LIQUIDROOM 15th ANNIVERSARY 「THE THREE KINGS」 THE BAWDIES / the telephones / [DJ] FREE THROW 恵比寿LIQUIDROOM 2019.8.19 FREE THROW, THE BAWDIES, the telephones
10年前の5月、恵比寿LIQUIDROOMで「KINGS」というライブイベントが行われていた。「洋楽をルーツに持つ俺たちで今の音楽シーンを変える」という意志を持った、野心溢れる若手バンド5組とDJ。
当時その中心にいた、というかすでに1組だけ大型フェスに出演したりしていたのがthe telephones。その頃はインタビューでも
「KINGSの観客はほとんど俺たちのお客さんだと思うけれど」
と言っていたし、仲間たちをフックアップするという意識も少なからずあっただろう。
その中の1組、まだメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」をリリースしたばかりのTHE BAWDIESのライブをその日初めて見た。まだライブ後にメンバーが物販に出て、買ってくれた人と写真を撮ったりしていた頃。そんな頃でもすでに圧倒的なライブを見せていたTHE BAWDIESはすぐに階段を駆け上がっていった。
そんなKINGSを形成していた、the telephonesとTHE BAWDIESがこのLIQUIDROOMの15周年企画で対バンを果たす。the telephonesが復活してからは初めての対バンだし、東京で2マンというのも実は初めてらしい。DJには同じくKINGSを形成していたFREE THROW(the telephonesの曲タイトルにもなっている)も出演。
・the telephones
開場から開演まではFREE THROWによるダンスミュージック中心のDJが展開され、19時を少し過ぎた頃に場内が暗転すると、「Happiness, Happiness, Happiness」のSEが流れてメンバーがステージに登場。ノブは明らかにサイズがデカすぎるサマソニTシャツを着ている。
それは前日にサマソニに出演したからだろうけれど、その前の日には北海道のRISING SUNにも出演しており、凄まじい強行スケジュールである。
客席を見渡した石毛輝(ボーカル&ギター)が、リキッドルームの15周年を祝う挨拶をすると、
「いきなり、I am discoって叫ぼうぜー!」
と言ってギターをかき鳴らし、「urban disco」からスタート。ノブ(シンセ)は早くも客席に突入せんとばかりにステージを駆け出し、連戦による疲れなど一切感じさせないどころか、THE BAWDIESと2マンをやれることの喜び、絶対に下手なライブは見せられないという気合いに満ちている。だからこそ初っ端からダイバーが出現していたし、今年回ったワンマンツアーの時以上に盛り上がってるんじゃないかというくらいの熱狂っぷり。ああ、10年前にこの場所で見たtelephonesのライブもこのくらい凄まじくて、終わった後に汗ダクになっていたよなぁとかつての記憶を思い返したりもしていた。
そのままノブのシンセがディスコパンク感を高まらせる「HABANERO」に突入するが、イントロ部分で石毛は何かを発見したように客席最前エリアを指差す。どうやら体調の悪い人がいたようで、一旦演奏を止める。
石毛「俺の声が高過ぎたか?(笑)」
長島涼平(ベース)「確かに体調が悪い時に聴きたい声じゃないよね(笑)」
と爆笑させていたが、こうして優しくて楽しいメンバーたちであるのも自分がtelephonesを好きな理由の一つであるし、毎回telephonesのライブに行くとそういう部分はファンにもしっかり伝わっていると思う。
ノブが毎回自由すぎるパフォーマンスを見せる「Baby, Baby, Baby」では持っているカウベルをステージ袖にいるスタッフに持たせてそれを叩いたりする中、やはり途中で客席に突入。ぐるっと最後方まで回ってからFREE THROWチームのいるDJブースの柵に立ってカウベルを叩くというパフォーマンスには観客もFREE THROWも全員笑顔。ノブのこの自由っぷりはいつになっても、何歳になってもとどまるとこれを知らない。
活動休止前に最後にリリースしたアルバム「Bye Bye Hello」からはアッパーな「Jesus」を披露すると、
「THE BAWDIESとの対バンだから昔の曲をやります」
と言って演奏された初期の「Da Da Da」でこの10年間を繋ぎ合わせるのだが、メンバーの演奏するテンションが本当にめちゃくちゃ高い。こんな姿は活動再開後は初めてなんじゃないか、というくらいに。共にバンド創成期からの仲間であるTHE BAWDIESとの対バンだからこそ初期衝動的な面が蘇ってきたのかもしれないし、何よりもきっとTHE BAWDIESは大事な仲間にして絶対に負けたくない相手なんだろう。
石毛がTHE BAWDIESのROYのことを普段通りに「亮」と呼んで袖でライブを見ていたROYから突っ込まれたりしながらも、
「THE BAWDIESじゃなきゃ受けないスケジュールだった」
というくらいにやはり特別な関係性のバンドなだけに。すぐに「9mmだったら?」と聞かれて9mmでも受けると言ってもいたけれど。
涼平の独特なベースラインが否が応でも体を揺らしてくる「electric girl」から、ノブが自身の身をもって自由に踊ることを促す「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」ではそのノブの後ろで、ノブに
「プロのギタリストとプロのベーシスト!」
と紹介された石毛と涼平が揃ってステップを踏みながら演奏し、
「なんか楽しそうなことしてんじゃん!」
とノブに言われるくらいにメンバーのテンションは高いし、メンバーたちが1番このライブを楽しんでいるようにすら見える。
そして「Monkey Discooooooo」「I Hate Discooooooo」と最強のディスコシリーズを連発して客席はダンスフロア&ダイバーズエリアに。ここでもやはり昂りまくっていたのは観客だけではなくバンド自身もそう。そのあまりにも熱い演奏っぷりに、自分がなぜこのバンドをここまで好きになったのかという答えがあったような気がした。
休止前の最後のライブで石毛自身が言ったように、telephonesはどこまでも不器用なバンドだった。でも不器用なのは人間だから。どこまでも不器用だということはどこまでも人間臭いということ。それが音楽や演奏している姿から滲み出ている。楽しいのはもちろんだけど、それだけじゃない、人間として、ミュージシャンとして、人生として。そんなことをこのバンドのライブで感じたから、自分はこのバンドが作ろうとしていた新しい景色を見てみたいと思ったし、そこに乗ったのだ。10年前にこの場所でライブを見て思ったことが今でも変わっていない、間違っていないと思える。遠回りしたかもしれないけれど、それは本当に幸せなことだ。
そしてラストはやはりTHE BAWDIESとリキッドルームとここに集まった人たちへの愛と感謝を込めた「Love & DISCO」。10年前にここでKINGSをやった時にも最後にやっていた曲。そのあと、2011年に新木場STUDIO COASTで最後にKINGSが開催された時には、telephonesがトリとして最後に演奏した曲。つまり、KINGSというイベントの最後に鳴らされたのはこの曲だった。あの時、出演者が全員ステージに出てきて踊りまくり、QUATTROのドラムのカディオが石毛にいじられまくっていた。今でも覚えている、本当に幸せだった景色。
もうあの頃のように5バンドの全員が集まれることはないかもしれない。でも活動休止して一度は見れなくなったtelephonesのライブを今でもこうして見ることができていて、この曲をライブで聴くことができている。この曲をいろんな場所で聴くと、かつての楽しかったライブのことを鮮やかに思い出すことができる。でも単なる回顧じゃない。telephonesは前に進んでいる。これからはそのことを証明していく活動をしていくはず。去年の2本のライブも、今年のツアーや各地のフェスなどでも心の底から思ったことであるが、本当にtelephonesが戻ってきてくれて、ここでこうして見れて嬉しい。10年前にここで見た時は、そんな風に思うようになるなんて全く想像してなかったのにな。
1.urban disco
2.HABANERO
3.Baby, Baby, Baby
4.Jesus
5.Da Da Da
6.electric girl
7.Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
8.Monkey Discooooooo
9.I Hate Discooooooo
10.Love & DISCO
・THE BAWDIES
転換中もFREE THROWのDJがダンスミュージックをプレイした後に、この日は「SOUL MAN」ではなく「ダンス天国」のSEでTHE BAWDIESが登場。いきなり大合唱を巻き起こすという、the telephonesの後ということもあってのフロアの沸騰っぷり。そういえばかつてKINGSで見た2回もtelephonesの前の出番だっただけに、telephonesの後にこのバンドのライブを見るのは初めてのことかもしれない。
いきなりアッパーなロックンロールで、というわけではなくこの日はポップでありながらもJIMがやはり笑顔でギターを弾きまくる「I’M A LOVE MAN」。TAXMANとJIMのギタリストコンビのコーラスに合わせて飛び跳ねたり手拍子をしたりするのが実に楽しい曲であり、まだ始まったばかりであるにもかかわらず多幸感に満ち溢れている。
しかし「EMOTION POTION」からは急加速。明らかにテンポが速くなりまくっているのはtelephonesのライブから刺激を受けて心が走っているところもあるのだろうが、telephonesが語ってくれた自分たちへの想いを熱いロックンロールで返そうとしている。
早くも大合唱を巻き起こした「SING YOUR SONG」もこの2バンドによるライブだからか観客の声が凄く大きい。このバンドへの想いをみんなが声を出すという行為で示しているかのよう。
するとここでROYが
「the telephonesが活動休止を発表した時は本当に寂しかったです。でもまたいつかthe telephonesが帰ってくるまで俺たちはロックンロールに転がり続けていこうと。だから安心して帰ってきてくれと。the telephonesのLast Partyの時も言いました。
そしたら、結構早く帰ってきて(笑)みんな思ったよね?早くない?って(笑)
でも帰ってきたのはいいけど、これからどうするんだと。みんなが聞きたいことを聞きますよ。今のこれはなんなんだと。石毛、ちょっと来て」
と言うと石毛輝がステージへ。ROYにこれからの活動を問い詰められると
「12月のZepp Tokyoのワンマンでそれは話します!」
と結論は先送りになったが、この日その言葉を聞いた人たちは間違いなく何かを感じ取ったはずだ。石毛とTAXMANという毛量が多い2人に挟まれたROYは独特なプレッシャーを感じていたようであるが。
そうして笑わせながらも「THE EDGE」「FEELIN’ FREE」とロックンロールに振り切れながらも新しい自分たちのサウンドを獲得しに行った曲たちを連発して、さらには「YOU GOTTA DANCE」で飛び跳ねさせまくるという連打っぷり。観客が100%で応えているからか、バンドの鳴らす音もいつもよりもさらに熱く感じる。
するとここで最新曲「LET’S GO BACK」を演奏。タイトルフレーズの反復っぷりは実にわかりやすく、これからライブの定番でありキラーチューンになっていきそうな予感がする。決して斬新さがあるわけではないが、ひたすらにロックンロールを信じ続けるTHE BAWDIESならではの曲である。
客席もステージも笑顔溢れる「KEEP YOU HAPPY」を演奏すると、ここでおなじみの「HOT DOG」劇場の小芝居の準備に入るメンバーたち。暗転してBGMが流れると、最近おなじみの「ソウダセイジと舟山卓子の学園ラブコメ」の小芝居をし始めたのは、まさかのthe telephonesのメンバーたち。
卓子=涼平
ソウダセイジ=誠治
先生=石毛
解説する優等生=ノブ
という配役なのだが、完全に完コピした小芝居に客席は大爆笑。主役が誠治だったのは名前に合わせたものであったみたいだが、誠治は意外な演技力を見せていたし、こんなthe telephonesの姿が見れるのは間違いなくこの2マンだからこそだ。
そしてthe telephonesメンバーの後ろに隠れていたTHE BAWDIESのメンバーが「HOT DOG」を演奏すると、さらにツアーでも披露している新曲「BLUES GOD」までも演奏。そのタイトル通りにブルースのエッセンスが含まれた曲であるが、そこからTAXMANボーカル曲の「B.P.B」へとさらに加速していく。
「乗り遅れないでくださいよ!」
という「IT’S TOO LATE」から、ラストは「KEEP ON ROCKIN’」でコール&レスポンスを展開するのだが、小さいところから徐々に大きくしていくというコール&レスポンスをROYがしようとしているのにJIMとTAXMANが爆音で演奏し始めたり、さらには観客が小さいどころか全力で手拍子し始めてまたもJIMとTAXMANがギターの音量を一気に上げたりと、完全にメンバーと観客が一体となっている。ROYは観客の悪ノリっぷりに翻弄されていたが、実に楽しそうだったし、それがレスポンスの声量をさらに大きくしていたように感じた。
アンコールではTHE BAWDIESメンバーがthe telephonesの唇サングラスをかけて登場すると、
「俺たち、the telephonesが活動休止した時にめちゃくちゃ寂しくてみんなで泣いてた。だからこうしてまた一緒にできて本当に嬉しい!」
とJIMはサラッと言ったが、まさかtelephonesが休止を発表した時に泣いていたとは思っていなかった。同じ意志を共有して活動してきた仲間であるが、もはやそれは家族と呼んでいいものなのかもしれない。
すると
「おいで〜」
と招かれてtelephonesのメンバーもステージへ。誠治がドラムセットに座るとMARCYはなんとカメラマンという役割になり、8人合体バンドでTHE BAWDIESがthe telephonesのトリビュートアルバムでカバーした「sick rocks」へ。Last Partyの時もそうだったが、もはや涼平がベースを弾いてROYがハンドマイクで歌うというのは当たり前のように見えてくるし、THE BAWDIESが演奏すると完全にこのバンドのロックンロールになる。それを石毛がROYと一緒に歌っているのもまた最高だ。
そんな幸せな時間はこれだけでは終わらず、今度はMARCYがドラムで誠治がカメラマンという編成でTHE BAWDIESの「JUST BE COOL」までをもコラボ。編成的には涼平がベースでROYがボーカル、ノブがショルダーキーボードというTHE BAWDIESをメインにした形であるが、やはり石毛とROYのツインボーカルは特別である。ともにメンバーから
「体調が悪い時に聴きたくない声」
と言われていたが、全くタイプは違うけれど、体調が良い時に聴くと本当に心から元気になれる声。それはもちろんこの2人の人間性によるところも大きいはず。決して100%明るいタイプではないが、ステージに立つと我々みんなを笑顔にしてくれる。それは10年ずっと変わらないものだ。
演奏が終わると恒例の若大将ことTAXMANによるわっしょいが行われるのだが、みんな好き勝手に喋りまくるがゆえに全く終わろうとしない。でもそれも仕方がないというか、非常によくわかる。終わってしまうのが寂しいのだ。だからずっと一緒にステージに立っていたい。そう感じたのは、我々がこの2組をずっとこのまま見ていたいと思っていたからだ。明日のことなんて気にすることもなく。
そしてようやくの「わっしょい」では
「いくぞー!」「せーの!」「わっしょーい!」
というおなじみのフレーズが
「いくぞー!」「誠治!」「わっしょーい!」
という「HOT DOG」劇場で主役を務めた誠治をフィーチャーした特別バージョンに。そのわっしょいはいつも以上にここにいた誰もが出し切ったような、幸せな表情をしていた。
10年前のこの会場でのKINGSでTHE BAWDIESを見た時、まだ最前の4〜5列くらいしか盛り上がっていなかった。みんなまだこのバンドのことをほとんど知らなかった。それから武道館や横浜アリーナに立ち、ドラマ主題歌にも使われて多くの人の耳に届いた。そんなバンドを初めて見たのがここだった。それ以来、何度となく素晴らしい景色を見せてもらってきた。
あの時、the telephones目当てでKINGSに来ていなかったら、THE BAWDIESに出会うのがもっと遅かったかもしれない。でもあの時に見れたからこそ、このバンドが階段を駆け上がっていくのを見れた。何よりも、この2組のライブに行くようになって、周りにいる同じ音楽を好きな人たちと一緒に楽しむということがどれだけ楽しいかを知った。
かつて、the telephones、THE BAWDIES、QUATTRO、PILLS EMPIRE、THE BRIXTON ACADEMY、FREE THROWというKINGSを形成していたアーティストたちは明確に「シーンを変える」という意識を持って共同体となった。洋楽をルーツに持ちながらも、みんな音楽性は驚くくらいにバラッバラだった。だからこそ、馴れ合いにはならなかったし、みんながみんな他のバンドには負けたくないと思ってライブをしていた。PILLS EMPIREやTHE BRIXTON ACADEMYはthe telephonesやTHE BAWDIESほどは人気を得ることはできなかったけど、あの時のライブは今でもちゃんと覚えている。ここでのKINGSの時にはまだケイゾーと真彦(今のミイラズのあの2人である)がいた頃のQUATTROのことも。
彼らは果たしてシーンを変えることができたのだろうか?10年経ったけれど、そこまで劇的には、彼らが望んだようには変わらなかったかもしれない。でも、自分の見ている世界、見たい世界は確かに変わった。この日ここにいた人もそういう人が多かったと思う。
「次はthe telephonesがTHE BAWDIESを呼びたい」
と石毛輝は言っていた。これからもこの2バンドは続いていく。やっぱり、10年前に自分が信じたものは間違いじゃなかった。最後にFREE THROWがQUATTROの曲をかけているのを聞いていて、心からそう思えた。同じ時代を生きてこれて、本当に幸せだ。
1.I’M A LOVE MAN
2.EMOTION POTION
3.SING YOUR SONG
4.THE EDGE
5.FEELIN’ FREE
6.YOU GOTTA DANCE
7.LET’S GO BACK
8.KEEP YOU HAPPY
9.HOT DOG
10.BLUES GOD
11.B.P.B
12.IT’S TOO LATE
13.KEEP ON ROCKIN’
encore
14.sick rocks w/ the telephones
15.JUST BE COOL w/ the telephones
文 ソノダマン