ONE ON ONE the telephones / 9mm Parabellum Bullet 1000CLUB 2021.10.1 9mm Parabellum Bullet, the telephones
この日、千葉県は台風による強力な雨と風に見舞われていた、というのはちょうどほぼ2年前に行われた、9mm Parabellum Bulletと凛として時雨との2マンを思い出させる。その影響で最前列のチケットを持っていたというのに、後半少ししかライブを見れなかったということも。
その3ヶ月前には9mmは浜松窓枠でthe telephonesとの2マンを開催していた。ライブ後に浜松の歓楽街の居酒屋で飲んでいたら、メンバーが同じ店に打ち上げに来たということも含めて実に美しい思い出であるが、その2マンがその時以来に開催。その舞台はオープン以来、the telephonesがすでに何度もライブをしている横浜の1000CLUBである。
入場するとまず驚いたのはドリンクでビールを含めたアルコールが販売されていたこと。緊急事態宣言は全面的に解除されたが、それがこうした効果を生むことになることも、最後にライブハウスでビールを飲んだのがいつだったかも忘れてしまっていた。
しかしながらもちろん感染対策は施されており、入場時には検温と消毒、客席は立ち位置にマークが貼られた立ち位置指定でのディスタンスの取り方となっている。
・9mm Parabellum Bullet
2年前は9mmが後攻だったのは、9mmが対バンツアーにtelephonesを招いたからであるが、今回は9mmが先攻というのは地理的には横浜は9mmのホームであるが、この会場が初めてであるということだろうか。
18時半過ぎにおなじみの「Digital Hardcore」のSEが流れると、ステージに現れたのはサポートなしのメンバー4人だけ。確かにステージのセッティングからそんな気はしていたけれど、初っ端から4人のみというのはいつ以来だろうか。4人になったということは滝善充のギターが万全であるということであるが、その滝は日本が誇るエモバンド・bachoのTシャツを着ているということからも万全っぷりが窺える。
4人がライブのオープニングを告げる音を鳴らし始めると、黒いシャツを着た菅原卓郎が
「Are you DISCOー!?」
とまるで石毛輝のようなハイトーンボイスで叫ぶのはtelephonesとの対バンならではであるが、9mmにとってのDISCO曲である「Discommunication」でスタートするという、完全なる対telephones体制である。
その「Discommunication」から早くも滝はステージ前にある台の上に乗ったりしてギターを弾きまくり、それは「ハートに火をつけて」の間奏のギターソロにおいても、
「1人でこんなに弾けるようになったのか」
と、痛々しい光景も見てきたからこそ、その滝の元気な姿にグッとくるものがある。その滝の姿を、長い髪を結いた中村和彦はちゃんと座れるかどうかを手で触って確認してから、ステージ端の柵のようなものに腰掛けてベースを弾きながら眺めていた。その時だけは和彦の視点は客席ではなく滝をはじめとしたメンバーに集中していたのは、本人たちもこうして4人でライブができているということに感慨を感じていたりしたのだろうか。
そんな卓郎、滝、和彦は「The Revolutionary」のイントロのキメでタイミングを合わせて楽器を抱えてジャンプする。その姿のあまりのカッコよさは、この曲でミュージックステーションに出演した時に大反響を巻き起こしたことなんかを思い出させてくれる。滝はギターだけではなく、この曲ではもはやコーラスというよりはシャウトと言ってもいいくらいのレベルで
「世界を変えるのさ」
のフレーズを叫ぶ。なんなら卓郎よりも声が出ているんじゃないかとすら思うけれども、「俺たちの思い通りに」世界を変えられるとしたら、どんな世界に変えるだろうか。やっぱり、我慢するようなことなく9mmやtelephonesをライブハウスで声を出したり、汗まみれの身体をぶつけ合えるような、2年前までのような世界に変わって欲しいと強く思う。
「このライブハウスに来たのは初めてだけど、この辺りの店で大学の時に飲み会をして潰れたりだとか、完全に生活圏内で。なんならこのすぐ近くのスタジオで俺たちはインディーズでリリースするよりももっと前にデモCDを録った。その時も台風でスタジオが浸水して室外機が故障して、汗ダクになりながら1曲だけレコーディングするはずだったのを、
「一発録りでやるんで、4曲録らせてください」
って言って無理矢理4曲レコーディングした(笑)」
というこの横浜駅近辺の思い出を語るというあたりは、今年の9月9日の「9mmの日」をZepp Yokohamaで開催したことからも明らかな通り、本当に9mmが横浜のバンドなんだなと思えるエピソードだ。今メンバーが大学生だったら、このライブハウスの隣にある飲み屋街で飲んでいたりしていただろうか。
そんな思い出も語りながらも、
「俺たちとthe telephonesが一緒になると何かが起きる。今日もそれを感じて帰って欲しい」
と言って、telephonesの石毛輝をステージに招く。石毛は黒の9mmロンTを着用して完全に9mmメンバーとなり、普段は使わないギターを手にする。それはやはり9mmの曲を弾くためだからということで、かつて「BABEL」のツアーファイナルでギタリストとして助っ人で参加した時も、その時だけのためにフェンダーからSlipknotのシグネチャーモデルのギターを借りたというのだから、石毛の9mmへの想いの強さを窺い知ることができる。
そうしてギター石毛、卓郎はハンドマイクという編成で演奏された「Supernova」は間奏で滝がギターを弾きまくりながらステージに寝転がると、その横に石毛が寝転がり、和彦、卓郎、と4人が一気にステージに寝転がるという異様な光景に思わず笑い声が漏れる。滝は「Monkey Discoooooo」での石毛のブリッジギターへのリスペクト的なポーズでもギターを弾いていたが、全員が寝転がったことによって、表情までもしっかり見えるようになったかみじょうちひろ(ドラム)はそんな光景を目の前にしてもクールな表情を崩すことなく、超人ドラマーとしてリズムを刻み続けている。
そうしたこの日だからこそのコラボを見せてくれた石毛がステージを去ると、和彦のガニ股ベース奏法が炸裂しまくる「Black Market Blues」で、まるでtelephonesのライブかのように観客も滝も踊りまくるのだが、こんなにも「王道な9mm」を感じさせるようなセトリはいつ以来だろうか。それはフェスというものがなくなったからこそ、いわゆるフェスセトリでのライブを観れなくなってそう感じてしまうのかもしれないけれど(9mmの日に「今年の夏フェスに出たらこのセトリだったメドレー」もやっていたけれど)、その「王道な9mmのセトリ」を4人での9mmで演奏するということの意味がこの日のライブからは確かに感じられた。
しかしながらそんな王道な曲たちの後に演奏された最新シングル「泡沫」がその王道な曲たちの後に演奏されても全く違和感がないというのは、この曲が激しいタイプではない曲としての9mmの王道を更新している曲だからだ。きっとこれからはこの曲もまた9mmの王道の曲として捉えられるような曲になるのだろうし、卓郎のボーカルの色気を存分に感じさせてくれる曲である。
そんなセトリを卓郎は
「the telephonesと出会って、ライブハウスでばかりライブをやっていた頃の曲を演奏している」
とこの日のコンセプトを明かすのだが、やはりいわゆる代表曲をひたすらやりますというようなものとは違う意味でこのセトリになっているということだし、それは今後も様々なライブでコンセプトを持ってセトリを決める9mmのライブが観れるということでもある。
そんなセトリに当然入ってくるべき「Cold Edge」も実に久しぶりに聴いた感じもするが、地獄の三三七拍子という観客の手拍子は響けど、やはり「オイ!」という声は客席からは響かない。けれどもそれが聞こえたのは、滝であり卓郎であり和彦がそう口にしていたからだ。なんなら和彦は独特の低いマイクに向かって
「横浜ー!」
と叫ぶ。この曲の作曲者でもある和彦は自身のDJで必ずtelephonesの曲をかけるくらいにtelephonesが大好きな男である。だからこそよく知らない人が見たら「怖い」というイメージを抱きがちな印象もあるけれど、telephonesと一緒のライブではいつも本当に楽しそうな表情を見せてくれるし、やはりこの曲でもステージ前の台に立ってギターソロを弾きまくる滝の姿はギターの妖精が自由闊達に飛び回っているかのようだ。
その滝は「新しい光」では観客も含めた誰よりも頭を振りまくりながらギターを弾き、もはや1ミリ足りとも身体の不調がないんじゃないかとすら感じる。その滝と卓郎、和彦がアウトロでネックを立てて音を合わせる姿には、9mmというバンドの持ち得るカッコよさという要素が集約されている。
そして卓郎がマラカスを手にして振りまくり、滝のギターに合わせて観客がジャンプするという「talking machine」のイントロは、インディーズ期の曲をアルバム収録順通りに演奏するという「カオスの百年」ツアーではオミットされていたのだが、この日はそうした曲順や世界観という縛りから解放されていることによって無事解禁され、しかもダンサブルな新パートの演奏まで追加されているということもあり、観客の代わりに
「1,2,3,4!」
と叫ぶ卓郎の声が響き渡ると観客は踊りまくらざるを得ないのだが、滝はバンザイギターを披露したりと、曲を経るごとによって消耗するどころか、より解放されてきているような感覚すらあるし、だからこそ最後のサビ前での滝と和彦のジャンプは「新しい光」のイントロで見せたものよりも遥かに高い。そんな姿を見ていると、9mmはこれから先、40代や50代になっても変わらずにこうしたライブをやっているんじゃないだろうかとすら思えてくる。
そしてラストはその滝がイントロで高速ギターを刻み、やはり「9mmの日」のようにまさに「再現不可能」だと感じさせる速さにまで進化した(もはやそれぞれのリズムが合っているのかわからないくらいのものをかみじょうのドラムが見事にまとめ上げている)「Punishment」で、滝はギターをブンブン振り回しまくって最後には刀やマサカリのように肩に担ぎ、和彦はひたすら低いマイクに向かってシャウトをしまくっていた。かみじょうの演奏後のおどけた表情はこのライブが素晴らしいものだったことを物語り、卓郎はやはり丁寧かつ爽やかにに観客の拍手に応えてからステージを去って行った。
終わってから、「なんてカッコいいバンドなんだろうか」と思った。それはもう15年近く前に9mmのライブを見始めた時と同じ感覚だ。しかし今になってそう思えたのは、やはりこの日のライブが石毛の参加こそあれど、メンバー4人だけのものだったからだ。
近年も4人だけで演奏する曲はあれど、ライブ一本まるまるを4人だけでというのは本当に久しぶりだし、その4人だけのライブが最後に「talking machine」と「Punishment」にたどり着くという内容だったからこそ、そうした感覚を得ることができたのだ。
滝離脱時という大ピンチを救ってくれた武田将幸(HERE)や為川裕也(folca)には感謝しかない。彼らのおかげで止まることなく9mmのライブを観ることができたのだし、その期間に9mmのライブが全く見れなかったらと思うと恐ろしくすら思うし、もちろんこれから先もずっと2人の力を借りていくことになるだろうし、そうやって9mmは続いていくはずだ。
でもやっぱり9mmはこの4人でこそ完全体と言える形であり、滝のギターは他のどの人が弾いても決して滝のようには弾けない。その滝のギターが9mmを9mmたらしめているし、それは卓郎のボーカルも、和彦のベースも、かみじょうのドラムもそうだ。この4人であることによって、9mm Parabellum Bulletなのだ。そんな、このバンドのカッコよさを今まで何百回ライブを見てきたかわからないくらいにたくさん見てきた上で、改めて感じられたライブだった。
1.Discommunication
2.ハートに火をつけて
3.Vampiregirl
4.The Revolutionary
5.Supernova w/石毛輝 (the telephones)
6.Black Market Blues
7.泡沫
8.Cold Edge
9.新しい光
10.talking machine
11.Punishment
・the telephones
そして後攻のthe telephones。こんなに凄まじいライブを見せた9mmの後のフロアをホームに変えることができるからこそ、この順番になったというところもあるはずだ。すでにファンにとってはtelephonesの1000CLUBでのライブというのも特別なものであり、聖地と呼べる場所になりつつある。
おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」でカラフルなアフロのカツラを被ったメンバーがステージに登場すると、ノブ(シンセ)がそのカツラをなかなか袖に投げようとしないという点からしてすでにこの時点で荒ぶりまくっていることがわかるのだが、その荒ぶりっぷりの要因である9mmのライブにゲスト参加した石毛輝(ボーカル&ギター)による、
「横浜ー!最高の1日にしよう!」
という挨拶的な言葉の後に松本誠治(ドラム)が力強いイントロのビートを叩き始め、石毛がギターを刻み始めたのは実に久しぶりの「D.A.N.C.E to the telephones!!!」で、ノブは早くもわけのわからない動きでステージを歩き回り、曲中には「D.A.N.C.E」の人文字を、BAYCAMPの時と同様に白シャツ着用というセクシーさを前面に出すようになった長島涼平(ベース)が主導し、観客もその姿に合わせて腕と脚を使って「D.A.N.C.E」の文字を体で表現するのだが、こうしてギチギチではない、しかもホールなどの座席がある会場よりも距離を保った状態だとこの人文字がこんなにやりやすいのか、というのはコロナ禍だからこその発見と言えるかもしれない。
イントロのギターとシンセの狂騒的な音が聞こえてきた段階でダイバーが発生する姿が今でも脳裏に浮かぶくらいに観客の感情を昂らせてくれる「sick rocks」はノブの
「One, two, three, four, can’t you understand?」
というカウベルを叩きながらのカウントも、その後の石毛の歌詞にならない絶叫も、全てが早くもDISCOの向こう側に行こうとしているような気迫に満ちている。だからこそか、あるいはこのライブがバンドのインスタアカウントでライブ配信されているからか、石毛はいつも以上に曲中で体をくねらせて踊っているように見える。
そうした選曲は9mmの「ライブハウスでやっていた曲」というコンセプトに合わせたものなのかな?とも思ったけれど、続く「Ex-boyfriend」はその流れからしたら意外と言える曲であるだけに、どうもそういうわけでもないみたいであるが、この曲の多幸感に包まれるようなサビでの幻想的なサウンドは我々の視界をミラーボールの輝きで満たしてくれる。
涼平のグルーヴィーなベースが否が応でも観客を踊らせる、体を揺らせるのは「electric girl」であるが、ここまでのリアクションからしてもtelephonesにアウェー感が全くない、昔からtelephonesのライブを見てきた人たちばかりであることがわかるのだが、それでもカウベルを叩いていたノブがこの曲の間奏でキメに合わせて着ているシャツを捲っていき、最後にはほぼ脱ぎかけ(でもまだ脱がない)になるというパフォーマンスには堪えきれない笑いが起きていただけに、久しぶりにライブを見るという人ももしかしたら多かったのかもしれない。とはいえしょっちゅうライブを見ていても笑ってしまうのだけれど。
台風の中でもこうして足を運んでくれた観客に石毛が感謝を告げると、ノブは得意の卓郎のモノマネ口調で喋り始めるのだが、涼平に
「卓郎さんが絶叫言わないこと、やって」
と振られると、
「おいなりさん」
と卓郎口調で言うのだが、それを聞いた卓郎は袖から出てきて
「いや、おいなりさん普通に言うし(笑)」
とノブにツッコむ。これだけのためにわざわざステージに出てくるというのもtelephonesとの対バンだからだろうし、そもそもノブがこんなに卓郎のモノマネをするのも9mmとの対バンだからである。
9mmは王道的なセトリの中でも9mmの王道に連なる新曲「泡沫」を演奏していたが、telephonesの新曲はタイトル通りにトロピカルな、誠治のラジオDJ的な声から始まる、会場限定販売シングル「Caribbean」。
間奏ではノブが観客に腕を上げるように煽りながら、石毛、涼平、ノブが揃ってステップを踏む。最後には涼平がフェイントを入れたりもしていたが、ともに前に進みながらも今生まれてきた新曲のベクトルが全く違うというのが面白い。telephonesにとってはこの曲は明らかに「新しい」というタイプの曲だからだ。
涼平のベースが再びうねりまくる「Tequila, Tequila, Tequila」では間奏で石毛が滝に触発された部分もあるかのようにステージ前まで出てきてギターを弾きまくりながら、観客を心地良く揺らしていく。こうしてライブハウスでアルコールを摂取しながらこの曲を聴ける日が戻ってきたというだけでも本当に感慨深い。もちろんそれでもまだライブ中に声を出したりはできないし、そこへの意識はこれからも強く持っていないといけないけれど。
「古い曲やります!」
と言って演奏されたのは、ノブがリズミカルにカウベルを打ち鳴らしながら、石毛の刻むギターがエマージェンシー下のダンスフロアという様相で観客を踊らせ、サビでは石毛とノブによるハッキリした掛け合い的なボーカルが聴ける「panic disorder」であるが、この曲を演奏していたのはかつて9mmとこうしてライブハウスで対バンしていた頃に演奏していたりしたという要素もあるのだろうか。
そして狂騒的なシンセのイントロからして踊りまくる「HABANERO」ではジャンプすることは禁止されていないとばかりに観客を高く飛び跳ね上がらせながら、石毛が
「9mmー!」
と9mmへの愛情を叫ぶと、ノブも続けて
「Bullet! Bullet! Bullet!」
と叫びまくり、やはり笑い声が漏れてしまう。石毛は全くライブのスタイルが変わらない9mm同様に、今もこの曲の間奏では身軽にロンダートをステージ上で決めてから、この日はインスタライブ用のスマホに接近してからギターソロを弾きまくる。telephonesもまたこれから先、40代や50代になってもずっと変わらないのかもしれない。
その変わらなさを最も感じさせてくれるのは、石毛が秋から始まるツアーの告知をしている最後でふざけたポーズを取りまくっているというノブの存在によるものであるが、そんなノブに惑わされることなく石毛は
「こうして拍手だけを受ける状況に慣れてきつつあるし、俺たちのモチベーションを気にしてくれる人もいるかもしれないけれど、俺たちはめちゃくちゃ楽しくやれてる。
でもこの状況に完全に慣れちゃダメだ。元に戻るのはきっとまだまだ先になるかもしれないけど、みんなでまた一緒に叫ぼうぜー!」
と、今のライブハウス、今のライブの状況について語る。確かに今のライブは人と距離が空いていたりして快適かもしれないし、telephonesのライブはこの状況でも本当に楽しいけれど、やっぱりtelephonesのライブでは「DISCO」とみんなで大声で叫びたい。そうやって全く知らない、ただ同じ場所にいたtelephonesが好きな人たちと、一瞬だけでも同じ方向を向けている、一つになることができているという魔法のような瞬間を感じてきたのだから。
そんな願いを込めるかのような享楽的かつポップな「A.B.C.DISCO」ではコーラスに合わせて観客の手が左右に振れ、メンバーが「A.B.C.DISCO」と叫ぶ姿を見ていて、いつになったら一緒にこのフレーズを歌える日が来るのだろうかとも思っていた。それはこうしてしっかりルールを守ってきたからこそ、きっとまた繋がるものになるとも信じている。
そしてサウンドの凶暴性では随一のディスコシリーズである「I Hate DISCOOOOOOO!!!」ではなぜかそれまで暴れまくっていたノブが「DISCO!」と叫びまくっている間にアンプに繋がっていないギターを袖から持ってきて、あたかもギターを弾きながら歌っているかのような形になっているのが地味に面白い。かつてのように客席にダイブしたり、客席を走り回ったりするパフォーマンスをすることはできないけれど、そんな中でもノブはノブらしい方法で我々観客を楽しませてくれている。
そんなライブの最後はやはり横浜とこのイベントの主催者と観客と、そして9mmに感謝を告げる「Love & DISCO」。思いが強ければ強いほどに輝きを放つこの曲はやはり、この日の9mmへの思いが強いだけに眩い輝きを放っていたのだが、最後のサビ前で急に涼平のベースの音が出なくなるという、カッコよく決まりきらないtelephonesらしさもこの1番良いところで現れ、本人もメンバーも我々もそうしたところも含めて本当に笑顔になれた。やはりtelephonesと9mmの2マンには愛とディスコが溢れていたのだった。
しかしこの2組の対バンがこれだけで終わるわけがないのである。ということで、アンコールではもはや当たり前のようにtelephonesのメンバーと一緒に9mmの卓郎と和彦がtelephonesのTシャツを着て登場。あまりに普通に出てきただけに、
卓郎「もはやメンバーみたいなもんだから(笑)」
と言いながら、やはり本編中のMCでのノブの卓郎のモノマネにはツッコミを入れたかったらしく、
卓郎「おいなりさんは言うけど、あんまり好んで食べるものではない」
ということ。ノブはそのモノマネをしたからか、卓郎と和彦も含めて全員黒のTシャツを着ている中で1人だけ白の9mmTシャツを着るという浮きっぷりだったが、石毛が和彦に
「元気?」
と振ると、普段の9mmのライブ同様の低いマイクに向かって
「元気元気」
と言うので、
「telephonesのライブの時は普通のマイクでいいんじゃないか説」
と卓郎に突っ込まれながら、観客に爆笑を提供してくれた。本人も下を向いて話しているだけに、
「誰と喋っているのかわからない」
という状態だったらしいが。
そんな6人編成で演奏されたのは、telephonesのトリビュートアルバムでも9mmがカバーし、石毛がサポートギターで参加した9mmのライブでも演奏されていた「Monkey Discooooooo」で、和彦と涼平のツインベース、メインボーカルを担った卓郎はハンドマイクで原曲通りの超ハイトーンキーのこの曲を、明日声が出なくなっても構わない、なんなら喉が裂けても構わないというくらいの熱唱&絶唱。
2コーラス目をどちらが歌うか決めていなかったからか、急遽そこは石毛が歌ったのだが、おなじみの間奏でのブリッジギターでは卓郎、ノブ、和彦、涼平がブリッジする石毛に座ろうとするというこれまた爆笑のパフォーマンスを展開し、最後のサビも含めて見事にこの曲を歌いきった卓郎は最後はノブとともにシンセを弾き、和彦は低いマイクに向かって叫びまくるというコラボを見せたのだが、この2組が揃うと和彦とともにノブも本当に楽しそうだ。それは寡黙そうな和彦とパーティー野郎のノブという一見対照的なようにも見えるこの2人が、実は最も似たもの同士なのかもしれない、と思いながら、石毛は最後にしっかりかみじょうと滝にも感謝とリスペクトを込めて名前を呼んでいた。
石毛はこの日、
「このライブハウスの楽しさをここにいないみんなにも伝えて欲しい」
と言っていた。自分自身、こうしてライブに行きまくるような生活に至った理由の何割かは、15年近く前にこの2組のライブに行くようになったからだ。
地元の千葉LOOKに初めて行ったのも9mmの「Termination」ツアーだったし、the telephonesを見るためにディファ有明やらラフォーレミュージアムやらといういろんな場所へ行った。それらは全て楽しかった思い出であり続けているが、telephonesは活動休止し、9mmは滝の負傷があった。全てが順風満帆な活動ではなかったけれど、その2組がそうした経験を経た上で、今でも楽しさとカッコよさを更新し続けてくれるライブを見せてくれている。きっとこれからもそれをさらに更新していく姿を見るために、こうしてライブハウスに行き続けるのだろう。その中でまた2〜3年に一度くらいでいいから、この2組の対バンをずっと見ることができていたら、と思っている。
1.D.A.N.C.E to the telephones!!!
2.sick rocks
3.Ex-boyfriend
4.elctric girl
5.Caribbean
6.Tequila, Tequila, Tequila
7.panic disorder
8.HABANERO
9.A.B.C.DISCO
10.I Hate DISCOOOOOOO!!!
11.Love & DISCO
encore
12.Monkey Discooooooo w/ 菅原卓郎&中村和彦 (9mm Parabellum Bullet)
文 ソノダマン