千葉きっての老舗ライブハウスである千葉LOOKが千葉にゆかりがあるボーカリストたちを招いて行う「唄声喫茶るっく」シリーズ。
かつてはねごと解散発表前だった蒼山幸子が名を連ねたりもしていたが、今回は
村松拓 (Nothing’s Carved In Stone)
佐々木亮介 (a flood of circle)
宍戸翼 (The Cheserasera)
という3人に。すでにこの3人で千葉LOOKではライブを行っているが「出張編」として今回の会場は渋谷CLUB QUATTRO。このご時世と弾き語りライブというのもあって、客席には椅子が並べられているという着席スタイルであるが、かねてから「柱が邪魔」というネタで音楽ファンが盛り上がれる渋谷CLUB QUATTROということを考えると異様な光景とも言える。
・taito
この唄声喫茶シリーズは千葉LOOKだけではなく、そのメンバー(と千葉LOOKのサイトウ店長)で東北にもツアーに行っているが、その際に大船渡にある、東北ライブハウス大作戦によって作られたライブハウスにオープニングアクトとして出演していた19歳のシンガーのtaitoがこの東京にもオープニングアクトとして出演。
どうやら岩手から東京に状況してきたばかりだというが、そのハイトーンかつ伸びやかな唄声は美しさと力強さを兼ね備えている。先輩出演者たちのようにロックンロールさを感じさせるような歌声ではないけれど、だからこそ透き通った声がスッと耳から体に入ってくるし、その見た目と立ち振る舞いの幼さも含めて、この出演者たちに見染められたのはただひたすらにその歌声を評価されてのものだろう。
10分ほどという実に短い時間だったが、これからどう成長してどんな歌を歌うようになるのかが楽しみな存在だ。悪い大人に騙されたり利用されたりしませんように、と思ってしまうくらいに無垢な少年そのものだった。
・宍戸翼 (The Cheserasera)
千葉県成田市出身であり、千葉LOOKのスケジュールにもよく名前が載っている、The Cheseraseraの宍戸翼が1番後輩ということもあり、3人の中のトップバッター。ちなみにThe Cheseraseraはリズム隊がかつてクリープハイプのメンバーでもあっただけに、当時のクリープハイプはThe Cheseraseraとボーカルが違うだけという実に歪なバンド同士であった。
前髪がピシッと揃っている、いわゆるマッシュと言っていい髪型は今時のロックバンドのボーカリストといった感じであるが、どことなく錦戸亮を思わせる顔立ちは髪型に惑わされることもないくらいに実に端正である。
「東北を回って東京に戻ってきたので」
と言ってからアコギを鳴らし始めると、CDを何枚か持っているので曲は聴いているがバンドでもライブを観たことがないだけに、弾き語りはどのようなスタイルなのか、と思っていたのだが、アコギを強めにストロークすることで「東京タワー」「物語はいつも」という曲からはロックバンドのボーカリストならでは、The Cheseraseraというバンドならではの焦燥感や疾走感を感じさせる。決してハイトーンになりすぎない、憂いを帯びた宍戸の声もそのイメージを強く浮かび上がらせてくる。
こういう状況下であるだけに、弾き語りだからみんなで一緒に歌う、ということもできないため、千葉LOOKのサイトウ店長(この日はなぜかローディーとしても大活躍)がコロナ禍だからこそ編み出したという口を開かずに口ずさむハミングで観客と一緒に歌い、さらにリズムに合わせたフットスタンプと手拍子という
「QUEENの丸パクリ」
という形で観客も参加しての「幻」と、ストイックなバンドのイメージ以上に観客全員でこの日を楽しんでいこうという姿勢を感じる。
「こうして人と人が距離を取らないといけない世の中だから」
という思いがタイトルに込められた、ライブ会場と通販限定でリリースされたばかりの新作ミニアルバム「Mouth to Mouth」からは「ひとりごと」を披露。ひとりごとというタイトルではあるが、それは誰かに語りかけているということがわかる歌詞であるだけに、ここからは序盤とはまた違った切なさを強く感じさせる曲が続くのだが、それは「最後の恋」というタイトルの曲からもよく伝わるし、今が秋という切なさや寂しさを感じやすい季節だからという要素もあるかもしれない。というよりもこうして聴いているとThe Cheseraseraは数少ない秋という季節が似合うバンドなのかもしれないとも思う。弾き語りという形態だからそう感じるのかもしれないけれど。
このライブの前には村松拓と佐々木亮介とtaitoと一緒に磯丸水産(QUATTROのすぐ近くにある)に行って飲んでおり、その後にコンビニに入った時にこのメンバーでいる空気を
「なんかバンド始めた少年みたいだな」
と感じたという。
東北をツアーしたことも含めて、決して短くはない(もう10周年を超えている)バンド人生の始まりの頃を思い出していたのかもしれない。だからこそ、そんな青春期のことを歌った「Youth」は今なお蒼さに満ち溢れている。
そして最後に聴いてくれている人に寄り添うように歌ったのは「賛美歌」。QUATTRO特有の無数の照明たちがあらゆる色彩を持ってタイトル通りに神々しく宍戸の姿を照らす。
「だけど僕は今も忘れない
胸をたぎらせた僕たちが
語り明かした日々を」
というフレーズは、
「今日は楽しいことは全部ライブハウスにあったっていう意味を込めて歌う」
と言っていた、宍戸の心境そのもののようだった。弾き語りだけではなくて、近いうちにThe Cheseraseraのバンドのライブも見てみたいと思った。
1.東京タワー
2.物語はいつも
3.幻
4.ひとりごと
5.最後の恋
6.Youth
7.賛美歌
・村松拓 (Nothing’s Carved In Stone)
何やら場内に
「ウッス!ウッス!ウッス!ウッス!」
という奇声が響いており、「今日ちょっとヤバイ奴が来てるな」と思ったら声の主はステージに向かって歩いているNothing’s Carved In Stoneの村松拓であった。
自分が以前に観た「唄声喫茶」のライブでもアンコールで完全に泥酔してはなぜかアントニオ猪木のモノマネをずっとやっていて収拾がつかなくなっていたが、今日もやはり嫌な予感がしてならないオープニングである。椅子の横にはやはり缶ビールも常備されている。
しかしアコギを手にすると一転して真剣な表情になり、弾き語りシングルに収録されるというバンド以外の活動の広さへと踏み出した「アスピリ」、Nothing’s Carved In Stoneの始まりの曲の一つであり、
「遠く離れた友達への歌」
と紹介された「Diachronic」と、宍戸とは全く異なる、弾き語りだからこそバンドとはまた違った曲の魅力を引き出すという丁寧な歌い方になっているあたりはもはや完全にベテランと言っていい立ち位置であり、この日も最年長という経験がなせるものだろうか。しかしこうして弾き語りしている時の横顔を見ると、バンドでのライブの時以上に、自他共に認めるそっくりさんである、銀シャリの鰻和弘に酷似しているように感じて笑えてきてしまう。
言葉を挟まずに何やら歌い始めたので、今日はライブは真剣にやるパターンか?と思っていたら、口ずさんでいたのは「北の国から」のテーマソングだったので客席は爆笑。その歌う様子を見ていると、どこか田中邦衛のモノマネをしているようにすら見えてくるが、その歌い方がだんだん美輪明宏のモノマネに変化していくというネタを繰り出してくるものだから、マスク越しであっても笑うなという方が無理である。
いわく、東北ツアーでも弾き語りで手拍子とかハミングとかを自分はやらなかった。そういうタイプではないと。だけど美輪明宏のモノマネを習得したという意味不明すぎるツアーでの技術の向上っぷりである。
どうやら千葉LOOKのライブの楽屋で
「CMソングを作る人は凄い」
という話になり、その流れで「ミルキーはママの味」を美輪明宏のモノマネで歌ったらやたらとハマったということで、東北でのツアーで磨きをかけてきたらしい。ちなみに「ミルキーはママの味」を歌っているのは美輪明宏ではない。
そうして笑わせまくった後に、
「東北に行くとやっぱりいろいろ思うことがある。大切な人、家族のこととか」
と言って「家族の歌」と紹介された「Adventure」を歌うというこのギャップの凄さはもはやズルいとすら言いたくなってしまう。
さらには、
「こうしてお客さんの前でライブをやるのも久しぶり。きっと久しぶりにライブに来たっていう人も多いんじゃないかと思う。
俺らもバンドとしては全然ライブできてなかったんだけど、11月15日に久しぶりに有観客でバンドでライブをやります。でもそれを観に来れないっていう人もいると思う。だから11月15日にちなんだバンドの曲を」
と言って、初期から今に至るまでバンドの代表曲であり続けている「November 15th」を歌いあげるように弾き語り。酔っ払っているように見えるが、歌唱力がさらに向上しているというのは美輪明宏のモノマネで会得したものは無駄ではなかったということだろうか。バンドのライブに行けない人を気遣う優しさもまたその声にはしっかり含まれているように感じる。
しかし東北に比べたら美輪明宏があまりハマらなかったらしく、逆にこの後に出てくる佐々木亮介のマネをしてa flood of circleの「スーパーハッピーデイ」を歌い、やはり爆笑を巻き起こす。さらには
「佐々木亮介はライブ中、マイク使わないで歌いますから」
とまで宣言して後輩のハードルをやたらと上げまくる。
そんな中でも、
「コロナ禍にあって、書けて良かったと思った曲を」
と決めるところは決めるとばかりに最後に歌ったのは、バンドの新録ベスト盤に収録された「Dream in the Dark」。
「Run through the night. Baby…
どこかの街の太陽
想い告げ会おういつか
その日を見て
輝くんだ
変わり続けてでも
歌い続けるよ僕は
ここで君を待つ
Carrying my tears」
という歌詞は計らずとも、このコロナ禍の状況における村松の意思表明のように響いていた。これからはバンドのライブでもこの曲を聴ける機会は間違いなく増えていく。あの超人4人の融合体のようなバンドであるNothing’s Carved In Stoneは今観客の前でどんなライブをやるのだろうか。きっと変わらないようでいて、我々が受け取るものは確実に変わっているはずだ。
1.アスピリ
2.Diachronic
3.Adventures
4.November 15th
5.Dream in the Dark
・佐々木亮介 (a flood of circle)
先週の代々木公園、先々週の千葉LOOKと、こんなご時世であってもなんやかんやで3週間連続で佐々木亮介の弾き語りを見ている。それだけ見ても尚見たいと思うくらいにやはり自分は佐々木亮介が、彼の歌や音楽が好きなのである。
おなじみの黒の革ジャンを着てステージに登場すると、アコギをジャカジャカと弾きながら
「人生なんて全部事故みたいなもん〜。今日のこれも事故みたいなもん〜。配信見てる人が聞こえるかわからないけど、言われたから〜」
とブルースを歌うように自分の今の状況=それはつまり村松拓に「マイクを使わないで歌う」と言われたことを語ると、本当にマイクスタンドを自身から遠ざけて、こんな状況すらも愛すべきことであると歌う、今年SATETSU名義でリリースした「You’re My Lovely Trouble」を歌う。最近の亮介は本当に良く声が出ている。それはすでに酒をかなり飲んでおり、さらにステージでは最近おなじみの自分でトマトジュースを入れて作り出すレッドアイを飲みながらであっても。
「寒くなってきたから」
というフラッドの「ホットチョコレート」はこういう時期によく合う、そして弾き語りという形態にもよく似合う曲であり、バンドではあまりライブでやらないだけにこうして弾き語りを観に来れば聴けるのが嬉しい。
3人で東北を回り、そこでオープニングアクトのtaitoに出会ったこと、そのツアーの道中に海が見える場所で海鮮丼を食べて、それが本当に「YEAHとしか言えないような経験だったことを語る。Go Toするんならば佐々木亮介レコメンドは東北だとも。なかなか遠いけれど、東北ライブハウス大作戦のライブハウスにやっぱり1度は行ってみたいし、そのときにステージに立っているのがこの男のバンドならば、と思う。
そんな亮介自身にとって、一緒にツアーを回った2人や千葉LOOKのサイトウ店長、東北ライブハウス大作戦のライブハウスの店長やスタッフこそが自分にとってのスーパースターである、ということを語ってから歌い始めたのは、フラッドの問答無用の最新作にして傑作である「2020」の「Super Star」。アルバム先行試聴会で聴いた時から素晴らしい名曲だと思っていたが、弾き語りで聴くことによってよりそのメロディが強く響く。この曲はこれからもこうしてライブにおいてどんな形態でも聴ける曲になりそうだ。
「「コロナになってどう変わりましたか?」ってテンプレみたいに言われることが多いけど、俺は何にも変わってないし、世の中も前からずっと狂ってる。
やたらに前向きなこととかは俺は言わないから」
と亮介は言っていたが、やたらと前向きなことを言わないけれど、というか言わないからこそ、ソロでリリースした「We Alright」の、
「We Alright どんだけ間違っても
We Alright どんだけはみだしても
We Alright 味方でいるぜ」
というフレーズに勇気や前に進む力をもらえる。自分にはこの人の音楽があると。それをより強く感じさせてくれる、亮介の思いっきり感情を込めたボーカル。こうしてこの曲を聴いていると、バンドだけでなく弾き語りでもまだまだたくさんライブをやって欲しいと思うし、それを観に行きたい。
その「We Alright」は
「人間は月にだって行ったことあるんだ
さあ行こう」
というフレーズで締められる。亮介が何度となく描いてきた、ロマンチックな楽曲たちには「月」というモチーフがよく使われてきた。
その「月」ではないけれど、「2020」の中でのロマンチック枠を担う「人口衛星のブルース」をもはや弾き語りでやるのを想定していたんじゃないかと思うくらいのハマりっぷり(まだリリース間もないにもかかわらず)で弾き語ると、アメリカ大統領選挙の結果、初の女性副大統領になったカマラ・ハリス氏の演説を見たか観客たちに問いかけ、
「もう西暦2020年なのに、まだ男とか女とか言ってる
もう西暦2020年なのに、まだ白いとか黒いとか言ってる」
と、ソロアルバム制作時にシカゴに赴いてアメリカの空気をリアルに感じてきた身としてその演説を見たことによって感じたことをブルースにして歌うと、最近ライブでは毎回言っている、
「今年ブラックホールが観測されて。オランダで喉に内臓があるって発見されて。凄くない?今になって誰も知らなかった内臓が見つかるんだよ?俺たちまだまだこれからだよ」
とさらに見ている人の背中を強く押すように「Honey Moon Song」を歌った。それはこの夜のエンドロールとして本当に相応しい歌と曲であったが、
「パーティーはこれからだから。終電ある人には申し訳ないけど」
と、これで終わりではないことを示唆した。
この弾き語りでもフラッドからソロ、SATETSUと自身の活動で生み出してきたあらゆる曲をやっていたし、時にはカバー曲をやることもある。
それらは全て音楽性がまるっきり異なるのだが、亮介が歌うとやはり全て佐々木亮介の曲なんだなとわかる。弾き語りという形態はそのアクティブ過ぎる活動が全て同じ線の上で繋がっていることを我々に示してくれる。
1.You’re My Lovely Trouble
2.ホットチョコレート
3.Super Star
4.We Alright
5.人工衛星のブルース
6.Honey Moon Song
いそいそとサイトウ店長をはじめとしたスタッフが転換を始めると、ステージにはマイクスタンドだけではなく、ベースなどが運び込まれてくる。
すると亮介が1人ずつ今日の出演者を招いていくのだが、taitoは自身のライブ同様にアコギを持って登場するも、宍戸はベース、そして村松はカホンを肩で担いで登場してくるというサプライズ。つまりはこの4人でのバンド編成というスペシャルな形となるのだが、まさか村松がリズム隊になるとは。ちなみに担いでいたカホンはフラッドの渡邊一丘のものを借りてきたという。
東北3ヶ所のツアーの際に楽屋にベースがあったりカホンがあったりしてそれぞれがそれを演奏できるということでバンドに発展したらしいが、ツアーを回るたびに1曲ずつ4人でやる曲が増えていったらしく、この日はその集大成的なまさにパーティー。
村松「歌に寄り添うようなカホンを叩きたい」
亮介「何マジのリズム隊みたいなこと言ってるんですか(笑)」
村松「PAさん、ベースの音上げてください」
宍戸「PAさん、カホンの音も上げてください」
亮介「歌に寄り添うって言いながらリズムの音ばっかり大きくしてる(笑)」
と、酔っ払っているのもあるだろうけれど、すっかり絆が強くなったメンバーのトークも冴え渡る中、まずは亮介の弾き語りでも度々セトリに加わるフィッシュマンズ「いかれたbaby」。宍戸のベースこそエレキであるが、アコギとカホンという編成であっても、本家のダブの要素というよりもロックさを感じるアレンジになっているのはやはり亮介の歌声あってこそだろう。揺蕩うというイメージも強い曲であるが、メロディが際立つことによって美メロバラード曲であるかのよう。
このカバーはそれぞれがやりたい曲を選んでいるらしく、宍戸が選んだのは松任谷由美の「Hello, my friend」。宍戸がベースを弾きながらメロディを歌うという器用さを見せると、リリース当時はまだ生まれてすらいなかったtaitoが改めて歌の上手さと声の美しさを感じさせるサビでの歌唱。亮介がファルセットコーラスで黒子に徹しているという点もなかなか見れない場面であるが、最後のサビでは宍戸とtaitoの歌声が重なって至上のハーモニーを奏でていく。いつか野外出張編でこの曲をこうしてこの4人のバンドで観たいと思うほどに。
そんなバンドとしての演奏を支えるのは村松の意外なほどに上手過ぎるカホン。練習していたのか、そもそもその素養があったのか。ボーカル部分は少なめになっているが、この4人での形態がバンドとして成立しているのはこの村松のカホンあればこそである。
そんな中で亮介が選んだのはスピッツマニアとしての選曲である「空も飛べるはず」。それまでは基本的に椅子に座って動かずに聴いていた観客たちも体を左右に揺らしながら聴いている。こうしてこのメンバーたちが歌うこの曲を聴けるという幸せを噛み締めるかのように。
90年代の名曲を歌う会というか、それを掘り起こす会みたいになりつつあるが、村松が選んだのは2000年代リリースのくるりの「ロックンロール」。選曲した村松自身もカホンを叩きながらボーカルを取るが、この曲が持つポップなメロディに乗る切なさを感じさせる歌詞が、この楽しい時間ももう終わってしまうことを予感させてより切なくなってしまう。
taitoに次のライブの予定を聞いたりという後輩の可愛がりっぷりを亮介が見せつつ、村松は亮介になぜ「スーパーハッピーデイ」をやらなかったのかと問い詰めながら、
村松「俺は「Honey Moon Song」が好き過ぎて。今日はもう聴けなかった。好き過ぎて」
亮介「好きならちゃんと聴いてくださいよ(笑)」
と話はとめどなく続いていくのだが、フラッドのマネージャーからは巻きのカンペも出され(もう22時になろうとしていた)、最後に演奏されたのはこのライブとツアーのきっかけを作った、サイトウ店長の選曲であるEagles「Take It Easy」。4人がマイクリレーをして繋いでいくと、最後にはサイトウ店長が編み出したハミングで観客へとボーカルが繋がれる。いつかまたこのメンバーのライブを観るときはハミングではなく、マスクをせずにみんなで歌えるような世の中になっていて欲しいと願わざるを得なかった。
演奏が終わると先輩3人はtaitoとハグを交わし、
「また来年このメンバーでやりたい」
と何度も口にしていた村松は亮介と宍戸にも抱きついていた。普段のバンドとはまた違う充実感を村松も、他のメンバーも感じていたに違いない。それがまたバンドへと還元されていく。3人はずっとバンドマンとして生きてきたから。
千葉県民としてずっと生きてきて良かったと思うことはたくさんある。千葉でいろんなフェスが開催されていたり、千葉出身のバンドのライブを観たりする度に。
千葉LOOKというライブハウスの存在と、このライブ、ツアーも間違いなくその一つだ。村松、亮介、宍戸という3人が持つ千葉への愛や想いを共有することができる。この3人がこうして歌っていることを誇らしく感じることができる。だからこそ、次はまた千葉のライブハウスで。
ギター:佐々木亮介、ギター:taito、ベース:宍戸翼、カホン:村松拓
1.いかれたbaby (フィッシュマンズ)
2.Hello, my friend (松任谷由美)
3.空も飛べるはず (スピッツ)
4.ロックンロール (くるり)
5.Take It Easy (Eagles)
文 ソノダマン