2日目にして、前週の大阪から始まった2週間のこのフェスの最後の日。前日も暑かったが、間違いなく朝からそれ以上に暑い。完全に夏フェスである。この日は参加者の大半が2つのバンドのTシャツを着ており、そのバンドの動員力の強さが見て取れる。
11:30〜 ヤバイTシャツ屋さん [WINDMILL FIELD]
昨年に続く出演となる、ヤバイTシャツ屋さん。すでにブレイクしていた去年が1番小さいNEW BEAT SQUAREでギチギチの状態だっただけに、今年もSEASIDE PARKでそういう状態のライブになるんだろうか、と思っていたらそこを飛び越えて一気にWINDMILL FIELDに進出。
前日同様にテレ朝の女子アナと芦沢ムネトによる前説とコール&レスポンスが終わってから(忘れがちだけどこうして見ると芦沢ムネトは元々お笑い芸人なんだよな、と思うくらいに面白い)、おなじみの「はじまるよ〜」のSEでメンバーが登場。
するといきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で大合唱を巻き起こし、この日はパンクに突き進んでいく。ヤバTはライブの度にセトリを変えてくるバンドであるが、この日は初のメインステージかつトップバッターということもあってか、かなり王道的な内容。とはいえ前日は関西で堺ミーティングに出演してのこの日のこのフェスのトップバッターというスケジュールには疲れもあるだろうけれど、サウンドチェックの段階から元気100%でこのバンドはそういう部分を絶対に見せない。常に全力で目の前にいる人たちを楽しませようとする。
こやま「WANIMA待機ですか?」
しばた「早すぎるわ!」
という漫才的なコンビネーションもバッチリで、しばたともりもとによるチョコレートプラネットのモノマネもあり、さらにはこやまの無表情のカメラ目線など曲をひたすら演奏するというスタイルは貫きながらも、このバンドらしいメンバーの面白い部分もしっかり見せてくれる。
「L・O・V・E タオル」では完全に夏の野外フェス的な鮮やかなタオル回しもあり、次に演奏された曲のタイトルの通りに完全にKOKYAKU満足度1位。(ヤバTはファンのことを顧客と総称している)
そして「Wi-Fi!」が「オイ!オイ!」というパンク的なノリになるのが発明的な「無線LANばり便利」を経て、この日最も大事だったのはその後のこやまの
「いろいろ厳しいルールがあるけれど、その中で精一杯楽しもうぜ!みんなは見てて心のモッシュ&ダイブができてると思います!」
という言葉だろう。このフェスはモッシュとダイブを厳しく禁止にしているが、ヤバTはそもそもそういう楽しみ方をするバンドたちに憧れて始まったバンドだし、そうした先輩たちへの敬意を示すために自分たちのツアーでダイブによってトラブルが発生した時も「禁止にはしたくない」と言っていた。だからこそそうしたルールには思うところや考えることもきっとたくさんある。でも「そういうフェスには出ない」っていう選択だけはしないし、その中でみんなが楽しめるようなライブをする。
だからダイブやモッシュがなくても、ライブならではのテンポが上がりまくった「ヤバみ」、大合唱に包まれた「ハッピーウエディング前ソング」というラストの2曲はみんなが心のモッシュ&ダイブをしていた。ヤバTは歌詞においても名言、名フレーズ製造機的なバンドであるが、「心のモッシュ&ダイブ」という言葉はこの日この場所でヤバTのライブを見ていた人たちにとって忘れられない言葉になるはず。
リハ.Tank-top Festival 2019
リハ.とりあえず噛む
リハ.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Tank-top of the world
3.Universal Serial Bus
4.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
5.かわE
6.L・O・V・E タオル
7.KOKYAKU満足度1位
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.ハッピーウエディング前ソング
12:10〜 フレンズ [NEW BEAT SQUARE]
このバンドが始動する前からこの会場でライブをしたことがあるメンバーもいる、フレンズ。このフェス初出演はNEW BEAT SQUAREのトップバッターという位置。
おかもとえみは派手な黒いドレスに身を包み、三浦太郎は髪型の分け目を変えたことでオリエンタルラジオの藤森みたいに見える中、夏感溢れる「常夏ヴァカンス」でスタートし、おかもととひろせひろせの男女ツインボーカルがポップに響きあう。
そのおかもととひろせが振り付けを観客に指南してから演奏された「塩と砂糖」では間奏でひろせが「ディスコの申し子」と称した長島涼平がベースソロを見せて観客を踊らせる。(涼平はこの後にthe telephonesでも出演)
そして新曲のラブソング「iをyou」から、おかもとの奔放かつ観客の頭にも「?」が浮かび上がるくらいに意味不明なMCにひろせがツッコミまくるという、フレンズというバンド名のこのバンドならではの仲睦まじいやり取りをしてから演奏されたのは懐かしのブラック・ビスケッツの大ヒット曲「Timing 〜タイミング〜」のカバー。もう20年前にリリースされた曲を神泉系を名乗るフレンズの絶妙なセンスで現代にアップデート。そのサウンドももちろんながら、おかもとのボーカルは往年のビビアン・スーを彷彿とさせるし、ひろせのツッコミもどことなく南原清隆やキャイ〜ンの天野を彷彿とさせる。つまりはハマり過ぎなカバーなのである。この曲の存在を知らない人たちももうきっとたくさんいるだろうけれど、こうしてフレンズがカバーして演奏することによって、この曲がテレビから流れまくっていた頃のことを思い出すことができる。このバンドのメンバーは自分と同世代と言っていい年齢だが、そうした記憶や思い出を共有できるのは実に嬉しいことだ。
そしてラストはひろせもおかもとも「METROCK」「若洲公園」というこの場所ならではのフレーズを入れまくるサマーソング「Love,ya!」。仲間たちと車でテンション高く海へ向かう姿が想像できるくらいに夏への期待を高まらせる曲だが、でもやっぱり自分は夏は夏フェスくらいにしか行かないから、そうした夏の楽しみ方をしたことが全くない。それでも、夏の野外フェスのライブでこのバンドがこの曲を演奏するのを見れたらそれ以上に夏を謳歌できることはないだろうな、と思う。
1.常夏ヴァカンス
2.塩と砂糖
3.iをyou
4.Timing 〜タイミング〜
5.Love,ya!
13:00〜 キュウソネコカミ [WINDMILL FIELD]
おなじみの本気のリハでヤマサキセイヤがいきなりthe telephonesの「urban disco」のイントロを演奏し始めると、他のメンバーもそれに合わせてワンコーラスほぼ丸々演奏するという、
「the telephonesが好き過ぎるから」
という愛を見せた、キュウソネコカミ。しかしヨコタシンノスケなど微妙にうろ覚えのメンバーもいたことにより、
「このステージでこんなクオリティでやったらアカン!」
と自省することに。かつては銀杏BOYZやフジファブリックのカバーをライブでやっていたバンドなだけに、しっかりとメンバーで合わせた状態でのこの曲のカバーを聴いてみたい。
本番では「ビビった」でスタートし、「KENKO不KENKO」ではなぜか急にステージ横のスクリーンにメンバーが演奏する姿とともに歌詞が映し出される。前日のSHISHAMOでもこうした演出はあったが、なぜキュウソで?しかもなぜこの曲で?と思ってしまう。結果的には最新アルバム「ギリ平成」の収録曲ではこうして歌詞が映し出されていたし、こうして歌詞を見ながら聴いていると、改めてキュウソの歌詞は本当に面白いと思う。歌詞が映ることによってセイヤの歌詞間違いも目立つけれども。
「KMTR645」では間奏で微妙にいろいろ違うミッキーマウスマーチのような音楽が流れ始めると、ステージにバンドのマスコットキャラクターであるネズミ君が登場。これは舞浜がほど近い(2駅隣)この新木場の会場だからこその演出だったのだろうか。オカザワはギターソロをそのネズミ君デザインのギターで弾き倒し、
「よくみりゃペディグリー」
のフレーズでセイヤとヨコタが取り出したのは、先日BRAHMANと対バンした際にTOSHI-LOWがへし折ったマイクスタンドの一部分。あんなに頑丈そうなマイクスタンドを折れるというあたりに改めてTOSHI-LOWの鬼っぷりを感じる。
突如として始まる「家」も含め、かつてこのフェスでは風車のコスプレやテレ朝のフェスらしくミュージックステーションの時のタモリのモノマネをしたりという面白ネタを連発してきたこのバンドにしてはこの日はそうした演出はなしというやや大人しくすら感じる前半だったのだが、どうやらセイヤが喉の調子があまり良くなかったらしく、
「情けないけど、みんなの力を貸してくれー!」
と観客に合唱を求めていた。
セイヤは今まであんまり声が出なかったりしたのを見たことがない。あまり酒を飲めないから喉に負担をかけたりしないというところもあるだろうし、上手く歌うというよりは全身の力を振り絞って歌うというそのスタイルを貫いてきたことによって体が発声する方法を自然と会得してきたのだと思っていた。
でもそんなセイヤでも自身の100%のパフォーマンスを見せることができないことがある。キュウソのファンはセイヤが歌う姿に何度となく力を貰ってきたから、こういう時にしっかりとバンドにその力を返す。それがちゃんと伝わったからこそ、セイヤは
「すまねぇな…」
と客席からの大合唱を聞いて素直に言った。
でもその表情は去年のVIVA LA ROCKの時の泣き出しそうなくらいの悔しい表情とは違っていた。少し晴れやかにも見えた。こうして観客の大合唱が聞こえたことによって、ファンが自分たちの曲を歌えるくらいにちゃんと聞いてくれているということがわかったからだ。声が出ないというのは全てがマイナスになるわけじゃないというのをこの日のキュウソはファンとの信頼関係によって証明してくれた。
だからこそ「令和」バージョンになるという進化を見せた「ギリ昭和」からの終盤の、愛すべきポンコツたちへのラブソング「ハッピーポンコツ」、さらにキュウソ屈指のというよりも日本のロックシーンにおいても屈指の名曲となったロックバンド、ライブハウス賛歌「The band」はより一層強く響いたし、キュウソにいつまでも「音楽を鳴らし続けてくれ」と改めて思った。
初出演時のNEW BEAT SQUAREでのライブで「DQNなりたい、40代で死にたい」を演奏した時の「ヤンキー怖い」コールを満員のステージの外にいる人たちに求めたら全く返ってこず、
「キャパぴったり!これ以上俺たちのことを見たいと思ってるやつはいない!」
と言って爆笑を巻き起こしてから、このバンドは毎年ありとあらゆる手段(それが毎年違うというのがまた凄い)でこのフェスに爪痕を残してきた。だからこそ自分がこのMETROCKの象徴というべきバンドは誰か?と言われたら真っ先にキュウソを思い浮かべる。そんなこのフェスを愛し、このフェスに愛されてきたバンドの過去最も正攻法的な内容のライブは改めてやっぱりこのバンドがこのフェスに愛されているということを教えてくれた。
リハ.良いDJ
リハ.ネコ踊る
リハ.urban disco
1.ビビった
2.メンヘラちゃん
3.KENKO不KENKO
4.KMTR645
5.家
6.ギリ昭和
7.推しのいる生活
8.ハッピーポンコツ
9.The band
13:40〜 FOMARE [NEW BEAT SQUARE]
今最も勢いのある若手バンドを擁するレーベル、small indies table所属の群馬県高崎市のスリーピースバンド、FOMARE。すでに去年のROCK IN JAPAN FES.などの大型フェスにも出演しているが、このフェスにも初出演。
ドラムのキノシタタクヤが上半身裸で登場すると、アマダシンスケ(ベース&ボーカル)の少年性の強い歌声が響く「君と夜明け」でスタートし、6月リリースのニューアルバム「FORCE」収録のショートチューンの新曲「Continue」を披露と序盤からテンポ良く畳み掛けていく。
small indies tableはエモーショナルなギターロックバンドのレーベルというイメージが強いが、このバンドもものすごくざっくりと(そしてやや乱暴に)言うとMy Hair is Bad以降のギターロックバンドと言っていいスタイルで、マイヘアと同じスリーピースのバンドであるが、ボーカルのアマダがベースということで、ギターのカマタリョウガはガツガツと押しまくり&攻めまくりのギターを弾きまくる。
MVが公開されたばかりの新曲「Frozen」はMVの壮大な景色がよく似合うスケールの大きな曲であり、これからこうした大きなステージに立つ機会が増えていくバンドにとって新しい武器になりそう。
そして
「10代の時に作った曲」
という「タバコ」は10代で作ったって内容的に大丈夫なのか?と思ってしまうバラード曲。今の若手バンドでフェスでバラード曲をやるバンドって実はそうそういない。何年か前には「フェスでバラードをやるのは怖い」と言っていたバンドもいたように記憶している。
でもこのバンドは平気でこうしたバラードをフェスのセトリに入れる。楽曲そのものへの信頼もあるだろうし、こういう曲をやったらこうなるんじゃないか、こう思われるんじゃないか、という打算や計算ができない、自分たちの直感のままにやる曲を選んでいるのだろうし、そうした一つ上の世代のバンドたちが抱えていたしがらみみたいなものからこのバンドは解放されている。
「今日1番の声を聞かせてくれー!」
と言って最後に演奏されたのは生活感溢れる歌詞の「Lani」。これからこうしてこの曲はいろんな場所でたくさんの人の大合唱が響かせていくのだろう。
アマダがMCで「野外慣れしてない」と言っていたのもあるだろうが、このバンドはどっからどう見てもどう聴いてもライブハウスの匂いしかしない。新しさはなくても、そういうバンドは音源よりライブで見る方が100倍くらい良い。このバンドもそういうバンドだし、だからこそきっとこれから何回でもライブを見る機会が来るはず。
1.君と夜明け
2.Continue
3.風
4.夢から覚めても
5.Frozen
6.タバコ
7.Lani
14:30〜 the telephones [WINDMILL FIELD]
4年前の活動休止直前にはこのフェスの大トリを務めた、the telephones。活動再開を果たし、このフェスにも帰ってきた。
サウンドチェックで石毛輝が盟友である9mm Parabellum Bulletの「Discommunication」のイントロのギターを弾いたりしながら、本番ではおなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」のSEでアフロのカツラを被ったメンバーが登場すると、ノブはいきなりステージ袖のカメラに顔を密着させたりして笑わせると、
「METROCKー!4年ぶりに帰ってきたぜー!」
と石毛が挨拶して、いきなりの「Monkey Discooooooo」からスタートするという完全フェス仕様のモード。石毛はいきなり間奏でステージ上でブリッジしながらギターを弾く。さらには復活後のフェスではやらない時も多い「urban disco」とバンドの中でも最もパンクなディスコシリーズを連発。ノブはかつてこのフェスではステージを降りて客席に突入し、滑り台の上に登って子供と踊りまくっていたこともあったが、ダイブやモッシュに関してのルールが厳格化されたからか、客席に突入するということはせず。その代わりに、「そこまで行けるの!?」というくらいにステージ両サイドのスピーカーの上まで移動したりという変わらぬ自由さを見せてくれる。
「4年前に出したニューアルバムからの新曲を…」
という紹介には「ニューアルバムとか新曲って言っていいのか」という笑いが客席からこぼれたが、演奏された「Jesus」を含めて4年前にリリースされた「Bye Bye Hello」にはまだライブで演奏されたことのない曲がある。それら全てを聞ける日がいつかやってくるのだろうか。
フレンズで出演した時間に「ディスコの申し子」と称された長島涼平のベースのイントロが否が応でも観客を踊らせる「electric girl」を終えると、
石毛「フレンズのライブを見るために早い時間から来たらまだ風車があんまり回ってなくて…」
涼平「ちょっとちょっと!そのフレンズを巻き込む感じのスベり方やめて!(笑)」
と休止前と全く変わらない仲睦まじいやり取りを見せると、翌日が誕生日であるノブが観客を真ん中から左右に分け、観客同士が向き合うようにして踊らせた「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!」と、初めて見る人も多かったと思う状況の中でノブは完全になんか面白いしおかしい人という強いインパクトを残した。
そして「I Hate DISCOOOOOOO」でディスコを叫ばせまくると、最後に演奏されたのはこのフェスへの愛と感謝を告げた「Love & DISCO」。復活してからthe telephonesはかつて出演したことがあるフェスでは毎回この曲を最後に演奏している。かつてはこの曲はフェスではトリでアンコールができる時くらいにしか演奏していなかった。
その曲を毎回演奏しているということ。かつてtelephonesを呼んでくれていたフェスが休止して何年も経ってもこうしてまたtelephonesを呼んでくれる。telephonesのことをずっと忘れずにいてくれて、フェスのステージにまた立ってもらいたいと思っている人がたくさんいる。そういう人たちへの愛と感謝を返すために、今年はtelephonesはさまざまなフェスに出ているし、夏もかつて何度となく立ったステージにまた立とうとしている。今でも自分たちのことを大事にしてくれる感謝を込めて。
4年も経つと何もかもがあの頃と同じというわけではない。かつてはさまざまなフェスで最高動員クラスの集客を見せていたtelephonesのことをもう知らないんだろうなと思う人がたくさんいるということもわかった。(このフェスはラインアップが若手バンドメインなのでより一層そう思う。みんなtelephonesより一世代下のバンドばかりだ)
でもこの若洲公園にはtelephonesにまつわる様々な思い出が刻まれている。初めて自分がこの会場を訪れた2010年のROCKS TOKYOで、メインステージのトップバッターを務めたのはまだ若手だった時代のtelephonesだった。つまりこの場所での春フェスはこのバンドから始まったのである。(ちなみにタイムテーブル的に先に始まった、今のSEASIDE PARKのトップバッターとしてこの会場でのフェスの始まりを告げたのはThe Mirrazだった)
翌年の「田植えディスコ」と呼ばれたほどの豪雨の中のライブ、前述のノブの遊具を使ったパフォーマンス、活動休止前の大トリ…さらには活動休止後に石毛とノブが始動したlovefilmを最初にフェスに呼んでくれたのもこのフェスだった。
活動休止前に大トリをやった時に、石毛はアンコールでこのフェスのプロデューサーをステージに呼んで感謝を告げていた。(実はtelephonesがメインステージの大トリを務めたフェスはそんなに多くない)
自分がこのフェスのことが好きなのは、そうして自分が愛するバンドのことを本当に大事にしてくれているフェスだということがわかっているからという理由もあるかもしれない。
リハ.A.B.C.DISCO
リハ.Da Da Da
1.Monkey Discooooooo
2.urban disco
3.Jesus
4.electric girl
5.Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
6.I Hate DISCOOOOOOO
7.Love & DISCO
15:10〜 SIX LOUNGE [NEW BEAT SQUARE]
初出演、SIX LOUNGE。NEW BEAT SQUAREは若手バンドの登竜門的なステージであり、確かに今勢いのあるバンドだが、ロックンロールバンドというスタイルゆえにどこか突出したというか他の出演者とは違う存在に感じる。
メンバー3人が登場すると、ヤマグチユウモリはやはり黒の革ジャンというロックンロールスタイルで「MARIA」からスタートし、リリースされたばかりの最新シングルからタイトル曲のスイートなロックンロール「天使のスーツケース」、ユウモリが雄叫びをあげまくるカップリング曲の「Lonely Lovely Man」と、「MARIA」も昨年10月にリリースされたミニアルバム収録曲であることを考えると冒頭から完全に最新モードに入っている。
そもそもこのバンドはリリース前の新曲をフェスでもやりがちだし、こうして新しい曲が並ぶことによってフェスの短い時間でもセトリが結構変わる。それは自分たちの最新系こそが最高系であるということを示すためだが、実際にリリースされた作品を聞くたびにソングライティングの力は劇的に向上していることがよくわかる。ロックンロールはスタイルの音楽とも言えるジャンルだが、ロックンロールというスタイルのままで(よくある他のジャンルを取り入れたというわかりやすい形ではなく)自分たちのロックンロールを更新し続けている。しかもそのスパンが非常に短い。だから見るたびにその成長角度の急っぷりにびっくりしてしまう。
遠くから聞こえてくるピアノの音に反応したユウモリが、
「Official髭男dism、見たかったなぁ。長澤まさみのドラマ見てたから(笑)」
と被ってしまったタイムテーブルにボヤいていたが、今やミュージックステーションにも出演しているバンドの真裏という時間帯でしっかりこのステージを埋めているのは大したものである。
夏らしく爽やかな水色のシャツを着たイワオリクがやはり暑いのか頭から水を被ると、後半はこれまでこのバンドのライブでハイライトを担ってきたキラーチューンを連発。
「あの風車にぶつけるくらいの気持ちでロックンロールやってやる!」
というユウモリの気合いは「メリールー」のようなバラードと言えるようなタイプの曲にも燃え盛るような熱気をもたらし、ラストはその燃えるロックンロール魂をここにいる人たち全員に余すことなく届けようとする「僕を撃て」。演奏後に「バイバイ!」とだけ言ってあっという間にステージからいなくなるのがまた実に潔かった。
このバンドはひたすらにライブで名を上げてきたバンドである。だからこそライブはいつも素晴らしいな、と思うのだが、先輩のロックンロールバンドたちに比べるとまだ「これぞ!」と思えるような曲がないように感じていた。しかしこのリリースペースの速さとそれに見合う楽曲のクオリティの向上っぷりからは、来月に控える新木場STUDIO COASTワンマンをさらに超えるような規模でこのバンドがワンマンをやる日、つまりそれはフェスにおいてももっと大きなステージに立つ日がすぐに来るはず。
1.MARIA
2.天使のスーツケース
3.Lonely Lovely Man
4.LULU
5.トラッシュ
6.メリールー
7.僕を撃て
16:00〜 04 Limited Sazabys [WINDMILL FIELD]
自身の主催フェス「YON FES」が終わっても春フェスに出演しまくっている、フォーリミ。このフェスは4年連続出演となり、初出演のNEW BEAT SQUAREからSEASIDE PARK、そして去年に続いてこのWINDMILL FIELDに登場。
おなじみのオリジナルSEでメンバーが登場すると、ツービートのファストなパンクナンバー「My HERO」でスタートし、今やすっかりライブの定番曲となった昨年リリースの最新アルバム「SOIL」収録の、GENの愛猫家っぷりが炸裂している「Kitchen」に挟まれて過去曲となる「Warp」も演奏される。GENのハイトーンボイスはこうした青空の下だからこそより一層映えるし、RYU-TAはいつにも増してカメラに向かって変顔を見せたりしながらギターを弾く。
「続いてのナンバーは、04 Limited Sazabysで「swim」〜」
とテレ朝のフェスだからかどこかタモリのモノマネのような口調で曲紹介をして「swim」を演奏すると、
「自分で自分のカッコよさに引いてる」
と言ってしまうくらいにこの日も絶好調であり、ショートパンクチューン「Message」から「fiction」や「escape」という定番曲に挟まれて幻想的なイントロからサビで一気にパンクに飛翔していく「Mahoroba」というレア曲まで、短い曲が多い上に持ち時間が長いということもあるし、何よりもやはりフォーリミのライブはテンポが良い。だからみんなが聴きたい代表曲も聴けるし、ワンマンに行っているようなファンでも喜ぶようなレア曲が聴ける。
しかしながらモッシュ・ダイブに関するルールが厳格化したこのフェスにおいてもサークルを作る人が結構おり、
GEN「東京はサークルやっていいんだっけ?」
RYU-TA「いや、ダメでしょ」
GEN「大阪はめちゃくちゃ厳しかったよね。看守みたいな人が見ててサークル作った人がすぐ連れていかれてた(笑)
でももうサークル文化みたいのやめない?楽しそうなのはいいんだけど、全然サビじゃないところでやったりして。あんなイキって仕切ってるのに曲知らんのかい!って。できればこっち見て欲しいしね」
とGENは現在のどんな音楽や曲でもサークルを作るというフェスの楽しみ方に苦言を呈す。
フォーリミは普段のライブではモッシュもダイブも全く禁止していないが、前にSWEET LOVE SHOWERでのライブ中にリフトしまくる観客たちに対して
「それじゃ始められない。飛びたいんなら自分の力で上がってこいよ!」
と言ってリフトをやめさせたこともあった。
「ステージに立ってるバンドがライブでどんな景色が見たいか」
ということを語っていたのはSiMのMAHであるが、フォーリミはそこに関しては予定調和的なものは見たくない、衝動に溢れた景色が見たいのだろうし、自分たちの音楽とライブでその衝動を呼び起こしたいと思っている。それはメンバーたちがかつて観客としてライブのそういう部分に魅せられてきたからというのもあるのだろう。
実際、かつてこのフェスではKANA-BOONの谷口鮪も、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎もサークルが頻発する客席に対して
「もっと演奏している姿を見てほしい」
と言ったことがあった。楽しみ方は人それぞれであるが、それぞれだからこそ望まぬ楽しみ方がある人もいる。それはこれからもライブに行き続ける我々が考えなければならないことだけど、こういうことをSNSなどではなくてステージから直接言える(それはライブの空気を悪くしてしまう可能性もある)GENという男は本当にカッコいいな、と思う。
実際にその発言の後は、そう言わなかったらこの曲でもサークルができていただろうな、と思える「Letter」から、ほとんどの観客はメンバーが演奏する姿をじっくりと見ていたし、だからこそ「hello」はちょうどいい絶妙な温度で演奏に向き合うことができた。
持ち時間が50分のステージを任せられたからこそ、ここからまた生まれ変わるように「Squall」を渾身の力で(KOUHEIのドラムが実に力強く感じる)演奏すると、
「大阪から始まったこのフェスの4日間の沸点を記録する時間が来ました!」
と言って「monolith」を演奏してもまだ終わらず、
「まだ時間あるみたいなんで、もう1曲!さっきサークル嫌いみたいに言ったけど、サークルモッシュは大好きです!怒られるかな?」
と言って演奏された「Remember」では左回りのサークルモッシュが大量に出現。それはこの曲が演奏されたことによる衝動によるものだっただろうか。そうであって欲しいし、バンドの演奏は確かにそれを与えるものだった。
フェス後、GENはツイッターでこの時の発言などに対する思いの丈を綴っていた。言葉は難しい。目の前で聞いていても100%伝わらないこともある。現地でライブを見ていた人にすらそうなのだから、ツイッターで見ている人はより一層そうだろう。
フォーリミはCOUNTDOWN JAPANに初出演した時にもダイブ禁止のフェスのステージで
「僕らのライブは抑えられるような衝動しか与えられてないんですかねぇ!?」
と言っていた。それは怖いもの知らずというか、やりたい放題やるのがこのバンドのやり方だった頃だからというのもあっただろうけれど、今でもライブで「衝動」を最も求めている姿勢は全く変わっていない。
でも変わったことがあるとすれば、今のフォーリミにはあの頃にはなかった責任感がある。フェスに出るだけの立場ではなく、フェスをやる側の立場にもなった。だからこそなぜこのフェスが厳しいルールを課すようになったのかもちゃんと理解した上で出演しているはず。だからこそGENのこうした発言をしっかりと受け止めたいし、GENだけでなくKOUHEIもこうしたライブや音楽に関する様々なことに頭を働かせて発言をしていることが本当に頼もしく感じる。だからこそ思い悩んだりはしないで欲しい。自身が「Squall」の演奏前に言っているように。
リハ.days
リハ.knife
リハ.nem…
1.My HERO
2.Warp
3.Kitchen
4.swim
5.Message
6.fiction
7.Mahoroba
8.escape
9.Letter
10.hello
11.Squall
12.monolith
13.Remember
17:00〜 King Gnu [SEASIDE PARK]
今、最もバズっているバンドと言える、King Gnu。今年リリースのアルバム「Sympa」も大ヒットし、昨年のNEW BEAT SQUAREからSEASIDE PARKへ進出。それでもやはり超満員というあたりに今のこのバンドの勢いを感じさせる。
メンバー4人が登場すると、常田大希が客席を見渡して笑顔で会釈。クールなイメージがあるが、この辺りは実に人間らしさを感じる。その常田が拡声器を持ってアジテートするかのように歌う「Slumberland」からスタートすると、常田がギターにスイッチし、独特なキャラクターでも人気を博す井口理がそのキャラクターとは裏腹の美しい歌声を響かせる。もともと声楽について学んでいたらしいが、歌が上手いだけではない声の力を感じさせる。この声を持っているバンドというのはそれだけでも相当に強いが、時にはシンセも演奏する新井和輝のベースと髪型が非常によく変わる勢喜遊のドラムも凄まじい演奏力の高さを見せてくれる。
井口が
「二の腕〜!」
などの意味がよくわからないコール&レスポンスをすると、ドラマ主題歌としてこのバンドの存在をお茶の間にまで轟かせた「白日」でより一層井口の声の美しさが加速していく。
すると勢喜のドラムソロから始まり、メンバーのセッション的な演奏のイントロが追加された「Flash!!」へ。常田のギターもビックリするくらいに上手いが、井口はタンバリンを叩きながらステージを暴れまくる。さすがにthe telephonesのノブほどの無軌道っぷりというわけではないが、初めて見た人からしたら衝撃的だろう。
そんな中で常田が合唱を促したのは「Prayer X」。こうした井口が歌い上げるような曲で合唱を煽るというのは意外であったが、しっかり歌えるくらいに観客にこの曲が浸透しているというのもまた少し意外であった。
「夕焼けがキレイな時間になってきましたね…。たまにはしっとりしたことも言いますよ(笑)」
と井口が笑わせながら、海が客席の奥に見えるこのステージの夕焼けに実に似合う「The hole」では井口の喋りと歌のギャップの凄まじさを感じる美しさ。メンバーは「Sympa」に絶対的な自信を持っているだろうけれど、それはこのメロディの美しさを前面に出したバラード曲をフェスで演奏するという部分からも感じる。
そしてラストは再び常田が拡声器を持ってステージを歩き回りながら歌う、都会の猥雑さをクールなサウンドによって感じさせる「Tokyo Rendez-Vous」。東京の野外で東京を歌ったこの曲を聴ける機会というのは実はそうそうない。都内で開催される都市型ロックフェスというこのフェスのテーマにこのバンドがぴったりな存在であるということを実感させた瞬間だった。
「白日」が終わった後にかなりの人が抜けていったのを見た時は、数年前にSuchmosがこのステージに出演して「STAY TUNE」を演奏した後のことを彷彿とさせられてしまったし、実際によく比較されることもあるが、このバンドは「Flash!!」リリース時のMUSICAのインタビューでも明確にアッパーな方向に舵を切ったことを語っていた。しかしだいたい技巧的であればあるほど熱量よりも巧さだけが目立ってしまう。でもKing Gnuはそこを見事に両立させるライブができている。そんなバンドは実はなかなかいないけれど、挙げるとするならばこのバンドの学校の先輩であるパスピエ。実は比較されるべきはそこなんじゃないかと思う。(常田と元パスピエのやおたくやが一緒に米津玄師の「爱丽丝」に参加しているのも含めて)
1.Slumberland
2.Sorrows
3.Vinyl
4.白日
5.Flash!!
6.Prayer X
7.The hole
8.Tokyo Rendez-Vous
17:40〜 THE ORAL CIGARETTES [WINDMILL FIELD]
このバンドも初出演時はやはりNEW BEAT SQUARE。それから出演を重ねてついにメインステージのトリ前、前日のスタジアムバンドUVERworldと同じ位置まで辿り着いた、THE ORAL CIGARETTES。自身も今やアリーナクラスのバンドになっているだけに然るべき位置というところだろうか。
赤いパーカーのフードを被ったあきらかにあきら、久しぶりに見たら髪が非常に長くなっている鈴木重伸に比べると山中拓也のスポーティーな出で立ちが実に普通に見える中で始まったのは「嫌い」。まさか1曲目から「嫌い 嫌い」と連呼されるようになるとは。
続く「起死回生STORY」「Shala La」という曲では山中がギターを弾きながら歌う、ギターロックバンドとしてのオーラル的なイメージの強い曲だが、MVで山中が華麗なダンスを見せて話題を呼んだ「ワガママで誤魔化さないで」からは山中はハンドマイクで歌い始め、ライブのモードが変わる。
そのモードの切り替わりが顕著だったのは
「夕焼けが似合う曲」
と言って演奏された「Color Tokyo」。King Gnuの「Tokyo Rendez-Vous」とはまた違った角度での、山中ならではの東京の切り取り方であるが、この曲もまた東京の野外の会場で聴けることはそうそうないだけに、このフェスが東京で開催されていて、このバンドがこのフェスで大きくなってきた必然のようなものを感じさせる。
そこからはおなじみのキラーチューン祭り。コーラス部分で大合唱を巻き起こした「容姿端麗な嘘」はこのコーナーに入る中では新しい部類に入る曲であるが、その合唱の大きさを聴くともはや完全にキラーチューン以外のなにものでもないな、と思う。
若い観客たちがタイトル通りに暴れ狂った「狂乱Hey Kids!!」では山中が演奏後に
「よくできました!」
とキッズたちを称え、バンド最大の代表曲と言っていいくらいの存在になった「BLACK MEMORY」ではやはりイントロの
「Get it up」
のフレーズで大合唱が起きる。気づいた時にはあまりの熱気からか、あきらかにあきらがパーカーのフードを被るのをやめて頭を完全に出している。
そしてそんなキラーチューン祭りの最後を飾ったのは昨年リリースのアルバム「Kisses and Kills」収録の「PSYCHOPATH」というのは実に意外であったし、演奏終了後に少し「え?これで終わり?」的な空気があったのは確かである。
しかしこのバンドがいわゆるギターロック的なシーンから今や完全に飛び出して確固たる立ち位置を確立できたのはこうしたダークな世界観の曲を自分たちのものにすることができるようになったからだ。かつては「コンプレックスだった」という山中の声もそうしたタイプの曲だからこそより一層映える。
鈴木が「Mr.ファントム」の演奏中にステージから飛び降りてギターを弾いたNEW BEAT SQUAREでの初出演時から、このバンドのライブ力は飛び抜けていた。そこに今はこのバンドならではの世界観が加わっていて、まさに唯一無二の存在になっている。この位置まで来れたのは当然だし、もしかしたらNEW BEAT SQUAREに立った時からメンバーにはこの景色が描けていたのかもしれない。そういえば、かつては弱気なように見えたこともあった山中の表情は今までこのフェスで見た中で最も自信に満ち溢れていたように見えた。
1.嫌い
2.起死回生STORY
3.Shala La
4.ワガママで誤魔化さないで
5.Color Tokyo
6.容姿端麗な嘘
7.狂乱Hey Kids!!
8.BLACK MEMORY
9.PSYCHOPATH
18:40〜 SUPER BEAVER [SEASIDE PARK]
いよいよ2日間に渡って様々なアーティストが熱演を繰り広げてきたこのフェスも各ステージが最後のアクトを迎える。SEASIDE PARKのトリはSUPER BEAVER。意外にもこのフェス初出演だが、初出演にしてこのステージのトリという重要な位置を任せられた。
裏が強いとは思えないくらいに超満員の観客が待ち構える中でメンバーがステージに登場すると、
「ROCKと名のつくこのイベントにポップミュージックの爆弾を落としにきました、SUPER BEAVERです」
と挨拶してから、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と渋谷龍太が歌い始める「27」からスタート。さらに「閃光」と続くことによって、今はこうして当たり前のようにライブを見ているが、この人生にもいつか終わりが来るという現実と向き合わされる。その時に自分は何を思うのだろうか。少なくとも後悔だけはしないような人生を送りたいと思っているし、それは渋谷のよく口にする
「伝えたいことがあるのなら、すぐに言わなくちゃ」
という言葉と同じことだ。
King Gnu、THE ORAL CIGARETTESと「東京」をテーマにした曲を演奏したバンドが続いたが、SUPER BEAVERもこの日は「東京流星群」を演奏。これは明らかに東京の野外フェスの夜のステージということを意識した選曲であると思われるが、やはり東京の捉え方、切り取り方は前に出た2バンドとは全く違う。この日は快晴ではあったものの、季節柄か星は見れなかったけれど、この曲を聴きながら見上げた東京の夜空には星が輝いているような、そしてその星が流れゆく様に願いを込めるかのようにロマンチックだ。
「手を上げろって言って手をあげたり、手拍子しろって言って手拍子するんじゃただの作業じゃねぇか。こっちは100%でやってるんだからお前も100%で来い!」
と渋谷がバンドの姿勢を語るようにして煽ると大合唱が起こったのは「予感」「秘密」というフェスでもおなじみのポップな曲たち。
そしてトリとはいえあっという間に最後の曲となったのはこの位置を任せてくれたこのフェスへの感謝を告げた「ありがとう」。
このバンドは大事な位置を自分たちに任せてくれた期待や思いを自分たちの音に乗せて返してくれる。愛するこの場所で見れて、大切をくれてありがとう。
アンコールを待つ観客が手拍子をすると、渋谷が先にステージに登場したと思いきや、
「このステージに立つアーティストには均等に時間が与えられている。我々はその時間で持ちうる全てを使いました。なのでこの続きはまたライブハウスでやりましょう」
と告げ、アンコールをやることなくステージを去った。別に説明しなくてもアンコールをやらないでそのまま終わるパターンもたくさんある。でも自分の口でなぜそうなのかというのを目の前にいるあなたに言わないと自分たちが納得できない。やっぱりものすごく誠実なバンドだと思う。
1.27
2.閃光
3.東京流星群
4.予感
5.秘密
6.ありがとう
19:40〜 WANIMA [WINDMILL FIELD]
初出演はNEW BEAT SQUAREのトリ、2年前はSEASIDE PARKのトリ、そして3回目の出演となる今回はWINDMILL FIELDのトリ。つまりこのフェスの3つのステージ全てでトリを務めたバンドということになる、WANIMA。もちろんそんなバンドはほかに誰もいない。
時間前になると高額求人の「バニラ」のテーマ曲をWANIMAバージョンにアレンジした音楽が流れ始めて客席は笑いが起こるとともに期待が高まる中、これはSEではなかったらしく、「JUICE UP!!のテーマ」をSEにメンバーが登場。KENTAはカメラに向かって顔を密着させたり、FUJIがひとしきり踊ったりしてから、
「みんな今日一日お疲れ様ー!」
と言って「THANX」からスタートすると、真夏日の中で一日中ライブを見ていた疲れとかはどこに?というくらいに超満員の観客(間違いなく2日間の最多動員だろう)みんなが飛び跳ねまくり、歌いまくり。気づいたら自分も飛び跳ねまくりながら歌っていて、ビックリした。2日通しで休むことなくひたすらライブを見続けてきたのにまだまだ足が動くし声も出る。WANIMAのライブはいつもそういう限界のさらにその先に行ける力をくれる。だからこれだけ沢山の人が翌日は月曜日なのに帰ることなくWANIMAのことを待っている。
WANIMAは出てきた時からライブの力は凄まじかったし、氣志團の綾小路翔も
「このバンドに誰が勝てるんだ!?って思うくらいにすごい」
と口にしていたが、そのすごさがさらに増しまくっている。テレビに出る以上に日本の様々な会場(それは小さなライブハウスからスタジアムまで)でライブをしてきてさらに筋力を増してきている。
さらにWANIMAは紛れもなくパンクバンドであるが、今まではほかのパンクバンドに比べるとライブのテンポはそんなに速いバンドじゃなかった。それは結構メンバーが喋るからというのもあるだろうが、この日は本当にテンポが良かった。曲間をほとんど置かずに次々に曲が演奏されたし、MCもそこまで多くなかった。
そんな中でFUJIがサングラスをかけて長渕剛のモノマネをすると、
「去年1番咲いてくれた曲だと思います」
と明らかにライブを何回も見たことあるんだろうなと思う前フリから歌い始めたのは、あいみょんの「マリーゴールド」。なので「長渕剛が歌うマリーゴールド」というネタなのだが、長渕剛のモノマネのクオリティが非常に高くなっているし、「マリーゴールド」を歌う歌唱力も高くなっている。これもまたバンドの進化と言っていい部分なのだろうか。
大ヒット曲「ともに」を挟む形で「いいから」「渚の泡沫」「オドルヨル」というWANIMAのエロサイドの曲も存分に演奏されていくが、夜だからこそよりエロさに磨きがかかっているように見えたし、KENTAは前日の[ALEXANDROS]の川上洋平と同様に何度も
「気持ちいいー!」
と叫んでいた。心地良い風が吹いている涼しさもそうだが、自分の声が何の不安もないくらいにしっかり響いていて、それが後ろの方まで届いているという実感もあったのだろう。
「WANIMAにとって大事な曲をやるけん」
と言って、歌い出しの「拝啓」のフレーズを何度もしっかり音を取ってから歌い始めた「1106」はKENTAの祖父に対する思いが溢れまくっていて、聴いていて涙が出てしまう。これまでに何度もライブで聴いている曲であるが、そうした感情をより一層自分たちの音に乗せることができるようになっている。目に見えてわかりやすいものではないけれど、それがWANIMAの最大の進化だろう。
「明日仕事の人も学校の人もいっぱいいるやろうけど、さっきMETROCKの偉い人が明日は休んでいいって言ってました!METROCKだから仕方ないけんって!」
と言いながらも明日の我々の仕事や学校に向かうための力を与える「シグナル」を鳴らすと、
「アンコール!アンコール!」
とKENTAが自発的にアンコールを求めると「Hey Lady」でこの日最大の大合唱を巻き起こす。なのでこれがアンコールなのかと思いきや、3人は再びステージに登場。この流れで最後に何をやるのだろうか?と思っていたら、最後に演奏されたのはエロサイドの「BIG UP」だったのだが、その音の大きさと強さは凄まじかった。WANIMAがパンクバンドとしてスタジアムまで行けたのはもちろん曲が良いからという理由もあるが、その曲をライブでさらに強く響かせることができるというライブバンドだからであるということを改めて感じさせてくれた。
2年前までこのフェスは毎年トリを[ALEXANDROS]とサカナクションがやっていて、それはその両者があまりにも強すぎるが故になかなか若手バンドでそこを崩せるバンドはいないよなぁと思っていたのだが、自分はWANIMAがNEW BEAT SQUAREに初出演した時に、「それを変えられる可能性があるのはWANIMA」と書いた。今年はサカナクションが出なかったという理由もあるが、その予想(きっと自分だけでなくあの時に入りきれないくらいの状況でWANIMAを見ていた人みんなが思っていたはず)は3年後にこうして現実になった。ロックバンドには、パンクには夢があるよなぁと思うし、この景色が見れるのは3年前から決まっていたかのようだ。
横で小学生くらいの女の子が飛び跳ねまくっていて(誰よりも曲をちゃんと覚えている)、隣の親が腕を挙げて歌っている。あの歳でパンクを聴けるのがうらやましいなと思うし、10年20年経ってもパンクを聴いてライブに行けると思える。高校生の頃にパンクに出会ってから、パンクは若者や10代のものであり、自分自身10代の時に出会ったから響いたのだと思っていた。でもこの景色はパンクがそういうものじゃなくて、どんな世代の人にも響くということを何よりもわかりやすく証明していた。WANIMAが出てくるまではこんな未来を全く予想してなかった。これからもきっとずっとパンクを聴いていられる。そう思えることが何よりも嬉しかった。
1.THANX
2.OLE!!!
3.アゲイン
4.昨日の歌
5.Japanese Pride
6.いいから
7.ともに
8.渚の泡沫
9.オドルヨル
10.1106
11.シグナル
12.Hey Lady
encore
13.BIG UP
初開催から7年連続、ROCKS TOKYO時代から数えるとこの時期にこの会場に10年連続で来ている。そこまで来ていると、この会場やこのフェスにたくさんの思い出や思い入れが生まれる。今となっては当たり前のようにワンマンに行っているバンドを初めてこの場所で見たり、もう見れないバンドをこの場所で見たり、関ジャニ∞みたいに普段は見れないようなアーティストのライブを見たこともある。
それは思い返しても本当に楽しい思い出ばかりだし、それが楽しかったのは決してモッシュやダイブがOKだったからじゃない。どんな楽しみ方であれ、ただここでアーティストのライブを見ることが本当に楽しかったのだ。だから「モッシュ・ダイブ禁止」が厳格化されたお知らせが出た時に、このフェスに来たことがない人に「クソフェス」「他のフェス行った方がいい」的なことを言われていたのは少し悲しかったけれど、やっぱり今年も本当に楽しかったし、その楽しかったことをこれだけたくさんの人がわかっていればそれでいいのかもしれない。
たとえば、SUPER BEAVERが終わった後にSEASIDE PARKのスタッフが「もうこのステージには戻れないので、また来年来てください!WANIMA行く方は楽しんでください!」と言っていた。来年その人がスタッフをやってるかはわからないし、それはライブと関係ないことだけど、そういうアナウンスをしたからと言って彼の給料が上がったりすることでもないだろう。他にもそのエリアではたくさんのスタッフが通る人に声をかけていたり、リストバンドゲートをくぐる際にハイタッチをしたりしていた。それはそうしなきゃいけない仕事というよりも、このフェスやこの会場がそうしたいと思うような空気を持っているからだ。そしてその空気はスタッフから客に広がっていく。だからこのフェスからはいつも平和な空気を感じる。
そういう景色を見るとますますこのフェスのことが好きになるし、来年も必ずこうしてここに来たいと思える。ルールや出演者が変わっても、そう思えるフェスだということは変わらないし、そう思う人がたくさんいるからこそ、毎年即完するようなフェスになった。だからまた来年、必ずこの風車の下で。
文 ソノダマン