/ 2019/06/26
2000年代初頭のニュー・メタル、インダストリアル・ムーヴメントの全盛期に比べると、近年のその界隈のバンドの元気のなさは、今が音楽不況であるとはいえ、顕著で、スリップノットの『アイオワ』が、発売直後に全米チャート1位を獲得したことなど遥か遠い昔話のようだ。そんな暗澹たるシーンに突如現れた救世主のように、ラムシュタインが新作をひっさげ、10年ぶりにシーンに姿を現した。本作は全体を通して重金属的な心地よいブリッジ・ミュートの刻みに加え、ドイツらしいエレクトロニカ、そして、どこか懐かしいメロディ・ラインをなぞるギターや鍵盤、女性コーラスが絡み合い、おぞましくも気高く美しい曲が続く。中でも1曲目の「Deutschland」は、衝撃的なPV映像もあいまって最も印象的な曲だ。これまで何度もナチスを彷彿とさせるような表現は控えるよう厳重注意されながら、ドイツ語での表現をやめなかった彼らの、ドイツ人であることを誇り、負の遺産までも背負っていく悲痛な覚悟のようなものを感じる。1曲を通してドイツの歴史を描いた「Deutschland」、リンデマンがクラウス・ノミに扮した「Radio」、近年問題となっている移民問題に言及するかのような「Ausländer」…。ドイツという国の歴史における負の部分をさらけ出したうえで、ドイツ人であることの誇りも感じさせる。このアルバム自体が、さながらドイツに対するラヴ・レターのようだ。
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