the telephones 「SUPER DISCO Hits 11!!! 〜3Days Show〜」 SEXY (2012〜2019) duo MUSIC EXCHANGE 2020.12.18 the telephones
前日に続いてのduo MUSIC EXCHANGEでのthe telephonesのSUPER DISCO Hits!!!。
前日は「YOUNG」と題され、初期の曲を初期の出で立ちで演奏する日であったが、この日のタイトルは「SEXY」。大人であるということであろうが、あまりtelephonesのイメージにはないような要素であるだけに、前日のセトリを踏まえた上でもどんなライブになるのか想像ができない。
この日も検温と消毒を潜り抜けて、全席指定のduoの中に入ると、19時を少し過ぎたあたりで場内が暗くなり、「Happiness, Happiness, Happiness」のSEが流れてメンバーが登場…すると、石毛と誠治は黒シャツ、涼平とノブは白シャツというSEXYっぷり。白シャツだとスタイルの良さがはっきりとわかるな、というくらいに涼平&ノブはやはりスラっとしている。
そんなSEXYかつ大人なtelephonesの1曲目はこれからも踊り続けるという意志を示すかのような「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」。コーラス部分ではやはり今までのように一緒に歌うことはできないけれど、そのフレーズを歌いながら両手を振って踊るノブは白シャツの胸元のボタンを自身で多めに外すことによってまさにセクシーそのものに。
この時期のtelephonesはメジャーデビューを果たし、シーンを自分たちで変えようと意志を共有した様々なバンドとともにライブイベントを開催したりしていたが、それとともにバンドとして、ミュージシャンとして成熟してきた時期でもある。いわゆるディスコパンクな曲だけではないバンドということを強く打ち出そうとしていたというか。
そんな中でも2014年には「SUPER HIGH TENSION!!!」というそれまでのtelephonesらしさと新しいtelephonesの要素が融合した傑作を生み出しているのだが、ノブが涼平に近寄っていって髪をわしゃわしゃと触る「Take Me Higher」という曲はまさにそんな傑作を代表するような曲である。
そんな中に活動休止前のラストアルバムとなった、2015年リリースの「Bye Bye Hello」収録の「Jesus」が挟まれる。逆にこのアルバムはそうしたtelephonesらしさや新しさというものを度外視した、当時のメンバーたちの中から出てきた音楽をバンドとして形にしたという感覚が強いと思っているのだが、そもそもアルバムリリースから活動休止までは数本しかライブをやっていないだけに、「Jesus」は復活ツアー以降は割とよくライブでもやっている曲であるが、このアルバムの収録曲はライブで1度も聴いたことのない曲もたくさんある。それがこれから先に聴けるようになるかもしれない。リリース時はネガティブに捉えがちだった存在のアルバムを、今は100%ポジティブに捉えることができる。それは充実感を感じさせてくれるメンバーの表情や演奏が引き出してくれるものでもある。
前日もそうだったが、今年リリースされたアルバム「NEW!」の曲は各日に数曲ずつ演奏されていくようで、この日最初に「NEW!」の中から演奏されたのは赤い照明に照らされながら、石毛がギターを抱えてジャンプする「Clumsy」。アルバムの中では後半に位置する曲であるし、だからこそ安心感を与えてくれるタイプのダンスロックなだけに、こうしてライブの前半に演奏されることによってまた違ったイメージを抱く。後ろでどっしりと構えているようなタイプの人が実は特攻隊長だった、みたいな。
MCでは果たして誠治はSEXYなのか?といういじりから、石毛は
「今日来てくれている人は本当にtelephonesが好きな人なんだなって。よく初期曲ファンっていうこともあるけど、俺たちもそういう初期曲ファンみたいなのがあって…って最後のMCで話すみたいなこと言ってるな(笑)」
と、なかなか評価されなかった時期の曲を演奏するライブであることを告知していた日だけに、こうしてこの日に、しかもこうした状況の中で観に来てくれている人たちへ深い感謝を語っていた。もちろんこの時期の曲が好きで、この日のライブを本当に見たかったけれど行けなかったという人もたくさんいるだろうけれど。
前日はいわゆるDISCO曲をほとんどやっていないので、この日も基本的にはそうしたDISCO曲以外を演奏するのだろうなと思っていたのだが、石毛がギターを下ろしてハンドマイクになると、ライブではほとんどやらないDISCO曲である「Romantic Disco」へ。
石毛はハンドマイクであるだけにいつも以上にステージを歩き回りながら歌い、涼平のそばに寄って寝転がったりポーズを取ったりするというセクシーなパフォーマンスを見せ、「I’m In Love With You」「Starship Romance」という「SUPER HIGH TENSION」収録の、決してアッパーではない、踊りまくるというよりも体を揺らすというタイプの曲が続く。
これらの曲から感じるような、具体的な情景やMVになっていてもおかしくないようなロマンティックな(曲タイトルにもなっているけれど)なムードは初期の曲にはなかった要素なだけに、まさにSEXYな年代になるにつれて獲得してきたものであるだろうし、サウンドにしてもライブでもメンバーの生音だけではない同期の音を誠治のパッドから発したりという新たなトライアルが見えるし、何よりも軽やかにステップを踏むように弾く自身のベースでバンドをグルーヴさせていく涼平のベーシストとしての覚醒を感じられる時期でもある。初期から「electric girl」などの独特なベースラインでtelephonesのダンサブルなグルーヴを担ってきた男であるが、フレンズでの多彩なリズムアプローチを発揮する初芽がすでにこの頃にあったというか。ノブはそうした曲でも変わらずに踊り続けており、1人だけYOUNGとSEXYを兼ね備えた存在であると言える。
そんなグルーヴの申し子と言える涼平は最新作「NEW!」では1曲作曲も手掛けている。初期の「Homunculus」を彷彿とさせるイメージのサウンドの「Sleep Walk」だ。歌詞は石毛が英語歌詞に翻訳したということらしいが、他の曲とは違うネガティブさをそのまま出した歌詞は涼平らしさが出ているし、この流れで演奏されるのが実によく似合う。
「It’s like I’m sleepwalking」
というフレーズとともに耳に飛び込んでくるシューゲイザー的な石毛のギターのサウンドはまさに白昼夢のような感覚を与えてくれる。
そんな曲を作った涼平をノブは
「演奏しているときにフッと見たらめちゃくちゃイケメンだなって」
となぜかメンバー間で褒め合いながら、「It’s Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)」でここからは踊らせまくるとばかりにこの時期にリリースされたアッパーな曲へ。初期の曲に比べるとやや不規則なリズムの手拍子にもしっかり対応するファンの楽曲の理解度も実に頼もしいが、「3,2,1 right now!!!」というカップリング曲というレアな位置の曲すらも演奏してくれるというバンドの頼もしさがあってのことだろう。この日1番驚いたのはこの曲かもしれない。
イントロで石毛が誠治のドラムセットの方を向いて踊りまくる「Last Night」は「Bye Bye Hello」の収録曲であるだけに初めてライブで聴くという人も多かったはず。同期のサウンドも使いながらも、間奏やアウトロではセッション的と言えるくらいに激しい演奏になるのが意外な発見であったが、それはtelephonesがあくまでもロックバンドであるからである。
そんなロックバンドとしてダンスミュージックを演奏するという新しい形に挑んだのが「NEW!」収録の「New Phase」。石毛がヴォコーダー越しのボーカルで
「Do the right thing」
と同じメロディを繰り返しながら、バックの演奏はどんどん変化していき、最終的には誠治のドラムをはじめとしてかなり激しいロックサウンドになっていく。telephonesらしさを感じる曲もあるけれど、この曲が「NEW!」のタイトル通りの新しさに繋がっていると思う。ノブのロボットダンス的な動きを含めて。
この日は石毛がMCが実に噛み気味だったのだが、とりあえずはこの時期の曲を今は本当に楽しく演奏することができているし、観客もそれを楽しんでくれているのが嬉しいとのこと。そこにはやはり様々な葛藤がこの時期には浮かび始めていたことを感じさせるが、それでもこうして当時の曲をライブで聴いていると、確かに見ている側も最もいろんなことを考えながらtelephonesのライブを見ていた時期だったけれど、今思い出すのはかつての楽しかったライブの記憶ばかりだ。
声を出すのはNGだけれど、高く跳ぶことならできる!とばかりに「Hyper Jump」で指定席ながらもジャンプさせまくると、ロマンチックの極みというか、こうしたラブソングと言ってもいいような歌詞の曲が出てきたのもこの時期を象徴していると言える「Ex-Boyfriend」の音源よりもはるかにアッパーな演奏がさらにバンドと客席に火をつけ、一緒に歌うことはできなくても、ノブがステージを走り回りながら、バンドがこの曲を演奏している姿を見ているだけで心から楽しくなれる「Pa Pa Pa La Pa」という選曲でこの日のライブにおける緩急の急の部分に突入していく。
「久しぶりの日本語の曲!」
と言って演奏されたのはもちろん「D.E.N.W.A.」であるが、こうして久しぶりにライブで聴くと、この曲がリリースされた当時の衝撃を思い出す。「あのtelephonesが日本語歌詞!?」とファンですらざわついたし、やはりそこはいわゆる普通の日本語歌詞ではない、telephonesだからこその日本語歌詞だったのだが、バンドの歴史や曲タイトルを当てはめた歌詞は今になると本当によくこうした歌詞を書けたなと思う。そこが評価されることはなかったかもしれないけれど、間違いなくこの歌詞は他のどんはバンドにも書くことはできない。
「これからもずっとDISCOし続けようぜー!」
という言葉がこんな時代や状況だからこそ、かつてないほどに響くのは「Keep Your DISCO!!!」である。telephonesがこれからも音楽を鳴らし続けていくという意志。ただ単に活動再開した方が人気あるし儲かるからというだけの活動再開だったとしたら、この時期にこうしてライブハウスでライブをやるという選択はしないだろう。そこには今だからこそ音を止めてはいけない、音楽やそれに関わる人が生きる場所や職を失ったりするようなことがあってはいけないという強い意志があるはず。だからこそDISCOし続ける。サビの
「You can change the world」
のフレーズで石毛は
「みんな本当にありがとうー!」
と叫んだと思ったら、曲最後のそのフレーズでは
「マジで世界を変えようぜー!」
と叫んだ。その言葉の意味は=シーンを変えるということだった当時とは違う。人それぞれの正義や価値観がぶつかり合ってしまう鬱屈した今のこの世界を変えるために。もしかしたら、この時代にtelephonesが戻ってきたというのは必然だったのかもしれないとすら思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは「Something Good」。活動休止が発表されて以降のライブでもよく最後に演奏されていた、当時はバンドの終わりを感じさせてしまっていた曲が、今はこれからもこの「何か良いもの」を確かに持っているバンドが続いていくための曲として聴いていることができる。そうして向き合えるようになったということの喜びや幸せを噛み締めていたら感極まらざるを得なかった。
アンコールでは前日同様にメンバーが今回のライブの物販Tシャツなどに着替えてから登場すると、この日も観客によるリクエスト曲を演奏するコーナーに。
この日は最前列にいた、新しい物販のロンT(涼平がアンコールで着ていたもの)を着ていた女性に聴きたい3曲をボードに書いてもらうと、ノブがその曲たちを見ただけで
「これはヤバい!(笑)」
と素直すぎるリアクションに。その3曲は
「Yesterday, Today, Tomorrow」
「Let’s Talk About Music」
「I’ll be there」
というマニアックな極まりないチョイスであり、メンバーが会議した結果、
石毛「歌だけしかわからない曲があるし、ギターだけしかわからない曲がある(笑)」
というこの3曲は無理ということになってしまう。3曲のうち2曲はかつてはライブでやっていた曲でもあるのだけれど。
なのでその人に追加でやって欲しい曲を書いてもらうのだが、やはり追加した曲もほとんどライブではやっていない曲ということで、長いメンバー会議に加えて、石毛はスマホを持ってきて歌詞をチェックしてから演奏されたのは、普段は入場時のSEとして使われている「Happiness, Happiness, Happiness」。毎回聴いている曲だけれど、こうしてライブで曲の最後まで聴くのは本当に久しぶりだ。ところどころ歌詞が怪しいところもあったとはいえ、この曲を聴くとまたここからライブが始まるかのような感じがしてくる。つまりはもっとライブが見たくなるというか。
そうした緊張感から解き放たれたかのように最後に演奏されたのは「Odoru 〜朝が来ても〜」。石毛は前日に続いて3月からツアーが始まることを告知しながら、最初は低い声で、曲後半はいつものハイトーンボイスでと使い分け、リリース当時は風営法に向けて歌われていたこの曲が、今は音楽業界や世界を覆う暗いものに対して歌われている。
「踊ろう いつまでも 朝が来ても いつか夢の続きは訪れるさ」
というフレーズはtelephonesは音を止めずにこうして踊り続けていくという意志をどんな言葉よりも雄弁に示していた。
この時期の曲をリリースした当時、telephonesは本気でシーンを変えようとあらゆるものと闘っていた。自分たちの音楽だけではなく、ロックシーンそのものを背負おうとしていた。フェスバンドとも言われ、苦悩しているであろう姿も見てきた。
でもそんな時期の曲たちを、今は心から楽しんで演奏し、そのメンバーの姿を我々は楽しんで見ることができている。活動休止から戻ってきていなかったら、きっとこんな風にこの時期の曲を聴くことなんてできなかった。
だから、戻ってきてくれて、この日のようなセトリのライブをやってくれて本当にありがとう。
1.Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
2.Take Me Higher
3.Jesus
4.Clumsy
5.Romantic Disco
6.I’m In Love With You
7.Starship Romance
8.Sleep Walk
9.It’s Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)
10.3,2,1 right now!!!
11.Last Night
12.New Phase
13.Hyper Jump
14.Ex-Boyfriend
15.Pa Pa Pa La Pa
16.D.E.N.W.A.
17.Keep Your DISCO!!!
18.Something Good
encore
19.Happiness, Happiness, Happiness
20.Odoru 〜朝が来ても〜
文 ソノダマン