/ 2022/04/07
こんなにも歌詞カードを見ながら聴きたいと思うアルバムは今年他にない。何と発音しているのかはハッキリとわかるのだが、そこにどんな漢字が当てられているのか、それによってどんな意味を持った文章になっているのか。クリープハイプはずっと歌詞にこれでもかというくらいに向き合ってきたバンドであるが、尾崎世界観が作家として芥川賞候補になったりというバンド外での活動がバンドの言語表現にもより独特な表現をもたらすように作用している。とりわけアルバム冒頭に収められた「料理」は現状のそのクリープハイプの歌詞表現の極地と言っていいものである。
しかし、「クリープハイプの日」に先んじてライブで演奏された「ナイトオンザプラネット」がR&Bなどの要素を強く含んだものであったために、アルバム全体としてもそうした方向に向かうのかと思いきや、直前に配信でリリースされた「しょうもな」が象徴するように、疾走感あふれるギターロックとしてのクリープハイプという曲が意外なくらいに多い。それはもしかしたら自身の歌詞が最も乗りやすいサウンドはそうしたものであるということを悟ったのかもしれない。
フェスやイベントで「今自分たちが本当にやりたい、やるべき曲をやる」というモードに突入していることも含めて、シーンに登場してきた時以来というくらいに、今のクリープハイプの活動にドキドキしている。それは2022年以降もきっとそう思っているはずだ。
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