プログレッシヴかつエモーショナル、ハードなサウンドとキャッチーなメロディの絶妙なバランス感が世界中のコアなファンを熱狂させてきたコヒード・アンド・カンブリア。本作は、前作より約3年ぶり、通算9作目のオリジナル・アルバム。彼らは、2002年の『The Second Stage Turbine Blade』より、フロントマンのクラウディオ・サンチェズが書き上げた“The Amory Wars”というSF物語をもとに、その世界観を、音楽を通して表現したコンセプト・アルバムを作り続けている。彼らのディスコグラフィ自体が、まるで何巻にも及ぶ長編コミックスのようだ。前作はこのストーリーから一旦離れ、非コンセプト・アルバムを発表したものの、本作から再び“The Amory Wars”の世界線に戻り、物語は新たな章へと突入した。とはいえ、ストーリーを把握していなくても、一つひとつの楽曲は十分に楽しめる。繊細なピアノで始まる「Prologue」から「The Dark Sentencer」の流れは、まるで映画のオープニングのような壮大かつシリアスな曲調で、徐々に迫り来るカタルシスに対する期待に胸が高鳴る8分近い大作だ。アルバムを通して、前作のようなポップな曲は少なく、シリアスな緊張感のある曲が続く。中でも「True Ugly」の、どちらかというとパンク寄りのギターの音で奏でられるプログレッシヴ色の強いリフに、優しげなハイトーン・ヴォイスが絡む独特のサウンドは、ジワジワと癖になるコヒードらしい曲だ。今後も続くであろう彼らのコンセプト・アルバムへの期待が高まる一枚。
/ 2019/07/24