進行方向別通行区分の真部と西浦が新バンド・集団行動を組んで以降、ラップトップ一台で音楽を流しながら歌うスタイルをとっていた田中こと古都の夕べ。そんな最中、2017年12月に古都の夕べがバンドセットでライブを行うというニュースが飛び込んできたときは「どんなメンバーでライブをするのだろう?」といろいろと想像をめぐらせたものだ。かつてはアヒトイナザワや田渕ひさ子なども参加したことのある古都の夕べ。期待を胸に新宿のライブハウスに向かうと、古都の夕べがまさかのトップバッター。メンバーを見ると、たまたまライブハウスに向かうエレベーターで一緒になって話し込んだどし丸とあゆ巫女。さらに古都の夕べではお馴染みの高野京介、ドラムに美人のお姉さん(のちにさと子と判明)、そして田中という、一言でいうとカオスな顔ぶれでしかなかった。ご存知の通り、集団行動にはメインの女性ボーカルがいる。それに対抗するかのように(そう見えたのです)配置されたあゆ巫女の歌声は、集団行動とはまた違う魅力があって、田中の歌声にいろどりが加わり、古都の夕べが新しい扉を開けていく瞬間をこの身で感じたものだ。
この時点ではこのメンバーでこれからも活動してくのかまったくわからなかったけれど、こんな素晴らしいライブを体験してしまったら他のアーティストでは満足できない体になってしまった。
さて、話は変わって『進行』について。
進行方向別通行区分の『すごいよ野村さん』から古都の夕べ『進行』の間には、古都の夕べ『レコーディング前夜』と『古都の夕べ×シバノソウ』という2枚のCDがあるんだけど、この2枚はどちらも打ち込みだったから、田中の熱量が100%ではなかった。だからバンドサウンドの田中は本当に生き生きしていて、それがとても嬉しかった。
どの曲も中毒性抜群で、田中の歌声に重なるあゆ巫女の歌声のユニゾンが本当に心地よく、「メジャーの資本のもとでやっている集団行動を完全インディーズの古都の夕べが喰う」という構図になっていた。
しかしそんな裏事情を抜きにしても、単純にバツグンにいい曲が揃っているという、とんでもなく素晴らしいCDです。『進行』。