このバンドの日である9月9日。今年はできたばかりのライブハウスであるZepp KT Yokohamaでライブが見れるはずだった。
そもそもが3月の「おそらく結成日と思われる日」ワンマンや、THE BACK HORNとの2マンライブ、さらにはこの日を起点としたツアーなど、今年の9mmは去年まで以上に精力的に活動するスケジュールを打ち出していただけに、コロナの影響をモロに被ってしまったアーティストであると言える。
とはいえ9mmの日にこのまま何もしないというバンドなわけもなく、本来ライブをやるはずだったZepp KT Yokohamaから配信ワンマンを開催。しかもこの日はニューシングル「白夜の日々」と、バンドにとって初のトリビュートアルバム「CHAOSMOLOGY」のリリース日という、やはり9mmの日らしいめでたい日となっている。
ライブの開始時間は20時であるが、19時の開場時間からはトークライブという、さすが9mmの日ならではのボリューム。黒のハットを被った菅原卓郎(ボーカル&ギター)と、長く伸びた髪を後ろで結いている中村和彦(ベース)の2人によるトークは、この日リリースのシングル「白夜の日々」の解説から始まる。
「今しかできないリアルな曲」
という卓郎の言葉からはやはりコロナの状況だからこそ生まれた曲であるということを感じられるし、このシングルの収録曲は和彦が基本的にベースを家で録音するというステイホームを意識したレコーディングによって作られたというのも新しい経験になったという。
一方で同時リリースのトリビュートアルバムについては、「歌盤」のDISC1と「インストバンド」のDISC2でそれぞれのお気に入り曲を挙げるのだが、
和彦
歌盤「名もなきヒーロー / FLOWER FLOWER」
インスト盤「Punishment / mudy on the 昨晩」
卓郎
歌盤「Black Market Blues / a flood of circle」
インスト盤「ハートに火をつけて / →Pia-no-jaC←」
という選曲。卓郎は「その日の気分によって変わる」と言っていたが、ライブをやる日にフラッドのカバーを選んでくれたのは両バンドのファンとして実に嬉しい限りだ。
さらには本来ならばこの日の対バンとして出演するはずだった、folcaのメンバーもトークに参加。ギターの為川裕也は9mmサポートギターの1人でもあるだけにファンにとってはおなじみであり、救世主的なバンド。そんなバンドのメンバーとともに仲睦まじいトークを展開していくが、folcaが9mmと出会ったのは12年前にまだfolcaを結成する直前、大阪の十三ファンダンゴに9mmが出演したのを観に行った時だという。
また、かねてから為川は卓郎に似ているということで話題になっていたが、為川が参加した「TOUR of BABEL」の神戸公演に為川の家族が見に来た際に、父親からも「似ている」と言われるくらいに似ていて、むしろ為川の兄よりも卓郎の方が為川に似ているという。メンバーいわく「前世でなんらかの関係があった」とのこと。
そして今年の9mmの日に対バンできなかったリベンジとして、改めて来年の9mmの日の対バンを正式オファー。まだどうなるのかわからない世の中だけれど、一つだけ確かにわかっていることは2組とも来年のこの日までバンドを続けていく気しかないということ。どんなにコロナでライブが出来なくなって収入がなくなっても、ハートについた火は消えることはないし、folcaが有観客ツアーの開催に踏み切ったのは9mmにとっても良い刺激になるはずだ。
そんなトークを経て、20時少し過ぎになると画面に薄暗いステージが映る。おなじみのSEはなし、すでにメンバーがスタンバイしているという状況で、
「9mm Parabellum Bulletです。こんばんは」
と卓郎が挨拶した刹那、メンバーが一斉に鳴らす轟音が響き、ステージが明るく照らされてメンバーの姿が。卓郎はトークの時とは違ってハットを被っていないが、それ以上に目を惹くのはステージ上には卓郎、和彦、滝善充(ギター)、かみじょうちひろの4人だけということ。
滝の腕の不調の後は先ほどトークにも参加した為川や武田将幸(HERE)らがサポートギタリストとして滝のギターとバンド全体のサウンドをカバーしてきてくれたし、そのサポートありの編成が近年のライブではデフォルトとなっていたが、ステージ上からスモークが噴き出した「(teenage)disaster」から本当に4人だけという形でライブがスタートする。滝の暴れっぷりはあの不調を発症した日比谷野音のワンマン以降の日々が幻だったかのようですらある。
今月のROCKIN’ON JAPANのインタビューでも滝は不安がなくなってきており、4人だけのライブに戻して行こうとしていることを話しており、インタビュアーの編集長・山崎洋一郎を驚かせると同時に喜ばせていたが、やはりこうして4人だけでステージに立っていると、この4人のサウンドこそが9mmなのであると思える。そんな、メンバーだけでステージで演奏している姿を見るだけで泣きそうになるバンドがほかにどのくらいいるだろうか。
「(teenage)disaster」の赤い照明とは対照的に青を基調としたクールな照明がメンバーを照らす「Lost!!」、そのアウトロからイントロにスムーズに繋がるライブアレンジがなされた、そこまで高速化しない形で演奏された「Vampiregirl」では滝がイントロからギターをぶん回し、ギターソロではステージ前に出てきて弾きまくる。その逆サイドでは和彦が座ってベースを弾くという視界の忙しさは配信ライブであっても通常のライブであっても変わらない。最後のサビでは卓郎が
「頭空っぽにしなくちゃ」
と少し歌詞をつけ加えるように歌っていたが、これは今の4人の演奏に乗ることによって自分が思う以上に歌えているという好調さから来るアレンジだろうか。
卓郎がその自身とバンドの好調さを感じさせるように
「イェーイ!」
と叫ぶと、「The Revolutionary」のイントロのキメで卓郎、滝、和彦の3人が楽器を抱えて高くジャンプする。その瞬間の美しさ、カッコよさ。その音と姿の噛み合いっぷりは近年は4人だけでライブをすることがほとんどなかったというのが嘘のようだ。
滝は背中でギターをブン回すというおなじみの暴れっぷりパフォーマンスを見せるものの、この曲においては大事な要素であるコーラスを無碍に叫んだりすることなく丁寧に歌うようにしていたイメージ。ギターやドラムだけではなく滝は歌も上手い。本当に多彩な男だ。アウトロではやはり和彦とともに轟音を撒き散らしながら暴れまくっているけれど。
卓郎が
「9mmの日、9正月。今年はリクエストを募りまして、今から結果TOP3の曲をやります。曲名は言わないけれど、イントロで歓声が聞けないのは寂しいですね」
と、ファンのためにファンから募ったこのリクエストの結果の曲をファンの前で鳴らすことができないということに少し寂しさを感じているようだったが、それでもちゃんと会場からは声が返ってこないことをわかった上で、
「行けるかー!」
といつものように問いかけるあたりは、卓郎は画面の向こうにいる我々の顔をきっと思い浮かべながら歌い、言葉を発しているはずだ。
ということでここからは武田がサポートギターとして加わり、リクエストの上位3曲が3位から順に発表されていくのだが、まず3位は「光の雨が降る夜に」。怪しく怪しく光が瞬くような照明に照らされながら、卓郎が後半に歌詞につまる場面もあったが、最後には滝に並ぶようにして卓郎もステージ前に出てきてギターを弾く。
以前のこうしたリクエスト的な投票においても確か1位に選ばれていた曲であるが、そこまでレア曲というわけでもないし、もちろん良い曲であるのは疑いようのない事実であるし、自分も大好きな曲なのだが、3rdアルバムにして決定打的な快作となった「Revolutionary」の中でこの曲だけ突出して人気であるというのが今ひとつよくわからないところでもあるので、いずれ9mmファンの方々と「「光の雨が降る夜に」の好きなポイント選手権」的な意見交換をしたい心持ちである。
2位は明らかにレア曲枠であろう、「命のゼンマイ」のカップリング曲である「エレヴェーターに乗って」。個人的には母校の大学の学祭ライブに9mmが出演した時に謎の新曲として披露してくれたという意味で非常に思い入れが強い曲。しかしアップになると髪がめちゃくちゃ長い和彦(過去最長だろうか?)はメタルバンドのメンバーのようにすら見える。
卓郎もMCで
「いつかレア曲縛りライブもやってみたい」
と言っていたが、この曲は間違いなくその中に入る曲になるはず。そのレア曲縛りライブのセトリがどんなものになるのか気になって仕方がないが。
そして映えある第1位は「Keyword」。激しいイントロのサウンドと歌謡性の強いメロディというのは9mmのコアな部分であるため、そういう意味では1位になるのは納得であるが、9mmには例えば「Punishment」や「The Silence」のようなメタル要素の強い激しい曲もあるし、逆に「カモメ」のような叙情性の強い曲もある。
しかし今回の上位曲に共通しているのは、「激しさもありながらもメロディが強い」ということであると思うし、激しさや過激さがイメージとして先行しがちなところもある9mmであるが、こうして人気投票に参加するファンの人たちはその最大の魅力が「曲の良さ」であるということをちゃんとわかっている。もちろんその時々や状況、投票方法によって結果は変わっていくだろうけれど、案外上位に来るような曲はあまり変わらないのかも。
(同系統で他に挙げるなら「キャンドルの灯を」や「黒い森の旅人」あたりか?)
「「白夜の日々」「CHAOSMOLOGY」ともにオリコンのデイリーチャート10位でした。惜しい!」
と9mmの日にリリースした新譜が9位ではなかったことに少し残念そうだったが、これは1stアルバムの「Termination」がオリコン10位だった時も同じことを言っていたことを思い出した。当時と今とではオリコンランキングの価値観も変わっているけれど、 CDを手に取ってくれる、曲を聞いてくれる人が確かにいるということがわかるのは、ライブに観客がいないだけに唯一リアクションがわかるものと言えるかもしれない。
そのオリコン10位に入った「白夜の日々」もここで演奏されたのだが、ここからはサポートギターはトークライブにも出演した為川裕也に。メタリックな滝のギターと卓郎の艶のあるボーカルとメロディというのは「DEEP BLUE」で再定義した9mmらしさに正面から挑むような曲。
そういえば「DEEP BLUE」はちょうど去年の9mmの日リリースであり、その日に行われた昭和女子大学人見記念講堂のライブは千葉に台風が直撃した影響で間に合わなくて、そういう時に限って席が最前列だったということを思い出した。
この夜のような日々が明けたら9mmに会いに行けるのだろうか。
さらにはその「白夜の日々」のカップリング曲である「ロードムービー」も披露。
「海を見に行こうよ」
という歌詞から始まる叙情的な、タイトル通りに風景が浮かぶ曲。トークライブではメンバーが一聴してカップリング行きを決めたと断言していたのが信じられないメロディアスさ。同タイトル曲はミスチルやアジカンにもあるが、その曲たちに決して劣ることのない曲だ。
そして同じくカップリングの「Calm Down」までもが演奏されるという、ライブタイトル通りに「白夜の日々」のシングルに寄せたセトリ。こちらもトークライブで言っていたように、もともとはツアー中に卓郎の喉の不調を埋める時間のためにメンバーのセッションで生まれた曲であるが、最初はこの曲の時は休んでいた卓郎も普通に演奏に参加するようになった。
ドープさすら感じる、やや落ち着いた前半からやはり轟音に急展開するという後半は実に9mmらしいインスト曲。かつてのインスト曲「The Revenge of Surf Queen」とは全く違うタイプの曲であるが。
すると少し転換らしき長めの曲間が取られたかと思ったら、画面に映って話始めたのはなんと和彦。基本的に普段のライブではMCを全くしないのだが、
「9月9日はドラムのかみじょうちひろの誕生日で…」
というバンド内設定(「それまだあったの?」とかみじょうに突っ込まれていた)を紹介したりしながら、トリビュートアルバムに参加してくれたアーティストとのコラボレーションのために一度ギター陣には掃けてもらって、リズム隊だけでトリビュートバージョンでの演奏をする、ということをかみじょうの悪ノリを華麗にスルーしながら普通に進行させていく姿になぜかこの日1番の成長っぷりを感じてしまった。トークとかでは喋るとはいえ、スポークスマンの卓郎、作曲者の滝、独特の文体と言語センスで雑誌に連載を持っていたかみじょうと、バンド内では末っ子キャラである和彦がこうやって喋りで引っ張るという場面はこれまでにほとんど見たことがなかったから。もしかしたらこれからライブではこんな光景が見れるようになるライブもある…かもしれない。
そんな和彦によって迎えられたのは、fox capture planのRyo Kishimoto。コテコテの関西弁で
「今日はインストバンド代表として参加させてもらえてると思うと実に光栄です」
とこのライブに参加できる喜びを語ると、キーボードのKishimotoに和彦とかみじょうというfox capture planと同じ編成で「ガラスの街のアリス」を演奏。
ピアノのイントロから始まるというアレンジが施され、ギターも歌もないだけに旋律を一手に担い、まるで歌っているかのようなその音色は実に清冽。9mmの曲の持つメロディの強さをピアノという楽器によって引き出しているし、うねるような和彦のベースとダンサブルなかみじょうのドラムも、どこか9mmの曲を演奏しているのにそうではないように聞こえるというか。2人のプレイヤーとしての技術の高さや器用さを改めて感じさせてくれる。
Kishimotoと入れ替わるように卓郎、滝、為川の3人がステージに再登場すると、次なるゲストのチャラン・ポ・ランタンの2人を呼び込む。去年のアラバキでもコラボしている両者であるが、トリビュートではもも(ボーカル)と小春(アコーディオン)という最もミニマムな形態で演奏していたのを今回はバンドとのコラボという形に。2人の真っ赤な衣装はカバーした「ハートに火をつけて」に合わせたものだろうけれど、インスト盤の→Pia-no-jaC←も2人だけの演奏による「ハートに火をつけて」が収録されており、良い対比になっているというところもトリビュート盤の聴きどころだ。
ギターリフに重なるアコーディオンの音色が醸し出すエキゾチック感がバンドの持つ違った一面を引き出しながらも、もものボーカルは9mmの強い要素の一つである歌謡性をより強く感じさせるものになっている。
自分がチャラン・ポ・ランタンを最初に知ったのはスペシャの番組に2人が出ていて、まだももは10代という若さだったが、その頃よりも見た目というよりも増した歌声の妖艶さが大人の女性になったな、と感じる。
間奏の小春のアコーディオンソロも含めて、異質なコラボのようでいて、実は両者の持つ魅力を最大限に引き出す名コラボなのかもしれない。
そしてステージ上の丸い照明がまるで月のように輝く中でチャラン・ポ・ランタンと入れ替わりで登場したのは、先日自身も「TITLE COME SHOW」という素晴らしい配信ライブを行った、ストレイテナーのホリエアツシ。
ホリエ「外は今、土砂降りらしいよ」
卓郎「客入れてやってたらまた雨バンドって言われるな(笑)」
という挨拶代わりのやり取りをしてから、トリビュートでストレイテナーがカバーした理由を、
「去年のアラバキでアンコールでやっていたのがあまりにも良すぎて」
と、自身も参加した去年のアラバキでの9mmトリビュートライブが選曲のきっかけとなったことを明かしてから演奏されたのは「カモメ」。
卓郎がアコギを弾き、ホリエのボーカルから始まるという形であるが、どこかテナーより神聖な透き通ったイメージに感じるのはボーカルだけに専念しているからだろうか。
サビでは卓郎とデュエットし、2コーラス目は卓郎が歌い始めるというトリビュートではなくコラボならではの歌い分けによって両者の持つ声の質の違いがよくわかる中、最後のサビでは手振りをしながら歌っていたホリエが歌い終わった後に笑顔でおどける姿が少し可愛らしかった。
コラボ3連発を終えると再び4人だけという編成に戻り、気合いを入れ直すようにして「Answer and Answer」で後半戦をスタートさせる。ゲストが入っても9mmらしさは全く失われないどころか、9mmの曲の魅力を再確認できるという感じすらあったが、それを経て4人だけで演奏するという流れを作ったことによって、やはりこれぞ9mmだと思える。9mmの曲はやはり9mmだからこそ作れるものであるし、この4人が演奏すればどんな曲でも9mmの曲になる。
それは誰か1人でもいなくなったら成立しなくなってしまうということでもあるが、メンバーは近年インタビューで
「目標はこのバンドを続けること」
と揃って口にしている。このバンドを続けるということはそのままこの4人でい続けるということ。きっと我々よりもメンバーの方がこの4人でいることによって生まれる魔法があることをわかっている。
昨年もあらゆる場面で演奏されてはファンに力を与えてきた「名もなきヒーロー」は間違いなく9mmの新しい代表曲であるが、
「生き延びて会いましょう」
というフレーズがくれる希望の力の強さ。きっと10年前の9mmだったらこの状況下でライブを見てもこんなに力をもらえることはなかったかもしれない。こうした曲ができた、様々な経験をしてきた。そういう今に至るまでの活動の全てが我々に力をくれる要素となっている。
滝は我々に手拍子を促すようにギターを手で叩いていたが、そんな姿を照らす照明は無観客ライブのものとは思えない迫力だ。照明を担当するスタッフも含めた全員がこの9mmの日のライブを特別なものにしようとしている確固たる意志を光の一つ一つから感じる。
卓郎が「イェー!」と叫んでから演奏された「Black Market Blues」では
「Zepp KT Yokohamaに辿り着いたならー!」
と歌詞を変えて歌われるが、滝の暴れっぷりを見ていると観客がいてもいなくてもこの男は音を鳴らしていれば変わらないんじゃないか、とも思う。
「マジで大雨なの?じゃああれが欲しい!」
と卓郎が口にしてから演奏されたのは光の雨が降った後に現れるのを待つかのような「太陽が欲しいだけ」。
例えばかつて「Revolutionary TOUR」のZepp Tokyoワンマンの時も、ライブが終わって外に出たら雨が降っていた、ということがあった。ライブが終わって外に出る観客たちが口々に「傘ないよ〜」とか言いながら帰路へ向かっていく。そんな光景も今は見ることができないけれど、明日はきっと晴れているような。かつてこの曲を野外フェスで演奏した時に、分厚い雲が一気に消えて太陽が現れたという、この曲が呼び寄せた奇跡を思い返すと、そんな風に思えてくる。
そしてラストは滝の復活を告げるタッピングと、視聴していたスマホのスピーカーが壊れるんじゃないかと思うくらいの爆音に包まれた「ロング・グッドバイ」。卓郎のボーカルもこの段階になっても不安を全く感じさせない伸びを見せると、ステージ上からはスモークが噴き出し、和彦は右手でベースを高く掲げた。それは配信であれど、画面の向こうでこちらも右腕を高く挙げたくなるような、完全勝利を告げるかのようだった。卓郎がいつものように客席のあらゆる方向に丁寧にお辞儀することがないのはやはりそこに観客がいないからだろうか。
ステージ背面の「カオスの百年」のロゴにバンド名が筆記体で被さるように浮かび上がると、アンコールとして再びメンバーが登場。
卓郎は自ら拍手してアンコールに応えたのは、メンバー自身ももっと演奏したいという思いの現れだろう。
「俺たちは演奏がしたいバンドだから」
という卓郎の言葉はそれを証明するかのようだったし、
「行けるかー!」
を3連発するまでもなく臨戦態勢のバンドは4人だけで「Lovecall From the World」をあっという間にぶっ放すと、ラストはこれぞカオスというメンバーの暴れっぷりと爆音、轟音の「Punishment」。なのに演奏が終わった後には爽快感に包まれているのが9mmのライブだ。それは配信であっても変わらなかった。その感覚が我々を「何に対してかわからないけど今日は勝った」という気持ちにさせてくれるし、それが何よりも明日への活力になる。かみじょうの去り際の投げキスはメンバーも我々と同じ気持ちなんじゃないかと思わせてくれた。
この日、半分くらいの曲を4人だけで演奏した。サポートの2人はきっと頼めばどんな曲だってやってくれる。彼らはともに9mmのファンの1人でもあるから。でもやはり9mmの曲を生み出した4人だけでライブができる曲が増えれば、これから先きっとまたもっといろんな曲が聴けるようになる。(それこそ卓郎が言うようにレア曲縛りのライブなんかも)
「いろんな曲が聴きたい」と思うのは、あらゆる曲がイントロを聴くだけでわかるくらいに聴き込んできたから。それはきっとこの配信ライブを見ていた人たちはみんなそうだろう。それだけ聴き込んできたのは、やはり9mmの曲がそうしたくなるくらいに名曲ばかりで、それを生で聴きたいくらいに9mmが素晴らしいライブバンドとして生きてきたから。
きっと、この状況が明けたらいろんな場所でライブをしてはセトリを変えるような、かつての9mmを見れるようになる。それこそが我々が待ち望んでいたものだ。その日まで、生き延びて会いましょう。
1.(teenage)disaster
2.Lost!!
3.Vampiregirl
4.The Revolutionary
5.光の雨が降る夜に
6.エレヴェーターに乗って
7.Keyword
8.白夜の日々
9.ロードムービー
10.Calm Down
11.ガラスの街のアリス w/ Ryo Kishimoto (fox capture plan)
12.ハートに火をつけて w/ チャラン・ポ・ランタン
13.カモメ w/ ホリエアツシ (ストレイテナー)
14.Answer and Answer
15.名も無きヒーロー
16.Black Market Blues
17.太陽が欲しいだけ
18.ロング・グッドバイ
encore
19.Lovecall From the World
20.Punishment
文 ソノダマン