懸念点は一つだけ。昨年この年間ベストで1位に選んだ「2020」があまりに凄すぎただけに、それと比べたら見劣りしてしまうかもしれないということ。
しかしながら佐々木亮介の弾き語り的なアルバムタイトル曲で始まり、先行公開された2曲目の「北極星のメロディー」のイントロを聴いた瞬間に涙が出てきそうなくらいのカッコ良さを感じる。フラッドが好きでいて良かったと。つまりは「2020」が良すぎただけに見劣りするかもしれないというのは全くの杞憂だったわけである。
それはそのままフラッドファンの熱さにもつながる。決して東京公演のチケットが取れないわけでもないのに、地方も含めてツアーに何本も参加したりという、フラッドが見たくてたまらない、聴きたくてたまらないという感覚。それを呼び起こしているのが楽曲としての、作品としてのクオリティの高さあってこそだ。
佐々木亮介はソロではR&Bやヒップホップの影響が色濃い音楽も作っているが、フラッドでは敢えてそうした音楽からの影響を省いた、ロックンロールとブルースという軸に忠実な音楽を作り続けている…というのは去年の「2020」でも書いたことであるが、なぜそうしているかというと、ロックンロールが、ロックバンドが、フラッドが世の中のどんな形態よりもカッコいいという確固たる自信を持っているからだ。もう若手でもなければ話題になることもそうそうない、でも全てのロックファンに届いて欲しい作品と存在。
「本当に見たい未来
辿り着くのはきっと
諦めずに最後まで
歩いた君だぜ」(「セイントエルモ」)
フラッドならその未来にたどり着くことができるって、諦めずに信じている。こんなアルバムを作ってくれているから。
/ 2022/04/07