a flood of circleのボーカルでありながら、近年はTHE KEBABSでも活動し、さらにはソロとしても活動しているという、体がいくつあるのか、いつ寝ているのか、無限に曲が湧き出てくるのか、と思ってしまうくらいに止まってしまうと死んでしまう魚のような男、佐々木亮介。
ソロとしてはこれまでにミニアルバムをリリースし、徐々にR&Bやトラップなどの最新の世界のポップミュージックを自分なりに咀嚼した音楽へと展開させてきたが、8/21についにソロとしての1stフルアルバム「RAINBOW PIZZA」をリリース。
そのアルバムタイトルにちなんで、表参道にある本格的なピザ屋「PIZZA SLICE 2」にてリリースパーティーを開催。果たしてどんな夜になるのか全く予想がつかないというのはこの佐々木亮介という男の生き方そのものである。
表参道はもう街並みからしてアウェーというか、どうにも馴染みきれない田舎者としての感覚が拭いきれないのだが、オープンの時間である20時の前にはすでに長蛇の列が。いつものフラッドのライブとは異なるラフな出で立ちの人がほとんどとはいえ、表参道の路地にこんなに人が並んでいるのは異様な光景のようで、道行くオシャレな出で立ちの人たちからは好奇な目線で見られているような気さえしていた。
20時にオープンして入場料の1000円を払って地下のピザ屋に入ると、入り口の正面がカウンターになっていることもあり、ピザ待機の列がかなり長いものになっている。
そんな中で店内の奥には革ジャンを着ていない、ソロ仕様の佐々木亮介の姿が。DJとして海外の最新のポップミュージックを流しながら、
「こんなに来ると思わなかった(笑)テーブルに座れる人くらいしか来ないと思ってた(笑)
まだみんなピザとドリンク行き渡ってない気がするから、もうちょっとしたら乾杯しよう」
と亮介はこんなに列ができるくらいに客が集まるのは想定外だったようだが、普段自身の作る音楽には自信満々なのに、なぜそんなに集まらないと思うくらいに過小評価しているんだろうか、と思う。こんなに何が起こるかわからないような貴重な機会、フラッドのファンや亮介のファンが見逃すはずがない。
長い列を並んでようやくピザにありつくと、こうしたライブやイベントの時の「高いけど小さくて一切れだけ」というものとは全く違う、大きめにカットされたピザ。カウンターのすぐ後ろで焼いたばかりの生地はクリスピーであり、何よりチーズとトマトソースが実に美味。列が伸びまくっていることで店員サイドはかなりキツそうだったが、何回もピザをお代わりしに行く人の気持ちがよくわかるくらいに美味しかったし、ビールも海外のものなのか、普段から飲んでいるビールとはまた違うコクを感じた。
そんな中でだいぶ乾杯を待っていた亮介が
「a flood of circleの打ち上げでも中打ち上げっていうのがあって…」
ととりあえず乾杯したかったらしく乾杯すると、後半はヒップホップや忌野清志郎などの日本のロックをかけるという亮介の音楽リスナーとしての幅の広さと深さを感じさせる選曲に。
そもそもMUSICAのディスクレビューでもロックンロールに拘ることなく、様々な(R&Bやヒップホップが本当に多い)音楽に日常的に触れていることがよくわかるような文章を書いているが、そうした亮介の雑食性はソロが1番感じることができるし、亮介が巨大ピザを受け取ると店内のど真ん中で食べ始めたあたりから流し始めた、「RAINBOW PIZZA」を中心とした本人の曲からなによりもそう感じる。
そうして本人の曲を流しながらコーラス部分を客に合唱させたりするのだが、マネージャーのキヨシ氏の誕生日を祝ったり、最後にはマイクを持って店内を端から端まで歩き回りながら歌う。後から来た人はなかなか近くで見れなかったであろう状況だっただけに、亮介のサービス精神の良さと客を大事に思っていることが伝わる。
また、この日は撮影が許可されていたのだが、亮介は歩き回りながらもカメラを向ける人に対して寄っていったかと思いきや、自らツーショットにしてみたり。
「みんながどう思っているかはわからないけど、もうここに来てくれた人は友達だと思ってる」
と言った通り、こんなに謎なイベントに来る人は佐々木亮介という男のことを心から信頼しているし、そうして謎なイベントに足を運ぶ我々のことも亮介は心から信頼してくれている。フラッドのライブの時はオーラがありすぎて話しかけづらく感じる時もあるけれど、ソロの時は本当に距離が近い。それはこのパーティーという空気が成せることでもあると思うけれど。
開催発表時には22:30までとアナウンスされていたが、
「22時までには帰らなきゃいけない」
ということで最後は弾き語りに。なんの曲をやるかは全く決めてなかったようであるが、「RAINBOW PIZZA」のリリースパーティーであるにもかかわらず、
「新作の曲はツアー来た時に。っていうか新作の曲をどうやって弾き語りでやればいいんだ(笑)」
ということで新作の曲はやらず、ソロデビュー作から「Blanket Song」をマネージャーのキヨシ氏に譜面台を支えてもらいながら弾き語り。
普段からアドリブ入れまくりのこの曲であるが、この日も
「明日はフラッドのリ〜ハ〜」
などのアドリブを入れまくり。しかし、弾き語りをする時に亮介は椅子に座らざるを得ないのだが、そうしてDJの時よりも低い体勢になった亮介を見るや否や、前の方にいた人たちが後ろの方の人たちも弾き語りをする姿を見れるようにと、一斉に腰を下ろした。だから後ろのほうにいた自分も亮介が歌う姿を実によく見ることができた。ファンはバンドを写す鏡であるとよく言う。それならばフラッドのファンとフラッドはやはり最高のロックンローラーたちだ。ロックンロールっていうことは最高にカッコいいっていうことだから。
弾き語りを終えると、
「片付けしないといけないからさっさと帰って!(笑)」
と亮介が言ってパーティーは終わった。
フラッドも過去作の再現ライブや新作のリリース、それに伴うツアーが発表されている。それだけでも楽しみで仕方がないのに、THE KEBABSのライブもあって、ソロのアルバムが出てツアーがある。めまぐるしい活動ペースだが、ついていくのがキツいと思ったことは一回もない。むしろ、こんなに人生を楽しいものにしてくれてありがとう、という気持ちしかない。「RAINBOW PIZZA」についてと、佐々木亮介という男について個人的に思うこともたくさんあるけれど、それはまたソロのツアーの時にでも。
DJ
1.Blanket Song
文 ソノダマン