この日のUNISON SQUARE GARDENの着席ライブツアー「LIVE (on the) SEAT」は17:30開演と20:30開演の2部制ということで、すでに1部のレポはアップしているが、そのまま2部も見ることに。
2部も見ることにしたのは前日の段階でまだチケットが売っているということがわかったからであるが、席を一つ空けていると言っても中に入るとこのガーデンシアターはかなり広い(もしかしたら最高収容人数は都内のライブハウスと呼べる場所の中ではトップクラスかも。ホールという扱いになるかもしれないけど)し、開演時間も平日ということを考えると1部は早いし、2部は遅い。
2回公演にしたのはバンドサイドによる、見たい人全員が見れるように、という配慮であることは想像に難くないが、翌日も含めて2日で3公演となると幕張メッセやアリーナでもワンマンをやり、フェスではメインステージが当たり前になるという、本人たちがあまり大きいステージを望まなくても、そうも言っていられない位置まで来ているバンドでもなかなか厳しいということか。そもそもこんな情勢であるだけに、今までのようにライブに行くことができないという人もたくさんいるだろうけれど。
1部は第一バルコニーというアリーナのすぐ上の座席で見ていたのだが、さすがに急遽チケットを取ったということで、この2部は第三バルコニーという最上階の座席。武道館の最上段くらいに上からステージを見下ろす形。ちょっと高すぎる気もするが、決して見え方は悪くはない。
20:30になると場内が暗くなり、ステージに張られた紗幕の向こう側から斎藤が歌う「クローバー」が聴こえてくる…というオープニングは変わりないが、1部の最後の「harmonized finale」を斎藤が1人で締めたのを見てからのこのオープニングなだけに、先程のエンディングから繋がっているような感覚になる。
基本的に流れは同じというか、ユニゾンは同じツアーで公演ごとにセトリを変えるようなバンドではない。(フェスではVIVA LA ROCKに出た翌日にJAPAN JAMに出た時にガラッと変えるくらいに毎回変える)
それは各地の同じツアーに行った人たちの公平性を保つため、と田淵が語っていたのを読んだことがあるが、セトリは同じでも1本目と変わっていたポイントに絞ってレポしていきたい。
1部でも「フィクションフリーククライシス」の後に斎藤は「よろしく!」と軽く挨拶していたが、この2部では
「最初の3曲で楽しすぎてもう達成感がありますけど、最後までよろしく!」
と挨拶していた。そこには口にしていた達成感だけではなく、1部を終えてからまだ2時間しか経っていないという疲労もあったと思われるが、1部で触れたような配信ライブの時の高音が出ないというような状態にはならず、斎藤のボーカルは一切疲れを感じさせない安定感に満ちている。
1部では鈴木が2メロでブラストビートの如き激しいドラムを展開した「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」では同じように激しく叩いてはいたけれども、叩くフレーズや叩く部分は違うように感じた。それは見ている場所が違ったからそう感じただけなのかもしれないが、ワンマンでは割とよく演奏される曲であるだけに、これからもどう変化していくのかが楽しみだ。
「だからまだ見たことのないあの場所へ場所へ行きたいのです
何度も言うよ 大事なことだから ねえ
君さえよければ ねえ」
というフレーズはこうしてまだライブをしたことがない、ファンが住んでいる場所へライブをしにいくということがライブバンド、ツアーバンドとしての最も大事なことであると歌っているかのようだ。
the HIATUSのメンバーであるウエノコウジも中津川THE SOLAR BUDOKANの配信ライブで
「こうやって街に住んでいる人やお世話になっている人に会いに来るのが1番大事なことだと思っている」
と言っていた。それは日本のあらゆる場所に出向いてライブをしてきた(例えば千葉県でも柏のライブハウスとか、規模の大きいバンドはなかなか来てくれないところにもユニゾンはツアーで来たりしている)ユニゾンも確かに持っている感覚なのだろうと思う。
「セレナーデが止まらない」からの田淵の動きの激しさも全く変わらないどころか、むしろ疲労というよりさらに身体がキレているようにすら感じる。なんだかこうして見ていると、さらに歳を重ねても田淵が大人しくライブをする姿が想像できないような。
「君はともだち」演奏後のMCでは
「今日はここ東京ガーデンシアターですけど、恵比寿ガーデンホールと間違えてた人いない?(笑)我々側にも何人かいたからさ(笑)
仕事終わってスーツで来てくれた人も見受けられますが、恵比寿行ってから来てくれたんですか?(笑)」
と、1部と内容を変えており、我々は笑うことはできないが、横で聞いていた田淵は爆笑していた。
ユニゾンのライブには安定感がある。「今日はあんまり良くなかったな」と思うようなことが全くない。でも機械的というか、無機質というか均質化されているような感覚も全くない。生身のロックバンドとしてのライブをひたすらに自分たちの歌と演奏を研ぎ澄ませることでクオリティを上げる。
だからこそ、リリースされたばかりのアルバム「Patrick Vegee」から披露された「夏影テールライト」のライブでの完成度の高さはもちろん、1部では少し斎藤が歌うのがキツそうな感じも見受けられた「Phantom Joke」も2部では安心感を持って見れるものになっていた。
それが「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」からのさらなる爆発力を呼び起こしていたし、椅子に座ったままでいながらも体を激しく動かしている観客の姿も。ある意味では両隣の席が空いているからこそ、そうして周りを気にすることなく座ったままで体を動かせるというのもあるだろうけれど。
そして「ライドオンタイム」では1部でも見られた、田淵が斎藤に寄っていってギターを触ったりしてちょっかいを出すという場面がさらに長くなっており、さらに田淵はステージ上手側の前に出て行ったかと思ったらそのままステージ最前に座り込み、寝転んだりしながらもベースを弾くという、もう体力がどうとか全く考えていないであろう、ただただ自分が楽しいと思えるようなライブにするパフォーマンスを展開していく。それは決して頭で考えたりしていることではないだろうが、自身がコーラスをするフレーズではしっかりマイクの前に走って戻っていくというのはさすがだ。
ラストの「harmonized finale」ではやはり曲最後の
「be with youを懇願して どれくらいだろう
新しい時代へと橋が架かるだろう
何回だってI’m OKまだ立てるから
君を追いかけるよ その未来まで」
のフレーズで斎藤にピンスポットが当たり、その間に田淵と鈴木がステージから居なくなっている、という演出もそのままであるが、斎藤はそのフレーズを1部よりもさらに丁寧に歌っているように感じた。2部というバンドにとっては過酷と言える内容のライブを見事にいつもと変わらぬクオリティでやり切ることができた。その充実感と達成感、何よりもこうして観客が目の前にいる状況でライブができている喜び。そんな様々な思いを噛みしめながら歌っているようだった。
3回の配信ライブをやった時に、バンドのスタイルゆえに「ユニゾンは配信ライブに合っている」とよく言われていた。でもそれはユニゾンのライブの地力あってこそのものだし、やはりそれを1番感じられるのはこうして目の前で音を鳴らしているのを見た時だ。2本連続で見ても全く飽きることはない。目の前にロックバンドがいて演奏している。それがどんな配信ライブよりも強く感じることができる、ロックバンドの、そして我々の生存証明だ。
8年前、やはり全席指定(とはいえ立って見ることはできた)だった渋谷公会堂で初めてワンマンライブをやった時に田淵は
「どうだ!ロックバンドは楽しいだろう!」
と言っていた。座ったままでも、ロックバンドの、ユニゾンのライブは確かに楽しかった。
1.クローバー
2.フルカラープログラム
3.フィクションフリーククライシス
4.誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
5.セレナーデが止まらない
6.世界はファンシー
7.君はともだち
8.夏影テールライト
9.Phantom Joke
10.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
11.ライドオンタイム
12.harmonized finale
文 ソノダマン