パンクシーンだけに留まらない支持を得ながらキャリアを重ねてきたパンクバンドは支持だけでなくサウンドもパンクに留まらないものを得ようとする。というかそうして進化しようとする。それは経験や技術を重ねたことでパンク以外のことができるようになるということでもあり、世代的には175Rがそうして幅広いサウンドを獲得していく姿を見てきた。
WANIMAも昨年リリースしたアルバム「COMINATCHA!」はまさにそうしたパンクバンドとしての広がりを求めて辿り着いたものであったが、今年緊急リリースした「Chedder Flavor」は潔いくらいにパンクに回帰している。
とはいえそれが後ろ向きなものなのかと言えば全くそうではない。パンクしかできないからパンクをやっていた初期とは違い、様々なサウンドを鳴らすことができる上でパンクを選んだ。そこには今パンクを鳴らす理由がある。それはもちろん今のコロナ禍に覆われた世の中がそうさせた部分もあるだろうけれど、WANIMAのファンはわかってはいても、世間のイメージとしてはまだ「能天気に明るいパンクバンド」というものが払拭されてはいない。そんなイメージに敢えて抗うというよりも、自分たちの心の内から出る声として、悔しさや辛さなどのネガティブな歌詞をパンクに乗せている。でもそれが前述の通りに後ろ向きなものには全く聴こえないのは、そうしたことも全てリスナーとともに乗り越えていかんとするバンドの精神力の強さゆえ。
なぜWANIMAがこんなにも飛び抜けた、氣志團の綾小路翔をして「誰がこのバンドに勝てるんだ」と言わしめた存在になれたのかという問いに今一度自分たちの原点であるパンクサウンドでもって答えるかのようなアルバム。9曲で30分に満たないスピード感も含めてやはりWANIMAはパンクでしかない。
/ 2021/01/03