先月の千葉LOOKから始まり、前週には長野LIVE HOUSE J、水戸LIGHT HOUSEと各地で見てきた、a flood of circleの「CENTER OF THE EARTH」リリースツアーもついにファイナル。ファイナルの地は「ZOOMANITY」のリリースツアーファイナルとして初めてワンマンをやって以降、これまでにフラッドが何度も立ってきた赤坂BLITZ。
この日はツアーファイナルということもあって、ファイナル限定Tシャツの販売や、バンドが手がけた1着15万円という値段の革ジャンの試着&販売もあり、キャパが大きいからというのもあるが、各地以上に賑わっている。
千葉LOOKこそソールドアウトしていたが、長野も水戸もキャパ的にはこの赤坂BLITZの1/5くらいの規模であり、それですら売り切れておらず、この日も当日券が出ていたのでどんな具合だろうか?とライブダブルヘッダーの2本目だったのでギリギリに中に入ってみると、意外にも最後方までぎっしり満員で、これでさらに当日券出してるの?と思うくらい。なんならフラッドの赤坂BLITZでは過去最多動員なんじゃないか?とも思うけれど、それでも当日券を出していたのはキャパの限界まで今のフラッドのライブを見て欲しいというところもあったんじゃないだろうか、とも思っている。
そんな入り具合なので始まる前から実に暑い中(赤坂BLITZは他のこのキャパ以上の会場と比べていつも非常に暑い気がする)、18時を少し過ぎたところで暗転しておなじみのSEとともにメンバーが登場。佐々木亮介は今回のツアーは常に黒の革ジャンであるが、これはやはりこの日販売されていた革ジャンが黒だからということなのだろうか。
「CENTER OF THE EARTH」の1曲目に収録されている、バンドのセルフタイトル的な「Flood」からスタートし、すぐさま「The Beautiful Monkeys」へ、という流れとぶっ飛ばし具合はツアーの他の箇所と変わらないが、ファイナルだからなのか青木テツのコーラスが序盤からコーラスというよりももはや叫びと言っていいようなレベルになっている。今やそうしたテツのアクションやギターの演奏がバンドを引っ張る最大の原動力になっていると言っても過言ではないだろう。そこに「4人であること」の幸せを感じることができるのは、この赤坂BLITZがかつてのベーシストである石井康崇が在籍する最後のライブの場所だったから、ということも関係しているのかもしれない。
ツアー中は日替わり枠であった5曲目でこの日は千葉と同様にアッパーに振り切れた疾走ソングにして、
「トランプばりの壁好き達で 安住の地に浸かるだけなら 音楽なんて辞めてるよ」
と亮介の生きるスタイル、音楽と社会が地続きであることを示す「Backstreet Runners」が演奏されたが、この曲との日替わり曲であった「Drive All Night」が続けざまに演奏されたので、さすがにリリースツアーのファイナル、「CENTER OF THE EARTH」の収録曲を全て演奏するんだろうな、という予感がした。このライブが終わったら演奏されなくなる曲もあるであろうだけに。
亮介がハンドマイクで最前列の客席の柵から身を乗り出すようにして歌う「Rodeo Drive」と全くスピードを落とすことなく突っ走ると、
「かっ飛ばせ!逆転満塁ホームラン!」
と歌詞に登場するフレーズを口にしてから演奏された「美しい悪夢」ではステージの至るところからスモークが噴射。基本的にはメンバーの立ち位置に被らないような場所から噴出されているはずなのだが、テツは場所を理解していないのか、それともわかってはいるけれどもう考えることなく突っ込んで行っているのか、完全に煙に塗れまくっていた。ツアー中は小箱のみだっただけにこうした演出は一切なかったし、そもそもフラッドはそこまでこうした演出を使うバンドではないけれど、こういうのはやはりファイナルならではだよなぁとも思うし、こうした演出があるだけで今までのツアーで聴いてきた「美しい悪夢」とは全く違うように聴こえた。
こちらもツアー中は日替わり枠であった「Youth」では亮介が
「グレッチもアップルも」
に続いて
「ヤマハもフェンダーもギブソンも」
と付け足してから客席を指差して
「君に敵わない」
と歌う。この後のMCでも亮介は観客に何度もこうして来てくれたことへの感謝を口にしていたが、そう言ってくれるような存在であれているということがファンのうちの1人として本当に嬉しい。
そしてアルバムの中の唯一のバラード枠と言える「スノードームの夜」では「CENTER OF EARTH」のロゴのみというシンプルなステージ背面に夜の星空を思わせるような美しい電飾が輝く。これはこの規模くらいの会場にならないとできない演出であるし、それがこの曲の美しさをさらに引き出していたからこそ、もっと大きな会場でもこのバンドのライブを見たくなる。今までのいろんな曲も演出一つで見え方や聴こえ方は全然変わってくるはずだ。
そんな中、バンド1の酒豪であるHISAYOは体質改善を掲げてツアー中は打ち上げでビール1杯しか飲まないようにしていたらしいが、この日はせっかくのファイナルなのでビールを解禁しようとしていることを語ると、ツアー中はMCの進歩のなさを見せてきてしまった渡邊一丘は
「東京生まれ東京育ちですけど、ツアーから帰って来ると東京って臭いなって思う(笑)」
という波紋を呼んでしまいそうなことを口にしてしまい、亮介もテツも苦笑いを浮かべるだけでその話題に入れず。
そんな演奏の白熱っぷりとは対極とも言えるMCでの緩さは変わらないが、やはり今回のツアーで多くのファンを驚かせた「プリズム」という選曲には大きな歓声が上がり、リードギターを亮介がステージに膝をつきながら弾いていたのもこれからこうしたあまり演奏されることのない過去曲をライブで演奏する上で大事な要素になってくるはず。
そして圧倒的な解放感と何度目かわからないくらいのリスタート感を感じさせる最新シングル曲「The Key」はワンマンツアー前からライブで演奏されてきただけに、このツアーを経てより一層アンセムさを増してきているし、これからの夏フェスシーズンでも重要な役割を担うであろうというくらいに今のフラッドにとって代表曲の一つになっている。
水戸ではなぜか本編では演奏されずにダブルアンコールで演奏された「春の嵐」はこの日は他のツアーと同様にこの位置で演奏されたが、客席はダイブも含めてより一層激しさを増す中で亮介はテツのマイクの方に寄っていってギターリフを2人で口ずさむ。ツアー中では他の曲でもやっていたパフォーマンスであるが、やっぱり見ていて楽しいし、これもまたこの4人でのフラッドになる前は見ることができなかったものだ。
ありったけの命で叫ぶ「光の歌」から、テツが
「東京は臭いって言ってたけど、まだ全然臭くねーから。もっと汚い汁飛ばしまくってもいいんじゃないのか!?」
と煽って客席のテンションをさらに上げた「ハイテンションソング」では再びスモークが噴き上がり、それもまた観客のテンションをさらにハイにする。だからこそこの「CENTER OF THE EARTH」の収録曲がこの日最大クラスの盛り上がりを見せていたし、その姿こそが最新作こそが最高傑作であり、今のフラッドが過去最強であるということを示している。
そして「Dancing Zombiez」のアウトロで亮介とテツが激しいギターソロを展開すると、そのアウトロから一丘のドラムがすぐさまリズムを刻むイントロに転じて、
「俺たちとあんたらの明日に捧げます!」
と言って演奏された「シーガル」では最後のサビで亮介がマイクだけではなくマイクスタンドごと客席に向けて大合唱を巻き起こす。フラッドのライブではこうして合唱が起こる箇所こそあまりないものの、この曲のように合唱になると本当に大きな声が響く。中途半端な声量ではフラッドの曲は歌えないからだ。それは亮介のボーカルのスタイルからもわかることであるが、もうそれはそのままこのバンドとこのバンドを愛する人たちの生き様そのものになっている。
そんな熱狂を落ち着かせるように亮介がギターを弾きながら歌い始めたのはアルバムタイトル曲にして、このツアーのテーマソングと言っていいような軽快な4つ打ちの「Center Of The Earth」。なぜこの曲がツアーのテーマソングなのかというと、それは
「サンキューベイビー 最後まで笑ってくれて
まともじゃないけど 大好きだよ」
という歌詞をバンドとファンが確かめ合うようなツアーだったからだ。
フラッドの活動ペースもまともじゃないし、それに着いて行くファンたちも決してまともじゃない。でもそのまともじゃなさも含めてお互いに愛し合っている。フラッドのアルバム最後の曲は近年で言うと「Honey Moon Song」や「Wink Song」など毎作どれも大事な曲が担ってきたが、この「Center Of The Earth」はそれすらも更新してみせた。この曲が最後にあるということが、毎作名盤ばかりのフラッドのディスコグラフィーにおいて「CENTER OF THE EARTH」が最高傑作なんじゃないかと思える最大の理由だ。
アンコールではフラッとメンバーが登場すると、今回のツアーではおなじみの東京事変「群青日和」(「The Key」のカップリングに収録)を亮介の声だからこそのロックンロール(テツのコーラスも素晴らしい)バージョンで響かせると、ツアー中は日替わり曲だっただけに演奏されない箇所もあった「ベイビーそれじゃまた」を再会を約束するように、でもその再会はすぐ先であるということをテンポの速い演奏で示していた。
しかし当然まだこれでは終わらず、ダブルアンコールで再びメンバーが登場すると、テツによるこのツアー最初で最後の物販紹介から、
「ツアーは終わりますけど、9月のナベちゃんの誕生日あたりに「Buffalo Soul」と「PARADOX PARADE」の再現ライブをやって、11月にメンバー1人1人が1曲ずつ手がけたCDを出します。テツが「HEART」って名付けました。で、ワンマンツアーは今年はこれで終わりだと思ってたんだけど、また12月からその「HEART」を提げてワンマンツアーやります」
と亮介があまりに嬉しすぎる告知。水戸の時に
「新しいブツを作っている」
と言っていたのはその新作だったということだし(みんな薄々気づいていただろうけど)、今回のツアーで「プリズム」や「春の嵐」を固定曲としてセトリに入れていたのも再現ライブへの布石だったと言ってもいいだろう。この4人になってから初めて演奏する曲もたくさんある。リリース時の2009年に自分が年間ベストディスクの1位に挙げたのが「Buffalo Soul」で、2位に挙げたのが「PARADOX PARADE」だった。その曲たちが今になってまたライブで聴けるのだ。
それにしてもアルバムを出してシングルを出してツアーをやって、また新作を出してツアーをやる。こんなことを1年間の間にやるバンドはなかなかいない。でも忙しすぎるとか、働きすぎだとか心配になるようなことはない。フラッドはずっと、それこそメンバーが目まぐるしく変わる中でもそのペースで生きてきたから。だからもう我々は慣れている。
けれど、新曲がたくさん聴けて、昔の曲もまたライブで聴ける。ツアーがまた開催されて、ライブをたくさん観れる、フラッドにたくさん会える。その嬉しい感覚だけは慣れることもなければマンネリになることもない。それはその度にフラッドが最高を更新してくれるのがわかっているからである。
そんな告知の後に、
「好きにやっていいんだぜ!ズルしようが嘘吐こうが何しようがお前の自由だ!だって、世界は君のものだから!」
と亮介が言ってから演奏されたのは「世界は君のもの」。決してライブ定番曲ではないこの曲が今回のツアーの締めとして演奏されてきたのは、「Center Of The Earth」と同じ軽快な4つ打ちのロックンロールであり、ある意味では「Center Of The Earth」の親のような曲であるから。でも焼き直しではない。それぞれにはそれぞれの曲にしかない良さがある。この「世界は君のもの」だからこその良さ、だからこそ見えるもの。それは最後のサビ前に亮介がタメてタメて煽るようにしてから
「羽を揺すって」
と歌うとスッとマイクの前を離れ、
「飛ぶだけ!!!」
の大合唱が起こるところ。この瞬間こそ、ここが地球の中心であり、世界は我々のもの。ツアー最大規模、最大動員のこの会場だからこそ、他のどの会場以上にそう思えた。
演奏を終えると亮介が1人でステージに残り、マイクを通さずに、
「毎回言ってるけど、本当にヤバい作品ができた。今が1番無敵だと思っている」
と言った。今回のツアーは、その亮介の言葉を証明するかのような、1番無敵なフラッドの姿を見せつけるようなものだった。でもここがゴールでも到達点でもない。その無敵っぷりはこれからも更新されていく。それがa flood of circleというバンドなのだ。
普段こうしてライブレポを書いたりしていても、「これをたくさんの人に聞いて欲しい!」という感覚はそこまであるわけじゃない。こっちは自分の好きな音楽を好きなように聴くから、みんなも好きな音楽を好きなように聴けばいいじゃん、という感覚だから。
でもフラッドだけは、初めてライブを見てから10年経ってもずっともっとたくさんの人に聞いてもらいたいし、ライブを見てもらいたい。この日のようなライブを見たら、もっと大きな会場でフラッドのライブが見たくなるし、もっとたくさんの人と明日のために「シーガル」を歌いたい。それこそ何年も前から亮介が口にしている日本武道館くらいまで。周年のご褒美としてじゃなくて、当たり前のようにあそこに立つべきバンドだと思っているし、その想いはこのツアーを見てさらに大きくなってきている。
1.Flood
2.The Beautiful Monkeys
3.Vampire Killa
4.Blood Red Shoes
5.Backstreet Runners
6.Drive All Night
7.Rodeo Drive
8.美しい悪夢
9.Youth
10.スノードームの夜
11.プリズム
12.The Key
13.春の嵐
14.光の歌
15.ハイテンションソング
16.Dancing Zombiez
17.シーガル
18.Center Of The Earth
encore
19.群青日和
20.ベイビーそれじゃまた
encore2
21.世界は君のもの
文 ソノダマン