渡部建と森高千里が司会をやっているフジテレビの深夜の音楽番組、LOVE MUSIC。ロックフェスに出るようなロックバンドもこれまでに数多く出演しているということもあり、幕張メッセイベントホールにて2日間に渡ってフェスを開催。
なのでてっきり渡部建と森高千里が司会で出てくるのかと思いきや、仕事の都合で来れないということで、番組のプロデューサーが前説。
COUNTDOWN JAPANではASTRO ARENAとして使われている幕張メッセイベントホールにLOVE STAGEとHAPPY STAGEという横並びの2ステージを設営した構成。なので幕張メッセではあるけれどステージ自体は広くないというかライブハウスのような狭さにすら感じる。
開場すると同時にオープニングDJのやついいちろうがDJで観客を温めると最初のアーティストへ。
12:00〜 フレンズ [HAPPY STAGE]
先週のMETROCKに続いてのフレンズ。先週同様に長島涼平はthe telephonesとのダブルヘッダーだが、これは決してtelephonesのバーター的な意味合いではないだろう。
メンバーが登場すると、先週のMETROCKの時も最後に演奏されていたし、基本的にフェスでは最後を担うパターンが多い「Love, ya!」からスタートし、おかもとえみとひろせひろせのMC2人は去年から出たかったというこのフェスのタイトルなどを曲名に入れるようにアレンジするという形を見せてくれる。最初にこの曲を演奏することでだいぶイメージや流れは変わるし、それは先週の野外フェスとこの日の室内というシチュエーションの違いにも顕著である。
続いての「常夏ヴァカンス」によって気分は完全に夏だが、ムーディーなラブソングの新曲「iをyou」を披露すると、この日もハイトーンな声を随所で発揮していた三浦太郎がこの日から新グッズが販売されていることを告知すると、おかもとが
「今日は大事な「4ブ」をみなさんに教えたいと思います!」
と言うと会場には大量の「?」マークが。「4ブ」とは「マブ」「デブ」「ダブ」「ラブ」という4つの「ブ」という末尾の単語のことであり、それを一つずつ言いながらその場で回転するというおかもとの試みにいつものようにひろせがツッコミを入れまくりながらもそれを観客がやり切ると、
「タイミング、バッチリー!」
と言ってブラック・ビスケッツの「Timing 〜タイミング〜」のカバーへ。各メンバーのソロ回しを含め、ちゃんとこのバンドの形でカバーするという意味を持ちながら、90年代の大ヒットJ-POPへのリスペクトを見せる。それは高い技術とポップであることという信念を持ち合わせたこのバンドだからできること。おかもとはビビアン・スーばりに振り付けを踊りながら歌うのがまた楽しい。
そして最後はこの会場が今まさに地球の中心であるということを歌う「地球を超えても」。フェスでこの曲を最後に演奏するというのはかなり珍しい気もするけれど、それが先週とはまた違うライブであることを示してくれたし、パンク・ラウド系のバンドが多い中でのトップバッターとして涼しい風を吹かせてくれた。
1.Love, ya!
2.常夏ヴァカンス
3.iをyou
4.Timing 〜タイミング〜
5.地球を超えても
12:35〜 四星球 [LOVE STAGE]
このフェスはフジテレビの音楽番組のイベントである。ということでフジテレビで放送されているアニメの人気キャラクターであるONE PIECEのルフィをU太(ベース)、ちびまる子ちゃんの永沢君をまさやん(ギター)がコスプレして登場するも、最後に客席の後方からプロレス形式で登場してきたモリス(ドラム)はなぜかテレ朝で放送されているドラえもんのコスプレで、メンバーたちから「あかんあかん!」と総ツッコミを食らう。しかも顔が白塗りではなく赤く塗られているのがまた怖い。
そんなドラえもんモリスがステージに到達すると、北島(ボーカル)がカンペらしきものを見ながら、
「1曲目からクライマックスで!」
と言っていきなりの「クラーク博士と僕」で北島がステージに突入するも、サビ前でいったん演奏をストップさせ、
「僕がこっちに来たらもっとみんな前に押し寄せるって書いてありましたよ!みなさん!さっき前説をやっていたこのフェスのプロデューサーの人は、年間200本くらいライブハウスにライブを観に行っている人です。全てお金払ってるわけではないと思いますけど(笑)
つまりみなさんのお友達です!お友達がやってるフェスと番組なわけですよ!だから、神回にしましょう。お茶の間に見せつけてやりましょう!」
と自分たちがなぜこのフェスに出演しているのか、なんならなぜこんなに地上波らしからぬメンツがこの日に揃ったのかという回答を一発で示す。
ギターのまさやんが作った段ボールの小道具が大活躍する「鋼鉄の段ボーラーまさゆき」では北島が両ステージの間にそびえるペガサスのオブジェにニンジンを与えようとしたり、いつ曲が終わるかわからないくらいに続く「言うてますけども」では番組のナレーションを担当するアイクぬわらがステージに登場し、自身が担当している東京ディズニーシーの入り口のナレーションに加えて、四星球を番組で紹介するようなナレーションも披露されるのだが、それすらも「言うてますけども」のネタ振りになるという恐ろしさ。
客席を北島が走り回るのがおなじみの「Mr.COSMO」ではステージから降りる際にミュージックステーションのテーマ曲を演奏するというフジテレビとしてオンエアできないようなネタもぶっ込みながら、
「客席に入るとどこにいるかわからなくなるから、目立つものを持ってください」
という理由で、段ボールで作った往年のミニスカで歌っていた時代の森高千里の足を持って走り回るも、最後には折れてしまっているというとんでもない事態に。
そしてラストはフジテレビへの愛を示す「HEY! HEY! HEY!に出たかった」(過去のゴールデン枠ではないが本当に出演した)で再び北島が客席に突入すると、
「私がオバさんになってもライブハウスに来てください!」
と番組MCの森高千里へのリスペクトを込めた決めゼリフを叫ぶ。書ききれないほどの細かいネタを含め、このバンドはどれだけこの一本のライブのために準備を重ねているのだろうか。
演奏が終わると発狂したモリスが最後にマイクで喋ろうとするのだが、何を言っているのか全くわからず、
「何言ってるの!?怖い怖い怖い!」
と北島が言うと、世にも奇妙な物語のBGMが鳴って場内が暗転し、そのまま終了した。最後までフジテレビネタを貫いたが、この発想力と実行力からは本当に天才の集団だな、と思わされるし、たった30分くらいの出演でこの日をこの日だけでしかない特別な瞬間に変えてしまう。こんなことができるバンドは他に誰もいない。
1.クラーク博士と僕
2.鋼鉄の段ボーラーまさゆき
3.言うてますけども
4.Mr.COSMO
5.HEY! HEY! HEY!に出たかった
13:20〜 キュウソネコカミ [HAPPY STAGE]
このフェスはライブ前に渡部建と森高千里による紹介VTRが流れるのだが、そこで
「前に出演した時に「ポンコツエリート」って紹介したら「誰がポンコツエリートやねん!」ってキレてた(笑)」
と紹介された、キュウソネコカミ。改めてこの日つけられたキャッチコピーは「誇り高きポンコツエリート」。
ライブは「ビビった」からスタートするのは先週のMETROCKの時と同様だが、2曲目で早くもMETROCKの時は最後に演奏されていた「The band」を演奏し、全くライブの流れは変わる。先週は喉の調子が悪く、観客に合唱を求めていたセイヤもこの日は全く問題なさそう。
「KMDT25」では
「広がらないように小さい輪をいくつも作って!迷惑にならないようなサークルを楽しみましょう!」
と言って客席にいくつもの盆踊りサークルを出現させたが、サークルが厳しく禁止されていたMETROCK東京ではこの曲をやらなかったことを考えると、そうしたルールや状況に応じて演奏する曲を変えているのだろう。(METROCK大阪ではこの曲をやっていたらしいが)
「新しい曲も大事ですが、昔の曲も等しく愛でていきたい。だから昔の曲をアレンジを変えたりして演奏します」
と言って演奏されたのは実に久しぶりの「ファッションミュージック」。セイヤの言葉通りにオカザワのギターとヨコタのキーボードがややオリエンタルな雰囲気を醸し出す新しいアレンジに。ただ昔の曲を演奏するのではなく、今のバンドだからできる進化した形で演奏している。この後ツアーで見た際にもそうした新しいアレンジでの昔の曲を聴けるのだろうか。
「TOSHI-LOWさん」ではやはりセイヤが客席に突入し、かなり流されたり落ちそうになったりしながら観客の上を渡り歩いていくのだが、その際にハンドマイクの調子が悪くなってしまい、歌が聞こえなくなる。なんとかしてセイヤが観客の上に立って安定すると、最後のサビ前にスタッフがマイクスタンド用の有線マイクをセイヤに渡そうとするのだが、さすがに客席の中にいるだけにセイヤのところまで手渡しできない。
それを見た観客たちはバトンリレーのように次々にマイクを渡してセイヤのところまで素早く届ける。何気ないような場面であったが、もっと時間がかかってもおかしくないし、リレーする際に調子に乗ったやつがいたらマイクを自分で使おうとしたかもしれない。でもそうしたことは一切ない。みんなが少しでも早くセイヤにマイクを渡そうとしていた。それはバンドが日頃から口にしている「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」という言葉がしっかりとファンの人たちに行き届いているから。その言葉を実践してきたのは誰よりもメンバー5人だったということもあるが、見た目はまだTOSHI-LOWのように威圧感はないけれど、そうした自分以外の人たちも合わせた力はTOSHI-LOW同様にリスペクトを集める存在になってきている。
そして「誇り高きポンコツエリート」と評された男たちのポンコツ賛歌「ハッピーポンコツ」ではソゴウの「1,2,3,4」のカウントの部分でヨコタがマイクを持って近づいてそのマイクに向かってカウントさせ(ソゴウのドラムにもマイクは付いているけれど)、最後は
「一緒に成長していこうぜー!」
と最新作からの「推しのいる生活」。キュウソという推しのバンドが存在していて、そのバンドが成長していく姿を見ながら我々も年齢を重ねていくことができる。それが本当に幸せだし、こうした春フェスでのいろんなライブはツアーやさらにその先のこのバンドにとってまた大きな力や経験になるはず。
リハ.MEGA SHAKE IT!!
1.ビビった
2.The band
3.メンヘラちゃん
4.KMDT25
5.ファッションミュージック
6.TOSHI-LOWさん
7.ハッピーポンコツ
8.推しのいる生活
14:05〜 the telephones [LOVE STAGE]
the telephonesが今年初頭に行った、まだ行ったことのない場所に行くツアーにおいて、このLOVE MUSICはツアーのリハーサルから初日の佐賀公演に密着、バンドのファンである藤井弘輝アナ(藤井フミヤの息子)までもが佐賀にまで来るというtelephonesへの愛を見せた番組で、リハーサルにおいてメンバーも
「1番気合いが入ってるのはLOVE MUSIC FES」
とも語っていた。(リップサービス丸出しだったけれど)
しかしその言葉はちゃんと演奏に現れていて、活動再開後は1曲目に演奏されることの多い「Monkey Discooooooo」でスタートすると、メンバーの気合いが入っているのがよくわかるし、その気合いが入りすぎたノブは「Baby, Baby, Baby」でカウベルを叩きながら客席に突入すると、そのまま客席から外の飲食ブースの方にまで出て行ってしまう。なのでステージには3人しかいないし、残った3人も「あいつどこ行った?」的な表情を浮かべながら演奏していたのだが、ノブは飲食ブースでご飯を食べている人と記念撮影していたらしい。ノブのことがわかるくらいにtelephonesのことを知っているのならライブを見ていて欲しかったとも思うけれど。
そんなノブのキテレツっぷりを見せながらも「electric girl」からは「みんなを踊らせに来た」という言葉通りに音で体を動かせる曲が続く。しかもアウトロと次の「HABANERO」のイントロをつなげるようなアレンジによってさらにダンサブルになっているが、こうしたアレンジはLOVE MUSICスタッフが密着していたツアーの佐賀でも行われていたので、この日にそれをやったのはそれを見に来てくれたこの番組への恩返し的な側面もあったのかもしれない。
そして地上波の番組でツアーに密着してくれたことへの感謝を告げ、それを音楽という形にして返すことを語ると、石毛による「ウィーアー?」「ディスコ!」のコール&レスポンスからの「urban disco」ではノブが再び客席に突入していき、ラストの「Love & DISCO」では石毛がタイトルを
「Love & MUSIC DISCO」
と変えて紹介していた。このフェスは活動休止前に出ていたフェスじゃない(そもそも休止前はこのフェス自体がなかった)から、もしかしたらこの曲はやらないんじゃないかと思っていた。
でも番組タイトルにかかっていたのもあるし、何よりも今のtelephonesを大事に思ってくれているのをしっかりと伝えてくれたからこそ、バンドはその想いに応える意味でトリではない時間帯であってもこの曲を演奏したと思っている。だからやっぱりこの日もこの曲が描き出した景色は感動的なものだった。
ただMETROCKの時もそうだったけれど、もうこうしたフェスのメイン出演層はtelephonesよりも一世代下のバンドたちで、もはやその中に入るとtelephonesはベテランと言っていい立ち位置だし、だからこそ客層的にはもう活動休止前のtelephonesのことも、telephonesがどんなバンドなのかも知らない人たちがたくさんいる。
だからこうして若手バンドたちの間に挟まれると休憩時間にされてしまうということもわかった。(出演時間的にも)
かつては良くも悪くも「フェスバンド」と言われ、フェスではメインステージに何万人も集まるのにワンマンではなかなかそこまで行けなかったけれど、フェスでもそうなるというのはあの頃は想像できなかった。確かにそもそも誰しもが知る大ヒット曲があるバンドなわけではないし、復活後に大きなトピックがあったわけでもない。
じゃあもう小さいステージで細々と出演していればいいのだろうか、とも思うけれども、それもなんかやっぱり違う。telephonesの音楽は消費されるだけだったり、「もう時代遅れだ」って思われるようなものではないって今でも信じ続けているからだ。で、こうして呼んでくれるフェスがたくさんあるということはそう思っている人がファンだけではなく主催者側にもたくさんいるということだし、出る場所があるということは見てもらえる機会がたくさんあるということ。だからネガティヴには捉えていないし、夏フェスでかつて立っていたステージにまたこのバンドが戻ってくるのを観れるのが本当に楽しみなのだ。
リハ.A.B.C.DISCO
1.Monkey Discooooooo
2.Baby, Baby, Baby
3.electric girl
4.HABANERO
5.urban disco
6.Love & DISCO
14:50〜 SHANK [HAPPY STAGE]
基本的にこのフェスに出演しているのは番組に出演したことのあるバンドばかりであるが、まだ番組に一度も出演したことのないSHANKもこのフェスに出演。主催者側からの熱烈なラブコールによって出演を快諾したらしいが、自身が地元の長崎で主催する「BLAZE UP NAGASAKI」を翌週に控えた大事なタイミングでの出演である。
しかしショートチューン「Surface」でスタートすると、本当に地上波の音楽番組のフェスなのか?と思ってしまうくらいにダイブ・モッシュの嵐。メロディックパンクというスタイルこそ貫いているバンドだが、基本的にどんなルールがある場所でも呼ばれたら出るし、そこでのルールを尊重するというスタイルのバンドである。だからどんなフェスでもバンド側がやることは全く変わらないのだが、この日は客席側も普段のライブハウスと全く変わらない景色を作っている。繰り返すがこれは地上波の音楽番組のフェスである。
「楽屋に主催者からの手紙が置いてあったんですけど、「ちんこ出さなければ何をしてもいいです」って書いてあって(笑)
バンドマンがやりたいことを全部やらせてくれるって最高のフェスだなって。言うほど毎回ちんこ出してるわけじゃないんだけど(笑)もう彼も二児の父なので(笑)」
と庵原(ベース&ボーカル)は笑わせたが、そうしたメッセージを送れるのもこのフェスの主催者が「松崎(ギター)がよくちんこを出す」ということをしっかり知っているからであり、そういうこのバンドを愛する人がやっているフェスに呼ばれたからこそ、このバンドはこうしてこのステージに立っているのだろう。
ベース&ボーカルというスタイルのスリーピースであるがゆえにギターがストレートなパンクからスカの要素を取り入れた曲まで自在に演奏し、庵原も尖った声で叫ぶようにして歌ったりもする中、曲タイトルの通りに朝起きた後の風景が頭に浮かぶ「Wake Up Call」では激しいだけではないこのバンドの持つメロディの良さをしっかりと感じさせてくれるし、このバンドがこうしてメロディックパンクのバンドの中で頭一つ飛び抜けられた理由はそこに尽きるだろう。
そして
「また何かやるんならすぐに呼んでください。フットワークの軽さには自信があるんで」
とこのフェスから確かな愛や感謝を受け取り、これからもそれを返していこうとすることを話すと、「Set the fire」「Hope」という2大キラーチューンを連発して終了かと思いきや、最後にトドメとばかりにショートチューン「BASIC」までをも畳み掛けた。
このメンツの中でもトップクラスに地上波という場所と距離が遠いように見えるバンドである。でもバンド側はそこを拒絶しているわけではないし、この日のライブ映像が地上波で流れることでそのイメージも変わるだろう。何よりも庵原が
「すげえな。ライブハウスと全然変わらん」
と言ったこの景色が地上波で映るというのが実に楽しみだ。
1.Surface
2.Good Night Darling
3.Life is…
4.Weather is beautiful
5.620
6.Smash The Babylon
7.HONESTY
8.It’s not a game
9.Wake Up Call
10.Set the fire
11.Hope
12.BASIC
15:35〜 Dizzy Sunfist [LOVE STAGE]
先日、このDizzy Sunfistのあやぺた(ボーカル&ギター)とUVERworldの彰との結婚&妊娠が発表され、両者のファンからは祝福のコメントが寄せられていたが、Dizzy Sunfistはそれによって決定していた新作のリリースツアーの中止を発表。イベント出演はどうなるのか?と思っていたが、この日のこのイベントには予定通りに出演。
しかしながらやはりいつもと違うというのはあやぺたの立ち位置に椅子が置いてあり、moAiのドラムセットの前にもパーテーションが置かれている。これもまたあやぺたの体に負担をかけないという配慮だろう。
そんな状況なのでライブ自体もおとなしいものになるのか?という予感もしたが、全くそんなことはない。あやぺたはアウトロのブレイク部分などでは椅子に座るタイミングもあったけれど、基本的には普通に立ったままで歌う。前の方に出てギターソロを弾いたりはできないけれど、熱量はいつもと全く変わらないし、それはダイブとモッシュの応酬となっている客席も同じ。
地上波の音楽番組でメロディックパンクのライブが流れるということの喜びをあやぺたが語ると、地上波に映るということを意識してかmoAiが立ち上がってずっとドヤ顔でカメラ目線をしていたのが面白い。
そんな中であやぺたが改めて妊娠していること、そんな状態であっても立たせてくれるステージがあることに感謝を語ると、客席からは「おめでとうー!」という暖かい声が飛ぶ。そんな自分自身とファンがともにもっと強くなっていくために新曲「STRONGER」を披露すると、そこからはキラーチューンを連発し、
「私がオバさんになっても、おかんになってもメロディックパンクはやめへん!」
と強い決意を宣言し、このバンドの挨拶的なフレーズでもある「Yahman!」で最後に最大のダイブの嵐を巻き起こした。
男性は子供ができても変わらずにバンドを続けることができる。でも女性はそうもいかない。どうしても活動を止めざるを得ないし、移り変わりが激しい今のシーン(ましてや最もそれが激しいパンクシーン)において活動休止期間があるというのは怖い部分もあるだろうし、子供ができてバンドから離れて家庭に入っていくという人をこれまでに何人も見てきた。
それはそれぞれの人生だし、実におめでたいし嬉しいことだけれども、ステージに立つ姿が見れなくなるのはやっぱり寂しい。だからこそマキシマム ザ ホルモンのナヲが母親としてのバンドマン道を切り開き、あやぺたがそれに続くことでこれからの女性バンドマンの形や選択肢は今までより広がっていくはず。
何よりも守るべきものができると人は変わる。もっと強くなる。ましてや相手がUVERworldのメンバーなのだ。その守るべき存在ができた時にこのバンドがどうやってさらに強くなっていくのか。きっとそれは今までに見たことのないバンドの形を我々に見せてくれるようになるはずだ。
1.Life Is A Suspense
2.No Answer
3.Dizzy Beats
4.Joking
5.STRONGER
6.The Dream Is Not Dead
7.TONIGHT, TONIGHT, TONIGHT
8.SHOOTING STAR
9.Yahman!
16:15〜 ROTTENGRAFFTY [HAPPY STAGE]
ライブ前には4月に亡くなってしまった、このバンドの盟友にして事務所の社長でもある松原裕が「バンドがまだ出演してないのにバンドの魅力を語るために単独出演」した時の映像がスクリーンに流れる。後にバンドが出演した時にメンバーが松原のことをいじる映像も流れたが、
「僕の癌が治った時も1番最初に連絡したのがロットンのメンバーたちなんです」
とひたすらにこのバンドの魅力を地上波の音楽番組でたくさんの人に伝えようとしていた姿からは今となっては思わず涙が出てきてしまう。
しかしメンバーが登場していきなり電子音とラウドロックの融合である「D.A.N.C.E」からスタートし、最後のサビ前で観客を全員座らせてから一気にジャンプさせるというパフォーマンスを見せると、そんなライブ前の感傷的な空気が一気に切り替わる。そのライブの力こそが松原が伝えたかったこのバンドの魅力だろう。
言葉少なげに重くラウドなサウンドをひたすらに鳴らし続けるが、「夏休み」というユーモアも含んだ曲が挟まれるのはこのバンドのメンバーの持つそうした人間らしさも感じさせ、NAOKIとNOBUYAの両MC、さらにはギターのKAZUOMIもスタンディングエリアだけでなくスタンド席で見ている観客も煽りまくる。
「THIS WORLD」ではNOBUYAとKAZUOMIが客席に突入し、「金色グラフティー」とキラーチューンを連発。黒い衣装を着て歌うNOBUYAは照明が暗いということも相まってか、たまにどこにいるのかわからなくなり、ピンスポットが当たるとステージの端っこだったり、客席の柵の上で歌っていたりという目が離せないパフォーマンスを見せる。
そしてシリアスな空気を含んだ「「70cm四方の窓辺」」でもたくさんのダイバーを出現させるという音の強さを見せると、
「これからまだまだバケモノみたいなバンドが次々に出てくるから」
とこの後に控えるバンドたちを評したが、その言葉は自分たちが主催するフェスに出てくれたり、20年という長い活動の中で対バンしたりしたバンドたちばかりだから言えること。
その後に
「知らん曲でももっといけるやろー!」
とNAOKIが叫んでから演奏された「Error…」は誰もが知るような曲でなくてもダイブとモッシュを巻き起こすことができるこのバンドのライブ力の強さを感じさせたし、どんなライブであれ120%の力を出し切る姿を見ると、「どぶネズミ」と評されることもあるこのバンドがなぜ20年続いてきて、絶頂期を常に更新しているのかがわかったような気がした。
1.D.A.N.C.E
2.PLAYBACK
3.夏休み
4.STAY REAL
5.THIS WORLD
6.金色グラフティー
7.「70cm四方の窓辺」
8.Error…
17:05〜 HEY-SMITH [LOVE STAGE]
パンク・ラウドバンドが次々に出てくるという実にハードな時間帯。スカパンクというこの日は他にいないスタイルのHEY-SMITHとさらに激しくなるのは間違いない流れである。
さすがに今やCOUNTDOWN JAPANではメインステージに立つようになったバンド、この日の中でもトップクラスの人が詰めかける中、ライブ前にはこのバンドが番組に出演した際にテレビ番組なのに「Not A TV Show」という曲を演奏した時のことが映し出される。常に上半身裸の満(サックス)は地上波ということで乳首を両手で隠していたが、ステージ登場時も同様に手で乳首を隠している。
しかしながらライブが始まると隠しているわけにもいかず、その満とともにかなす(トロンボーン)、イイカワケン(トランペット)のホーン隊のサウンドが高らかに鳴り響く「Living In My Skin」からスタート。このサウンドはこのバンドだからこそのものであるが、続いてやはり「Not A TV Show」を演奏するあたりは実にこのバンドらしい。
「LOVEってタイトルについてるから愛の歌やるわー!」
と言って演奏された「The First Love Song」で激しくて暴れられる曲だけではないことを示すと、猪狩が
「俺、本当はテレビとかキライやねん。ロックとかパンクやってる人がテレビの音楽番組で当て振りとか口パクしてたりすると、権力の犬になったみたいな感じがして。
でもLOVE MUSICは生演奏でやらせてもらったり、「観客入れてライブみたいにやりますか?」って提案してくれたり、こだわりを持って音楽番組を作ってる。だから出ることにした」
とLOVE MUSICを称えるも、
「でもLOVE MUSICに出てる全てのバンドが生演奏なわけじゃないからな〜。そこは自分の目と耳を養いや〜」
と猪狩らしさは健在。
そこからは代表曲に加えてファスト&ショートな曲が多いスカパンクというスタイルだからこその曲数の多さを生かし、レア曲も演奏される。パンクらしさを感じる猪狩とスイートかつさわやかなYUJIのボーカルの絡みや対比も聴いていて実に面白いし、それは「California」などの昨年の最新アルバム「Life In The Sun」の曲に顕著である。
そしてラストは猪狩の煽りによって巨大な左回りのサークルが出現した「Come back my dog」。今年の夏、このバンドはこの日にトリを務めるSiMとcoldrainとともにTRIPLE AXEとして様々なフェスをジャックする。その時におそらく演奏されるであろうこの曲ではどんな景色を描くのだろうか。
1.Living In My Skin
2.Not A TV Show
3.Radio
4.First Love Song
5.Fog And Clouds
6.Dandadan
7.Stand Up For Your Right
8.Don’t Worry My Friend
9.California
10.I Will Follow Him
11.Come back my dog
17:55〜 Dragon Ash [HAPPY STAGE]
2019年が始まって5ヶ月が経っているが、この日が今年の初ライブとなる、Dragon Ash。まさかこのイベントが今年初ライブになるとは。
DJ BOTSとATSUSHI、DRI-Vのダンサー2人が先に登場し、ATSUSHIが大きなフラッグを身に纏ったり掲げたりすると、青やピンクなど髪色がさらに派手になったkenkenと金色の短髪になって若返ったようにというか全く年齢を重ねたことを感じさせないkj、この日も飲食ブースに自身のプロデュースする桜井食堂を出店していた桜井誠、見た目が全く変わらないHIROKIの演奏陣が登場。
このバンドにとっての直球ミクスチャーロック「Mix It Up」、ラテン・サンバなどの要素を取り入れた「Ambitious」と2019年になってもライブの流れ自体は変わらないが、やはり音の強さや説得力が段違い。かつてフェスキングと呼ばれていたバンドの本領発揮である。
kenkenのベースに貼られたTHE MAD CAPSULE MARKETSのシールがスクリーンにアップで映し出されると、そのマッドのカバー曲「Pulse」を披露。今やDragon Ashですら大ベテランと言える位置になりつつあるだけに、このフェスに来ている若手バンドのファンの大半はマッドの存在すら知らないかもしれないが、こうしてその曲をDragon Ashが演奏することによってバンドの存在にたどり着く人がいるかもしれない。それは昨年もいろんな場所で演奏されていたhideの「ROCKET DIVE」のカバーも同様である。
そんな中で最もエモーショナルな瞬間を描いたのは「光りの街」。震災後の被災地のことを描いた曲であるが、この静と動のコントラストは「陽はまたのぼりくりかえす」や「百合の咲く場所で」といった曲と同様に、狙って作ったというよりはできてしまったというレベルの名曲。その動の部分にあたるラウドな演奏パート前にはファンがリフトするのだが、リフトした女性が泣きそうになっているのを見たkjは
「泣くんじゃねー!笑えー!」
と叫んだ。その泣きそうになる感覚は聴いていて本当によくわかる。
そしてkenkenのスラップベースとボーカルが最大限に発揮された「The Live」から、演奏するメンバーとともに観客が飛び跳ねまくる「Jump」と続くと、最後に演奏されたのはお待ちかねの「Fantasista」。袖で見ていた04 Limited SazabysのGENも我を忘れるようにしてはしゃぎまくる中、次々にダイブしてくる観客を目にしたkjは
「ロットンとかヘイスミのTシャツを着た人たちがダイブしてくるの良いね。凄く良いよ」
と曲中に口にした。一時期はこうしたダイブするような曲ではない音楽を作っていた時期もあったけれど、kjはソロアルバムリリース時のインタビューで
「やっぱり俺は聴いてる人をダイブさせたい」
と語っていた。(それをダイブ禁止のフェスを開催しているロッキンオンジャパンで語っていたのもさすがだ)
その衝動は今も全く消えていないからこうしてDragon Ashとしてラウドな音楽を続けている。正直、このメンツの中に入るとDragon Ashですら「Fantasista」くらいしか知らない人ばかりというアウェー気味になってしまうのは少し衝撃でもあったのだが、平成という時代のロックシーンを作ったのは間違いなくこのバンドだった。この日出演しているたくさんのバンドたちや日本のヒップホップミュージシャンもDragon Ashがいなかったら存在していなかったかもしれない。そんな歴史を作ったバンドだが、まだ歴史の中に収められるような存在じゃない。もう新たな時代を切り開くようなことはないかもしれないが、今でも自分たちの信じる音楽を最前線で鳴らし続けている。元号が変わった今だからこそ、その凄さや強さ、頼もしさをこれまでよりも一層感じる。まだまだ終わらないし終われない。
1.Mix It Up
2.Ambitious
3.Pulse
4.光りの街
5.ROCKET DIVE
6.The Live
7.Jump
8.Fantasista
18:45〜 04 Limited Sazabys [LOVE STAGE]
番組に出演した時と同様に、
「曲良し、顔良し、センス良し、元気良しの4拍子揃った」
と紹介された、04 Limited Sazabys。LOVE STAGEのトリ前という位置での出演である。
おなじみのSEでメンバー4人が元気良くステージに登場すると、「Feel」でスタートするという意外な展開。さらに「Warp」と2ndアルバム「eureka」収録曲が続くと、RYU-TAによる
「幕張!幕張!」「フォーリミ!フォーリミ!」
というコール&レスポンスからの「Chicken race」と最近はフェスでは演奏されていなかった曲が続いたことにより、先週のMETROCKとはだいぶ曲を変えてるな…と思ったのだが、その先週のMETROCKの時のことを
「このフェスはフジテレビのフェスとは思えないくらいにルールがないね。先週出たテレ朝のフェスは凄くルールが厳しかった(笑)」
とそのルールに対する自身の発言によって様々な誤解や曲解が生まれてしまったことを踏まえるようにして振り返っていた。
するとまさかの「SOIL」のリード曲ながらフェスでは全然演奏されてこなかった(なんならYON FESですら演奏されなかった)「Milestone」を演奏するというサプライズ。「SOIL」のリリースツアーはチケットが取れずに参加できなかったので、この曲を聴く機会はもう巡ってこないのかとも思っていたのだが、まさかこの日に聴けるとは。そして一週間でここまでセトリを変えることができるバンドの柔軟さには脱帽である。
なのでフェスではクライマックスにしてその日の最高沸点を記録する「monolith」もこの中盤で演奏される中、色とりどりの派手な照明が明滅する「fiction」という定番曲はありつつも、「SOIL」からは定番であった「My HERO」でも「Kitchen」でもなくハードな音像の「Alien」を選択。まさかここまで変えてくるとは。
そうして驚きっぱなしの中でGENは
「このフェス、番組のプロデューサーのジュンさんと初めてちゃんと話したのは品川駅の新幹線のホームで。銀杏BOYZの「BABY BABY」のTシャツを着て(この日の会場BGMでも「BABY BABY」が使われていた)、
「これから名古屋にクリープハイプとの対バンを見に行くんだ」
って言っていて。ああ、この人はわざわざ名古屋までライブを観に行くくらいに音楽が好きなんだなって思ったし、僕らのやってるYON FESも見に来てくれて。誰よりもライブ見て誰よりも日焼けしてるような人です。
だからテレビ局主催のイベントとかだと偉い人は裏で酒飲みながら踏ん反り返ってるみたいなこともよくあるんだけど、今日は全然そんな感じじゃない。
そうやって音楽が好きな人が作ってるフェスだから音楽への愛をもらえるし、僕らはそうやって愛をもらうことによってさらにカッコよくなります。そういう時のフォーリミって本当にカッコいいよね。(RYU-TAに向かって)いつも力をもらってます。ありがとうございます」
とこのフェスの主催者への思いを語ると、その出会いと再会に感謝を示すべく「Terminal」を演奏し、最後に演奏されたのは新しい自分自身に生まれ変わるための「Squall」。GENが言ったように、愛をもらった時のフォーリミは本当にカッコよかった。
ライブ後、関係者席でその後に出演したバンドのライブをKOUHEIが1人で見ていた。バックヤードで酒を飲みながらモニターでライブを見たり、知り合いと喋ったりしてるんじゃなくて、観客と同じ目線で集中してライブを見ている。
YON FESの時も先週のMETROCKの時も、GENと同等かそれ以上にこのバンドの信念や意志を自分の言葉で綴っていたのはKOUHEIだった。それはこういう姿からも伺えるし、ドラマーとしてはもちろん、ミュージシャンや人間としてもより一層KOUHEIのことを信用できる。
リハ.knife
リハ.nem…
リハ.Message
1.Feel
2.Warp
3.Chicken race
4.Milestone
5.monolith
6.fiction
7.Alien
8.Terminal
9.Squall
19:30〜 SUPER BEAVER [HAPPY STAGE]
HAPPY STAGEもいよいよ最後のアクト。このフェスのトリを任されたのはSUPER BEAVER。METROCKでもSEASIDE PARKのトリを務めたが、こうしてフェスでも次々に重要な位置を任されるようになってきている。
「ロックバンドをガードの上から見下ろすように、レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVER始めます」
という渋谷の前口上から「青い春」で両手を挙げていきなりの大合唱が響く。
「手は頭の上で!」
という渋谷の言葉の通りに上がった両手の景色は壮観である。
すべてのことにいつか終わりが来てしまうことを改めて突きつけられるかのような「閃光」からこのフェスのタイトルに合わせた選曲であろうポップな「ラブソング」が演奏されたりと、割とフェスだとやる曲が変わらないというイメージを持たれがちなバンドであるが、この日の内容からはそれも変わりつつあるというか、このバンドはやはりその場所に最もふさわしいとメンバーが思っている曲を選んでライブを作っていることがよくわかる。
「イベントに呼ばれたんじゃなくて、人の気持ちや人の思いに呼ばれたんだと思ってます」
とこのバンドらしい出演への意気込みを語ると、バンドの120%のコールと観客の120%のレスポンスが響き合う「秘密」では間奏の短いメンバー紹介のタイミングで渋谷がドラムの藤原を
「ドラム、藤原”バースデーボーイ”広明」
と紹介されたが、この日は藤原の31歳の誕生日であり、客席からは「おめでとうー!」という声が上がっていたが、本人からはさすがにライブ中のコメントはなし。
しかし渋谷は
「我々、15年目のインディーズバンドでございます。長くやってると色々な裏側の部分もたくさん見てきましたが、このフェスは本当に血が通っているというかちゃんと匂いや味がするフェスだと思っています。
10年ほど前にメジャーデビューをしたことがあります。そこから落ちもしました。その当時に、自分のために、自分の背中を押すためだけに歌っていた曲があります。当時は歌うべき対象がボヤけていて見えなかった。だから自分のために歌っていた。でも今は歌うべき対象がちゃんと見えている。たくさんの人でもなく、あなたたちでもなく、紛れもなくあなたに向けてこの曲を歌います」
というバンドの短くない歴史の一端のエピソードを語ってから演奏されたのはメジャー期にリリースされたのを昨年のアルバム「歓声前夜」において再録した「シアワセ」。その思いについてはアルバムリリース時のインタビューでも語っていたが、フェスでまさかこの曲を演奏するとは思わなかった。でもこの「シアワセ」というタイトルの曲を、そうした様々なことがあったバンドが15年目の今こうして堂々と鳴らすことができている。この日最も響いた瞬間だったかもしれない。
そしてラストはドラマ主題歌にもなった「予感」を演奏し、これからもバンドが楽しい予感のする方へ進んでいこうとしていることをその身をもって示していたし、見ている我々もこのバンドが感じさせてくれた予感を信じていこうと思った。
1.青い春
2.閃光
3.ラブソング
4.秘密
5.シアワセ
6.予感
20:15〜 SiM [LOVE STAGE]
2日間のこのフェスの初日のトリはSiM。このメンツの中であってのトリでも「そりゃそうだよなぁ」と思えるくらいに現行のラウドロックシーンの首魁的な存在から日本のロックシーンの大魔王的な存在になってきているからか。
髪が短髪の緑色になっているSiN(ベース)の出で立ちに驚きながらも、MAH(ボーカル)が登場して「A」「WHO’S NEXT」と続くとその重い音がこの場内を制圧していく様により一層驚く。
「準備運動お疲れ様でした!SUPER BEAVERまでの前座の皆さんもお疲れ様でした!」
というMAHのヒールっぷりの磨きのかかり方もまたトリならではである。
「サークルっていうやつを見せてやりましょう!」
とレゲエパンクというジャンルを名乗って登場したこのバンドのそのレゲエパンクというスタイルど真ん中の「T×H×C」ではその通りに激しい左回りのサークルが客席に何箇所も出現し、最新曲「DiAMOND」でタイトル通りの固いラウドロック魂を見せつけると、SHOW-HATEがシンセで電子音を発する「GUNSHOTS」ではモンキーダンスと、ステージ上も客席も実に忙しない、トリだからこその全部乗せっぷり。
「地上波でこういう音楽番組があると、なんていうか助かりますよね」
とLOVE MUSICへの思いをネタやヒール感一切なしでMAHが語ると、
「でも激しい曲や暴れられる曲だけでは今日のこのメンツの中でトリはできない。それがどういうことかっていうのを見せてやるよ」
と言って「The Sound Of Breath」を演奏。それまではステージ上を縦横無尽に動き回りながら歌っていたMAHはマイクスタンドで歌唱に専念するのだが、この曲に顕著な歌声やメロディの良さというラウドロックというスタイルにおいては二の次にされてしまう部分をSiMはしっかり持っているからこそこうしてこのメンツの中でトリができているし、そこを持ちながらもラウドロックとしての重さや強さが全く失われていないからこそDEAD POP FESTiVALという自身の主催フェスを何万人規模で開催することができている。
するとMAHがいきなりカメラに向かって、
「森高さんと渡部さんはツーステップって知ってますか?今からこいつからがやってみせるんで、是非お2人も今度やってみてください」
と番組のコメント用的なことを言うと「KiLLiNG ME」ではお手本を示すように客席でツーステの嵐が巻き起こり、「Blah Blah Blah」では合唱を巻き起こそうとするのだが、
「前の方にいる奴らは普段から俺たちのライブに来てるやつだから歌えるだろう。見たことある顔もいっぱいいるし(笑)
後ろの方で見てるやつらは知ってんのかよ!お前らだけで歌ってみせろ!」
と言って前の方にいる人以外で合唱させてから
「やっぱりまだ足りないからお前たちの力を貸してくれ!」
とすでにリフトしていた人もいる前方エリアの人たちの声も加わって大合唱を巻き起こす。
そして、
「さっきのがカットになった体で言うからな。森高さんと渡部さんはモッシュピットに入ったりしたことはないと思いますけど、ウォールオブデスを森高さんが見たいと言ってたみたいなんで、是非今度は中に入って体験してみてくださいね〜」
と言うと客席を真っ二つに分け、その真ん中にカメラマンを入れてぶつかり合う様をその中にいる目線で収めさせるという臨場感のある映像を撮った「f.a.i.t.h.」のウォールオブデスで締めると、
「あ、言い忘れたけどアンコールはないんでとっとと帰ってくださーい」
と言ってマイクをドスンと落としてステージから悠然と帰っていった。ああ、やっぱりこれはトリで当然だわ、と思うくらいにこの日もSiMは圧勝だった。
1.A
2.WHO’S NEXT
3.T×H×C
4.DiAMOND
5.GUNSHOTS
6.The Sound Of Breath
7.KiLLiNG ME
8.Blah Blah Blah
9.f.a.i.t.h.
番組のフェスであるがゆえに森高千里と渡部建が会場にいなかったのは最初は少し残念だと思っていたが、いろんな出演者が前説を務めたプロデューサーのことを話しているのを聞いていると、むしろあの人が前説をしたことに意味があったとも思えるし、
「ライブ会場の熱気や汗はテレビでは伝わらない。だからこのフェスに来た人がライブハウスやワンマンに行って欲しい」
という前説の時の言葉はこの日出演したどのバンドも抱えている意志や思いそのもの。だから地上波の番組のフェスとは思えないようなこんなメンツが揃う。
毎週のように春からいたるところでフェスがやっているし、関東に限ってもJAPAN JAMとVIVA LA ROCKがゴールデンウィークにあって、METROCKが月末にあって…と考えると出演している若手バンドのファンの人からしたらこのフェスまで行っているお金や時間はないのかもしれないし、各地でもいろんなフェスが開催されているこの週に新たに参入していくのもなかなか大変なことだ。でも実際に会場に行ってライブを見ていると確かにこのフェスからは作っている人の思いを感じるし、番組を毎週録画してでも見ようかなと思えてくる。
だからこそ来年以降もこのフェスが続いて欲しいし、その時はこの会場のスタンド席のもっと上の方まで埋まる景色が見てみたい。
そして終わった後に会場に終演BGMとして、bonobosの「THANK YOU FOR THE MUSIC」が流れていた。本当に音楽が好きじゃないとこの曲を選ばないというか、そもそもこの曲のことを知らない。そこがこの番組とこのフェスをより一層信用させてくれる。だからもしあるんなら、また来年ってちゃんと言える。
文 ソノダマン