“TOWER RECORDS 40th anniversary LIVE! TO\ワー/RECORDS feat. THE BAWDIES 〜360° Rock and Roll Circus〜” 新木場STUDIO COAST 2019.11.2 THE BAWDIES
すでにアルバムのリリースが決定しており、夏フェスでも新曲をセトリにふんだんに入れ、夏前にはアルバムに収録される新曲お披露目ツアーも開催した、THE BAWDIESがリリースツアーを前にタワレコとのコラボライブとして、新木場STUDIO COASTにてセンターステージでの360°客席ライブを開催。
客席に入るとビックリするのは、マジで客席のど真ん中にステージがある。なので普段はステージである場所には観客がいるという、数え切れないくらいに訪れたCOASTであるが今までに見たことがない景色。それだけにどこから見ればどう見えるのかというのも普段とは全く違う。
18時を少し過ぎるとおなじみの「ダンス天国」のSEが流れて場内が暗転するのだが、そもそもステージは観客に囲まれているだけにメンバーはどこから登場するのだろう?と思っていたら、いつものCOASTと同じように本来のステージの下手から現れてステージを降りると、そのまま観客の間をかき分けて中央へ、というプロレス方式。ステージと観客の間は柵ではなくロープで区切られているだけなのでメンバーはすぐに機材にたどり着くことができるが、その仕切り部分がより一層メンバーと客席の距離を近く感じさせる。ローディーはステージ内に常時座っているとはいえセキュリティも配置されていないが、それはバンド側からの観客への信頼が表れていたように思う。
秋から新調したキャメルブラウンのスーツに身を包んだメンバーが楽器を持つと、ROY(ボーカル&ベース)は通常の上手側、TAXMAN(ギター)がステージ側、JIM(ギター)が下手側、MARCY(ドラム)が客席側にそれぞれ向く形に。それによって本当に最前の観客の目の前にメンバーがいるし、特にMARCYがメンバーの後ろではなく観客の目の前にいるというのは実に新鮮である。
ROYが
「THE BAWDIESでーす!いきなり新曲で踊れますか!」
と言うと最初に演奏されたのは「LET’S GO BACK」。配信で先行リリースされ、すでにライブでもおなじみとなっているだけに、THE BAWDIESなりのキャッチーさを100%詰め込んだサビではいきなり合唱が起こり、JIMは度々観客が手の届くくらいに目の前の位置に行ってギターを弾きまくる。最前で見ている人は間違いなく飛び散った汗がかかっているだろうというくらいの距離感である。
序盤はそこからSEの「ダンス天国」のイントロに多分に影響を受けているであろう「1-2-3」で歌詞のタイトル部分に合わせて指を1,2,3本と挙げ、「A NEW DAY IS COMIN’」のコーラス部分では再び大合唱が。心なしか観客の合唱もいつもよりも近くに感じる。
ROYが
「MARCYさん、普段は我々の後ろにいるのに今日はみなさんの目の前にいるんで、普段の50倍くらい緊張してるらしいので優しくしてあげてください」
と早くもMARCYいじりをすると客席からはMARCYへの歓声が飛び、そんな中でロックンロール成分の強い「THE EDGE」でキレキレの演奏を見せるという緊張と緩和を見せてくれるあたりもTHE BAWDIESの魅力だ。というか喋ると本当にいつも幼なじみ4人組に戻ってしまうというか。
そんなやり取りもありつつ、
「せっかくなので特別なことをやりたいなと。大事な曲です」
と紹介してから演奏されたのは「ROCK ME BABY」。ドラマ主題歌に起用されてTHE BAWDIESというバンドの存在をお茶の間にも知らしめた曲であるが、最近はライブでやらないことも多かっただけに少し驚く。
さらに「YOU GOTTA DANCE」で観客1人1人が打ち上げ花火のように飛び跳ねまくると、アルバム発売が迫っていることでプロモーションを行なっているのだが、先日の朝からの取材時に
MARCY「今日裏表紙だって知ってた?」
ROY「え?知らなかった。それ知ってればもっとキメてきたのに!」
MARCY「そういうのってちゃんと伝えてくれなきゃダメじゃない?」
ROY「その通りだ!」
MARCY「俺は知ってたけどね」
ROY「情報止めてるのお前じゃねーかよ!」
という出来事があったことを開陳して笑わせると、そんな楽しくて幸せな空気をそのままサウンドにしたかのような「HAPPY RAYS」というアッパーなだけではないTHE BAWDIESのメロウな部分も見せると、
ROY「最初に360° ライブをやったのは日本武道館で初めてワンマンをやった時でした。武道館ではなかったですけど、ビートルズが360° ライブをやっていたのを見て僕らもやりたいと思ったんです。その最初の日本武道館の時には新曲と言ってやった曲です」
と言って演奏されたのは、まさかの「RED ROCKET SHIP」。その前の「HAPPY RAYS」は今年行われた3度目の日本武道館ワンマンを記念してリリースされたシングル曲(アー写もビートルズ来日を再現したもの)だったが、この「RED ROCKET SHIP」は初の武道館を記念してリリースされたシングル曲である。
とはいえライブではほとんど演奏されないだけに、本当にシングルで出たのかというくらいに不遇な曲であるが、サビの後半のMARCYのリズムに合わせて手拍子が起こる様子を見ているとこの曲が演奏されることを喜んでいる人たちがたくさんいることがわかる。これからも毎回はやらないだろうけど、たまにはこうしてライブで聴きたい曲である。
するとそれぞれが楽器を持ち替え、TAXMANがいち早くアコギを持って音を鳴らし始めると、ROYが
「(髪型も含めて)ボブディランみたいだな」
と言い、TAXMANが「Like A Rolling Stone」のフレーズを弾くのだが、
ROY「今日生中継してるんだから他の人の曲を弾くんじゃない!(笑)」
JIM「適当になんか歌え!」
と言って無理矢理オリジナル曲にするためにTAXMANが適当な歌詞をつけて歌うというやり取りもあってから、ROYがハンドマイクボーカル、TAXMANとJIMがアコギ、MARCYもアコースティック用にスティックを替えて「KEEP YOU HAPPY」へ。手拍子が響く中、原曲とは大幅に変わらないアレンジであるが、だからこそメロディのキャッチーさを感じるし、この曲をアコースティックにしたのがよくわかる。
ROYはハンドマイクということを生かして歌いながらTAXMANと肩を組み、JIMと背面同士で密着し、ドラムを叩くMARCYに接近したりとやりたい放題。
「特別なことをやりたいと思ってるんです。なので久しぶりに演奏するレア曲を。インディーズの時の曲です」
と言って演奏されたのは2008年リリースのアルバム「Awaking Of Rhythm And Blues」の1曲目に収録されている「Just Pick Up Your Phone」。メンバーもおそらく演奏したのは10年ぶりぐらいという超レアな選曲であるが、MARCYはいじられていた仕返しとばかりにROYに
「せっかくワイヤレスのマイク発注してまで使ってるんだからもうちょっと動きながら歌えよ」
とツッコミを入れる。
「確かにここから全然動いてなかった!」
ということでアコースティックによってさらに温かくなった「SUNSHINE」ではROYが観客の目の前を歩き回りながら歌い、それが合唱の声をさらに大きいものにしていく。かつてもこの曲はアコースティックで演奏されたことがあるけれど、もともとこういうアレンジだったんじゃないかと思うくらいにハマっている。
そうして
「キャンプファイアーみたいに。あ、俺ら真ん中にいたら燃やされちゃう(笑)」
という緩くも温かいアコースティックを終えると、再びメンバーが通常の機材に持ち替えてROYが改めて今月末にリリースされるアルバム「Section #11」について、
「本当に最高のものができたと自負しております。お前いつもそう言うじゃないか、と思う人もいると思います。我々去年はベストアルバムしか出さなかったんですけど、ベストアルバムよりもいいものができたと思ってます。常に最新の自分たちが1番かっこいいと思ってやってきたバンドですから。もちろん曲によって思い入れがあったりもしますけれど」
といつにも増した自身を伺わせると、その中からMVが先行公開された「SKIPPIN’ STONES」を演奏。すでに先月の9mm Parabellum Bulletの対バンに呼ばれた際にも演奏していたが、エイトビートからサビで4つ打ちになるあたりはTHE BAWDIESの新たなダンスアンセムと言えそう。先月聴いた時はひたすらにリズミカルかつキャッチー、それこそスキップしたくなるというイメージだったのだが、この日はそこにさらにロックさを強く感じた。それは早くもそう感じるように曲が育ってきているのか、それともこのフロアライブという環境がそう感じさせるのか。
さらに新曲は続く。こちらはすでに夏フェス時から毎回演奏されている「BLUES GOD」。夏フェス時よりも最近はROYがハッキリ聞き取れるようにしっかりタイトルを発音してから演奏するようになってきているが、タイトルこそブルースだけれどサウンドはロックンロールそのもの。てっきりこの曲がリード曲になると思っていたが、MVが製作されたのは「SKIPPIN’ STONES」であるし、この曲クラスの曲やそれ以上の曲ばかり収録されているのだとしたら本当に「Section #11」はとんでもない傑作アルバムになるはずだ。
確かにROYは毎回アルバムが出るたびに「最高傑作」的なことを言い続けてきたが、それはロックバンドとしてのあるべき姿だ。過去の自分たちを更新してこそ転がり続けていく意味があるのだから。
しかしTHE BAWDIESがここまで新曲をリリース前からやりまくる、しかも1曲ではなく複数曲ということは今までになかった。それがROYの言葉の何よりの裏付けになっているし、そうして少しでも早く聴いてもらいたいというくらいに自信があるということなのだろう。15年を過ぎたロックンロールバンドが最高傑作アルバムをリリースするというのも実に頼もしいことじゃないか。
そんな新曲コーナーを終えると、ROYが先日のKEYTALKのツアーに対バンで出演した際に泊まったホテルで非常ベルが鳴ったことを話し始め、
「アナウンスで「落ち着いてそのまま部屋にいてください」って言われたからパラシュートみたいなリュック背負って座って待ってたんですよ。そしたらスタッフが新人だったみたいで、止めるんじゃなくてさらに危険を知らせるボタンを押しちゃったから、部屋から出たんです。そしたら向かいの部屋からもおじさんが出てきたんだけど、廊下の向こうの方で非常ベルを押したであろう犯人がスタッフと言い争いをしてて。
どうやらスタッフを呼ぶボタンを押したのになかなか来なかったから怒って非常ベルを押したらしいんですよ。つまりイタズラですよ。で、それを聞いた向かいの部屋のおじさんが
「ふざけんじゃねぇ!」
って怒鳴りながら部屋に戻って行って。その瞬間に言い争ってた犯人とスタッフがこっちを見たんですよ。そしたら俺しかいないじゃないですか(笑)だから俺が怒鳴ったやつだと思われて、スタッフに「ヤバイ」って思われたのか、犯人を連れて部屋の中に入っていって…俺被害者なのに犯人以上にヤバイやつだと思われてた(笑)」
という内容で会場が爆笑に包まれると、「IT’S TOO LATE」でROYの超ロングシャウト(なんだかエフェクトかかってるように聞こえたのは気のせいだろうか)が響き渡ると、メインボーカルを務めるTAXMANが観客の方に身を乗り出すようにしてギターソロを弾く「B.P.B」、またしても大合唱を巻き起こしながら客席を揺らしまくる「SING YOUR SONG」と代表曲を連発して高まりまくる客席に最後に投下されたのは「JUST BE COOL」で、この状況で「まぁ落ち着け」と言われても到底落ち着きようがないくらいの熱量を会場全体が発していた。
MARCYがドラムセットの上に立って観客の歓声に応える中、メンバーはどこから帰ればいいのかをちゃんとわかっていなかったが、登場した時と同じところから去って行った。こうした360°客席となるとやはり見るところが変わるというか、普段はほとんど真正面から見ているメンバーを真横から見たり、メンバーによっては後ろから見たりということになる。それによって「この時はこうしているんだな」「後ろからだとこう見えるんだな」と細かい部分で色々な発見がある。
それはメンバーだけではない。普段は同じ方向を向いている観客同士も、位置が違うことによって真正面に正対するような人もたくさんいる。普段のライブハウスでは見えたとしても近くにいる人の表情くらいだが、この方式だとメンバー越しの位置にいる人たちや、遠くにいる人たちの顔も見ることができる。
みんながどの曲の時にどんな顔で見ているのか、どのメンバーの前にどんな人たちがいるのか。それがハッキリわかるし、みんな本当にいい笑顔でライブを見ているのがいつも以上によくわかる。それを引き出しているのはやはりTHE BAWDIESの音楽とライブの力であるけれど、かつてより規模や支持は縮小している(もうアリーナでワンマンは今はできないだろう)けれど、そんな状況に流されることなくTHE BAWDIESとロックンロールを愛し続けている人たちの顔がしっかり見れるというのは360°ライブだからこそだし、メンバーにもそうした意識は少なからずあったのだと思う。
いつもよりかなり長いアンコール待ち。その後にステージに出てきたのはJIMとMARCYのみ。
「え?この2人だけでどうするの?」
という空気も漂う中、MARCYがパッドを叩くと「HOT DOG」劇場のラブコメ編でおなじみのサウンドが。本編が濃密だったので「HOT DOG」をやっていないことを完全に忘れていたのだが、TAXMAN演じる舟山卓子がパン祭りの会場に来ており、ソーセージ職人になるためにドイツに留学しているROY演じるソウダセイジを想うという急展開。ソウダセイジは手続きのために一時帰国しており、パン祭りに来ているであろう卓子のことを探すのだが、客席をお互いにグルグル回ってなかなか見つけられないというのもまた360°客席ならでは。そしてMARCY演じる卓子の幼なじみの増田亜土は完全に無視され、今回もカンペガン見のJIMの解説とともにコッペパン姫こと卓子がソウダセイジを包むように抱きしめると「HOT DOG」へ。もはやバンドというよりも完全に劇団レベルのクオリティになってきているが、それによって「HOT DOG」の演奏と観客の熱量もより高まっている。
そしてラストはやはり「KEEP ON ROCKIN’」。間奏では観客のハンドクラップのみの音が響き渡り、「ダンス天国」のフレーズに合わせたコール&レスポンスも行われるのだが、
「360°なんだからこんなもんじゃないでしょう!」
と言って小さいところから徐々に大きくしていくという形で観客の大合唱を引き出していく。最後にはJIMは倒れ込むようにしてギターを弾きまくっており、コール&レスポンスでTHE BAWDIESから観客に伝わった熱がそのままバンドにも返ってきているという幸福な相互作用を確かに感じさせたのだった。
演奏が終わると大将ことTAXMANによる恒例の「わっしょい」なのだが、普段の客席とは違う360°客席でどうするのかというROYの質問に対し、
「アニマル式っていうのがあるんで」
と言って解説を始めたTAXMAN。アニマルというのはアニマル浜口のことであり、「気合いだ!」を連呼するアニマル浜口のようにメンバーがそれぞれの方向に向かって「わっしょい」を連呼するというものなのだが、MARCYは
「マジでやりたくない(笑)」「もう一生やらないんだから早くしろ(笑)」
とアニマル式がお気に召さない様子。
しかしながらそのアニマル式のわっしょいを無事に完遂すると、メンバーはピックを手渡したり(この距離感だからこそできること)、投げまくったりして、大将ことTAXMANは最後まで残って観客に向き合っていた。そこに彼の人間性が強く現れていたように思う。
メンバーはライブ中に
「これ(360°ライブ)良くない?」
「他のバンドがこれ見てたら絶対真似するでしょ!」
「特許取ろう!」
と言っていたが、すでにこの形式でライブをやったことのあるバンドもいるとはいえ、同期やクリックを使わないロックンロールバンドとして、メンバーがお互いの顔が見えない状態であっても全く音が狂うこともズレることもなくライブができるというのは演奏技術ではない何か特別なものがこのバンドにあるから。
それを自分は「限られたロックンロールバンドだけが持つ魔法」と度々口にしてきたが、やはりTHE BAWDIESはロックンロールの魔法がかかっているバンドであるということを改めて感じさせた360°ライブ。毎回この形式ではさすがにできないだろうけれど、同じ目線で鳴らされるからこその音の生々しさも含めてまた是非やって欲しい。
そしてROYが何度も口にしてきた最高傑作アルバム「Section #11」を提げてバンドはツアーに出る。追加公演として4月にまたこのCOASTに帰ってくることも発表されたが、今のTHE BAWDIESは過去最高に漲っているし、4月にまたここで見る時にはまた全く違うライブを見せてくれるのだろう。
バンドというものはいつかは終わりがくるものだけれど、このバンドだけは全くその瞬間が想像できない。
1.LET’S GO BACK
2.1-2-3
3.A NEW DAY IS COMIN’
4.THE EDGE
5.ROCK ME BABY
6.YOU GOTTA DANCE
7.HAPPY RAYS
8.RED ROCKET SHIP
9.KEEP YOU HAPPY (アコースティック)
10.Just Pick Up Your Phone (アコースティック)
11.SUNSHINE (アコースティック)
12.SKIPPIN’ STONES
13.BLUES GOD
14.IT’S TOO LATE
15.B.P.B
16.SING YOUR SONG
17.JUST BE COOL
encore
18.HOT DOG
19.KEEP ON ROCKIN’
文 ソノダマン