2010年に富士スピードウェイで産声を上げた、ロッキンオン主催のフェス、JAPAN JAM。2011年以降はゴールデンウィークに幕張メッセ→新木場STUDIO COAST→幕張海浜公園と場所とともにフェスの内容も変わりながら開催され、この千葉市蘇我スポーツ公園に移ってからは3年目を迎える。
前日はVIVA LA ROCKが4日間開催になったことでこのフェスと被っていなかったのだが、この日からの3日間は両フェスが同時に開催される日程になっており、この日選んだのは3日間開催の初日となるこちらのJAPAN JAM。
こちらは会場レイアウトに大きな変化はなく、真ん中のSKY STAGEを挟むようにSUNSET STAGEとLOTUS STAGEが配置され、どれもキャパは3万人クラス。SUNSET STAGEとLOTUS STAGEはライブ時間が丸かぶりだが、SKY STAGEは被りがないためにメインステージ的な捉え方をされている。
今年からは主に休憩スペースとしてであるが、隣接するフクダアリーナのスタンド席も全開放され、さらなる動員の増加に対応しようというフェス側の姿勢が見える。
・10:30〜 THE BAWDIES [SUNSET STAGE]
かなり早い時間にメンバーが出てきてサウンドチェックとして曲を演奏しながら、
MARCY「ちょっとボーカル下げてもらって…」
ROY「なんでボーカル下げるんだよ!」
というやり取りで朝から爆笑を巻き起こした、THE BAWDIESがSUNSET STAGEのトップバッター。
SUNSET STAGEはロッキンオン社長である渋谷陽一が前説をするのだが、2年前のこの会場で初開催された時の砂埃の凄さを映像で見せ(当時SKY STAGEは下が土であり、風が強かっただけに砂埃が凄かった)、そこから千葉市と協力してこの公園の全面芝生化を実現させたことを話す。この話はロッキンオンが千葉市に多額の寄付をしたことで、「ロックが救った!」というニュースにもなった。
その渋谷陽一へ
「盛り上がらなかったらぶっ殺す!」
というメッセージを託したTHE BAWDIESがおなじみの「SOUL MAN」のSEでステージに登場。
「初っ端から花火みたいに飛び上がれますか!?」
とROYがテンション高く煽り、「花火みたいに」という言葉から「YOU GOTTA DANCE」かと思いきや、いきなりの「JUST BE COOL」。普段は叫ばないこの曲でもROYは続く「IT’S TOO LATE」と同じような超ロングシャウトを轟かせる。
「5年連続、6回目の出演です!もうタイムテーブルのTHE BAWDIESの名前を、Mr. JAPAN JAMに変えておいてください!」
というこのフェスに出続けてきたからこその自信と誇りを感じさせると、
「ハッピー令和!HAPPY RAYS」
と言ってバンドの15周年を記念した日本武道館ワンマン前にリリースされた「HAPPY RAYS」へ。この日のセトリのなかでは唯一の聞かせる曲と言ってもいい曲であるが、「LEMONADE」も「THE SEVEN SEAS」も「SUNSHINE」も良い曲ではあるが(そもそもTHE BAWDIESにはどう聴いても良い曲しかない)、このタイプの曲はリリース直後はフェスなどのライブでもやる機会は多くても、少し経つとワンマン以外ではセトリから外れてしまう。なかなかフェスなどの短い時間のライブではアッパーなロックンロール以外は流れ的に入れにくいかもしれないが、THE BAWDIESのメロディアスな部分を知ってもらえるのはこういうタイプの曲だと思うだけに、1曲はフェスなどでもできるような持ち時間を貰いたいところである。
小芝居の準備をしてから始まった「HOT DOG」劇場は今回は
コナン=JIM
毛利小五郎=ROY
目暮警部=TAXMAN
死体=MARCY
という配役の名探偵コナンバージョンで、これは過去にも何回かやってるものなのだが、自作のデカい蝶ネクタイに丸メガネというコナンルックになったJIMは珍しい主役だからかセリフが全部頭に入っておらず、最後にはギターを担ぎながらカンペをガン見してセリフを喋り、その姿に客席は爆笑していたし、その笑いの要素が「HOT DOG」の演奏と客席の熱量をさらに高めていた。
「SING YOUR SONG」で止まらない合唱を巻き起こすと、これまでは序盤に演奏されることが多かった「NO WAY」をこの後半で演奏。やる曲自体はほとんど変わらないが、曲順を入れ替えることでライブの流れはかなり変わる。(それは後半にやることが多い「JUST BE COOL」をいきなり演奏したことから感じていたが)
その流れの切り替え具合は新たな年号を迎えたことによるものだろうか。
そしてラストは手拍子とコール&レスポンスを巻き起こす「KEEP ON ROCKIN’」。最初はレスポンスが小さくて、小さいところから徐々に大きくしていって気づいたら振り切れてるというやり直しももはや小芝居化しているところもあるが、最近は「TWISTIN’ ANNIE」を最後にやることも多かっただけに、この使い分けは如何に。アラバキの時も最後は「KEEP ON ROCKIN’」だったが。
演奏終了後には6月から始まるツアーの告知をしつつ、時間がちょっとだけあるのでTAXMANによる恒例のわっしょいも。Mr. JAPAN JAMの6回目の出演は最高の1日の火付け役となったし、やっぱり「わっしょい」を最後に見れるとここがバンドにとってホームな場所なんだと感じることができる。
終わった後にステージ移動しようとしていたら、後ろにいた、THE BAWDIESを初めて見たであろう人たちが
「カッコいいのに面白いね〜。凄いね」
とライブの感想を言い合っていた。
もう結成15周年、メジャーデビューからも10周年となると中堅の位置まで来ているし、同世代にはこのバンドのようにガンガンフェスに出るような活動をしていないバンドもいる。
でも、まだまだこのバンドのロックンロールに出会ってない人がたくさんいる。1人でも多くの人にロックンロールのカッコよさに気づいてもらうために、このバンドはこれからもあらゆるステージに立ち続ける。
リハ.A NEW DAY IS COMIN’
リハ.KICKS!
1.JUST BE COOL
2.IT’S TOO LATE
3.THE EDGE
4.HAPPY RAYS
5.HOT DOG
6.SING YOUR SONG
7.NO WAY
8.KEEP ON ROCKIN’
11:15〜 NICO Touches the Walls [SKY STAGE]
SKY STAGEのトップバッターは、かつてこのフェスで「通常のバンド編成とアコースティック編成」の2パターンを同じライブでやる、というコラボではないけれど特別なライブをしたこともある、NICO Touches the Walls。現在絶賛ツアー中である。
SKY STAGEに着いた瞬間にビックリした。去年までのこのフェスではback numberやマキシマム ザ ホルモン、あるいはサカナクションというあたりのモンスタークラスの集客力を誇るバンドたちじゃないとここまでは集まらないだろうというくらいに超満員の人が集まっていたからである。正直、毎回ツアーに行っているくらいのバンドだから、現在の動員力も知っている。だからタイムテーブルを間違えてしまったのかと思ったが、メンバーが登場して、長髪にサングラスという出で立ちの光村が
「我々の地元である千葉県へようこそ!」
と挨拶してアコースティックでのアレンジも取り入れたであろう、ややゆったりとした演奏になった「天地ガエシ」でスタートして、スクリーンに客席前方の様子が映ると、そこにはNICOの普段のライブでは絶対にいないような、紫や赤や黄色の鮮やかな服を着た観客の方々。ああ、ももクロファンのモノノフの方々が早くから待っているからこんなにたくさん集まっているのか、と一瞬で全てを理解した。確かに駅から会場へ向かうまでの道は明らかにももクロのファンでしかないような人たちをたくさん見た。
しかしそれで前方がみんな棒立ちで満員だけど全く盛り上がっていないという状態だったらちょっとキツいというか残念だなと思うところなのだが、ちゃんと曲を予習していたのか、とりあえず盛り上がれる曲は盛り上がるというその場に合わせた礼儀を心得ているのか、「VIBRIO VULNIFICUS」も普段のフェスで演奏する時よりも圧倒的に盛り上がっていた。その様を見ると、NICOファンだけが集まっているわけではないのはわかっているけれど、NICOはまだまだいけるじゃないか、と思わせてくれる。
6月にニューアルバム「QUIZMASTER」がリリースされることがすでに発表されているのだがその収録曲も披露。最初に演奏された「マカロニッ?」は光村によるコール&レスポンスも含んだロックナンバーなのだが、最初は普通だった光村のコールが途中から難しくなり過ぎてレスポンスができないという展開になり、客席からは苦笑が漏れる。それは改めて光村の歌唱力の高さを示すものになっているが。
NICOはライブでは既存曲にアレンジを加えまくっているので、セトリだけ見てもライブの内容は全然違うというものになりがちなのだが、この日も「ローハイド」の間奏でメンバーのソロ回しセッション的な演奏を展開する。
さらにメンバーが新しいアルバムの中で1番気に入っているという新曲「18?」も披露。こちらはどこか初期のNICOの雰囲気を思わせるような曲だが、「マカロニッ?」も含めてフェスでいきなりやって盛り上がるようなわかりやすいタイプの曲ではないだけに、今のこのバンドが自分たちだけの道を歩いていることが聴いているとよくわかる。
サポートなしの4人編成であるがゆえにまたアレンジが変わり、ピアノ中心のポップなものからロックンロールさの強いアレンジになった「Funny side up!!」から、ラストは光村がサングラスを外してからの「THE BUNGY」だったのだが、普段をはるかに超えるような盛り上がりはやはり見てくれてる人が多かったからかな、とも思うけれども、ちゃんと手拍子が裏拍だったのがわかるくらいに曲を知っている人がいたのが嬉しかった。
ロッキンもCDJも今はメインステージに出れているとはいえ、ロッキンオンのフェスは実にシビアだから、NICOのファンはいつメインステージに出れなくなるかを心配している。現にNICOと同世代のバンドでメインステージに立っているバンドはもう数組しかいないし、ワンマンの動員だけならNICOを上回る若手バンドもたくさんいる。
でもこうしてメイン(とされている)ステージに出て、こんなにたくさんの人が盛り上がっていたり、「やっぱりNICOってとんでもなくすごいバンドだな…」と思えるような場面を見ると、まだまだこの規模でもいけると思えるし、ここに立っている姿を見ていたいと思う。だから今年のロッキンでもまたGRASS STAGEで会うことができたら。
1.天地ガエシ
2.VIBRIO VULNIFICUS
3.マカロニッ?
4.ローハイド
5.18?
6.Funny side up!!
7.THE BUNGY
12:00〜 ROTTENGRAFFTY [SUNSET STAGE]
今や大型フェスでもおなじみ、京都の5人組バンド、ROTTENGRAFFTY。京都のバンドと言えばこの日のトリである盟友の10-FEETであるが、このバンドも負けないくらいに春から様々なフェスに出演している。
メンバーが登場すると「PLAYBACK」からスタートし、一気に場内はラウドな空気に満ちていく。客席もモッシュとサークルの嵐。普段はダイバーが続出するバンドであるが、このフェスではダイブが禁止されているし、そこに関してこのバンドは否定的なところは全くない。むしろダイブなしでも楽しんでいるこのフェスの観客たちを賞賛している。
ラウドバンドとしてのカッコよさをストレートに感じさせる「STAY REAL」から関西人ならではのユーモアを感じさせる「夏休み」、京都のバンドとして自分たちの地元をレペゼンする「響く都」と、NAOKIとNOBUYAの2人はステージ左右だけでなく前後にも動き回るというハンドマイクでのMCならではのフォーメーションを見せ、髪色が相変わらず金と黒の半分半分という独特なKAZUOMIも時にはギターを放り出して観客を煽りまくるという、どんな時でも80%や90%の平均的に良い点数を出すのではなく、毎回絶対に100点の、持てる全てをどんな場所でも出すというバンドの姿勢を感じさせる。
手を抜いたことは一度もないだろうけれど、長い歴史を持つバンドだけに、ちょっとでも力を抜いたライブをするとすぐにこの場所を失ってしまうというのをよくわかっているバンドなのである。
ラウドであり、ミクスチャーでもあるこのバンドがタイトル通りにダンス要素を全開にした「D.A.N.C.E」では観客を全員座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスも見せると、このバンドの持つ最大のキラーチューンの一つである「THIS WORLD」あたりから、薄々「降ってるんじゃない?」と思っていた雨が降ってきていた。
荒天時の京都大作戦でのこのバンドのライブはもはや語り草レベルであるが、始まるまであんなに晴れていたのが雨になるとは。この時間にcoldrainが会場入りしたから説もあるが、こんな演出は狙っても絶対できないし、雨が降る中でより一層ステージ前に出ていくMC2人の姿からはこんな程度の雨では動じないというくらいの地力の強さと困難を乗り越えてきた経験を感じさせる。
人気アニメの主題歌となった「「70cm四方の窓辺」」では重い音像にこのバンドの持つ美しいメロディが乗ると、
「20年。20年続けてたらこんな景色が見れる」
とたくさんの観客が思い思いに楽しむ光景を見てNAOKIが口にしたが、20年間の間でこうしたフェスから呼ばれなかった年月の方が圧倒的に長かったバンドである。だからこそこの景色を大事にすることができるバンドだと言えるし、そのために自分たちの全てを出し尽くすパフォーマンスを見せる。
「今日の出演者はライブ猛者揃い」
と言っていたが、最後の「金色グラフティー」で巻き起こった大合唱からは、このバンドが間違いなくそのライブ猛者の中の1組であることを示していた。
1.PLAYBACK
2.STAY REAL
3.夏休み
4.響く都
5.D.A.N.C.E
6.THIS WORLD
7.「70cm四方の窓辺」
8.金色グラフティー
12:45〜 04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
昨年はこの時期にアリーナツアーを行っていたのでGENが四星球のゲストとして登場し、バンドでは出演できなかった、フォーリミ。今年は自身主催のYON FESを終えても止まることなく攻めまくる。
オリジナルの賑々しいSEで登場すると、GENが思いっきり振りかぶってから音が鳴らされた「monolith」でスタートし、さらに「fiction」「escape」と新作モードだったアラバキの時とは真逆の、これまでにもこのバンドのライブを担ってきた代表曲的な曲が続く。このあたりのモードの違いはなんだろうか。
「今日は前列にももクロファンのモノノフのみなさんがいますね。リハで曲やってる時に死んだ目をしてましたけど、本番になったら思ってる以上に盛り上がってくれて嬉しいです。でも俺たち、ももクロより可愛かったりするからね(笑)」
というGENのMCは多少なりともモノノフの方々への忠告的な側面もあったと思うのだが、カメラ目線でフェスのタオルを広げてみせるKOUHEIは確かに可愛かったかもしれない。
ショートチューンの「Message」からは最新作「SOIL」のモードへ。「My HERO」とパンク・メロコアな曲が続き、さらにはMVが公開されたのもあるだろうが、「SOIL」のなかでは異色とも言えるような愛猫家のGENだからこそできたであろう「Kitchen」は完全にライブの定番曲になっている。
「さっき予習したでしょ!」
とサウンドチェック時にもやっていた「nem…」で午前中という状態の観客の目を叩き起こすと、最近フェスではあまりやっていなかった「me?」という曲まで演奏される。
今年は春フェスにたくさん出ているし、そこでこのバンドのライブを何回も見るであろう人もいる。そういう人たちに飽きさせないように、自分たちも飽きないようにやる曲を変えるし、すぐに変えることができる状態にあるのはさすがに常にライブをして生きているバンドである。
「普段から考えすぎてるんでしょ!GWくらいは考えすぎないで目の前で鳴ってる音に身を委ねて楽しみましょう!自分自身に生まれ変われ!」
と「Squall」を思いっきり感情を込めて演奏すると、
「日本のロックシーンに光が差しますように!」
と「swim」で終了…かと思いきや、まだ時間があるのでトドメとばかりに「Remember」を追加し、最後の最後に超巨大な左回りのサークルを出現させた。
終盤にGENは
「こんなに盛り上がってもらえるとは思ってなかった。モノノフの皆さん、最高!」
と言っていた。自身でフェスを主催しているだけあって、いつもとは見える景色が違うことに色々と思うところはあっただろうけれど、それを楽しむことができて、これから先の活動に続いていくのならばこの日の経験は大きな財産になるはずだ。このバンドがフェスに出演して得たものはすべてYON FESに繋がるから。
リハ.days
リハ.nem…
1.monolith
2.fiction
3.escape
4.Message
5.My HERO
6.Kitchen
7.nem…
8.me?
9.Squall
10.swim
11.Remember
13:30〜 Base Ball Bear [LOTUS STAGE]
前日にVIVA LA ROCKに出演した際に最後に演奏していた「PERFECT BLUE」をサウンドチェックで演奏していたあたりから、ライブの内容が変わるだろうな、ということを感じさせた、Base Ball Bear。昨年はSUNSET STAGEのトリを務めたが、今年は楽曲のイメージ通りの爽やかな時間帯に登場。
おなじみのXTCのSEで登場すると、前日よりは控えめな堀之内会議から、この日は小出のギターの音がジャーンと鳴り響く「17才」からスタート。前日はこの曲はサウンドチェックで演奏していたが、こうして翌日に本編の1曲目で聴くことができるとは。
3人になったバンドの意思表明と言える、小出→堀之内→関根のボーカルリレーの最新作タイトル曲「ポラリス」を演奏すると、前日は「なぜこのタイミングで?」というメンバーそれぞれの好きな飲み物や特技などを発表する自己紹介があったが、この日はそれはなく
「JAPAN JAM、こんな景色だったんですね。2年前は砂嵐が凄くて全然何にも見えなくて、去年は夜だったんで真っ暗過ぎて何にも見えなくて(笑)
だから今日初めてちゃんと景色を見れております(笑)」
と3年目のこの会場での出演にしてようやくステージから会場や観客の姿を見れたことを語る。確かに2年前は風が強すぎて小出が
「横向いて歌っていい?(笑)」
と言っていたりするくらいに風が強くて、砂嵐が凄かった。さらに
「皆さんには関係ないことではありますが、メジャーデビューからずっと一緒にやってきたマネージャーが今日を持って現場を離れるということで。13年くらいですかね。ずっと一緒にやってきた、最後の日がここになります」
と、この日が今のマネージャーと一緒の最後のライブであることを続けた。
確かに観客にはスタッフ云々はライブに関係ないことだし、このバンドのことを追い続けたりしている人以外は付き合いがどれだけ長かろうと、マネージャーがどんな人なのかも全然知らないことだ。
でもベボベは今までライブでそういう感傷的なことや、最後や終わりを感じさせることをほとんど言って来なかった。それは湯浅がいなくなってしまった直後、見ている側は涙が出そうなくらいの状況であるにもかかわらずメンバーはいたって前向きな姿を見せたり、近しい存在のバンドがいなくなってしまっても悲しんだり寂しがったりするようなところも全く見せなかった。唯一あったと思えたのはサポートギターの弓木英梨乃と最後に4人で一緒にライブをした時に、
「君もBase Ball Bearだ!」
とやはり前向きに、感謝を込めて送り出した時くらい。
そんなバンドが敢えて口にした、節目の日。それは間違いなくバンドの演奏や小出の歌から現れていた。それはそうだ、マネージャーにできる最大の感謝の表し方は、一緒にいれる最後のライブであるこの日に最高の姿を見せることである。
だからこそ関根のベースを弾く姿もいつもよりも躍動感に満ちていたし、小出がヒップホップマナーに則ったコール&レスポンスをしてから演奏された「The CUT」の後に演奏されたのは前日は演奏されなかった「LOVE MATHEMATICS」、さらには「祭りのあと」というこれまでのベボベのライブの重要な場面を担ってきた曲たちだった。
昔、4人だった時代にベボベは今より多くフェスやイベントに出ていたが、その時はびっくりするくらいにやる曲が一切変わらなくて、春から夏にかけてのフェスやイベントに出演するのを追いかけていたファンたちからも
「このセトリ飽きてきてしまった…」
と言われるくらいだった。
でも今は2日連続でのライブで半分くらいの曲を入れ替え、曲だけでなく内容そのものも全く違うライブをすることができる。(マネージャーとの最後というのを別にしたとしても前日とは違う)
それはきっと4人の時ではいろんな理由でできなかった。でも3人になった今はできる。突然の別れはきつかったし、この日のマネージャーのように見送ることもできなかったけど、それを経て3人は本当に逞しくなった。全てが悪いことではなかった。
そう言い切れる強さを手にしたこのバンドの新しい出発に向けた最後の日。まだまだこのバンドでやれることや見れる景色がたくさんある。演奏を終えた後に観客に応える堀之内の姿からは、ポジティブな力しか感じなかった。
リハ.PERFECT BLUE
1.17才
2.ポラリス
3.short hair
4.ドラマチック
5.The CUT
6.LOVE MATHEMATICS
7.祭りのあと
14:15〜 ももいろクローバーZ [SKY STAGE]
なんならライブ前というか、開場前から気合いの入りまくったファンの方々が待ち構え、この日のチケットがソールドアウトしたのはこのグループが出てるからなんだな、と思うには十分過ぎるくらいの存在感の強さを放っていた、ももいろクローバーZ。夏のロッキンに出演したことはあるが、このJAPAN JAMには初出演。
バンドメンバーに続いてメンバーの4人が登場すると、「あんた飛ばしすぎ!!」でスタートするのだが、ファンの方々のいわゆるコールというのか、そういうものが凄まじい。野外フェスでこんなに聞こえることあるのか!?というレベル。いかにメンバーだけでなくファンの方々が全力かつ本気かというのがよくわかる光景。
しかしよく見ると、演奏しているメンバーに見たことがあるというか、よく知っている顔がある。それはベースのひなっち(ストレイテナー、Nothing’s Carved In Stone)とドラムの柏倉隆史(the HIATUS)の2人なのだが、揃いのももクロの衣装を着ているのがいつもと全く違って面白い。ひなっちはびっくりするくらいにその衣装に違和感がないが。
とはいえやはり普段のバンドのライブほどに2人の音の主張を強く感じないのはあくまでサポートであるという立ち位置と、メンバー4人の声を1番前に押し出した音のバランスゆえか。
後ろの方で見ていた、「とりあえず見てみよう」的な人すらも巻き込んだ「行くぜっ!怪盗少女」を終えると、ライブ初披露の新曲だという「The Diamond Four」へ。タイトルや曲の内容から察するに、「The Diamond Four」とは輝きを放ち続けてきて、これからもそうあり続けるであろう現メンバー4人のことであろう。
ひなっちと柏倉隆史だけでなく、金髪のギタリストは元JUDY & MARYのTAKUYAなのだが、JUDY & MARYのメンバーがロッキンオンのフェスに立っているというのも実にレアな光景だ。(YUKIは何度かロッキンに出演しているけど)
そのTAKUYAもメンバーと一緒に踊りながらギターを弾いているのが実に面白いのは「ココ☆ナツ」。それと同時にたくさんの人が踊っていて、メンバーが踊っているとはいえ、この曲とダンスの浸透っぷりに心から驚いてしまった。
そして最後の最後まで全く衰えることのないコールの嵐。ももクロのライブは凄そうだから見てみたいって言っている人がたくさんいたけれど、自分はももクロのライブというよりもいわゆるモノノフと言われるファンの方々の方が凄いと思った。
ただ、NICOのライブを満員にして盛り上げてくれたのはNICOファンとしては夢を見させてもらったし、フォーリミのあのライブの激しさの中で盛り上がれるのは凄いけれども、せめて最前ブロックだけはその時にそのバンドを1番近くで見たい人たちのために開けて欲しかった。
もちろん他のバンドのファンでもそうしてフェスで出番のずっと前から最前を確保している人もいるから、一概にももクロファンの人たちだけがそうしてるなんて思ってはいないけれど、ももクロファンの方々はあまりにも見た目が目立ち過ぎる。だからこそスクリーンに映るとすぐにわかってしまう。前に出てるバンドたちを盛り上げてくれるのは嬉しいけれど、その気遣いやフェスでの対応ができるのなら、もうちょっとそこも考慮して欲しかった。
どんなに曲が良くてもライブがカラオケだったり長々と寸劇があったりすると自分は飽きてしまう。ももクロはバンドが演奏しているし、氣志團万博の時のような寸劇もなかったからそれは感じなかった。全てが全てバンド演奏の方が良いというわけではないけれど、ROTTENGRAFFTYのNAOKIもフォーリミのGENも「猛者揃い」と称したこの日のJAPAN JAMの中でこのグループも猛者であると感じたのはやはり実際にその場で鳴らしている音を自分の耳や体で感じることができるからというのが大きいと思う。
1.あんた飛ばしすぎ!!
2.Chai Maxx
3.行くぜっ!怪盗少女 -ZZ ver.-
4.The Diamond Four
5.ココ☆ナツ
6.全力少女
7.DNA狂詩曲
15:00〜 coldrain [SUNSET STAGE]
ももクロの直後に出てくるのがこのラウドバンドというのがまたこのフェスのカオスさというか多種多様感を示している。(同じ時間にLOTUS STAGEに出演しているのがBiSHというところも)
ももクロの華やかさや南国感とは完全に真逆の物々しさを纏ってメンバーが登場すると、Masatoのデスボイスによる一閃が完全に会場の空気を変え、「ENVY」の完全無欠のラウドサウンドが会場を制圧していく。やはりというかなんというか、音の重さと強さが段違いだし、それはただ単にラウドな音を出しているからというのではなくて、
「俺たちはこの音楽で生きていく」
という意志が音にそのまま宿っているからだと思う。実際にcoldrainは並み居るラウドバンドの中では最も正統派というか、他のジャンルのサウンドを融合させたりということはなく、ひたすらに自分たちの持っている刀を研ぎ澄ませてきたというタイプのラウドバンドである。
また見事なのはMasatoを中心に、Y.K.CとSugiのギター、さらにはベースのR×Y×Oまでも含んだフォーメーション。立ち位置を入れ替えながら演奏し、時には自身の立ち位置とは違う他のメンバーのマイクでコーラスをする、その時にはもともとそこにいたメンバーは逆サイドで演奏しているなど、言葉を交わさなくても他のメンバーのことがわかっているかのような固い絆というか、一枚岩感。
「やっぱりというか何というか、俺たちが会場に着いたら雨が降ってきた(笑)
名古屋の晴れバンド、フォーリミ。名古屋の雨バンド、coldrainって言われてきたけど、令和からはTOTALFATみたいな爽やかなバンドになりたいと思います!」
とこの日出演している盟友たちの名前を出して笑わせるも、演奏される曲はいつもと全く変わらないcoldrainのもの。爽やかさは皆無、轟音ラウドロックそのもの。
「coldrainを呼ぶのは色々めんどくさいからなのか、あんまりフェスに呼ばれないんで、俺たちもちょっとここからは遠いけど、名古屋で自分でフェスやることにしました。安心してください、室内です(笑)」
と雨バンドであることをもはや自分たちでもネタにしている感があるが、それはこのバンド名が背負った宿命のようなものだろう。
そしてその主催フェスへと続くリリースツアーの基点となるアルバムにも収録される「REVOLUTION」から、ラストは轟音の上に観客の大合唱が乗っかる「Final destination」。
圧巻というか、本当にライブバンドとはどういうものなのかというのをこのバンドは見せてくれるし、現在のラウドシーンの首領的な存在のSiMが出ることのないロッキンオンのフェスにおいて、自分たちが常に大きなステージでラウドロックを鳴らしてきたという誇りすら感じるようだった。だからきっとロッキンもCDJも来年のこのフェスでもこのバンドは大きなステージでラウドロックを鳴らしてくれるはずだし、あまりフェスに呼ばれないと言っていたが、年に3回は必ず呼んでくれる場所があるはず。
1.ENVY
2.NO ESCAPE
3.Voiceless
4.The Revelation
5.FIRE IN THE SKY
6.R.I.P.
7.REVOLUTION
8.Final destination
15:45〜 ORANGE RANGE [SKY STAGE]
待望のこのフェス初出演、ORANGE RANGE。本来なら幕張海浜公園で行われていた時代に出演するはずだったのが、強風の影響で中止になったので、この日がこのフェス初出演である。
メンバーが踊りながらステージに登場すると、いきなりの「上海ハニー」でこの会場の空気は完全に夏&沖縄に。
「快晴じゃん」
というフレーズとは裏腹にこの時間はどんよりとした雲が空を覆ってしまっていたが。
「ORANGE RANGEのライブの、知ってる曲の時の盛り上がりは凄いんですよ。でも知らない曲でもテンションで盛り上がって欲しい!」
とHIROKI(ボーカル)が自虐的に語ると、確かに次の曲はヒット曲というわけではない「Ryukyu Wind」なのだが、事前の煽りの効果からかかなり盛り上がっていたし、「上海ハニー」に続いてこの曲が演奏されることによってさらに沖縄のような空気に変わっていく。
大合唱を巻き起こした「以心電信」と、やっぱりこんなにヒット曲を持ってるバンドは違うな…と思わせると、NAOTOがギターからシンセにチェンジして演奏された「楽園Paradise」はNAOTOがリスペクトを捧げる電気グルーヴの影響を感じさせるテクノポップ的な曲。
「今日は暑いからさっぱりした、蕎麦とか食べたいよね」
と言いながら演奏されたのは同じくサウンド自体はテクノポップ的な「SUSHI食べたい」で、大ヒット曲との振れ幅の大きさに思わず面白くなってしまう。
そしてこの日はゲストを招いてのコラボセッションが告知されていたのだが、ここで登場したのはライブを終えたばかりのTOTALFATのギタリスト、Kuboty。10月にバンドから脱退することにも触れながら、
「きっとこれからもっといろんなところでKubotyと一緒になるだろうし、みんなもギター弾いてるところを見れるようになると思う。でもKubotyは見た目がORANGE RANGEっぽいからギター入れ替えようか(笑)NAOTOは全然TOTALFATっぽくないけど(笑)」
と、Kubotyが今後どんな道に進もうとしているのかを知っているかのような口ぶりで話した後に演奏されたのは「ビバ☆ロック」。KubotyのフライングVによる弾きまくりのギターがこの曲にハードロックな新たな命を吹き込んで行く。その姿を見たり音を聴いたりしていると、Kubotyはやはり凄いギタリストだなと思うし、そんな存在と別れることになるTOTALFATのこれからがどんなものになるのかが楽しみになる。
そして春の次の季節に行くように演奏された「イケナイ太陽」ではYAMATOが歌うパートの部分で普通に水を飲んでおり、
「あんたのパートだよ!」
とHIROKIに突っ込まれる。
そして最後に演奏された「キリキリマイ」はもう完全にラウド・ミクスチャーサウンドで、サークルやモッシュが頻発。それはポップさや楽しさだけではないこのバンドのカッコよさを示していたし、ベテランになっても落ち着くことはない、今でもやんちゃな少年たちのようにすら感じる。
平成という時代を代表するモンスターバンドであるこのバンドも、かつてヒット曲を連発していた頃は「すぐ消える」と言われまくっていたし、時代の徒花的な見られ方をしていた。実際に洋楽とかを聞くような人の中にはこのバンドをバカにしていた人もたくさんいた。
でもかつてのようにテレビに出まくったり、大ヒット曲を連発しているわけではないが、このバンドは消えなかったし、こうして何万人もの人がもう15年くらい前にリリースされたこのバンドの曲をみんな知っていて、ライブで聴けるのを待ち望んでいて大合唱をしている。
徒花なんかではなく、このバンドのヒット曲は時代を超えても鳴らされ続ける、歌い継がれていく普遍性をちゃんと持っていたのだ。そしてそれは平成が令和になっても、令和がさらにその次の時代になってもそう。平成を代表するモンスターバンドは今でもやっぱりモンスターバンドのままだった。
1.上海ハニー
2.Ryukyu Wind
3.以心電信
4.楽園Paradise
5.SUSHI食べたい
6.ビバ☆ロック w/ Kuboty (TOTALFAT)
7.イケナイ太陽
8.キリキリマイ
16:30〜 フジファブリック [LOTUS STAGE]
2010年の開催初年度には大トリの吉井和哉のゲストとして3人で出演している、フジファブリック。どうあってもVIVA LA ROCKには出ないことから、ある意味ではJAPAN JAMの象徴的な存在。
今回はドラムに黒猫チェルシーの岡本啓佑を迎えた4人編成で、ステージに登場するなり山内総一郎はピースサインをしたりというテンションの高さを見せるのだが、最新作「F」収録の「東京」でスタートすると、どこかいつもとは違うと思うのは、山内が曲中でいきなりラップをし始めたからである。
「虹」「銀河」「桜の季節」「電光石火」など、このバンドの歴史を作ってきた名曲のタイトルを散りばめると、今年でバンドがデビュー15周年を迎えたこともラップで紹介。さらには「JAPAN JAM!」「フジファブリック!」「みんながフジファブリック!」と段々と意味がわからなくなっていくコール&レスポンスまでも展開されるのだが、ボーカル力の向上だけでなく、こうしたフロントマンとしてのパフォーマンス力の向上からも山内の覚醒っぷりが伺える。「F」は現時点でのその結晶のようなアルバムである。
金澤ダイスケが間奏部分でキーボードの上に立ち上がるというフィーチャーっぷりを見せた「虹」という代表曲から一転、新曲「O.N.E」へ。山内は「F」の時もそうだったが、これまで以上に新作や新曲に自信を伺わせている。この曲もまた然りで、サウンドというよりもこれまでにも様々なキラーフレーズを放ってきた歌詞の面でのこのバンドの新しい挑戦を感じる。
きらめくようなメロディと疾走感のあるサウンド、さらには晴れ間も覗かせてきた空に向かって手を伸ばしたくなるように爽快な「STAR」を演奏すると、
「先ほど小粋なライムでも紹介した通り、フジファブリック、デビュー15周年です!10月には大阪城ホールで15年の全てを見せるワンマンライブをやりますんで、ここにいるみなさんに是非来ていただいて欲しいです」
と15周年の記念ライブへの自信をも覗かせ、最後に15年を迎えた今だからこそ歌える「手紙」をそれまでとは違って一音一音を丁寧に紡ぐように演奏した。しかしそれを支える岡本のドラムからはこのバンドが持つロックさを確かに感じさせてくれた。
とはいえ、同じ持ち時間で10曲以上やっているバンドもいるだけに、40分の持ち時間で5曲というのは物凄く少なく感じてしまう。まだこの4人で演奏できる曲がそんなにないのかもしれないけれど。
1.東京
2.虹
3.O.N.E
4.STAR
5.手紙
17:15〜 UNISON SQUARE GARDEN [SKY STAGE]
アラバキの時もそうだったが、意外なことに初出演らしい、UNISON SQUARE GARDEN。確かにガンガンフェスに出るようなバンドではないし、そこに出る意味や自分たちが出るステージなどに関しても入念な検証をしてから出演するかどうかを決めているであろうバンドであるが、こちらも今年は結成15周年の記念イヤーということもあってか、様々なフェスに軒並み出演している。
おなじみのイズミカワソラ「絵の具」のSEで登場すると、フェスで毎回かなりセトリを変えてくるバンドなだけに、アラバキの時とは何かが変わりそうな予感はしていたが、この日に最初に演奏されたのは1stフルアルバムの最後に収録されているミドルナンバー「クローバー」。確かに会場を探せばクローバーが咲いていそうなシチュエーションではあるが、そこに合わせたのかたまたまなのか。曲調的に田淵も動きはかなり控えめ。
3人のスリリングなアンサンブルを堪能できる「10% roll, 10% romance」から、なんと「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」という、フェスでやるの!?とビックリしてしまうような選曲に。
さらにはアラバキでは最後に演奏された、同期によるホーンサウンドが華やかな「君の瞳に恋してない」が中盤に演奏されるものだからもう次になんの曲が演奏されるのかが全然わからない。それはライブを見る際のドキドキした感覚を思い出させてくれる。斎藤の方に寄っていって向き合うように演奏する田淵も、それを見ながらギターを弾く斎藤も実に楽しそうだ。
相変わらずメンバーは全く喋らずに曲を演奏するのに集中するのだが、シングル曲であってもライブ定番曲にはなかなかならないというレギュラー候補があまりにもいまくる中で「invisible sensation」という近年のシングル曲も演奏され、サビの最後の
「生きてほしい!」
のフレーズはバンドからのメッセージとしてこの空の下に高らかに鳴り響く。斎藤の澄んだ声はこうした天気が良い日の野外ライブに実によく映える。
すると斎藤がギターを鳴らしながら歌い始めたのは、まさかの「何かが変わりそう」。いや、確かにアラバキの時とは何かが変わりそうとは思ったが、まさかこの曲をやるなんて全く想像していなかったし、決して代表曲というわけではないこうした曲が完全に観客から待たれている曲になっているし、今のユニゾンはフェスでシングル曲のみならずアルバム曲やカップリング曲など、どんな曲でも受け入れられるくらいの領域に達してきている。それはこうしてフェスに来る人がみんなこのバンドのあらゆる曲を聴いているという状況をバンド自身が作り上げたからだし、そうなるような曲をずっと作り続けてきたからである。
だからどんな曲が演奏されても観客は「最高だ」「幸せ」って思えるのだが、そんなライブの最後は鈴木がヘッドホンを装着して演奏された「シュガーソングとビターステップ」で、聴きたい人がたくさんいる大ヒット曲はしっかり演奏するというこのバンドらしからぬサービス精神を見せ、この日もMCなしの40分間を駆け抜けるというこのバンドでしかないスタイルを見せた。
元からユニゾンはライブごとにガラッとやる曲を変えるバンドだが、ここまで数日間でセトリが変わるならば、出るフェス出るフェス全て追いかける価値があるかもしれないと思えてくるし、大阪で行われる15周年ライブは行くべきなんじゃないかと思えてくる。そうした今後の大事なお知らせを全くライブではせずに、見て聴いて気に入ったんなら調べてまたライブに来てくれ、というスタイルがまた実にこのバンドらしいのだが。
1.クローバー
2.10% roll, 10% romance
3.誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
4.君の瞳に恋してない
5.フィクションフリーククライシス
6.invisible sensation
7.何かが変わりそう
8.シュガーソングとビターステップ
18:00〜 Aimer [LOTUS STAGE]
初日のLOTUS STAGEのトリはAimer。このフェスに単独で出演するのは2年ぶり。どちらかといえばポップなアクトが並んだ側のトリを飾るのも全く抜擢感がしないというか、むしろトリであるのが当然だというくらいの存在になりつつある。
アコギ、キーボード、パーカッションというサポート3人に加えて、黒の衣装を着てメガネをかけたAimer本人が登場すると、待っていてくれた観客に手を振りながら「ONE」を歌い始めるのだが、憂いをたっぷり含んだその声はやはり上手いだけではない独特の魔力を持っているように見える。
この人の歌う姿を初めてライブで見たのは2016年の10月にGalileo Galileiが日本武道館でラストライブを行った時にゲストボーカルとして登場した時なのだが、その時も曲を全てではなくワンコーラス歌っただけで会場全体が拍手するくらいに空気が変わった。その光景は今でも忘れられないものなのだが、その時だけの特別な力が働いていたのではなく、それはこの人の声がもともと持っているものだったのだ。
物語のような歌詞の最新シングル収録曲「花びらたちのマーチ」がまたこの野外の風が吹く会場で聴くと本当に素晴らしくて、もうこの段階で完全に心を持っていかれていた。
「ここからは皆さんのリズムもお借りしたいと思います」
と言うと観客に手拍子を促し、自らもイントロで手拍子をするのだが、この人は観客が手を振ると絶対にそれに応えなければいけないという思いがあるようで、手拍子しながら観客に手を振ったりとなかなか忙しい。それは凛としたイメージからは想像できない暖かい人間らしさで、それが「カタオモイ」「コイワズライ」というハッピーなだけではないラブソングにしっかりと体温を与えていた。
翌日から配信リリースされるドラマ主題歌「STAND-ALONE」も披露されたのだが、よく見ているとスクリーンにはAimerの姿は引きの状態でしか映らない。元から顔出しを積極的にしない人ではあるし、前に出た時はスクリーンに姿を映さないようにしていたらしいが、だからこそ目の前に立って歌う、何も通さずに自分の目に映る姿だけを見ていようと思えるし、こうしてライブで見れるのが嬉しく思う。
サポートがシンプルな編成ゆえに原曲のサウンドの幅を表現できるのだろうか?とも思っていたのだが、猟奇的とも言える「I beg you」ではそのシンプルな編成での演奏であるがゆえに、Aimerの歌声が表情を変えるのがすごくよくわかるし、この編成はAimerのボーカルを引き立てる上で最適のものであるということがわかる。
この「I beg you」に至る「Black Bird」はこの日の選曲の中でもダークサイドの流れと言えるのだが、単曲ではなくそうした流れを作ることができるのはトリゆえに50分という持ち時間があるからこそだし、その流れがあるから「April Showers」のサウンドがより多幸感を持って響いていく。
4月に「Sun Dance」「Penny Rain」という2枚のアルバムをリリースしたばかりということで、
「今日演奏した曲にはそのアルバムに入っている曲もあります。今日見ていただいて興味を持った方、是非聞いてみてください」
と告知をしてから、
「最後に、みなさんともっと深く繋がれますように」
と言って演奏されたのはRADWIMPSの野田洋次郎が提供したことで、Aimerの存在をロックファンにも広く知らしめた「蝶々結び」。
この曲にしろ、さユりの「フラレガイガール」にしろ、洋次郎の提供曲は本人以外が歌っていても洋次郎の存在を感じるくらいに記名性が高い。だからこうしてライブで聴いていると、洋次郎がこの曲をAimerに託した想いのようなものが、より一層憂いを帯びた歌声に乗っているように見えた。
最後に深々とお辞儀をしてからステージを去っていったAimer。あの日、武道館で感じた魔法のような歌声は間違いなく本物だったし、東京国際フォーラムあたりでワンマンを見てみたいと思うくらいに、さらに深いところに触れてみたいと思った。
1.ONE
2.花びらたちのマーチ
3.カタオモイ
4.コイワズライ
5.Ref:rain
6.STAND-ALONE
7.Black Bird
8.I beg you
9.April Showers
10.蝶々結び
18:55〜 10-FEET [SKY STAGE]
もはやあらゆるフェスに出まくっているのはもちろん、その出まくってるフェスでトリを務めることも非常に多い10-FEET。実は開催初年度の2010年も初日のトリを務めたのはこのバンドで、JAPAN JAMの10年間の歴史の中で最初にトリをやったバンドでもある。
主催している京都大作戦ももはや日本屈指の人気フェスになっているし、こうしてこのフェスでトリを務めることも当然のようになっているにもかかわらず、3人がステージに登場するとTAKUMAは客席を見渡しながら、
「最後までこんなに残っててくれて本当にありがとう」
と言った。
今の10-FEETの人気や存在感、去年もロッキンでトリを務めていることを踏まえれば、このバンドを見るために残っていて当然とも言える。でもこの3人はそうした位置にまで来てもずっと謙虚なままだし、今まで何度も10-FEETがトリを務めたフェスでのライブを見てきたが、こういうことを言った記憶がほとんどない。だから社交辞令的に言った言葉ではないことがよくわかるし、この日の1曲目にアッパーな曲ではなくて「蜃気楼」を演奏したのもすごくよくわかる。
おなじみの「VIBES BY VIBES」から「goes on」、最近はフェスではやらないパターンも多くなった「super stomper」といつもの10-FEETのようでいてやっぱりどこかいつもと違う、毎回のライブが特別であるかのような感覚。
「アンコールまで含めた時間をもらっているけれど、一回掃けてまた出てきてってやるの時間かかるから、アンコールの時間までこのまま一気にやります」
というのもまた10-FEETがフェスでトリを務める際の、ギリギリまで少しでも多くの曲を演奏するというスタイル。
太陽は見えない夜空の時間帯で演奏された「太陽4号」は光を放つステージが太陽のように見える暖かさを放ち、「RIVER」では川の名前を「花見川」とご当地のものに変えるが、これは幕張でのライブの時と同じパターンだ。幕張からそう離れてないというか同じ千葉市内だからだと思うけれど。
そしてTAKUMAはいつものように叫ぶようにして自らの思いを口にしながら、
「みんな、1日でも長く生きて、1本でも多く一緒にライブをやろうな」
と言った。リリースが滞ったりする時も多かったが、10-FEETがライブの本数を減らしたようなことは全くないし、なんなら年々増えているような気さえする。やっぱりこのバンドはライブをして生きているバンドだし、そうしたバンドにこういう言葉をかけてもらえると、これからもこうしてずっとライブを見れる場所にいたくなる。
10-FEETがフェスでトリを務める時は、どんなに疲れていても、その疲れをその向こうへ吹き飛ばすように、さらに飛び跳ねたり、声を出したりする力をくれる。そうした力を持っているからこそこうしていろんなフェスでトリができる存在であり続けているし、ベテランになるにつれてフェスの場ではアウェーになっていくという法則というか慣習みたいなものに至って自然体のままで争い続けている。そんなバンドは他にいない気さえする。
そうして我々が日頃から抱える様々なモヤモヤをその向こうへ吹き飛ばすように「その向こうへ」を演奏すると、この日は「時間がない時のRIVER」をやらなかったので、最近では珍しいなと思って時計を見たら持ち時間ピッタリだった。狙っていたわけではないだろうけれど、そういうところもやっぱりさすがだ。
TAKUMAはこの日中盤のMCで、
「みんなライブ見るの好きなん?フェスだけじゃなくてライブハウスにも行ってライブ見るような人ってどれくらいいるの?」
と問いかけた。もちろんたくさんの手が上がったのだが、それはこの時間まで残ってくれた人が自分たちのファンではなかったとしても、音楽を好きでいてくれるのが本当に嬉しかったのだと思う。
その音楽が好きな人たちが集まる場所にはいつも10-FEETがいる。フェスのステージにも、ライブハウスにも。そんなバンドのライブで1日を締めくくることができたら、疲れなんか吹っ飛んでしまう。
1.蜃気楼
2.VIBES BY VIBES
3.1 size FITS ALL
4.super stomper
5.goes on
6.太陽4号
7.RIVER
8.1sec.
9.ヒトリセカイ
10.その向こうへ
去年までの快適性は動員がそこまで多くなかったという要素も少なからずあったと思うが、この日は去年までとは比べ物にならないくらいに人が多かった。ももクロという集客力が段違いのアーティストが出ていたとはいえ、それだけではここまでは増えない。その理由などについては2日後にこの場所をまた訪れた時のブログにて。
文 ソノダマン