LEEGENT CO., LTD Presents TOKYO NIGHT SHOW Featuring: The Birthday / MONOEYES 新木場STUDIO COAST 2020.1.25 MONOEYES, The Birthday
そもそも、ELLEGARDENが活動休止した時にthe HIATUSにウエノコウジが参加すると発表された時も、細美武士のバンドにミッシェル・ガン・エレファントのメンバーが参加するとは、と驚いたものだが、その細美武士のバンドであるMONOEYESと、ミッシェル・ガン・エレファントのボーカルだった、チバユウスケのThe Birthdayの対バンという凄まじいイベント。この対バンを組もうとしたイベンターに拍手である。
・MONOEYES
チケットは当然のようにソールドアウトで超満員の中、客席下手の壁にはモノクロの映像が映し出されたりする中、18時になると場内が暗転。スターウォーズのテーマが流れたということは、先攻はMONOEYESである。
メンバー4人が登場すると、細美武士が
「あけましておめでとうございます、MONOEYESです!」
と挨拶して「Do I Have To Bleed Again」からスタートするという実に意外な展開。観客も少々面食らった部分があるのか、客席はMONOEYESのライブにしてはまだおとなしめ。細美もまずはサビのタイトルフレーズを低いトーンで歌う。戸高賢史(ギター)は年末に見たツアーファイナルの時よりも髪型がさっぱりしているように見える。
そんな観客のノリに加えてバンドのサウンドまでも一気に激しくなった「Run Run」ではダイバーが続出し過ぎたからなのか、細美が客席を指差したりしながらメンバーに目配せして演奏をストップさせると、
「ちょっと起こしてあげて。すいません、うちのバカどもが!」
と最前ブロックで倒れてしまった観客を起き上がらせた。
細美は昨年のthe HIATUSのツアーの際にも
「お前らは見た感じ、一緒に歳を取ってきたのがわかる(笑)」
と客席の年齢層を見て語っていたが、この日も含めて本当に観客のことをよく見ている。我々はずっと細美武士のことを見続けてきたが、細美も我々のことを見てきたのだ。そうしたアクシデントによってもう1回最初からやり直したので「Run Run」を実質2回聴けたことになったのは得をした気分になるけれど。
駆け抜けるように「Like We’ve Never Lost」からライブならではのイントロのアレンジがなされた「Free Throw」、オレンジ色の照明がまるでアメリカの広大な土地に伸びる道路を照らす夕日のように見える最新シングルのタイトル曲「Interstate 46」と続くと、
「今日のライブを去年からずっと楽しみにしてました。俺はアマチュアの頃に古本屋みたいなところでバイトしてたんだけど、レコードも扱ってる店だから、発売日に万引きしたレコードを売りに来る奴もいて。普段はなんも咎めないんだけど、ミッシェルの「ロデオ・タンデム・ビート・スペクター」を持ってきて。さすがに「それはやめろ」って言って止めさせました。このエピソードだけでも今日は俺たちのことを受け入れてもらえませんか」
と細美がミッシェルファンであることを証明するような過去のエピソードを開陳して前方で激しくダイブとモッシュを繰り広げていたMONOEYESファンだけでなく、その横や後ろで見ていたThe Birthdayのファンであろう年齢層が高めの方々からも拍手が起こる。
そこからは
「スコットが決めるぜー!」
と言ってスコット・マーフィー(ベース)がメインボーカルを務める「Roxette」から続け様に、まさかこの2マンというライブでもやるとは思わなかった、スコットのバンドであるALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」とスコットメインボーカル曲を連発。途中からはスコットがセンターの細美のマイクに移動してセンターボーカルとなり、逆に細美は下手のスコットのマイクでコーラスを務める。この辺りの抜群のコンビネーションもこのバンドでライブを重ねてきたからこそということを感じさせてくれる。
そのスコットがペットボトルから水を客席に噴射させまくると、
「外人担当のスコットです。今日はThe Birthdayと対バンっていうことで、大酒飲み対決ができるのが楽しみです。負ける気はしません(笑)」
と自己紹介し、そのままメンバー全員が自己紹介する流れに。
「みなさん、体調に気をつけて。今年もよろしくお願いします」
と言った唯一の金髪が目を引く、気遣いを見せる男・一瀬正和(ドラム)に
「いつもみたいに面白いこと言って!」
と煽られまくった戸高は
「僕はThe Birthdayが大好きなんで、なぜか今日は涙がこぼれそうです」
とThe Birthdayの曲を2曲も引用するファンっぷりを見せるが、あまりにうますぎたためか、
「昨日から考えてきただろ(笑)」
と細美に突っ込まれる。本人はそもそもMCをするつもりはなかったみたいだが。
そして「Two Little Fishes」では時にはTOSHI-LOWが務めることもあるコーラスを観客に求めて大合唱を巻き起こし、スコットがその場でグルグルと回りながらベースを弾く「When I Was A King」からは再びパンクバンドとしてのMONOEYESに転じていき、その一番新しい形がスコットがメインボーカルを務める最新曲の「Gone」なのだが、バンド始動時のパンクなイメージよりも作品を重ねるごとに幅を広げてきているだけに、スコットの曲のパンクっぷりはどこか安心感すら感じさせてくれる。
「明日公園で」でスコットがいつものように自分のベースを銃のようにして最前の観客だけでなく戸高に至近距離でぶっ放すと、サビに入る瞬間には細美、スコット、戸高の3人が大きくジャンプする。当然細美の歌の入りは遅くなってしまうのだが、その瞬間を写真に撮って額縁に入れて飾りたいくらいにカッコいい。スコットはベースを弾きながら客席に飛び込んでいたのだが、次々にステージに向かって飛んでくるダイバーにぶつかったりしないかどうかが不安である。
演奏するメンバーも観客も飛び跳ねまくる「My Instant Song」は細美が演奏直前に「Your」と言ったように聞こえた。それはもはやこの曲は自分たちだけのものではなく、こうしてライブに来ている人たちのものであるということだろうか。
そしてラストは汗と笑顔にまみれたこの場所のことを
「そういう世界があるなら行ってみたいと思った」
と肯定するかのように演奏された「グラニート」。なんだかもはやこのバンドのワンマンに来たかのような雰囲気ですらあったが、この後には細美も戸高も念願の対バンであるThe Birthdayが登場する。いつもと変わらぬMONOEYESのライブだったけれど、メンバーの心境はいつもと少し違う感じだったんじゃないかと思う。このバンドにとってはそうそうない、胸を借りるようなライブというか。
昨年にEPがリリースされたことにより、今年はきっとアルバムがリリースされるし、それに伴ってツアーも行われるだろう。the HIATUSとも違うし、もちろんELLEGARDENとも違う自由さ、解放感、楽しさがMONOEYESのライブには確かにある。昨年の年末のワンマンもそれを感じさせてくれたが、今年はより一層それを感じることができそうだし、何よりもこのバンドでどんな新しい曲を世に放つのかというのが実に楽しみになった2020年の細美武士始めであった。
1.Do I Have To Bleed Again
2.Run Run
3.Like We’ve Never Lost
4.Free Throw
5.Interstate 46
6.Get Up
7.Roxette
8.Somewhere On Fullerton
9.Two Little Fishes
10.When I Was A King
11.Gone
12.明日公園で
13.My Instant Song
14.グラニート
・The Birthday
そうしてMONOEYESのメンバーたちからもリスペクトを寄せられるThe Birthday。おなじみのThe Crests「Sixteen Candles」のSEが流れてメンバーが登場すると、フジイケンジ(ギター)は歩きながら右手の人差し指を客席に突き出し、ヒライハルキ(ベース)、クハラカズユキ(ドラム)とともに上下ともに黒という出で立ちなのだが、チバユウスケ(ボーカル&ギター)は白い衣装にサングラスという出で立ちなのでその段階からオーラが凄まじい。
そのチバがギターを鳴らすとそれだけで歓声が上がり、ポエトリーリーディング的な言葉が次々に放たれる「Buddy」からスタート。MONOEYESと違って曲のテンポはめちゃくちゃ速いというわけではないが、この2組での対バンということもあるからか、ダイバーが出現するくらいにのっけからロックンロールバンドの熱狂を巻き起こし、
「パーティーがまた始まる」
のフレーズを観客に歌わせるという、まさにパーティーの始まり。
フジイの刻むギターの上にシンプル極まりないチバの言葉とチバ特有のしゃがれながらも伸びのあるボーカルが乗る「THE ANSWER」、雪というモチーフはこの時期にぴったりであるが、
「明日はきっと青空だって
お前の未来はきっと青空だって
言ってやるよ」
という歌詞が聴き手の背中を強く押す「青空」と、近年リリースの曲たちはサウンドもそうであるが歌詞も一層ストレートになってきている。年齢を重ねたことによって本当に歌うべきことや大事なもの、ロックンロールバンドにとっての答えがこのバンド、チバには見えてきているのだろうか。
クハラが
「お久しぶりです。The Birthdayです」
と軽く挨拶すると、チバがサングラスを外しただけで大歓声が起こる。それはチバの打ち立ててきたキャリアとカリスマ性あってこそだが、その色気のようなものこそロックンロールバンドをさらにカッコよく見せることができる要素だよな、と思う。
「アリス・クーパー」が歌詞に登場する「THIRSTY BLUE HEAVEN」、フジイの歌うパートがチバの声との対比によって実に効果的かつ詩人として「ジョン・レノン」が登場する「FLOWER」というあたりはチバの全く衰えぬ自身もまた詩人であるということ、そうした固有名詞を入れて歌詞を作っていくということがミッシェル時代から変わっていないことを示しているが、ここまでのほとんどの曲が昨年リリースのアルバム「VIVIAN KILLERS」収録曲であるというのがバンドの今のモードを象徴している。
「まだ言っちゃいけないかもしれないけど、今年はMONOEYESと結構一緒にやるらしいよ」
とチバがフライング発言をしていたが、それは両者が今年ともにたくさんライブをやる機会があるということであるし、その親交はより深まっていきそうである。
そのチバがギターをマラカスに持ち替えて歌う「DIABLO 〜HASHIKA〜」ではヒライのうねるようなベースとクハラの軽やかなドラムが独特のグルーヴを生み出していき、そのままチバがハンドマイクで歌う「Red Eye」ではメンバーそれぞれのソロ回しに加えてチバのハーモニカソロまでも披露される。そのそれぞれの鳴らす楽器の音のカッコよさが一つに重なることによってバンドそのもののカッコよさが何倍にも膨れ上がる。その姿はロックバンドってなんてカッコいいんだろうかと思わせてくれる。
そのままフジイのギターリフから始まった「なぜか今日は」に連なる瞬間はあまりのカッコよさに体が震えてしまうくらい。決して激しい曲ではない、むしろThe Birthdayの中ではキャッチーなタイプの曲であるにもかかわらずダイバーが発生していたのもまたこのバンドとステージから発せられている音のカッコよさに自然と体が反応してしまうところがあるのだろう。
そしてギターのフレーズが鳴らされる中でチバが
「カモン!」
と言うと
「電話探した あの娘に聞かなくちゃ
俺さ 今どこ?」
というフレーズを観客が大合唱し、チバが
「今日はMONOEYESと新木場STUDIO COAST!」
と叫んだ「涙がこぼれそう」はもはや生きるレジェンドというくらいのレベルになりつつある年齢とキャリアを誇るチバが今でもロックンロールへの衝動を持ち続けているということがよくわかるエモーションの発露を見せてくれたし、「なぜか今日は」「涙がこぼれそう」の2曲をMCで口にしていたMONOEYESの戸高も実に嬉しかったんじゃないかと思う。持ち時間が長いからということもあるだろうけれど、前半に新作の曲を畳み掛けたので今は終始そのモードなのかな?と思わせながらもこうして人気シングル曲もしっかり演奏してくれるあたり、かつてよりも聴き手のことを少し考えているようにも見える。そうした曲が揃うようになったというのもあるだろうけれど。
そしてラストは「VIVIAN KILLERS」においても最後に配された「OH BABY!」。最後に光が降り注ぐようなこの曲が生まれたのはバンドにとって実に大きいと思うし、アルバムリリース直前というタイミングにもかかわらず急遽シングルとしてリリースしたこともよくわかるくらいの名曲。きっとこれから何度となくこうしてライブの最後に演奏する姿を見ることができるだろうし、チバを始めとして演奏しているメンバーの顔は実に楽しそうだった。
アンコールではチバが
「久しぶりだから段取りがわからん(笑)」
と言って酒を飲みながら立ち位置に戻ると、歌うように見せてマイクスタンドからスッと離れ、ヒライも自身のマイクスタンドを客席に向けると、
「とんでもない歌が鳴り響く予感がする
そんな朝が来て俺」
という歌い出しのフレーズで大合唱が起きた「くそったれの世界」はタイトルとは裏腹に肯定感に溢れている。チバがそう歌うんなら、ちょっとでも世界が輝いて見えるかのような。見た目は白髪が増えたし髭も白くなってきているけれど、今もチバの歌やその姿は人の意識や視界を変える力を持っている。
そのチバがギターを下ろすと、最後はクハラの力強いツービートに呼応するようにダイバーが続出した「DISKO」。もちろんダイブしていたのはMONOEYESのファンもたくさんいただろうし、じっと聴き入っている観客もたくさんいたけれど、最前ブロックで飛び跳ねたり拳を上げたりしている、ずっとチバのロックンロールを追い続けて歳を重ねてきたであろうライブハウスの先輩方の姿は本当にカッコいいし、自分もその歳になってもこうしてロックンロールに夢中でいたいと思わせてくれた。
音楽に限らずだが、今やあらゆるものがデータ化したり、数値で表されるようになってきている。野球においても「そんなデータあるの?」と驚くくらいにこれからもそうして数値で価値が決まることも増えていくかもしれない。
でもどんなに科学が進化してデータや数値で解析できるようになったとしても、ロックンロールのカッコよさはそうしたものでは絶対に測ることはできないし、機械で作り出すことだってできない。
それをThe Birthdayのライブは教えてくれるし、THE BAWDIESやa flood of circle、THE PINBALLS、ビレッジマンズストア、climbgrowなど。自分が愛するロックンロールバンドたちが世の中に出てきて当たり前のようにライブを見れているのも、この人たちが切り開いてくれた道があるからこそ。そうした意味でも常に最敬礼したくなる、というか、背筋を正して向き合いたくなるバンドだ。チバの言葉通りなら、きっと今年は例年以上にいろんなところで見れるはず。
1.Buddy
2.THE ANSWER
3.青空
4.THIRSTY BLUE HEAVEN
5.FLOWER
6.DIABLO 〜HASHIKA〜
7.Red Eye
8.なぜか今日は
9.涙がこぼれそう
10.OH BABY!
encore
11.くそったれの世界
12.DISKO
文 ソノダマン