音楽雑誌MUSICAを発行する会社「FACT」の社長にして、今でも音楽ライターとして最前線で活躍している鹿野淳が主催するフェス、VIVA LA ROCK。
「ゴールデンウィークにさいたまでロックフェスを!」という意思の元に生まれてから今年で5年目。5回目を記念して去年までの3daysから今年は4daysに拡大。この日が4daysの初日となる。
例年、このフェスは会場内の動線が非常に悪く、これまでにも様々な対策を講じてきたが、それは抜本的な改善にはつながらなかったため、今年は去年までの
STAR STAGE(メインステージ)
VIVA! STAGE(セカンドステージ)
というステージ間の格差をなくし、その二つの空間をスタジアムモードとしてぶち抜いて使い、2つのステージが隣接するように大幅にレイアウトを変更。
そういう意味でも今回が無事に成功するかどうかによってこのフェスの今後がかなり変わってくると言えるが、唯一ステージも動線も変化がないCAVE STAGEは去年までも地獄のように全くステージが見えなかったし、規制連発で入れなかっただけに今年も変わらない予感がしている。
会場に着くと、さすがに9時40分開演という時間設定は早すぎるのか、あるいはそもそもチケットが今年はあんまり売れていないのか(全日ソールドアウトしてない)、例年に比べると駅前やけやきひろば、場内にもあまり人がいない。
スタジアムモードになったメインのSTAR STAGEとVIVA! STAGEは確かに広くは感じるが、去年からそこまで大きくなっているような感じはしないし、てっきり隣り合わせにステージが並んでいるのかと思いきや、STAR STAGEは従来の位置、VIVA! STAGEは下手後方に設置されており、確かにこのフロアにいればどちらも見えるとはいえ、ステージの角度が異なっている。
懸念のCAVE STAGEへの動線も、今までのコンコースから下に降りるのではなく、メインフロアの下に降りてから移動するという形に変化。とはいえ通路は非常に狭いため、果たしてこれがどう出るか。
9:40〜 Saucy Dog [VIVA! STAGE]
9時くらいからすでにメンバーがステージに登場し、
「10連休仕事あった?」
と石原慎也(ボーカル&ギター)が客席に話しかけていた、Saucy Dog。
鹿野淳の熱い呼び込みの後に、ステージから炎が吹き上がってメンバーが登場すると、紅一点ドラマー・せとゆいかのセットに3人が集まって気合いを入れると、石原のみずみずしい声が伸びるポップなギターロック「真昼の月」でスタートするのだが、なんと曲中で石原のマイクが出なくなってしまうといういきなりのハプニングに見舞われる。それでもバンドは止めることなく演奏を続けると、ボーカルが聴こえないのをカバーするように、このバンドを見るために朝早くから集まった観客たちが手拍子をする。その間にマイクは復活したのだが、石原は
「びっくりしたね〜」
とアウトロで言ってしまうくらいに驚いた様子。
せとは早くから集まってくれた観客たちに「早起きしてくれてありがとう」と言っていたが、石原は
「みんな何時起き?5時半より早く起きた人っている?いるな〜、負けたわ〜(笑)」
と自身が5時半に起きて会場に来たことを明かして笑わせていた。
しかし音源を聴いているとこのバンドはポップな歌モノのスリーピースバンドというようなイメージだったし、それはそれで間違いなくこのバンドが持っている要素の一つなのだが、ライブだと石原の歌い方やバンドの演奏も含めてかなり熱さを感じさせるバンドであることに気づく。曲中での秋澤和貴のベースソロも実に上手いし、演奏技術が高いバンドではあるのだが、上手く演奏しよう、上手く歌おうというよりはとにかく見てくれている人に伝えようとして演奏して歌っているような。
だからなかなか自分はこのバンドの魅力に気づいていなかったのだが、ライブをちゃんと見るとなぜ今このバンドが人気があって、こんな広いステージに立っているのかがわかる気がした。
現在のこのバンドの代表曲と言ってもいい「いつか」を石原が伸びやかかつ熱量をたっぷり含んだボーカルでこの広いステージめいっぱいに響かせると、
「次は俺たちを見るために早起きしなくてもいいような時間に出れるように、できることならSTAR STAGEに出れるように頑張ります!」
とさらなる野望を口にして最後に演奏された「グッバイ」は別れの曲ではあるけれど、切なさは全く感じさせず、むしろこのバンドの前途のような希望を感じさせた。
このバンドはデビュー時のインタビューで常に「自分たちの音楽で世界平和を目指している」と口にしていた。それは当時は笑われまくっていたりバカにされたりしているのも見たけれど、このバンドのライブを見ていて感じる熱い部分はその気持ちを今でも失っていないからだとも思える。ちゃんと見てイメージがガラッと変わった。
1.真昼の月
2.ナイトクルージング
3.バンドワゴンに乗って
4.ゴーストバスター
5.いつか
6.グッバイ
10:15〜 BLUE ENCOUNT [STAR STAGE]
今年のSTAR STAGEのトップバッターはBLUE ENCOUNT。初出演時はCAVE STAGEに出演していたが、ついにこのステージまで辿り着いた。
メンバーが登場すると、田邊(ボーカル&ギター)はイメージ通りの出で立ちを貫いているが、高村(ドラム)はどこかおぼっちゃまっぽい短い髪型になり、対照的に江口(ギター)と辻村(ベース)は髪が伸びてワイルドさを感じさせるようになっている。YON FESで見てからまだ1ヶ月くらいしか経ってないのにそれだけで見た目のイメージはだいぶ変わる。
するといきなり
「VIVA LA ROCK、歌えますか?本気の声を聞かせてください!」
と「もっと光を」からスタートして大合唱が響き渡る。たまにフェスでもこの曲から始まることもあるとはいえ、朝イチの1曲目でこれをやるとは。
4人の音が激しくぶつかり合う「LAST HERO」とバンド側も熱いが客席もまだ10時台とは思えないくらいにダイバーが続出し、この日のライブの模様がMVに使われることが告げられた新曲「ハウリングダイバー」も、エモーショナルなロックバンドとしてのブルエンど真ん中と言える曲で、タイトルとおりに新曲とは思えないくらいにダイバーが出現。こうやってライブでMVを撮る時は盛り上がっている画を撮りたいだけに演奏前にバンド側が煽りまくったりするものだが、そうしたことをせずに挑んだのはバンド側が今の自分たちのライブに自信を持っていることの証拠だろう。
フェスではおなじみの「ロストジンクス」、江口のタッピングが冴えまくる「DAY × DAY」と続くと、
「最初に出た時がCAVE STAGEで、その時に「絶対STAR STAGEに立つ」って言いました。その後はVIVA! STAGEだったけど、ようやくSTAR STAGEに来れました。でもそれを御涙頂戴的な話にするつもりもない」
と、田邊は悔しさもにじませながらこのステージに立てた喜びを話したが、それはそうだろう。「ONAKAMA」としてスリーマンをやった04 Limited SazabysやTHE ORAL CIGARETTES、さらにはKEYTALKなどの同世代バンドたちはあっさりとSTAR STAGEに進出したし、タイテが発表された時には「ブルエンだけメイン行けないのか」と言われていたこともあった。もちろんそれは本人たちも少なからず気にしていたことだろう。だからこそこの日のライブからはこのステージに立てる喜びと、5年かけてこのキャパに見合うスケールをバンドが獲得してきたことを感じさせた。
そのバチバチとした熱さが飛び散る「VS」ではメンバーとともに観客の大きなコーラスも轟くと、
「最後に新曲やります。この曲を作るために15年バンドやってきたと言ってもいいくらいの曲ができたし、この曲ができたことでこれから15年でも30年でもバンドを続けていける気がしている」
と言って演奏されたのは来月リリースされるミニアルバム「SICK(S)」に収録される「アンコール」。
たいてい曲のテーマに「アンコール」が使われると、「人生にアンコールはない」的な歌詞のものになりがちだし、それはつまり「だからこの一瞬を大事に〜」みたいな紋切り型のものになりがちなのだが、この曲でこのバンドは
「アンコールが待っている」
と歌っている。だからこの曲はツアーをしに行くバンドとしての曲なのだ。もっと自分たちの音楽を待っている人たちの前で鳴らしたいと。それはBLUE ENCOUNTというバンドが持っている人間性や熱さに実によく合ったものだし、だからこそ田邊はこの曲に自信を持っているのだろう。ブルエンはこの日も含めて「必ずと言っていいくらいにライブでやる曲」がある程度決まってきているが、この曲もそれらの曲と同じようにこれから長い付き合いになるのかもしれない。
演奏を終えると、ステージ上のスクリーンにいきなり「Congraturations!!」という文字が映し出され、今日はメンバーの誕生日だっけ?と思っていると(このフェスは誕生日のメンバーがいるバンドを祝うことがよくある)、MUSICA編集長の有泉智子がケーキを持って登場し、
「バンド15周年おめでとうございます!」
とケーキを贈呈。どうやら誕生日じゃなくても記念イヤーのバンドにはケーキが贈られるシステムになったみたいだが、ケーキを持ったメンバーが観客を背景に嬉しそうに写真撮影をすると、
「そのビスケットのところ俺が食べるからね!」
とメンバーに予告しながらステージを去っていく田邊が面白かった。
1.もっと光を
2.LAST HERO
3.ハウリングダイバー
4.ロストジンクス
5.DAY × DAY
6.VS
7.アンコール
11:10〜 BIGMAMA [VIVA! STAGE]
このフェス開催初年度の2014年にSTAR STAGEのトップバッターとしてフェスの幕開けを告げた大事な存在のバンドである、BIGMAMA。今年はレイアウトが変わったVIVA! STAGEへの出演。
おなじみベートーヴェン「第九」のSEが流れる中にメンバー5人が現れると、
「BIGMAMAです。よろしくお願いします」
とだけ金井が挨拶して「MUTOPIA」のダンサブルなサウンドがこの広い会場にこのバンドならではの多幸感をもたらしていく。
最新アルバム「-11°C」のリード曲になったソリッドなギターロック「Step-out Shepherd」こそ演奏されたが、この日は「-11°C」でも強い存在感を放っていたパンク要素は薄めで、大合唱を巻き起こした「No.9」などを筆頭に「ヴァイオリンの入っているメロディックパンクバンド」というバンド初期のイメージから広がりを持っていった時期のポップな曲が多かった。
今のこのバンドはMCなしでひたすら曲を演奏するというモードなのだが、そのモードだからこそ「No.9」のアウトロからそのままイントロに繋げる形で演奏することができる「Sweet Dreams」ではドラムのリアドが立ち上がってバスドラを踏みながら
「ビバラー!」
と叫ぶ。今は療養中のサトヤスの代わりに[ALEXANDROS]のサポートも務めているが、こうした姿も含めて今のリアドや、笑顔で並んで演奏する柿沼と安井、最も観客を煽る東出と、金井以外のメンバーの頼もしさが過去最高に感じられる。
リリースされたばかりのニューシングル「mummy mummy」を不穏に響かせると、そのままグランジ的なノイジーなギターサウンドの「ファビュラ・フィビュラ」で大きな合唱を発生させる。アルバムのタイトル曲であるとはいえ、今までとはまたタイプが違うこの曲がここまでライブ定番になるとは思わなかった。
「お連れしましょう、シンセカイへ!」
と金井が誘うようにして演奏された「荒狂曲”シンセカイ”」では「オイ!」という掛け声とともにモッシュとダイブの嵐に。最後のサビ前でリフトしている人たちを見ると、このバンドがパンクバンドであることを改めて感じさせる。
最近は「-11°C」の「YESMAN」を、目の前にいてくれる人たちを肯定するために最後に演奏することが多くなってきているが、この日最後に演奏されたのは東出のヴァイオリンの音色がこの曲のパンクな部分にさらに美しさを与える「SPECIALS」。
もう初年度みたいにこのバンドはメインステージの規模に出れる状況のバンドではない。でも今でもこのバンドにとってこのフェスは特別な場所だし、このフェスにとってもこのバンドは特別な存在。だからこそ
「We are the SPECIALS 僕らは”SPECIALS”」
というフレーズが本当に特別さを持って響いていた。
演奏が終わると、初年度同様にこの日が誕生日である金井を祝うべく、鹿野淳がケーキを持って登場。金井は鹿野とは一緒にマラソン大会に参加したりするほどの仲だが、仲が良いから呼ばれているわけじゃない。ちゃんとカッコいいバンドであり続けているからこのフェスに出続けている。それはきっとこれからも続いていくような気がしている。翌週に迫った恒例の母の日ライブではどんな景色を見せてくれるのか。聴きたい曲はたくさんある。
1.MUTOPIA
2.Step-out Shepherd
3.No.9
4.Sweet Dreams
5.mummy mummy
6.ファビュラ・フィビュラ
7.荒狂曲”シンセカイ”
8.SPECIALS
12:00〜 フレデリック [STAR STAGE]
サウンドチェックでメンバーが全員登場して「リリリピート」を演奏すると三原健司が
「今日はBIGMAMAの金井さん、KANA-BOONの鮪さんの誕生日です。おめでとうございます!ちなみに僕の誕生日は来年の2月です」
と先輩を祝っているのか自身のアピールをしているのかわからない言葉を放った、フレデリック。2年連続でのSTAR STAGE出演である。
「フレデリック、始めます」というボイスサンプルが入った、おなじみのダンサブルなSEで本番のステージに4人が登場すると、ギターを持たずにハンドマイクの健司が大きく両手を広げるようにして「飄々とエモーション」、さらには「シンセンス」という曲を続けるあたりは前週にアラバキで見た時と同じスタートであり、その後にフレデリックど真ん中的なダンスサウンドの「スキライズム」、アラバキの時はてっきり夜の出演だったからやったのかと思っていた「夜にロックを聴いてしまったら」という「フレデリズム2」の最新モードなのは変わらず。
「40分1本勝負!」
と健司が言ったように、基本的にフレデリックのライブはMCを挟まずに曲を連発して、曲と曲の合間を繋げるようなライブならではのアレンジを見せるスタイルなのだが、この日は
「せっかくだからフレデリックがどんなバンドなのかを説明しますね。今日はカッコいいアーティストばかり出てますけど、今日が終わって数日経ったら、「あの日どれも最高にカッコよかったけど、なんかあの曲頭から離れんな〜」っていう音楽をやってるバンドです」
と自身の音楽のスタイルを解説。それは実際にこの日演奏された曲たちからも確かに感じることができる。
再び健司がハンドマイク状態になって演奏されたのは社会への痛烈なメッセージを含んだ「まちがいさがしの国」。サビでの笑い声のフレーズに合わせてステージ前から火柱が噴き上がるというのはこのステージならではの演出であるが、ワンマンでは映像や照明を曲に合わせて使ってきたこのバンドに炎という演出がこんなに似合うとは思わなかった。
「僕らの音楽に逃げ込んできてください」
という「逃避行」と
「遊ぶ?遊ばない?遊ぶ?遊ばない?遊ぶよな?」
と健司が不敵に煽った「KITAKU BEATS」は紛れもなく健司の言葉通りにこのバンドの音楽の中毒性を感じさせるキラーチューンだ。
そしてラストはアラバキ同様に「オドループ」なのかと思いきや、まさかの「オンリーワンダー」。つまりはこの広いステージにもかかわらず「オドループ」をやらないという選択をこのバンドは取ったわけだが、それでも全く物足りなさは感じなかったし、それでもしっかりライブが成立しているというところにこのバンドが「オドループ」以降も名曲ばかりを生み出してきたということを示していた。つまりはこのメインステージに出るようになったのも必然と言えるのだ。
もちろんその楽曲の強さや中毒性がこのバンドをここまで連れてきた理由の一つではあるのだが、このキャパでライブを見ると健司の歌の素晴らしさがこのバンドがこの規模のステージに立てるようになった理由の一つであると思える。そしてその強みを生かした曲がこれからたくさん生み出されていくような予感がしている。
リハ.リリリピート
1.飄々とエモーション
2.シンセンス
3.スキライズム
4.夜にロックを聴いてしまったら
5.まちがいさがしの国
6.逃避行
7.KITAKU BEATS
8.オンリーワンダー
12:55〜 Nulbarich [VIVA! STAGE]
このフェスは日毎に音楽性や客層が分かれるようなブッキングをしており、この日は割と今の邦ロックの主流的な若手バンドがメインなのだが、それに則ってブッキングするとしたら間違いなくSuchmosやKing Gnuがいる翌日だろう、というくらいにそのスタイリッシュな出で立ちからしてこの日の出演者の中では異彩を放っている、Nulbarich。
ギター2人にベース、ドラム、キーボードというメンバーは先にステージにスタンバイしており、時間になると首謀者にしてボーカルのJQが登場して「It’s Who We Are」からスタート。
JQの張り上げたりすることのないファルセットボーカルはそのスタイリッシュなサウンドとともに爽やかに響き渡るのだが、
「恥ずかしいけれど…令和!」
と、意外とここまで誰も口にしていなかった新元号を叫ぶ。前に見たNO NUKESのライブの時も
「水が美味しい」
と言ったりしており、知的なように見えるけれど実はこの人はかなり天然なんじゃないか?と思えてくる。
「幸せな曲を」
と紹介された「Sweet and Sour」など、これまでの出演者とは異なって、ゆったりとサウンドやリズムに合わせて揺れるといった感じの楽しみ方ではあるのだが、バンドメンバーたちの演奏が実に上手く、この手のバンドの中ではしっかりとバンド感を感じさせてくれるために、決して音圧は強くないし、力強さをわかりやすく感じさせるものではないけれど、リズムに乗りたくなってしまう。
そんな中でも曲タイトルの通りに最もスピード感を感じさせた「Super Sonic」では火柱が噴き上がるという、「このバンドで!?」という演出も使われた中、ラストの「Stop Us D reaming」ではまるで光のシャワーのような多幸感が広がっていく。NO NUKESの時とは持ち時間は同じだったけれど、やる曲をいくつか変えてきていた。その中でもこの曲はアリーナが会場であるこのフェスの規模に合わせて演奏されたのかもしれない。
ただはっきり言って、この日のNulbarichはワンマンで武道館が満員になったアーティストとは思えないくらいにアウェー感があった。それはもう仕方がない。本人に責は一切ないし、このタイムテーブル的にこの日の昼食時間にされるのはわかっていたはずだ。
でも自分はもともとはフェスというのは同じような音楽性や客層のアーティストが固まるのではなくて、様々な音楽性やスタイルを持ったアーティストがフェスという名の下に集まる、天下一武道会やオールスターみたいなものだと思っている。自分自身フェスの場で全く知らなかったバンドのライブを見てハマったりしたことも数えきれないくらいあったし、普段だったら絶対ライブ見れないような大御所アーティストのライブを見れたりしてきた。
だからNulbarichのライブをこうしてこの日見れたのは他の出演者とは音楽性や客層が違う日に出演していて、移動しなくても見れるようなステージの位置関係になったから。で、ライブを見てみたらやっぱり良いライブだった。きっと他にもライブ見たことないけどスタンド席に座って休憩しながら聴いていたら凄く良かったと思った人も結構いると思う。そういう意味ではアウェーではあったからこそ、この日のラインアップに多様性を与えた存在だったと言える。
リハ.ain’t on the map yet
1.It’s Who We Are
2.Kiss You Back
3.Sweet and Sour
4.Zero Gravity
5.VOICE
6.Super Sonic
7.Stop Us Dreaming
13:50〜 SUPER BEAVER [STAR STAGE]
15年目のインディーズバンド、SUPER BEAVERも初のSTAR STAGE出演。アリーナクラスで見れるのはなかなか貴重な機会である。
メンバーが登場して、渋谷龍太(ボーカル)が独特の
「ライブハウスから来ました、レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVERです!」
という口上で挨拶してメンバーが1音目を鳴らした瞬間、メンバーの背面には「SUPER BEAVER」という白文字の電飾でのバンドロゴが浮かび、そのあまりのカッコよさに体が震えてしまった。
そのロゴを指差して渋谷が
「あれはなんですか?」
と問いかけると柳沢が
「バンドロゴです(笑)」
と返すという微笑ましい場面もあったが、曲が始まるとやはりガチンコ。
手拍子が起こるポップな「美しい日」から、このライブ、フェスすらも「あっという間に終わってしまう」ことを告げる「閃光」、
「音楽で1番退屈なこと。それは一体感とか一つになろうとかそういう空気。あなたたちじゃなくてあなた1人1人とこっちは対峙してるんだよ。束になってかかってこられたら困るんだ。1人1人で来い!」
と1人1人の声が重なることで大きな合唱を生み出した「秘密」とキラーチューンが続いていく。
「俺たちにとってフェスっていうのはボーナスステージみたいなもの。ビバラとは色々あって、もう二度と呼んでもらえないかもしれないと思ったこともあったけど、俺たちをこんなメインステージに出させてくれて本当に感謝してます。でも俺たちはライブハウスから来たんで、みんなをライブハウスまで連れて帰りたい」
とあくまでライブハウスのバンドであることを語るのだが、その言葉通りに武道館ワンマンが即完した後でもライブハウスでライブをし続けているバンドである。
しかしこの規模にライブハウスのままで立つとスケールにギャップを感じてしまうことがあったりするのだが、このバンドにはそれを全く感じない。フレデリックの時に感じたのと同様に、このキャパになると歌の力が確実に必要になる。渋谷のボーカルはそれをちゃんと持ち合わせているし、ボーカルだけじゃなくて言葉の一つ一つからその力の強さを感じる。それは渋谷だけでなくメンバーの音の一つ一つからもそう。
そして最後には
「あなたの伝えたいことは、あなたの口で、あなたの言葉でしっかり伝えないと」
という渋谷の言葉から、ここに集まってくれた人たちやこのステージに立たせてくれた主催者に対して感謝を告げた「ありがとう」。
ビバラ(というかMUSICA?)とこのバンドの間に何があったのかは本人たちにしかわからないが、こうしてこのメインステージまでたどり着いた。これからもこのバンドがこうしてアリーナのステージに立つ姿が、このフェスでなら見れる。そんな、予感のする方へ。
1.美しい日
2.閃光
3.正攻法
4.秘密
5.予感
6.ありがとう
14:45〜 ACIDMAN [VIVA! STAGE]
埼玉出身のバンドとしてこのスーパーアリーナでワンマンや主催フェスを行なったこともあるし、このフェス開催初年度にはメインのSTAR STAGEでトリを務めた、ACIDMAN。今回はVIVA! STAGEへ出演である。
おなじみの「最後の国」のSEで手拍子に迎えられながら3人が登場すると、大木のベテランらしさを感じさせない力強い歌声に佐藤と浦山の2人の勇壮なコーラスが重なる「新世界」からスタート。早くもダイバーが出現するくらいの演奏の激しさである。
複雑なアンサンブルが絡み合う、かつてのフェス定番曲にして最近再び定番曲に浮上してきた「ストロマトライト」からACIDMANらしいポップかつダンサブルな「FREE STAR」という代表曲が続くと、
「令和になりましたが、平成最後のニュースを忘れてはいけません。先日、ブラックホールが観測されましたね。もともとブラックホールがあるっていうのは知られてたんですけど、それがついに観測されたと。あ、僕宇宙の話が大好きなんでね(笑)この話をするためだけに僕は今このステージに立ってます(笑)
そのブラックホールを観測した天文台にアルマ望遠鏡っていうのがあって。僕がその望遠鏡のために曲を作って国立天文台に勝手に曲を送りつけたらえらく感謝されて、その天文台があるチリまでMVを撮影しに行って。今からその曲をやるんですが、みなさんスマホの光をつけてもらってもいいですか?俺たちのファンじゃない人たちもたくさんいると思うけど、充電代よこせって言うんだったらそれくらいは払うから(笑)」
と大木が宇宙おじさんっぷりを遺憾なく発揮するMCを長々としてから客席のスマホライトがまるで星空のように輝いた「ALMA」はこのバンドが誇る名バラード。かつてロッキンのメインステージの大トリを務めた時もこの曲が最後に演奏されていた。
そしてバラードというかミドルテンポな曲だがそこにありったけのエモーションを含んで演奏された「MEMORIES」から、この日もスリーピースでのロックの限界に挑むかのような演奏が繰り広げられ、佐藤が被っていたキャップを落下させた「ある証明」とこのバンドの持つ壮大さを感じさせる曲が続くと、最後に演奏されたのはパンクな「Your Song」。かつてはアンコールでの定番ソングというような位置付けの曲だが、今はこうしてワンマン以外の場所でトリではなくても演奏される機会が多くなってきている。このバンドがここで開催した主催フェスでも最後に演奏され、その時はスクリーンにその日来場した観客たちの楽しそうな顔が映し出されていた。今でもこの曲を聴くとあの日のことを思い出すけれど、ACIDMANの3人は全く変わっていない。
ACIDMANは年々フェスにおいてはアウェー感が強くなってきているし、CDJでは広いGALAXY STAGEでも数えられそうなくらいしか客がいないという事態になった時も見てきた。でもそういう時でも良くなかったライブなんか一回もなかったし、時代が変わってもこのバンドのカッコよさは全く変わらない。宇宙の話を笑いを交えてできるようになったのは変わったというか大人になった感じがするが。
1.新世界
2.ストロマトライト
3.FREE STAR
4.ALMA
5.MEMORIES
6.ある証明
7.Your Song
15:50〜 ネクライトーキー [CAVE STAGE]
VIVA LA ROCK名物、すぐに規制がかかり、ステージが低すぎてメンバー全員がなかなか見れないCAVE STAGE。キャパもSTAR STAGEとVIVA! STAGEに比べると極狭ゆえに、初出演の若手バンドが中心になるのだが、この男女混成5人組バンドのネクライトーキーも今回がこのフェス初出演。
サウンドチェックではギターの朝日廉がボカロPの石風呂名義で発表した曲たちをバンドバージョンで演奏し、本編ではもっさ(ボーカル&ギター)を先頭に5人が登場すると、「めっちゃかわいいうた」「こんがらがった!」という曲で始まるのは前週のアラバキの時と同様だが、このバンドのカラフルなポップサウンドとそれに合わせた鮮やかな照明が地下室みたいな雰囲気のこのCAVE STAGEを明るく照らしていく。
メンバー1人ずつの「1,2,3,4」のカウントに続いて観客が「1,2,3,4」のカウントをするとメンバーがそれに合わせてキメを連発するという観客参加型の「許せ!服部」から、本編でも朝日が石風呂名義で作ったボカロ曲「きらいな人」「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」という曲を連発。
この時期の曲は朝日の素の人間としての暗さというかネガティビティを感じさせる歌詞が多いのだが、それがボカロで音楽を作らざるを得なかった彼の当時の状況を思い起こさせるし、こうして今のこのメンバーで演奏されることによって、曲が望んでいた形で演奏されているというか、新たな命が吹き込まれているかのよう。
その朝日は
「狭くてみんな大変だろうけど、俺らは手加減して演奏することとかできないからー!」
と言ってギターを背面弾きしたりという宣言通りの手加減の無さに客席はより一層激しさを増していく。
「六畳一間で僕はただ NUMBER GIRLを聴いていた」
という歌詞が朝日の原点であり、再結成したことをさぞ喜んでいるであろうNUMBER GIRL(この日もサウンドチェックで朝日は「IGGY POP FAN CLUB」のイントロを演奏していた)への愛情を感じさせると、5秒前からのカウントダウンを観客とともに数える「オシャレ大作戦」でこの日最大の爆発。やはりステージが低すぎて、他のメンバーがしゃがんで見せるカズマ・タケイのドラムソロも、独特の効果音で曲に彩りを与える中村郁香のキーボードも全然見えなかったが、
「ビバラでヘヘイヘイ」
ともっさが歌詞を変えて歌った後のこのステージに溢れかえる熱量の増し具合だけは確かに見て取ることができた。
そして最後は急速に展開していく「遠吠えのサンセット」で朝日、藤田、カズマ・タケイが3人で組んでいたコンテンポラリーな生活時代から定評があった、このバンドのメンバーの演奏力の高さを改めて実感させるとともに、バンドってやっぱりいいなと思えた。バンドではこれ以上行けないかもしれない、とすら思ってしまったこともあった朝日たちのバンドが、まだまだ大きなステージに立つことができるのを見れるのだろうから。
リハ.ゆるふわ樹海ガール
リハ.夕暮れ先生
1.めっちゃかわいいうた
2.こんがらがった!
3.許せ!服部
4.きらいな人
5.ジャックポットなら踊らにゃソンソン
6.だけじゃないBABY
7.オシャレ大作戦
8.遠吠えのサンセット
16:35〜 Base Ball Bear [VIVA! STAGE]
もう若手とは言えないまでもせめて中堅的な立ち位置であろうと思っていたBase Ball Bearもこの日の出演者の中ではACIDMANに続いて2番目にベテランだという。その事実からもこの日のラインアップの若さに驚かされる、Base Ball Bearと同年代。
リハで「17才」を演奏して観客を沸かせると、いつもより入念な感じのする堀之内会議を経て、いきなりの「ドラマチック」からスタート。きっと3人になってからのこのバンドのライブを見るのが初めてな人もたくさんいただろうけれど、その演奏からは物足りなさは全く感じない。それどころか3人でここまでできるということを見せつけるような姿に頼もしさすら感じる。
このフェスには何度も出演しているはずなのに、あたかも初出演であるかのようなメンバーそれぞれの特技や好きな飲み物を明かす自己紹介(なぜこんなことをしたのか今でもちょっと意味がわからない)をしてから、3人になったこのバンドの自己紹介的な意味を含んだ最新作からの「ポラリス」では初めてこのアリーナで堀之内のボーカルが響き渡る、3人が順番に歌うというバンドの新たな挑戦を見せてくれる。
リリース当時に本田翼が出演したMVも話題を呼んだ名曲「short hair」から、これを3人でできるようになったということにメンバーたちはどれだけ多大な努力をしてきたのだろうかと思いを巡らせる「Tabibito in the Dark」を演奏すると、
「ヒップホップアーティストの方々は明日出演するということで、今日は僕らがヒップホップ要素を総取りでございます!」
と言って小出のラップが炸裂する最新作からの「PARK」、ヒップホップマナーに則った「The CUT」というギターロックだけではないこのバンドの懐の広さ、そもそものルーツの多様さを見せる。
そんな展開もありつつ、最後はアリーナという室内ながら青空がイメージできるような爽やかな「PERFECT BLUE」を演奏して終了したのだが、中堅からベテランになると、なかなか新作の曲や新たな挑戦をフェスという場で見せるのが難しくなってくる。かつてのヒット曲オンリーのセトリになっても仕方がないような。
でもベボベはこうしてフェスの場でまだまだ新しいことに挑戦する姿や、新たなバンドの姿勢を見せてくれる。それを見るとまだまだこのバンドは進化していると改めて感じさせてくれるし、同年代としてはまだまだ自分もいけるんじゃないかと思わせてくれる。なんて頼もしいバンドだろうか。
リハ.17才
1.ドラマチック
2.ポラリス
3.short hair
4.Tabibito in the Dark
5.PARK
6.The CUT
7.PERFECT BLUE
17:30〜 ヤバイTシャツ屋さん [STAR STAGE]
去年もSTAR STAGEに当然出演するだろうという空気ではあったが、去年はVIVA! STAGEへの出演だったので、初めてのSTAR STAGEへの出演となる、ヤバイTシャツ屋さん。
おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEで登場するのは変わらずだが、メンバーが揃うと曲を演奏する前にこやまが、
「最初CAVE STAGE、2回目VIVA! STAGE、去年もVIVA! STAGE、今年はついにSTAR STAGE!」
と珍しく口にした。去年のライブも見ているが、
「むしろ来年もVIVA! STAGEに出てトリをやりたい」
的なことを言っていたが、周囲から当然STAR STAGEに立つだろうと思われていた中でVIVA! STAGEだっただけに悔しそうな感じはすぐに感じ取れた。その去年の悔しさをこやまは今でも忘れていないからこそ、その悔しさから解放される日が来たのだ。
そのライブの1曲目は初出演のCAVE STAGE時は最後にやっていたであろう、「あつまれ!パーティーピーポー」。当時は最大のキラーチューンが紛れもなくこの曲だっただけに、最後にやるしかないくらいの持ち曲しかなかったが、今ではこの曲を1曲目に持ってくることができる。それくらいに今のヤバTにはクライマックスを担えるキラーチューンがたくさんある。びっくりするくらいにテンポが速くなっていて、パンク感が増しまくっているが。
ヤバTはツアーでもガンガンセトリを変えるバンドだし、それは本人たちも間違いなく意識してやっていることであるが、アラバキから数日しか経っていない、持ち時間がほとんど変わらないようなライブでもいわゆる「みんなが聴きたい曲」はしっかり押さえながらもやる曲を変えてくる。だから「かわE」みたいな曲はしっかりやりながらも、「リセットマラソン」というフェスでやるのか、っていうような曲もやるから油断ならない。
その前にはもりもとのIKKOのようなタイトルコールや、しばたのそろりそろりというこのバンドらしい楽しいパフォーマンスもあった「DANCE ON TANSU」はしかしそんな笑える場面とは裏腹にゴリゴリのリズムがこのバンドの演奏の強さを示している。
「STAR STAGEやけど、うちらがSTARなんやなくて、見てくれてるみんなが星のように輝いてるからSTAR STAGE」
というしばたの上手いのかどうなのかというMCからはタオルがぐるぐると回るのが壮観な「L・O・V・E タオル」からさらに加速。ヤバTはライブだと音源以上にテンポが速くなるバンドであるが、この日は今まで見てきた中でも最高レベルで速くなっていたかもしれない。
「CAVE STAGEに初めて出た時、ヤバTはすぐに消えるって言われてた。「あつまれ!パーティーピーポー」だけのバンドやって。そんなバンドが4年かけて、STAR STAGEに立てました!」
というこやまの言葉からはやはりこのバンドの原動力が悔しさであることを伺わせたし、それが演奏の速さにつながっていたのかもしれないが、すぐ消えるって言われていたバンドがその後も「あつまれ!パーティーピーポー」に負けないような曲ばかりを作ってきたし、なんなら最初から他の曲もメロディセンスが抜群にあったバンドだ。そこにさらに発明と言っていいくらいにこの人でしか書けないような歌詞をこやまは書いてきた。そんな凄いバンドが消えるわけがなかったのである。
そしてやはりテンポが速くなりまくった「ヤバみ」から、
「来月、このさいたまスーパーアリーナで岡崎体育っていう僕の友達がワンマンライブをやります。みなさん、音楽には夢があると思いませんか?岡崎体育がさいたまスーパーアリーナでワンマンやって、僕らがこのSTAR STAGEに立ってる。音楽には夢がある!サークルバンドの底力、見せてやるよ!」
とこやまが言ったので、まさか「サークルバンドに光を」をやるのか?と思ったが、やっぱり最後はみんなで「キッス!キッス!」「入籍!入籍!」を叫びまくる「ハッピーウェディング前ソング」でハッピーに終了かと思ったら、
「まだ時間あるんでもう1曲やります!CAVE STAGEに出た時にやった曲!」
と言ってさらに「喜志駅周辺なんもない」を追加。その当時は面白いネタを連発して話題になってもいたが、今は音楽を、曲を連発するのがこのバンドのスタイルであり、観客が何よりも望むものになってきている。最後にはこやまがステージに寝転がりながらギターを弾いていたのも全てを出し切った証だろう。
こやまはCAVE STAGEでこの「喜志駅周辺なんもない」や「あつまれ!パーティーピーポー」をやっていた時、この曲たちをこのSTAR STAGEで鳴らすことになると思っていただろうか。多分、こやまにはその確信があったはず。自分たちの音楽はこのステージまで行けると。だから何を言われてもヤバTは自身のスタイルを変えなかったし、やっぱり初期からある曲たちもこのキャパで鳴らされるべきスケールを持っていたのだ。
フェスが終わって帰る時、電車の中で自分よりは20歳くらい年上であろうご夫婦が
「ヤバTって初めて見たけど面白いしカッコいいね〜」
っていう話をしていた。このバンドのファンである身としては初めてライブを見た人にそう言っていただけるのは非常に嬉しいとともに、その年齢になっても若手バンドのライブを観に行く姿勢には本当にリスペクトしかない。
スタイルやサウンドによって好き嫌いというのは誰しもに間違いなく存在するが、
「理解できないものばっかり増えていく いつまで置いていかれちゃってんの」
と「ヤバみ」で歌っているように、いつまでも置いていかれたくないし、ヤバTの音楽は現代におけるそこの分水嶺と言えるのかもしれない。
リハ.とりあえず噛む
リハ.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
リハ.Tank-top Festival 2019
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.Tank-top of the World
5.DANCE ON TANSU
6.リセットマラソン
7.L・O・V・E タオル
8.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
9.無線LANばり便利
10.ヤバみ
11.ハッピーウェディング前ソング
12.喜志駅周辺なんもない
18:30〜 go! go! vanillas [VIVA! STAGE]
初日のVIVA! STAGEのトリはgo! go! vanillas。アラバキの時と同様にプリティがまだ交通事故の療養中であり、3人での出演。
なのでジェットセイヤのドラムセットがステージ下手にセッティングされ、おなじみのSE「we are go!」で登場すると3人が横並びという立ち位置で最初に演奏されたのは、アラバキの時は「平成の終わり」として鳴らされた「平成ペイン」。それがこの日は「令和の始め」として鳴らされ、
「これからの話をしよう」
というフレーズを牧は
「令和の話をしよう」
に変えて歌っていた。
アラバキもこの日も3人の演奏にプリティのベースの音を乗せるというあくまで3人ではなくて4人のバンドであるということを示すスタイルなのだが、だからこそレコーディングされている曲ならばなんでも演奏することができるということで、アラバキの時は演奏されなかった「SUMER BREEZE」が演奏されるなど、サポートを加えた編成ではなく、4人だからこその選曲の自由度の高さ。
だからこそ牧は今月リリースのアルバム「THE WORLD」の告知をすると、
「LIGHT MY FIRE」
というフレーズに合わせて火柱が上がった、すでにMVが公開されているストレートなロックンロール「パラノーマルワンダーランド」だけではなく、前作「FOOLs」で手に入れたR&Bなどのブラックミュージックの要素を取り入れた、牧がハンドマイクで歌う「Do You Wanna」も演奏された。それもまたすでにプリティのベースでレコーディングされているからこそできることである。
柳沢によるコール&レスポンスも令和を意識しながらも非常に気合いが入ったものであり、トリを任されたことへの責任や感謝を強く感じるのだが、その気合いが「カウンターアクション」「マジック」という曲のロックンロールさをさらに強くしていた。
そして、
「今の俺たちを最も表している曲!」
と今の状況でのネガティヴさを一切感じさせずに牧が強く言い放ってから最後に演奏されたのは
「デスからアゲイン」
というタイアップの「ゲゲゲの鬼太郎」に合わせて書いたであろうフレーズがバンドの完全復活への意気込みとしての意味を持つようになった「No.999」。演奏が終わると、
「来年は必ず4人で、できればSTAR STAGEに出たいなー!」
と牧は言った。VIVA! STAGEがアリーナサイズになったことでわかるこの超満員さはこのバンドが来年それを成し遂げることができる予感を感じさせた。
初めてバニラズのライブを見たのはスペシャ列伝ツアーのファイナル。KANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOという錚々たるメンバーと回っていたからか、まだバニラズには当時はここまで大きな存在になるなんて思っていなかった。でも今はその3バンドに負けないくらいの位置まで来ている。
まだプリティがいつから戻って来るのかはわからないけれど、STAR STAGEで4人でこの日の続きを見せてくれたら、この日ライブを見ていた人たちはみんな感動して泣いてしまうんじゃないかと思う。つまりは、また早くあの笑顔が見たい。「デッドマンズチェイス」をライブで聴きたい。
1.平成ペイン
2.SUMMER BREEZE
3.エマ
4.パラノーマルワンダーワールド
5.Do You Wanna
6.カウンターアクション
7.マジック
8.No.999
19:30〜 KEYTALK [STAR STAGE]
初日のトリはKEYTALK。このフェス皆勤賞バンドにして、メンバーのうち小野武正(ギター)と首藤義勝(ベース&ボーカル)は埼玉県出身のバンドである。去年からSTAR STAGEには入りきらないくらいの人を動員していたが、ついにトリを務めることに。
いつもの賑々しいSEである「物販」ではなく、「YURAMEKI SUMMER」のエレクトロアレンジみたいなSEでしっとりとメンバーがステージに登場すると、武正の軽快かつ印象的なギターリフが攻めるメジャーデビュー曲「コースター」からスタート。このバンドは開催初年度にVIVA! STAGEの初日のトップバッターを務めているのだが、その時の1曲目もメジャーデビュー曲であるこの曲だったような気がする。
さらに「パラレル」とメジャーデビュー期の、このバンドのイメージを決定づけたシングル曲を続けると、一転して義勝のバキバキのスラップ奏法が観客を踊らせまくる「MATSURI BAYASHI」からSEに転用された「YURAMEKI SUMMER」へ。
KEYTALKは割とライブごとに戦い方を変えるバンドであり、フェスやイベントではいわゆるライブ定番曲の連発、アルバムのリリースツアーでは新作の曲を中心、アルバムのリリースタイミングではないワンマンや長い尺の対バンなどではレア曲やりまくりというパターンを持つので、フェスでレア曲をやることはほとんどと言っていいくらいにないバンドなのだが、この日は初期の「a picture book」を披露すると、なんと義勝がハンドマイクで歌うベースレス編成での「雨宿り」という最新アルバム「RAINBOW」収録曲、さらには義勝と巨匠のツインボーカルが重なるからこそ切なさが倍増する「バイバイアイミスユー」とフェスとは思えないくらいにレア曲を連発。これは
「今日は気合いが入りまくっております!」
と巨匠が言っていたように、トリを任されたからこそのいつもとは違うライブにしようとする意気込みの表れだろうか。
さらにはこれまでのフェスでは「告知はするけれど演奏はしない」という思わせぶりな感じばかりだった新曲「BUBBLE-GUM MAGIC」も披露。
「大人のKEYTALK」
と以前巨匠がコメントしていたとおりに、R&Bの要素を大胆に取り入れたサウンドであるが、間奏で武正がギターを弾きまくるあたりは従来のKEYTALKらしさをうまく融合させている。シングルでリリースしてもライブでは全然やらないという曲も結構あるだけに、これからこの曲はどうなるか。レーベル移籍第一弾シングルなだけに定番曲になりそうだし、こうしたタイプの定番曲がないので貴重な手札になりそうだが。
そして「MONSTER DANCE」の完璧に揃った振り付けで踊らせて本編を終えると、アンコールでは最近フェスではやっていなかった武正の「ぺーい」を、
「俺の地元の大宮から来たやつ!」
「義勝さんの地元の狭山から来たやつ!」
と埼玉バージョンで行う。狭山は人数は少ないが1人あたりの元気さがすごいとのこと。
そんなやり取りの後に、巨匠がサングラスをかけているということは演奏されたのはもちろん「Summer Venus」。この日はDA PUMP「U.S.A.」ではないダンスを間奏で繰り広げ、KEYTALKにしか作れないパーティー空間を作り上げて幸福感で満たしきった。
演奏を終えると鹿野淳がケーキを持って登場。このバンドが現メンバーになってからちょうど10周年ということで、観客を背景に写真を撮ると、巨匠と武正が食べあいながらステージから去っていった。
この日、巨匠は
「いつかスタジアムモードのこの会場でワンマンがやりたい」
と言っていた。YON FESの時は「横浜スタジアムで」とも言っていた。まだまだこのバンドは今よりも上を見ている。こうしてこのキャパのフェスでトリをやれるようになったし、その夢には少しずつだけど確実に前進していっている。果たしてその言葉を実現させるのはいつになるのだろうか。
リハ.黄昏シンフォニー
リハ.FLAVOR FLAVOR
1.コースター
2.パラレル
3.MATSURI BAYASHI
4.YURAMEKI SUMMER
5.a picture book
6.桜花爛漫
7.雨宿り
8.バイバイアイミスユー
9.Love me
10.BUBBLE-GUM MAGIC
11.MONSTER DANCE
encore
12.Summer Venus
去年までは散々文句を言ってきたこのフェスだが、この日はびっくりするくらいに快適だった。そうしたフェスに関する諸々はこの2日後の5/5に行った時のこのブログにて。ストレスを感じなかったから、ただただ楽しかった。
文 ソノダマン