これまでにも代々木体育館だったり、さいたまスーパーアリーナだったりで「さすがミュージックステーションを放送している局だな」と思うような出演者を集めてきた、テレビ朝日ドリームフェスティバル。今年はコロナ禍での開催で、幕張メッセでの3days。
初日である9/23の祝日にはさすがにMステによく出ているだけあって、このフェスではおなじみのB’zなども出演していたが、この日の2日目は
緑黄色社会
マカロニえんぴつ
あいみょん
MAN WITH A MISSION
レキシ
Perfume
というロックフェスなどでもおなじみの、どちらかというと近年テレ朝の音楽番組に出演したり、取り上げられている面々が中心。
幕張メッセ1〜3ホールを使い、1ホールの飲食、物販エリアに入る際には接触確認アプリねダウンロード、イベント公式アプリでの問診票の確認、検温と消毒に加えて持ち物チェックも行われるという対策で、飲食エリアのベンチは全て同じ向きで椅子が設置されており、ステージは一つだけだし規模はだいぶけれど、これは今年は年末のCOUNT DOWN JAPANも開催できるんじゃないだろうかという期待が膨らんでくる。
2〜3ホールのライブエリアは全席に椅子が置かれた指定席になっており、隣の席は空けているという距離を保っているが、幕張メッセとはいえこの出演者でここまで動員者数を絞っているというのはなかなかに衝撃的でもある。
15:00〜 緑黄色社会
今最も勢いのあるバンドの一つと言っていいくらいに様々なタイアップを果たし、さらに長屋晴子(ボーカル&ギター)がタイアップドラマに出演ということも話題になっている緑黄色社会がこの日のトップバッター。こうしてライブを観るのはかなり久しぶりだ。
ミュージックステーションの司会のアナウンサーの方の前説から、ステージ背面にある「tv asahi」の円環のようなモニターには「緑黄色社会」というバンド名が映し出されて順番にメンバーが登場。基本的に長屋がだいたいそうであるからか、このバンドは白を基調とした衣装を着ているイメージが強いし、それがどこかポップバンドとしての清廉さを感じさせる。
peppeによる美しいキーボードのイントロから、小林壱誓(ギター)が観客に手拍子を煽る「これからのこと、それからのこと」は最新シングル「LITMAS」のカップリングという位置に収録されている曲であるが、こうした初めて自分たちのライブを観るという人がたくさんいるフェスという場で1曲目に選ぶということはそうした位置の曲であっても自信のある曲だということであるし、実際に早くも「隠れた名曲」という位置にあると言っていい曲なのだが、この広大な幕張メッセの中に凛として響く長屋のボーカルの伸びやかさに驚いてしまう。ああ、こんな会場でライブをやるべきバンドになったんだなと。
その長屋がハンドマイクで歌い、小林と穴見真吾(ベース)がステージ左右のスクリーン下まで駆け出して行って演奏する、このバンドの持つロックさをパフォーマンスとサウンドで感じさせてくれる「Alice」はまさにこうした広いステージに立つようになった存在になったんだなということを実感させてくれる。
小林が他のメンバーに、
「マカロニえんぴつと我々は結成年が同じなんですよ。2012年結成で。初めて対バンしたのが2015年の新宿MARZだったんだけど、まさかこんな大きなところで一緒にライブができるなんて」
と、自分たちだけではなく、インディーズ時代からの盟友とも言える存在のバンドと幕張メッセという大きな会場で一緒の日にライブをやっていることの感慨を語ると、長屋が
「誰にも一つくらいはあるでしょう、秘密についての歌を」
と言ってギターを弾かずにマイクスタンドを握るようにして歌い上げたのは最新シングル曲「LITMAS」。peppeのキーボードのサウンドがその長屋の歌とメロディを強く後押ししていく、広いフィールドで鳴るべき曲であり、そうした場所にこのバンドが飛び込んでいったからこそこうした景色が見れるようになったんだろうなぁと思う。
そんなポップの王道的な曲から一転して小林のギターを筆頭にロックサウンドに振り切れるのは自身の内面にある葛藤をそうしたサウンドで昇華するかのような「Shout Baby」であり、
「アーユーレディー
僕らは夢に踊らされながら
本気のステップで
まだ見ぬステージへ」
というフレーズが、こんなコロナ禍の中であっても前を向いて足を進めていくというように、観ている我々の気持ちを音楽で、ライブで前向きなものにしてくれる「アーユーレディー」とバンドサウンドのダイナミクスを感じさせる曲が続くと、長屋は声は出せなくてもリアクションで伝えて欲しいということで、観客に
「今日の目当ての出演者は?」
「今日は何を食べた?」
と問いかけ、出演者のタオルを掲げたり、穴見は麺をすするようなジェスチャーをしたりと、確かに言葉は発せなくても伝えられることは確かにあるんだな、ということを実感させてくれる。それは拍手の大きさというのもそうである。
そしておそらく昼にラーメンを食べたであろう穴見がドラムのライザーの上に立って太く重いベースを弾く「sabotage」では曲中に再び小林とともにステージ左右まで駆け出し、キメ連発のサビの締め部分ではメンバーが顔を見合わせるようにしてタイミングを図る。その姿はポップな曲を歌が上手いボーカルで聴かせるというパブリックイメージが定着しつつあるものとは全く違う、ライブでそれぞれの鳴らす音を重ねて自分たちの音楽を作り上げるというバンドらしさを体現している。
そんなライブのラストは色とりどりの照明が、まるでこのバンド自身がヒーローであるかのようにメンバーを照らし、長屋はハンドマイクでステージを歩きながら歌う姿が実に堂々としたものに見える、このバンドの名前を世の中に轟かせた「Mela!」。長屋はその端正な表情で
「今なんじゃない?
メラメラとたぎる
こんな僕にも眠る正義が
どうしようもない衝動に駆られて
ほら気付けば手を握っている
ほっておけない
そんなに荷物を背負い込んでどこへ行くの
ほんのちょっと僕にちょっと預けてみては?
こんな僕も君のヒーローになりたいのさ」
という歌詞を歌うのだが、そうして歌っている姿がきっと客席から見ている誰かのヒーローになっているんだなと思わざるを得ないような堂々たる歌唱っぷりで、最後には
「ライブって楽しいね!」
と言った。ああ、本当にその通りであるし、なんだったらライブよりもテレビを主戦場にするという選択肢を取ることもできるような位置にいるこのバンドがそう言ってくれて本当に良かったと思った。
3年くらい前、まだようやく小さなライブハウスシーンで名前を聞くようになった頃にサーキットライブの渋谷duoでこのバンドのライブを見た時は、このバンドの「ポップ」は「普通」だなと思うくらい、まだ曲にもライブにも強く惹かれるような要素は自分には感じられなかった。
でも今はその、このバンドの「ポップ」は「たくさんの人に届くべき音楽とライブ」になったんだな、と久しぶりにライブを見て感じた。満足にライブができない期間でも、知名度だけが上がるんじゃなくて、それにふさわしいパフォーマンスができるバンドに進化していたのだ。
そして個人的には、school food punishmentやOverTheDogsという、この会場の規模まで来てもおかしくないくらいのポテンシャルを持ったバンドの骨格を支えながらも、そこまでは至らなかったサポートドラマーの比田井修が幕張メッセのこんなに大きなステージでドラムを叩いているのを見れて感無量だったし、やっぱりここで叩いているべき人だよなと改めて感じられた。
1.これからのこと、それからのこと
2.Alice
3.LITMAS
4.Shout Baby
5.アーユーレディー
6.sabotage
7.Mela!
16:00〜 マカロニえんぴつ
ミュージックステーション出演など、テレ朝といろいろと関わりがある存在とはいえ、今年の出演者の中に入っているのを見ると、ここまでの存在になったんだなと実感する。マカロニえんぴつ、このフェスに初出演である。
おなじみのビートルズの「Hey Bulldog」がSEとして流れてメンバーが1人ずつステージに現れると、はっとり(ボーカル&ギター)と田辺由明(ギター)が両腕を高く挙げてこのライブへの気合いを示す中、長谷川大喜のピアノのイントロが鳴るとともにステージを黄色い照明が照らす「レモンパイ」からスタートし、そのグッドミュージックに観客の体が揺れる。
そのまますぐに続けて演奏されたのは、もともとは私立恵比寿中学へ提供された、長谷川のキーボードとともに、高野賢也(ベース)と高浦”suzzy”充孝(ドラム)のリズムがムーディーな雰囲気を生み出す「愛のレンタル」という、このフェスのセトリにこの曲が入るとは!と嬉しい驚きを感じさせながらも、その歌詞は提供曲とは思えないくらいに、例えば「girl my friend」を彷彿とさせるくらいにはっとり節というものだからこそ、こうしてライブで演奏されているのを聴くと、この5人で演奏しているのが1番自然であり、曲の力を引き出しているように感じる。
そんな、今この曲をやるのかと思う曲の後には、今この曲をやるべきタイミングでしかないという、テレ朝の象徴的アニメの一つである「クレヨンしんちゃん」のタイアップ曲「はしりがき」を演奏し、そのタイトル通りに疾走感溢れるサウンドと、
「仮面より 起こせアクション!いざゆけ」
というクレヨンしんちゃんの内容を知っている人は「おお!」と思うし、知らなくても自然に感じるさりげない歌詞が、今このテレ朝のフェスでこの曲を聴けているという喜びを実感させてくれる。
「全年齢対応、ポップ・ロックバンド、マカロニえんぴつです!」
というはっとりの挨拶も、クレヨンしんちゃんを見ている子供たちにも自分たちの音楽を聴いて欲しい、届くように、という気概を感じる。
そうした子供よりも、メンバーよりさらに上の世代の人たちにも届く可能性を持ったバラード曲「two much pain」はこの広大な幕張メッセという会場に、はっとりのボーカルとこのバンドの演奏がしっかりと届くスケールを持ったことを証明しているかのようであり、このバンドがすでにアリーナでワンマンをやっていることを踏まえても、いずれはここでもワンマンを、という想像が広がる。それは近い未来に必ず目にする光景だろうし、さすがにそこなら今のようにチケットが取れないということにもならないはずだ。
ややパーマ感が強くなった長谷川のピアノがキャッチーさを、田辺のブルージーなギターが泣きを感じさせつつ、照明はやはり妖しい色に染まっていく「ブルーベリー・ナイツ」では間奏ではっとりと田辺が向かい合ってギターを弾いたりするのだが、こうしてフェスで観ると本当に名曲しかないバンドであることがよくわかるのだが、さらに間髪入れずに長谷川のシンセが名曲確定なストリングスのフレーズを奏でる「恋人ごっこ」と、初めて自分たちのライブを見る人もたくさんいるであろう中で、ひたすらにグッドミュージックを届けられるだけ届けようというバンドの姿勢が伺える。
「もう一度あなたといられるのなら」
というフレーズからのCメロが自分はこのバンドのメロディの美しさの極致だと思っているのだが、その部分ではメンバーの姿がハッキリと視認できないくらいのステージからの逆光が、メロディの通りに本当に美しくメンバーを照らす。その光景はこのフェスのスタッフがこのバンド、この曲のことを心から理解してくれていて、それを最も輝かせてくれる演出を用意してくれたというテレ朝とこのフェスのバンドへの愛を感じさせてくれる。
そしてはっとりはこの状況になったことによって、ライブに行くということを堂々と口にしたりすることができなくなってしまったことを語り、
「ライブがないと好きなバンドのこともライブが好きだっていうことも忘れてしまう。俺は俺のために歌う、その歌を俺に似ているあなたが大切にしてくれたら、それだけで音楽は死なない」
と言って、まさにその言葉をそのまま音楽にしたかのような「ヤングアダルト」を最後に演奏する。この曲が生まれた、世に放たれたのはコロナ禍になるよりも前であるが、
「幕張ヤングルーザー」
とこの場所だからこその歌詞に変えながら、
「夜を越えるための唄が死なないように
手首からもう涙が溢れないように
無駄な話をしよう 果てるまで呑もう
僕らは美しい
明日もヒトでいれるために愛を集めてる」
という歌詞は今の音楽業界、ライブ業界、音楽を愛する人が置かれている状況そのものだ。
我々が必要としている、これがあるから毎日生きていける、頑張れると思える存在である音楽がなくならないように。その音楽があるからこそ、我々が明日からも人間でいられるように。今こう思うということは、これから先にどんな社会的な困難があって、音楽や音楽を愛する人の生活が苦境に立たされることになっても、その時にこの曲は我々を救うように響くということだ。リリース時(2019年の「season」)から「これはとんでもない名曲ができたな」と思っていたが、その名曲っぷりはリリースから2年が経った今この状況でさらに増している。
つまり、マカロニえんぴつが今こうしてこんな超有名アーティストが居並ぶフェスに出演するようになったのは必然であり、数年後にはマカロニえんぴつがその超有名アーティストの中の1組になっている。そんな予感すら抱かせるライブだった。
1.レモンパイ
2.愛のレンタル
3.はしりがき
4.two much pain
5.ブルーベリー・ナイツ
6.恋人ごっこ
7.ヤングアダルト
17:00〜 あいみょん
このフェスはライブが始まる直前に「next artist is…」というアナウンスとともにスクリーンにアー写が映り、SEが鳴ってステージに登場…という流れなのだが、SEもなしにいきなり山本健太のピアノの音が鳴り始めると、バンドメンバーとともにすでにあいみょんもステージにスタンバイしており、すぐさま「裸の心」を歌い始める。
そもそもフェスの1曲目に名刺がわりの最大の代表曲を、とかアッパーな盛り上がる曲を、というわかりやすい選択ではなくて、ピアノとボーカルのバラードという極限まで削ぎ落とした曲を選ぶというあたりにあいみょんなりのフェスでの攻めっぷりを感じさせるのだが、それが成立するのはこの曲が紅白歌合戦でも鳴らされた、もはやあいみょんの代表曲のうちの一つと言っていいくらいの名曲だからである。なのでこのオープニングの段階で会場の空気を完全に変えてしまったあいみょんは、すでにテレビやSNSでもおなじみになっているが、パーマをかけた髪型になっているという見た目の変化も果たしていて、そこもまた印象をガラッと変える。
そんなあいみょんなりの、こちらが構えもしていない先制攻撃の後には自身もアコギを弾く、マカロニえんぴつ「レモンパイ」と同様なようでいて、こちらの方がどことなく明るく鮮やかなような黄色い照明に照らされる「マリーゴールド」という出し惜しみの全くない代表曲の連発っぷりは2番バッターに大谷翔平を起用しているかのようですらある。客席では観客が腕を左右に揺らし、あいみょんは独特な歌いながらあらゆる方向の客席に目線を配る唱法によって、端の方の観客にまで手を振ったりする。いろんな出演者のファンが集まるフェスであるとはいえ、完全にあいみょんのワンマンに来たかのような空気だ。
それは編成もワンマン同様のギター×2にパーカッションまで含めたフル編成だからということもあるのだが、山本健太だけでなく、朝倉真司もパーカッションだけでなくキーボードもこなす「愛を伝えたいだとか」では、先日はsumikaでもベースを弾いていた、いったいこの人のスケジュールはどうなっているんだと思わざるを得ない須藤優のベースが曲の持つファンキーさを引き出し、アウトロではあいみょんがアコギを弾きながらステージ下手のスクリーンの下の方まで歩いていき、観客に近い位置で手を振ったりと、幕張メッセとは思えないくらいに物理的にも精神的にもステージと客席の距離が近い。それもまたあいみょんのライブならではだ。
そんなファンキーさから一転して爽快なギターロックサウンドであるにもかかわらず、
「死ね」
という衝撃的なフレーズが実に伸びやかに歌われる「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」はしかし、そこに確かなあいみょんなりの愛情を感じることができるし、去年の夏に日比谷野音から無観客配信ライブを行った時に
「もう無観客のライブはやりたくない」
と口にしてからは、その言葉を実証するように有観客ライブを規模の大きな会場でも繰り返してきただけに、どこかこのライブが少なくなってしまった(実際にあいみょんも出演する予定だったフェスがいくつも中止になっている)状況の中でも、ライブ慣れしているからこその余裕のようなものが歌っている姿から感じられる。
それが「今夜このまま」というクラフトビールをテーマにしたドラマに合わせて書かれた曲であっても、こちらは全くアルコールを摂取していないにもかかわらず、
「ねぇ もう 帰ろう 帰ろう
影も もう ねぇ 薄くなって
結局 味のない 味気のない」
という歌詞のCメロでは我々がビールの泡の中を浮遊しているかのような夢見心地にさせてくれる表現力をも有している。曲が名曲ばかりであるのはもちろん、それを最大限に引き出せるパフォーマンス力と、今のあいみょんは本当にあらゆる意味で精神も肉体も研ぎ澄まされている。
そんな先発ピッチャー全員沢村賞クラスのような流れの中には最新シングルの「愛を知るまでは」も入ってくるのだが、
「愛を知るまでは死ねない私なのだ!
導かれた運命辿って
今日も明日も生きて行こう」
というサビのフレーズがどこかこの状況の中でもブレることなく、堕ちることもなく進んでいこうという精神にさせてくれるし、ギタリストが2人いるからこそのスライドギターの音色が実に美しく響く。フェスでのライブとは思えないほどの贅沢さであるが、これはあいみょんがどんなライブでも持ち得る力の全てを発揮するという意思の表れでもある。
「今日はマカロニえんぴつとレキシっていう、クレヨンしんちゃんの主題歌をやっているアーティストが私を含めて3組いますが、その主題歌の曲を用意してくるのを忘れてしまいました(笑)」
と、「ハルノヒ」がセトリに入らないという予想外でしかない事態を明かすのだが、
「でもライブは今日だけじゃないから。「ハルノヒ」をやるライブもあるし、また観にきてくれたらそこでいろんな曲やるから」
という言葉は、これからもあいみょんはライブを止めるという選択はないということを示している。
そんな中で
「みんなは声は出せないけど、この曲をまたいつかみんなで歌えるように」
と願いを込めるようにして歌い始めたのは「君はロックを聴かない」であり、
「君がロックなんか聴かないこと知ってるけど
恋人のように寄り添ってほしくて
ロックなんか聴かないと思うけれども
僕はこんな歌であんな歌で
また胸が痛いんだ」
という、今までは観客に大合唱させていたフレーズも自分で全て歌う。それでもあいみょんには、この部分を心の中で思いっきり歌っている観客の声がハッキリと聞こえていたはずだし、この出演者が並ぶフェスに来た観客は、きっとみんなロックを聴いているはずだ。
そんなライブのラストは、あいみょんが1サビまではアコギを弾きながら歌い、そのあとはアコギを背中に背負うようにして、コードが絡まるのをスタッフに処理してもらいながらステージ左右に歩き回りながら観客に手を振って歌う、大らかなサウンドとメロディによる「青春と青春と青春」。
どこか今年も到来しなかった、青い夏の風景を脳内に浮かび上がらせるような歌詞が、今年最後の夏の思い出になるかのように切なく観客の心に響く中、あいみょんはやはり観客をじっくり見渡しながら歌っていただけに、
「「SIX SENSE STORY」のタオル持ってたの、見えてたよ〜」
と、自身のグッズを持ったファンを見つけて感謝を告げていた。その歌い終わった後の挨拶もまたコードが絡まりながらなのがどこか面白くも、可愛らしくもあった。
様々なアーティストのファンが集まるフェスという場において、すべての人のことを一つにするのは実に難しい。目当てのアーティストにしか興味がない人もいるし、そうでない出演者を少しだけ知ってるという人もたくさんいる。
しかしあいみょんはそんな全ての人を、全曲エース級のセトリで完全に一つにしてみせた。そしてただエースが出てくるだけでなく、そのエース1人1人が完封するくらいのパフォーマンスをも有するライブをしていた。あいみょんが群雄割拠というか、様々なタイプの曲や才能がひしめき合う女性シンガーソングライターの中で、ここまで頭ひとつどころか立っている地平が違うというくらいに突き抜けた存在になれたのかというのを証明するようなライブだった。
僕はあんな歌やこんな歌で恋に焦がれてきたんだ。
1.裸の心
2.マリーゴールド
3.愛を伝えたいだとか
4.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
5.今夜このまま
6.愛を知るまでは
7.君はロックを聴かない
8.青春と青春と青春
18:00〜 MAN WITH A MISSION
外音を出していないはずの転換中のサウンドチェックでもすでにラウドロック由来の音の大きさがダイレクトに耳に伝わってくる。そうしたサウンドのバンドでありながらも、出で立ちからしてお茶の間にもおなじみのMAN WITH A MISSIONである。
疾走感溢れるSEが鳴ってサポートギターのE.D.ヴェダーと狼5匹が登場すると、何やら光るものが目につくのだが、それはカミカゼ・ボーイ(ベース)がこの後に出てくるレキシの物販で売られている光る稲穂を持っているからであった。
カミカゼが稲穂の代わりにベースを持ち、それぞれのメンバーも楽器を持つと、トーキョー・タナカ(ボーカル)とジャン・ケン・ジョニー(ボーカル&ギター)が腕を高く掲げ、その姿に合わせるように勇壮なコーラスの声が聞こえてくる「Raise your flag」からスタートし、まさに自分たちが立っているこのステージに旗を立てるかのような、またこの幕張メッセに帰ってきたことを宣言するような。曲中のコーラスパートではジャン・ケンが
「いわゆる心で歌ってくださいってやつです!」
と言うと、観客は声は出せないまでもその言葉に応えるように思いっきり腕を伸ばす。
「きっといつか
いつか何処か
辿り着くと信じて」
「息の限り
続く限り
夢を見続け彷徨う」
というフレーズはおそらくはタイアップであるガンダムのアニメの、奴隷のように自由のない少年たちに合わせて書かれたものであるけれど、それが今の音楽シーン、ライブシーンを生きる狼たちと我々の今の状況に重なる。アニメの内容を知らなければどこか平易にも捉えられてしまいそうなこの歌詞は今となると普遍であるということがよくわかる。
ジャン・ケンのイントロのリフとともにタナカが手拍子を煽る「Get Off of My Way」からはステージ背面のスクリーンに近代的な映像とともに歌詞も映し出されるのだが、それはデジタルサウンドを取り入れたこのバンドの音楽性ゆえにこの日最もマッチしている演出であるし、DJサンタモニカが両腕を交互に上げたり下げたりする振り付けは完全に観客全員を巻き込んでいる。これは狼という出で立ちゆえの親しみやすさによるものもあるだろう。
カミカゼとスペア・リブ(ドラム)によるビートが一気に重く、低くもなる「INTO THE DEEP」では都市の夜景を思わせるような映像が流れながら、サンタモニカはパーカッションを叩いたりシンセを弾いたりと、もはやDJという役割を大きく超えるようなマルチプレイヤーっぷりを見せており、こうしたサウンドに挑戦できるのはこの狼がいるからなんじゃないだろうか、とも思う。
「またこの幕張メッセで皆さんの前でライブができる景色が見れるとは思ってなかった」
というジャン・ケンの言葉からは、去年苗場で開催するはずだった自分たちの主催フェスが出来なかったこと、フジロックへの出演や各地のフェスの中止など、大きな会場でのライブが出来なくなりつつある今の状況の難しさと、だからこそこのフェスを開催した主催者へのエールと感謝を感じさせ、それが「Emotions」という曲を演奏することによって文字通り感情、熱量になっていくのだが、
「ソイ!ソイ!」
というタナカの煽りやステージ前の台に立ってベースを弾くカミカゼ、ジャンプするかのように体を大きく動かしながらギターを弾くジャン・ケンと、言葉以上にその演奏している姿から感情や熱量が放出されている。表情は全く変わることはなくても、そこに込められているものが間違いなくあるということがわかる。
そんなマンウィズの音楽がテレビからも流れてきて然るべきポップさと美しいメロディを備えているということを改めて証明した「Remember Me」は、むしろ自分たちがこの曲を演奏することによって、今目の前に広がっている景色を忘れられないものにしているかのようだ。ストリングスを主体にしたバージョンも発表されたが、やはりこうしてライブで聴くとロックバンドとしてのバラードの名曲をこのバンドが手に入れたということがよくわかる。
闘争的な映像が流れたのは、緑黄色社会も経験したアニメのタイアップの最新曲となる「Merry-Go-Round」。
「Merry-Go-Round
Revolving around
ずっと背中を見て
いつだって憧れて
でも近づけない
失って抗って
いつの日かあなたの様に笑いたい
And now it’s our round」
という、一気に解放感を得るようなサビの歌詞は「ヒーロー」がテーマであるそのアニメに合わせたものであり、「Raise your flag」同様に普遍的でありながらもそのタイアップに即した歌詞を作ることができるこのバンドの力を遺憾なく発揮しているが、そのテーマとこのバンドのこの曲の王道ロックサウンドのシンクロっぷりは今までのこのアニメのタイアップ曲の中でも随一なんじゃないかと思う。
そしてカミカゼの目が発光しながらも再び光る稲穂を手にしているというダブルの眩しさの中でジャン・ケンが改めてこのフェスと来てくれた観客への感謝を告げると、年数を重ねてきたことによってバンドが進化し、それに伴って曲も進化させてきたということが実によくわかるイントロが追加された(なんなら「2019」バージョンとしてリメイクされている)「FLY AGAIN」でやはりタナカに合わせて1人残らず腕を左右に振らせるという大団円を迎えたのだった。
覚悟を持って臨んでいたことが痛いほどによくわかったフジロックでのライブもそうだったが、今のマンウィズはこの状況になったことによって、音楽シーン、ライブシーンを自分たちが背負おうとしているのが見ていてよくわかる。
それはある意味ではシーンにおけるマスコット的な存在であり、サウンドとしては王道でもあり、何よりも音楽があったからこそこうして氷漬けから目覚めてバンドをやるようになった、音楽に救われた5匹だからこその使命とも言えるかもしれない。
だからこそ、もともとライブの強さでここまで辿り着いたバンドだけれど、今のマンウィズのライブには楽しいだけではない感動のような感情の方がライブが終わった後に強く残っている。その思いを音に乗せることが出来るからこそ、こうしたアリーナクラスのバンドになったということも、今になっての方が本当によくわかるし、今だからこそ今まで以上にこのバンドのワンマンに行きたいと思う。
1.Raise your flag
2.Get Off of My Way
3.INTO THE DEEP
4.Emotions
5.Remember Me
6.Merry-Go-Round
7.FLY AGAIN
19:00〜 レキシ
そんなMAN WITH A MISSIONの感動的とも言える余韻を、戦国時代的な旗や幟が居並ぶステージのセッティングからして吹っ飛ばしてくれるのが、レキシである。すでにライブ前からたくさんの人が物販で売られている光る稲穂を持っていたし、中には京葉線に乗っている時にリュックから稲穂が顔を出した状態で会場入りしているという怖いもの知らずな猛者も目にした。
おなじみの法螺貝による、戦が始まる前の高揚というよりも脱力必至なSEとともにホーン隊も含めたフルメンバーのバンドとレキシこと池田貴史が登場すると、すでに稲穂を掲げている観客をいじりながら、本来は全く稲穂が関係ない曲である「大奥 〜ラビリンス〜」で稲穂が揺れまくるというカオスな状態に。レキシ自身はもちろん、元気出せ!遣唐使こと渡和久(風味堂)のファルセットコーラスも女性メンバーがいないにも関わらず、大奥感を感じさせるものになっている。
なるとなでしこ(橋本絵莉子。チャットモンチー済み)のキャッチーなコーラスが同期として流れる「SHIKIBU」ではレキシが
「こんなに暑いとは思わんかった!」
と言いながらも着物の上にさらに十二単衣を着るという重装備になり、歌い終わった後にはアフロヘアから汗がしたたり落ちている。
「あいみょんがやらなかったから俺が代わりにやるけど、なんで俺にオファーが来たのかは全くわからん!(笑)」
と言って演奏されたのはクレヨンしんちゃんの映画タイアップソングである「ギガアイシテル」。「ラクガキ」という映画のテーマと「鳥獣戯画」を重ねるという一見非常にわかりづらいが、わかるとそれはレキシだからこそできるタイアップへの絡み方であるということがわかり、レキシの凄さを改めて実感せざるを得ない。クレヨンしんちゃんのタイアップでありながらも、あくまでレキシとしてのテーマとしても忠実なものであるという。こうした子供がメインの視聴者層(もちろん大人が見ても感動する映画であるが)である映画のタイアップをレキシがやることによって、他のレキシの曲に興味を持てば、日本史を楽しく学べるんじゃないかという教育としても素晴らしい効果を発揮できるものになるような気もする。
そんなレキシの底力というか、池田の持つ天才性を感じさせる曲の後にはいよいよ観客の持つ稲穂が最大の活躍を見せる「狩りから稲作へ」へと突入していくのだが、
「他の人の時に絶対振るなよ!「チョコレイト稲穂」になるからな!「君は稲穂を振らない」とか言ってないやろうな!確かに緑黄色的ではあるけれど!」
と、この日の出演者を入れ込む、ついつい笑い声が漏れてしまうMCの面白さもさすがであるし、
「ねえどうして〜」
とDREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」を稲穂バージョンに変え、
「違うドリームフェスになっちゃうからSNSには絶対に書くなよ!(笑)」
と笑わせながらも、バンドメンバー(特に渡)がしっかり「LOVE LOVE LOVE」を演奏してみせる対応力の高さもさすがである。
そんな「狩りから稲作へ」は「クラシアン」のシャウトこそあるものの、やはりコール&レスポンスができないご時世下ということもあってか、レキシが曲終わりでマイクを揺さぶりながら歌って目の前にいるカメラマンを笑わせようとする(全く笑わないけど)というパフォーマンスはありつつもかなり短い(今までのライブに比べると)と感じる、原曲に忠実なものになっており、だからこそこの持ち時間であっても他の出演者と同じくらいの曲数ができる、とばかりに伊藤に行くなら博文こと伊藤大地(フジファブリックなどでもサポートをしているという超多忙スケジュール)によるドラムの連打から「きらきら武士」に突入していき、観客も馬の頭のぬいぐるみを持って歌うレキシに合わせてサビでは腕を左右に振る景色が圧巻ですらある。
しかしそれでもまだ時間が残っているという、とかく時間を押しがちなレキシのライブにおいては信じられないような展開なので、もう1曲演奏された「KMTR645」では絶妙に気持ち悪いという意味ではgroup_inouを彷彿とさせるイルカの着ぐるみ(完全に普通の人間的な名前もついている)も登場するのだが、近年はキュウソネコカミのライブで聴く曲という感じになっているだけに、こうしてレキシのライブで聴くことによって、もともと両者のコラボ楽曲だったということを思い出す。キュウソではヨコタのシンセが担うサウンドをホーン隊がいるということで生演奏できるというのは本家っぷりを感じられるが、こんなにストレートに速いビートを伊藤大地が叩いているという点でも逆に新鮮であった。
最後にはイルカの着ぐるみと手を取りながらステージを去っていったが、爆笑のMCも含めて観客のリアクションがライブを作り上げる一つの要素になっているレキシのライブは配信などでは間違いなく真価を発揮できないものだろう。本人もそれをわかっているだろうからこそ、こうして我々が声を出したり、今までのようにコール&レスポンスは出来なくても、観客を前にしてライブをしている表情が本当に幸せそうに見えたし、我々もやはりレキシのライブが観れて最高に楽しかった。
1.大奥 〜ラビリンス〜
2.SHIKIBU
3.ギガアイシテル
4.狩りから稲作へ
5.きらきら武士
6.KMTR645
20:00〜 Perfume
この日のトリは、様々なロックフェスでもトリを務めてきたという点でも、MAN WITH A MISSIONやレキシがいてもトリを務めることに全く異論がない、Perfume。こうしてライブを観ることが出来るのも本当に久しぶりだ。
あいみょんと同様に、時間になるとステージにはすでに揃いの衣装に身を包んだ3人の姿が。音が鳴り始めると、今までと全く変わらないキレキレのダンスとともに「再生」でスタートするのだが、そのタイトルはもちろん、サウンドと
「最大限界生きたいわ
宇宙全体が手品いやい
正真正銘未来以来
偶然性さえ運命さ
コンピューターでも解けないわ
果てしない 光線の海
全身全霊で向かうわ
再生 再生 再生成」
という歌詞がコロナ禍になる前に作られた楽曲であるとは思えないくらいに今のこの状況から再び立ち上がっていこうという3人からのメッセージであるかのように響く。この曲を1曲目に選んだのは間違いなくそうした意図もあってのことだろう。
タイトル通りにステージから客席に緑色のレーザー光線が放たれる「レーザービーム」、客席でメンバーの振り付けを真似する人もたくさんいた「ワンルーム・ディスコ」とキラーチューンが続いていくことによって、ステージ背面に映し出される映像の効果もあって場内は完全に近未来を思わせるようなテクノポップの空気に包まれていく。いつかフェスデビューも同じ年だったthe telephonesとのディスコ対バンが観たいけれど、それは叶う日が来るだろうか。
そうした今までとは全く変わらないPerfumeのライブであっても、あ〜ちゃんのMCはこうして目の前にお互いが存在していること、会えたことの感慨を感じさせるようなものであったし、
「音楽でみんなの苦難や苦労を少しでも吹き飛ばすことができたら!」
という言葉はやはり今の状況によって3人もいろいろ考えざるを得なかったことがたくさんあるんだろうな、と思わずにはいられなかった。
そんなMCからのリリースされたばかりの最新EP「ポリゴンウェイブ」は同じ曲の、中田ヤスタカによる様々なミックスが収められている変わった形の内容になっているが、この日ライブで披露されたのはフューチャーポップ感の強いオリジナルミックス。この曲から感じられる未来が、どんなに科学や技術が進化してもこうした疫病を防ぐことができないというものじゃなければいいのに、と思っていた。
メンバーがマイクスタンドを持って歌う姿がスクリーン上では我々の思い出の情景であるかのようにセピア色に加工されていた「マカロニ」もまた
「これくらいのかんじで いつまでもいたいよね
どれくらいの時間を 寄り添って過ごせるの?
これくらいのかんじで たぶんちょうどいいよね
わからないことだらけ でも安心できるの」
という歌詞が、こうやってステージと客席で同じ時間を共有できていればそれだけでいいと思えるような、より切なさを感じさせるように聴こえ方が変化している。それはやはりステージ上の3人の表情やパフォーマンスがそうした思いを感じさせるからだろう。
ライブではおなじみのP.T.A.のコーナーも声を出さずに拍手とジェスチャーによる今の状況のガイドラインを遵守したものに変化し、のっちとかしゆかがそれぞれ左右のスクリーンの下まで展開しながら「ぶどう」「読書」「栗拾い」という秋ならではのアクションも取り入れるのだが、急にレキシの「KMTR645」(音源なのでキュウソのセイヤのボーカルがPerfumeのライブで流れる!)が流れて3人で歌うという、レキシが出演しているこの日ならではの場面も。ちなみに3人はトリをレキシとマンウィズに譲ろうとしたが、譲り合いになったことで覚悟を持ってトリを全うしようと思ったという。
そんな現在の形ならではの「P.T.A.のコーナー」から、観客をアッパーなダンスビートで踊らせまくる「Party Maker」、さらにはこの幕張という場所で聴くことによって、今年ついに覚醒した千葉ロッテマリーンズの佐々木千隼投手の堂々たるピッチングを思い出させる「FLASH」(「ちはやふるふる」というフレーズを名前に合わせて登場曲に使用している)、そして観客も一緒に振り付けを踊りまくる「ポリリズム」と、あらゆる時期のキラーチューンを並べたセトリを組むというあたりはトリとしての責務によるものであろう。最後まで残ってくれた観客の誰しもが楽しめるライブにしながらも、自分たちの今の姿もしっかり見せるという。
そして最後はこれまでに海外も含めていろんな場所で披露してきた、Perfumeのライブの最後の曲としておなじみの「MY COLOR」であるが、「P.T.A.のコーナー」で行った振りがここで生かされる中、
「手のひらが世界中 繋がるウィンドウ
指先でつかむのはどの未来?
空を飛び交う 光になって
こんなワクワクも届くのかな
人から人へ繋ぐコミュニティ
ちょっとだけスマートに生きたいの
愛のメロディー つめこんだまま
今日も会いに行くよ」
というサビの歌詞は人と人との分断が嫌になるくらいに顕著になってしまった今の世の中へのPerfumeならではの願いであり、姿勢だ。それはこの曲で、自分たちの音楽で人種も国籍も違う人たちと繋がってきたのを目の当たりにして経験してきたからこそ。演奏が終わるとあ〜ちゃんは、
「やっぱり音楽って楽しいね!ライブって楽しいね!」
と言った。その言葉に涙が出そうだった。本当にその通りだと思ったし、3人の姿がそれを証明していたから。様々な批判に晒されながら開催されたSUPER SONICでも彼女たちはアウェーと言える場に立ち、ライブをやり切った。それはその言葉を自分たちで証明したかったからだ。これからも3人はそれをいろんな場所へ証明しにいくはずだ。
Perfumeの3人は見た目もパフォーマンスも全く変わっていないように見える。でも以前インタビューで
「いつまで今のようなパフォーマンスができるかわからない」
とも言っていた。それはまるでスポーツ選手が加齢によって若い頃のパフォーマンスが出来なくなっていくことへのコメントのようであるが、その感覚を持っているからこそ、ライブができない、ファンに会いにいくことができないというこの1年半は3人にとっては本当に辛かったことだろうし、焦りもあったりしただろう。
実際に昨年の2月末にPerfumeの東京ドームワンマンの2日目が政府からの要請によって当日に中止になってしまったのが音楽シーン、ライブシーンの現状の始まりだったと自分は思っているし、きっとそう思っている人もたくさんいるくらいのニュースだった。だからこそ3人は音楽シーン、ライブシーンを背負わざるを得なくなった。それはもう20年も音楽をやって生きてきたグループだからだ。
でもこうしてそんなPerfumeのライブが観れるようになったということは、3人も我々も少しだけであっても前に進めているような。そんな光を今の3人は放っていた。
1.再生
2.レーザービーム
3.ワンルーム・ディスコ
4.ポリゴンウェイブ
5.マカロニ
P.T.A.のコーナー 〜 KMTR645
6.Party Maker
7.FLASH
8.ポリリズム
9.MY COLOR
ゴールデンウィークに春フェスがワイドショーなどで批判の対象として取り上げられ、それは夏になっても続いている。そんな番組が放送されている傍らで、同じ局では音楽番組が放送されていたり、こうして音楽フェスを開催している。それは同じ局であっても制作会社、制作者はバラバラであり、単一的に局を否定することは危険であるということでもある。
なぜならこのフェスは入り口での不織布マスクの着用確認、転換中のシャッターを開けての換気、ライブ中のスタッフによる見回り、テレ朝のアナウンサーによる転換ごとの注意喚起など、音楽を愛する人たちが音楽が続いていくために作っているフェスだからだ。じゃなければ10年間も続いていないし、同じテレ朝が作っているMETROCKがそうした人たちの熱意によって続いてきたことだって観てきた。
その音楽を愛する人たちの想いが繋がる先が、年末にこの幕張メッセで開催されているCOUNTDOWN JAPANであって欲しいし、飲食スペースのテーブルや椅子を向かい合わないように設置し、黙食を喚起するという手法は、年末にまたここで過ごせるんじゃないかという希望を、会場からすぐ近くの場所で毎日働いている自分に感じさせてくれた。そしてその希望がまた来年以降のこのドリームフェスを含めた様々なフェスに繋がりますように。
文 ソノダマン