれだけ演奏できて、かつ自分のものにできているというところにリアドのスーパードラマーっぷりを感じる。
そんな「不安を取り除く」ような「Dracula La」で白井の独特な音程を上下する奏法を見せると、重く分厚いギターリフが流れる「Mosquito Bite」では従来はアウトロで川上、白井、磯部の3人がステージ中央に密集して演奏する場面でこの日は磯部の座る椅子に川上と白井が寄っていって並んで演奏するという構図に。その画は磯部が椅子に座っていても変わらずに圧倒的にカッコ良かった。
川上がハンドマイクになって演奏された「Kick & Spin」と
「フェスではあんまりやらない曲」
という「PARTY IS OVER」では川上がカメラ目線をいたる箇所でしながら歌うというロックスターっぷりを見せつける。さらには歌いながら曲中で何度も
「気持ちいいー!」
と叫ぶ。昼間の暑い時間帯ではなくて涼しい風が吹くトリの時間帯だからこその特権を確かに謳歌していた。
そしてすでに先に行われた春フェスに出演した際にも披露していた新曲「Pray」も披露。どちらかといえば川上が歌い上げる系の曲になるのだが、リアドがこうして新曲でも普通にドラムを叩いているというのは冷静に考えるととんでもないことである。
そして本編最後に演奏されたのはおなじみの「Adventure」。ロッキンなどのようにカメラに手を当てて客席に向けるというパフォーマンスこそなかったが、川上はいたる所にあるカメラに目線を合わせて歌っていた。つまりは驚くくらいにいつもと変わらないと言っていいようなライブだったのだ。
磯部は本編が終わった際も松葉杖をついていたので、果たしてアンコールで出てこれるのだろうか?と思っていたのだが、心配しなくていいくらいに笑顔でステージにメンバーたちが戻ってくる。サトヤスがツアーファイナルのさいたまスーパーアリーナでのワンマンで戻ってこれそうなことを報告しつつ、ドラムを叩いてくれたリアドに
「イケメンだから見た目だけサトヤスと入れ替わって欲しい(笑)」
と言って笑いを取りながら演奏されたのはさらなる新曲。CMでオンエアされているとはいえまだ80%くらいしか完成していない曲であり、タイトルすらも未定であるが、実にこのバンドらしいロックチューン。ある意味では「Pray」の対になる曲であると言えそうだが、この曲すらもリアドが叩けるというのはもはや一緒に楽曲制作をしているんじゃないかと思うレベルである。
しかしさすがに誰も知らない新曲だけをやって終わりとはならないのが[ALEXANDROS]。最後にしっかりと白井のきらめくようなギターサウンドの「ワタリドリ」を演奏して大合唱を巻き起こした。正直、もはやこの曲を必ずやらないとライブが成立しないというわけでは全くないけれど、この日が初めてこのバンドのライブを見るという人もたくさんいるフェスという場ではやはりこの曲を聴きたいと思っている人が少なからずいる。で、キチンとその期待に応えながら最高のパフォーマンスを見せる。それは一見満身創痍状態とも見える状況であっても全く変わらなかった。
去年こそ出演していなかったが、2年前まではこのバンドとサカナクションが毎年のようにこのフェスのトリをやっていた。それはその2組を抑えてトリができるバンドがいなかったというのもあるけれど、それ以上にその2組のライブがあまりに飛び抜けて凄まじかったから。
2年ぶりにこのフェスで見たこのバンドのトリでのライブはそれを思い出させてくれたし、「完璧な状態じゃないもんな…」とか思ってしまっていた自分がこのバンドをまだまだ安く見積もってしまっていたことを思い知らされた。やっぱり[ALEXANDROS]はとんでもないバンドだ。って何回思えばいいのだろうか。
1.Starrrrrrr
2.アルペジオ
3.Dracula La
4.Girl A
5.Mosquito Bite
6.Kick & Spin
7.PARTY IS OVER
8.Pray
9.Adventure
encore
10.新曲
11.ワタリドリ
文 ソノダマン