世間的には10連休と言われている最後の日。10日間で6日フェスに参加した締めの日はJAPAN JAMの最終日。
やはり渋谷陽一の魔力あってこそか、夏フェス前哨戦かと思うような暑さすら感じるフェス日和。青空の下でライブを見れるというのは実に気持ちがいいことだ。
10:30〜 Hump Back [SUNSET STAGE]
前日もVIVA LA ROCKで朝9時台からライブをしていた、Hump Back。この日もフェスのトップバッターを担う。
ロッキンオン社長である渋谷陽一の前説で、
「僕らがやっているサーキットイベント、JAPAN’S NEXTを担ってくれている存在。非常にストロングスタイルなバンド」
と紹介されてステージに登場すると、STANCE PUNKSのTシャツを着て「生きて行く」を歌い始める林萌々子(ボーカル&ギター)の歌声が真っ直ぐに青空に伸びていく。社長が「担っている」と言っていたJAPAN’S NEXTもライブハウスを使ったサーキットイベントだし、ライブハウスで生きてきたバンドだが、青空の下、しかもバンド史上最大規模(前日のスタジアムモードのさいたまスーパーアリーナより広い)というこのキャパにこんなにも似合うバンドだったとは。
林が「高速道路にて」で手拍子を制するというらしい部分も見せながら、持ち時間が前日よりも長いこともあって、この日はセトリに「ヒーロー」が追加されたが、歌う林も、演奏するぴか(ベース)と美咲(ドラム)も実に気持ち良さそうだし、「拝啓、少年よ」の
「馬鹿みたいに空が綺麗だぜ」
というフレーズがこんなにも似合うシチュエーションはなかなかない。
林が
「やりたいことやるのって最高ー!」
と青空に向かって叫ぶと、あまりの気持ち良さにぴかもそれを続けて叫び、これまた青空の下で演奏されるのが似合う「クジラ」から、最後は「星丘公園」で合唱を巻き起こした。
去年のこの時期はこのバンドはこんなにライブが良いと感じるような存在ではなかった。去年の夏に徳島県で行われた、チャットモンチーのラストライブであった「こなそんフェス」に参加してからこのバンドは明らかに変わった。
それは林もぴかもそうだが、個人的には美咲のドラムが本当に良くなった。まだ去年はドラマーとしての魅力を感じれなかったし、自身のスタイルが固まっていないように見えた。
しかし去年のこなそんフェスで「チャットモンチーの2人の後ろでチャットモンチーの曲のドラムを叩く」という経験をしてから、何か自分がこのバンドでドラムを叩く意味を見つけたような気がするし、今の姿からはこのバンドのビートを支える上での頼もしさを感じるようになってきている。
そしてそれがこの規模に相応しいスケールをバンドにもたらしている。今年の夏は青空の下、こうしてライブハウスよりも大きなステージでこのバンドのロックが響く景色を今までよりもたくさん見れるようになるはずだ。
リハ.嫌になる
リハ.月まで
1.生きて行く
2.高速道路にて
3.ヒーロー
4.拝啓、少年よ
5.短編小説
6.クジラ
7.悲しみのそばに
8.星丘公園
11:15〜 My Hair is Bad [SKY STAGE]
SKY STAGEのトップバッターは、ライブをしまくって生きているものの、YON FES以外のフェスにおいてはそこまでおなじみの存在ではないという不思議な立ち位置を確立している、My Hair is Bad。アリーナワンマンを終えたばかりという絶好のタイミングでの出演である。
メンバー3人が登場すると、ドラムのやまじゅんがいつもと何やら違うように感じる。それは鼻にティッシュを詰めていたからで、どうやら本番直前に鼻血を出してしまったらしい。
そんな緊急事態と言える状況ではあるが、「惜春」からスタートしたライブの熱量はいつもと変わらないし、やまじゅんのドラムもマイナスになっているものは全く感じない。強いて言うなら椎木の声が少し掠れているような気もするというくらいだが、かといっていつもより抑えて歌うこともない。というよりもそうしたペース配分というのができないバンドであるからだ。
こんなに素晴らしい青空の下でこのバンドのライブを見るのがまさにドラマみたいな「ドラマみたいだ」からは「告白」、
「このJAPAN JAMで1番短いラブソング!」
こと「クリサンセマム」とアッパーかつエモーショナルなギターロックが鳴らされ、山本のベースのリズムが観客を踊らせる「元彼氏として」では椎木が
「最近はちょっとタバコも吸うし、給料上がってるし!結構貰ってるし!」
とアドリブを入れまくると、こうして天気が良い野外で聴くと否が応でも夏の匂いがする「真赤」へ。
すると先月の横浜アリーナワンマンの時と同様に椎木が缶ビールを一気飲みするのだが、開けた時にステージにこぼしまくってしまい、飲み干した後に山本のタオルでステージを拭き、山本が
「俺のタオルで拭くなよ!」
と言うと
「ちゃんと洗濯して返します(笑)」
と言って自身のギターアンプの上にタオルを置くというのが実に微笑ましいし、メンバー間の仲の良さを感じさせる。
そんなほっこりした空気の中で椎木の声が爽やかに伸びる「いつか結婚しても」では観客の腕が左右に揺れ、最後には
「JAPAN JAM、今日は一日最後までドキドキしようぜ!」
と「アフターアワー」へ。まさかの「フロムナウオン」なしという珍しい内容のライブではあったが、それが逆にヒリヒリした空気を感じさせない、この会場の空気によく似合う温かさを、あくまでカッコいいロックバンドのままで見せてくれたし、いつのまにかやまじゅんは鼻血が止まったのかティッシュを鼻に詰めるのをやめていた。
のびのびとした、マイヘアのいつもとは少し違う空気感の中で夏の匂いを感じたからこそ、今年も野外で夏の終わりに「夏が過ぎてく」を聞きたいと思う。いつのまにか、このキャパで見ることに全く違和感を感じない存在になっていた。
リハ.微熱
1.惜春
2.熱狂を終え
3.ドラマみたいだ
4.告白
5.クリサンセマム
6.元彼氏として
7.真赤
8.いつか結婚しても
9.アフターアワー
12:00〜 yonige [LOTUS STAGE]
Hump Backと同様に、前日のVIVA LA ROCKに続いての出演となる、yonige。時間帯もHump Backの後という順番も前日とほとんど変わらない。
前日のライブでいきなり4人編成になって見ている側を驚かせたが、この日ももちろんサポートギターに土器大洋(ex. LI LI LIMIT)を加えた4人編成で「リボルバー」からスタートというのは前日と変わらないが、この日は前日の「顔で虫が死ぬ」ではなく「our time city」を次に演奏し、客席からはyonigeのライブでは珍しく腕が上がる。フェスなどではアッパーな曲は盛り上がることも増えてきてはいるが、ごっきんも以前に
「yonigeのファンは情緒不安定なのか、ツーステする人がいたりする次の日には墓場みたいな空気のライブになる(笑)」
と言っていたように、こうした盛り上がりを見せることが全くない日もある。
で、そのあとはまさにそうした盛り上がりがないというか、バンドの選曲的にそうしたノリができないような展開に。「どうでもよくなる」は軽快なテンポとサウンドの曲であるが、「2月の水槽」やピース又吉直樹の小説から着想を得た「沙希」というバンド名の通りに根の暗さを感じさせる曲では盛り上がるのが無理という話である。
前日は牛丸ありさが土器の紹介をしたりしていたが、この日はそれはなしで曲を連発。そんな中でもごっきんは
「真昼間にyonigeっていう名前で失礼します〜!」
と大阪の陽気な女性らしさを感じさせる。普段は裸足でライブしているのがこの日はちゃんと靴を履いていたのは足元が熱くなる野外フェス対策だと思われるが。
この日は「センチメンタルシスター」こそ演奏されたが、「our time city」を序盤に演奏したからか、「アボカド」すら演奏されないという最新作の「HOUSE」に合わせた、アッパーかつエモーショナルというのとは全く違う、淡々と過ぎていく日常の風景を細かく描写していくというタイプの曲が並ぶ内容。だからこそ「トラック」も2日連続で演奏されるという今までだったら考えられない展開になるし、デビュー時は「ガールズバンド版・My Hair is Bad」と言われていたところとはかなり遠い位置に来たと思う。
そしてラストに演奏された「春の嵐」は野外でこの春という季節に聴くことができたからこそ、嵐というほどではない、心地よい春の風をこの身で感じることができた。
この4人編成はこの日演奏された曲の再現度を高めるモードにバンドが入っていることを如実に示す内容になっているが、8月には初の日本武道館ワンマンも控えている。そこでもこのモードでやり切るのか、それとも。yonigeは今が1番これからどう進化していくのか楽しみな時期に突入している。
1.リボルバー
2.our time city
3.2月の水槽
4.どうでもよくなる
5.沙希
6.センチメンタルシスター
7.トラック
8.春の嵐
12:45〜 ヤバイTシャツ屋さん [SKY STAGE]
昨年に続いてのSKY STAGE出演となる、ヤバイTシャツ屋さん。昨年はROTTENGRAFFTYのボーカル2人とのコラボもあったが、今回はコラボなしのバンドオンリーというスタイル。
おなじみの「はじまるよ〜」という脱力SEで登場するも、「あつまれ!パーティーピーポー」からバンドの演奏は一切の脱力感なし。いきなりの大合唱が起こり、そのまま「かわE」「Universal Serial Bus」、さらにこの日は本編で「Tank-top Festival 2019」というタンクトップシリーズの最新作を演奏。こうしてみんなが聴きたい曲はしっかりやりながらセトリを入れ替えてくるというのがこのバンドのスタイルであるが、それは
「最近は曲をたくさん演奏するのにハマっている」
というこやまのMCでの言葉からも表れている。
そのこやまの
「GWは何してた?」
という問いに対し、
しばた「世界一周旅行してた」
こやま「もりやまは?」
もりもと「もりもとや!飛行機の免許取った」
こやま「俺は結婚した。あと5千万円拾った。それから本当はこのGWに地球に隕石が衝突するのを回避してた」
とウソの応酬。
実際にはGWはライブをしまくっており(翌日も東京でワンマンライブがある)、その勢いをこの日も感じさせるし、「L・O・V・E タオル」のタオル回しは野外での大きな会場だとより一層映える。
アラバキとVIVA LA ROCKではサウンドチェック時に演奏していた「とりあえず噛む」をこの日は本編で演奏するという内容の変化をしっかりと見せると、「無線LANばり便利」からは後半に突入していくのだが、超高速バージョンになった「ヤバみ」ではアウトロでこやまとしばたが無表情で向かい合いながら演奏すると一瞬で笑顔に戻って激しく頭を振るなど、ただ曲を演奏するだけではないパフォーマンス力の向上っぷりを見せる。
そしてラストは「ハッピーウエディング前ソング」で大合唱を巻き起こして終了かと思いきや、
「鬼速でやればもう1曲できる!」
と、時間が余っているからではなく、チキンレースに挑むかのように「Tank-top of the world」を鳴らし始めると、こやまは曲中に何度も
「もりもと、もっとテンポ上げろー!」
と叫び、その度にもりもとがテンポを速くしてドラムを叩き、こやまはもちろんしばたもそれにしっかりとついていく。
おそらくこやまは残り時間を足元あたりで確認していたと思うのだが、しっかり歌い切ったあとにアウトロでドラムセットにしばたとともに集まると、
「ここで切ろう!」
と言ってタイミングを合わせてしばたとともに大ジャンプをして曲を締めた。すると、
「残り4秒!ありがとうございました!」
と言って、凄いことをやってのけたのに、ドリフのコント終わりのように走ってステージから去っていった。もうあまりに凄すぎて、カッコよすぎて感動すらしていた。
あくまで音楽が主役であり、ひたすらに曲を演奏することがみんなが喜ぶことだとわかっている。だからできる限り曲をたくさんやるのだが、フェスの持ち時間をオーバーするようなことをしたりして迷惑をかけるようなことは絶対にしない。凄さと同時にヤバTの真面目さが垣間見えた、つまりこのバンドの本質の一面をしっかり感じさせたライブだった。
平成最後ということでこれまでの総集編的な内容となったアラバキ、前年の悔しさを晴らすかのようなライブを見せたビバラ、そして自分たちの限界に挑むようなライブを見せたこの日。GWに見たライブの3本全て、セトリはもちろんライブの内容そのものも全く違っていた。
フェスではない普段のライブでもヤバTはガラッと内容を変えているが、そうした意識や経験値がフェスの場でもしっかり発揮されている。毎回本当にヘラヘラさせてもらったし、こうして3本ライブを見れて、たのC超えてたのDだった。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.Tank-top Festival 2019
5.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
6.L・O・V・E タオル
7.とりあえず噛む
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.ハッピーウェディング前ソング
11.Tank-top of the world
13:30〜 ストレイテナー [LOTUS STAGE]
2010年の富士スピードウェイでの開催初年度から出演し、これまでに数々の素晴らしいコラボをこのフェスで見せてきた、ストレイテナー。今年ももちろん出演だが、今回は初日にひなっちがももクロのサポートメンバーとしても出演している。
おなじみのSEでメンバーが登場すると、髪が伸びただけでなく金髪と黒髪がまばらになっているOJこと大山純の姿が目を惹く中で「Braver」からスタート。
この青空の下で聴くのが実によく似合う「Ark」はこの景色のために選んだのだろうかと思うくらいに久しぶりに聴く曲。そんな曲も挟みつつ、
「俺たちこのフェス第1回から出てて。渋谷さんにさっき「Mr. JAPAN JAM」って言われました(笑)」
とホリエが嬉しそうに挨拶すると、ファンからの人気が非常に高い「REMINDER」からはライブ定番曲を連発。決して海の近くという会場ではないが、またこれからやってくる夏の野外フェスに思いを馳せる「シーグラス」、この中盤で「Melodic Storm」が演奏されただけに、普段よりも展開が早いなと思っていると、今年のコラボ相手である、go! go! vanillasの牧達弥をステージに招く。
「同じ九州男児。今日はこの後にこのステージでライブをやるのに出てもらいました」
と紹介すると、やはり先輩に囲まれているからか自身の普段のライブよりも牧は少しかしこまったような様子。
「今、バニラズはプリティが交通事故で療養中で。今日も3人でライブやるんだよね?」
とホリエがバニラズの今の状況を解説すると、隣にいたひなっちが
「俺がベース弾こうか?」
と言いたげな仕草を見せるのだが、
「ひなっちさんに弾いてもらったらハードル上がり過ぎてプリティ帰って来れなくなっちゃう!(笑)」
と全力で拒否。そんなやり取りをしてからホリエが
「じゃあ、go! go! vanillasから牧達弥でした!」
と歌う前に帰らせようとすると、牧はまるでお笑い芸人・はんにゃの金田のようなリアクションで
「ちょいちょいちょーい!」
とノリの良いツッコミを見せる。ストレイテナーのライブでこんなにも笑えるような展開が見れるとは、と驚いていると、牧が加わって演奏されたのは、バニラズが参加したストレイテナーのトリビュートアルバムに収録された「KILLER TUNE」。しかもバニラズがカバーした、カントリーっぽさも感じるトリビュートバージョンをストレイテナーが演奏するというサプライズ。それを牧だけでなくホリエも歌いながら演奏すると、OJがステップを踏みながらギターを弾きまくり、さらに通常のストレイテナーバージョンでも演奏されるという見事なスイッチでそれもまたホリエと牧が2人で歌うと、さらにホリエがプロデュースしたバニラズの「おはようカルチャー」のコーラス部分までも演奏される。
改めてストレイテナーの演奏力の高さと器用さを感じさせただけに、「おはようカルチャー」をやろうと思えば1曲丸々演奏できるはずだ。でもきっとバニラズの3人はこの曲はプリティが帰ってきてから4人で演奏する曲だと決めている。だからこそこの日も全てを演奏することはなかったし、その思いはホリエだけでなくストレイテナーのメンバー全員もわかっていたと思う。かつては孤高なイメージも強かったストレイテナーはこうして自分たちの影響を受けている後輩の気持ちを理解できる頼もしい先輩バンドになっていた。
そして牧がステージを去った後に演奏されたラストは最新曲「スパイラル」で、コラボを見せるだけでも、代表曲を演奏するだけでもなく、バンドがさらに先に進んでいる姿を見せ、演奏を終えると4人がステージ前に出てきて肩を組んで観客に向かって頭を下げてからステージを去った。
かつてのACIDMAN・大木とのボーカル入れ替わりコラボに始まり、2年前はトリとしてひなっちが互いのバンドのメンバーであるNothing’s Carved In Stoneとの合体バンドというスペシャルな場面を見せてくれたりした。もはやベテランの域に達してきているけれど、Mr. JAPAN JAMとしてこのフェスのためだけに毎年しっかりコラボを見せてくれる姿勢には本当に頭が下がる。ほかにそんなバンドはいないだけに、社長じゃなくてもこれからこのバンドのことをMr. JAPAN JAMと称えたい。
1.Braver
2.Ark
3.REMINDER
4.Melodic Storm
5.シーグラス
6.KILLER TUNE (go! go! vanillas ver.) 〜 KILLER TUNE (ストレイテナー ver.) 〜 おはようカルチャー w/ 牧達弥 (go! go! vanillas)
7.スパイラル
14:15〜 KANA-BOON [SKY STAGE]
こちらも前日のVIVA LA ROCKに続いてのこのフェス。VIVA LA ROCKではセカンドステージであるVIVA! STAGEへの出演だったが、このフェスではメインステージ的な扱いであるSKY STAGEへの出演である。
メンバーがステージに登場すると、谷口鮪が1人前の方に出て両手を広げて観客を煽ってから、いきなりの「ないものねだり」でスタートし、さらに「ウォーリーヒーロー」とのっけから踊らせまくり。
さらに「ディストラクションビートミュージック」で軽快なビートだけではないロックバンドとしてのハードな部分も見せつけるのだが、古賀のギターがそれを先導しながらも、めしだと小泉のリズム隊がそれに見合うくらいに力強く、さらにはどこか余裕さも感じさせるようになってきている。
さらに素晴らしかったのが昨年リリースのミニアルバムのタイトル曲「ネリネ」。決してそれまでに演奏された曲のようなノリの良い曲ではない、むしろ音に委ねて体を揺らしながら楽しむ、新しいKANA-BOONの一面を見せた曲ではあるのだが、勢いだけではないこうした曲の見せ方や聴かせ方をこのバンドは会得しているし、冬の曲であるこの曲をこの場所で演奏していることからもメンバーたちがこの曲に自信を持っているのだろう。
そして屈指の名曲「シルエット」を中盤に演奏すると、そのアウトロからイントロまでを繋げるように演奏された「フルドライブ」にライブバンドとしての進化や、47都道府県ツアーがしっかり自分たちの血と肉になっていることを示した。鮪は勢いよく手を離したがゆえにギターのネックが頭にぶつかったりとカッコよく決まり切らないあたりがまたこのバンドらしいのだけれど。
そして「バトンロード」を演奏したので、最後にやる曲は一体?と思っていると、最後に演奏されたのはなんと新曲「まっさら」。アニメの主題歌になっているとはいえ、同じくアニメ主題歌としてリリースされた最新シングル「ハグルマ」を外してまで最後に新曲を演奏するあたりに、そしてこの「まっさら」に宿るこのバンドの持つメロディの普遍性に、今のKANA-BOONが覚醒モードに入っていることを感じさせた。デビュー時からライブは非常に良かったバンドだが、そのライブの良さが多面的に広がってきている。5周年を迎えてますます面白くなってきた。
去年、KANA-BOONの47都道府県ツアーのZepp Tokyoでの2daysを2日間とも見に行った。当日券が出ていたから2日とも行ったのだが、客入りはかなり厳しいものだったので、フェスではメインステージが満員になるだけに、フェスで見れたらいいという人ばかりになってしまったような、少し寂しい気持ちになった。
となるとまだ若手と言っていい年齢ではあれど、なかなか話題性的にはさらなる若手や新人バンドに及ばないし、旬の時期は過ぎてしまったように感じる。だがこうしてライブを見て、次々に出てくる新曲を聴いていると、KANA-BOONはまだまだこれからさらに進化していくバンドであることを実感できる。
そもそもが楽曲の良さでデビュー時から評価されたバンド。その楽曲の良さはそのままに、いやそれ以上に、ライブバンドとして格段に進化している。旬の時期は過ぎたのだろうか?いや、本当の旬の時期、ロックバンドとしての揺らぐことのない長い人生を、KANA-BOONは自分たちの手で掴みに行こうとしている。
リハ.クラクション
1.ないものねだり
2.ウォーリーヒーロー
3.ディストラクションビートミュージック
4.ネリネ
5.シルエット
6.フルドライブ
7.バトンロード
8.まっさら
15:00〜 go! go! vanillas [SUNSET STAGE]
この日はすでに牧がストレイテナーのライブにゲスト出演した、go! go! vanillas。この日もプリティはまだ療養中のために3人での出演であるが、このGW中はフェスにも出るわワンマンもやるわと凄まじいスケジュールになっており、意地でもバンドは止めないというバンドの強い意志を感じる。
もうすっかり見慣れた感のある3人横並びの編成で登場すると、1曲目の「平成ペイン」で新しい時代に突入したことを示すと、「エマ」でジェットセイヤはほとんど立ったままでドラムをぶっ叩きまくる。
すると牧が発売の迫ったニューアルバム「THE WORLD」の告知をすると、その中から新曲「パラノーマルワンダーワールド」を演奏しようとするのだが、3人の鳴らす音に合わせたプリティのベースの同期音にトラブルが発生。それをジェットセイヤのドラムソロで乗り切ると、牧がハーモニカを吹く「Hey My Bro.」とアルバムに収録されるロックンロールサイドの曲を連発。
トラブルからのドラムソロでさらに燃え滾ったのか、この日のジェットセイヤはほとんどの曲で立ちながらドラムを叩き、さらにはマイクを咥えて叫ぶという、いつも以上の荒ぶりっぷり。そうしてその時限りのライブになるというロックンロールバンドならではの「マジック」を実感させてくれる。
「カウンターアクション」での柳沢進太郎のコール&レスポンスは普段はフェスのタイトルなどを使った、その日その場所だからこそのものになることが多いのだが、この日は
「絶対帰ってこいプリティ!」
「待ってるからなプリティ!」
とプリティの復帰を願う思いを言霊に乗せるようにコール&レスポンスした。3人で乗り越えてきたGWのライブもいったんは一区切り。METROCKへの出演を経て、月末からはアルバムのリリースツアーが始まる。
そしてラストは牧と柳沢がボーカルを分けるこのバンドの不屈の精神を見せるように「デスからアゲイン」する「No.999」。ジェットセイヤは最後にはシンバルなどのドラムセットを蹴飛ばすようにして勢いよくステージを去っていった。
ヤバTやユニゾンと同じように、このバンドのライブもGW中にアラバキ、ビバラ、JAPAN JAMと3本見た。そこで3人でのライブを見るたびに、なんでこのバンドで、なんでプリティがこんな目に遭わないといけないんだろうか、と思ってしまう。(事故の時の状況はわからないけれど)
でもそんな状況でさえもバニラズは止まらなかった。プリティが復帰しても、3人よりも遅れてしまうように感じるかもしれない。でも3人でステージに立ったことで、3人は補い合うということを覚えたはず。だからプリティが帰ってきた時にこのバンドがどんなライブをするのか。それをちゃんと見てみたいのだ。
1.平成ペイン
2.エマ
3.パラノーマルワンダーワールド
4.Hey My Bro.
5.マジック
6.カウンターアクション
7.No.999
15:45〜 クリープハイプ [SKY STAGE]
前日にVIVA LA ROCKのトリを務めた、クリープハイプ。そう考えるとかなりの過密スケジュールでのこのフェス出演である。
前日同様にSEなしで登場するのはいつもと同じではあるが、前日は「5%」からスタートしたのがこの日は「二十九、三十」からに変わっている。どちらも勢いよくスタートを切るというよりはじっくりとこのバンドの音に浸らせるというものであるが、
「やっぱり屋内よりも野外の方が気持ちいいですね。あ、ライブじゃなくてセックスの話ですよ?」
と言って「HE IS MINE」の長谷川カオナシのベースのイントロになだれ込むのだが、言葉は冴えているとはいえ、前日にあれだけ出し切るようなライブをしただけにモチベーションは果たしてどうだろうか?と思っていたのだが、それは全く杞憂で、出し切って空になったのではなく、絶好調モードは継続中ということである。
カオナシボーカル曲の「火まつり」はこのタームでは固定であるが、タイトル的にもフェスらしいといえばフェスらしいと言えるだろうか。
「夏のせい」のフレーズが野外ならではの夏っぽさを感じさせるも、この時間帯だけどんよりとした雲が空を覆っているというのがまたこのバンドらしい「ラブホテル」では最後のサビ前のブレイクで尾崎が、
「ツイッター見てたら「明日はJAM!休憩するところはクリープハイプかなぁ」「じゃあそこで会おうよ!」って言っている女がいて。人のライブを出会いの時間に使ってるんじゃない!休憩するならいいホテルありますよ」
と言って最後のサビに突入するというよくぞここまでというくらいのキレッキレぷり。
そして続くように演奏された「イト」では曲中に空を覆っていた雲から太陽が顔を出し、尾崎も
「晴れた!」
と口にする。こうした景色が見れるのは野外フェスならではと言えるし、この曲が持つポップかつポジティブなエネルギーが太陽を呼んだような感じすらする。
「フェスに出ると「爪痕を残そう」って思ってた時期もあったんですけど、今のトレンドはカッコよく散ることですよ。この曲で華々しく散ります(笑)」
と最後まで尾崎の言葉はキレ味を失わずに演奏されたのはもちろん桜が散った関東で鳴らされた「栞」。今やクリープハイプ最大の代表曲と言っていいくらい、今のバンドにとって大事な曲になっている。
前日からの絶好調モードはいつまで続くのか。これはこの2日間でホームランを連発したような調子の良さというよりも、ホームランの打ち方を体得したかのよう。つまりバンドは1段階上のレベルまで来たのだ。尾崎の好きなヤクルトスワローズで言うなら、毎年30本ホームランを打っていたバレンティンが50本打てるようになった時のような。
1.二十九、三十
2.HE IS MINE
3.鬼
4.おばけでいいからはやくきて
5.火まつり
6.ラブホテル
7.イト
8.栞
16:30〜 夜の本気ダンス [SUNSET STAGE]
昨年に続いての出演となる、夜の本気ダンス。サウンドチェックでメンバー全員が出てきて「By My Side」を演奏すると、ドラムの鈴鹿が
「みんな、踊る準備は出来てるかー!」
と叫び、観客は当然「イェー!」と返すも、
「俺たちまだ準備できてないから準備してくるわ(笑)」
と言って本番前から爆笑を巻き起こす。
本番でメンバーが登場すると、「Crazy Dancer」から踊らせまくり。しかし鈴鹿がドラムやわ叩きながらカメラに向かって変顔を見せたりするので、ついつい踊りながらでもスクリーンの方を注視してしまう。この辺りの曲を演奏するだけでエンターテイメントにしてしまうというのは鈴鹿というキャラの強さがこのバンドにとっていかに重要かというのがわかるし、ユニコーンの川西幸一のようにドラムカメラを毎回設置して欲しいとすら思う。
ダンスサウンドはもちろん、バンドのキャッチーな部分を強く打ち出した「Magical Feelin’」からライブ中は全く喋らないけれどステージ前に出て行って色気を撒き散らしながらギターを弾く西田の姿がこのバンドの各々の全くキャラは違うけれど全員強烈であることを示す「fuckn’ so tired」では米田がネクタイを外して自身が最も踊りまくりながら歌うと、アウトロとイントロを繋ぐような本気ダンスタイム的なアレンジで演奏されたのはこの日トリとして出演するアジカンのカバー「N.G.S.」。米田は曲タイトルを言う時に
「ナンバーガールシンドローム」
と言っていたし、
「ドラム、アキト・スズカ!」
と向井秀徳が「ドラム、アヒト・イナザワ」と紹介するように鈴鹿の名前を呼んでから演奏を始めた。そこからはアジカンだけでなくナンバーガールへの愛情と、このバンドが両者の音楽に影響を受けた存在であることを感じさせた。
そのアキト・スズカは
「後ろで座って見てるマイヘアファンの人ー!椎木くんはリアルにブラジャー外さへんけど、後で俺がブラジャー外しに行くからなー!」
とやはり爆笑させるのだが、昨年は何の前触れもなく演奏された「N.G.S.」に関しては、
「去年はバニラズの牧君、前はフレデリックの健司君とコラボさせてもらったんやけど、今年はコラボできなくて。だからアジカン先輩と曲だけでもコラボしたいと思って、愛を持ってトリビュートでやらせてもらった曲をカバーさせてもらいました!でもゴッチさんがこの曲で出てこないってことは本当にコラボないってことやからな!」
と今年は演奏した理由をしっかりと説明していた。
来月リリースのニューアルバム「Fetish」のリード曲である「Take it back」からはラストスパートとばかりにさらに加速し、鈴鹿とマイケルのリズムの手数が増した「WHERE?」からラストは観客を一度座らせてからジャンプさせてさらに踊らせた、このバンドなりの反戦ソング「戦争」。踊ることが最大の反戦へのメッセージであるというこのバンドの意志を感じさせたし、それはフェスという場だからこそより一層説得力を持つ。
昨年のこのフェス含めた春フェスでこのバンドのライブを見たとき、かつてとは全く違うライブバンドとしての覚醒っぷりに驚かされたが、それは一年経ってやはりさらに進化していた。それだけにZeppワンマンができているような動員に見合うくらいの売り上げも獲得して欲しいと思う。
リハ.By My Side
1.Crazy Dancer
2.Magical Feelin’
3.fuckn’ so tired
4.N.G.S.
5.Take it back
6.WHERE?
7.戦争
17:15〜 UVERworld [SKY STAGE]
今年のラインアップの目玉的な存在と言える、UVERworld。今年は前日のVIVA LA ROCKなど、春フェスにも積極的に出演している。
スタジアムクラスのバンドにもかかわらずサウンドチェックにメンバーが出てきて演奏する姿にビックリしていると、本番ではセッション的な演奏から「Don’t think. Feel」からスタートすると、EDM的なサウンドの「ODD FUTURE」、
「全部やって確かめりゃいいだろう」
というこのバンド、というかTAKUYA♾の生き方そのものをそのまま歌詞にしたような「PRAYING RUN」、ラッパーのAK-69(ロッキンにも出演したことがあるのでそこまで出てきても特別感はないが、独特な衣装にサングラスという出で立ちは威圧感抜群)を迎えた「Forever Young」とサウンドは驚くくらいに幅広いが、全てがこのバンドの音楽にしか感じないのが本当にすごい。全てをこのバンドの音楽としてまとめ上げられるのはやはり人間力の強さによるものだろう。
そしてメンバーの演奏の重さと強度。スタジアムに立つべきバンドならではの演奏力を確かに持っているし、誠果のサックスも随所でこのバンドの音楽の最後のアクセントとして重要な役割を果たしている。
演奏力だけでなく、その多彩な音楽性を2本のマイクを手にして自在に乗りこなすTAKUYA♾の歌唱力も凄いし、曲のキメに合わせて体を動かす様はまるでアスリートのようだ。実際にTAKUYA♾は音楽界屈指のハードランナーとして知られているが、そのストイックな生活スタイルがそのままステージングに表れている。
「Come on!」というTAKUYA♾のシャウトが観客の熱気をさらに煽る「IMPACT」と、楽器が多いにもかかわらずライブのテンポが良いのも実に素晴らしい。これもまた
「ライブの開演時間が押すのが気に入らない」
的な話をしていたTAKUYA♾の姿勢そのもの。そして「EDENへ」で代表曲もやりながらも自分たちの最新の形をしっかり見せ、新たな音楽探求の旅に入っていることを示すと、最後に演奏されたのは「0 Choir」。
自分は前にCDJでこのバンドのライブを見たことがあるのだが、その時はこの曲をやらなかった。なのでようやくライブでこの曲を聴けたのだが、あまりの合唱のすごさにビックリしてしまった。よく見ると彰(ギター)、克哉(ギター)、信人(ベース)もマイクを通さずに歌詞を口ずさんでいる。TAKUYA♾の書く歌詞への圧倒的な信頼感を感じるし、
「ねぇ baby この世界はまだ汚れて見えるけど
やっぱり僕は産まれてこれて 幸せだと思ってるよ
ねぇ baby 約束しよう 世界は素敵だから
まだ死にたくない そう思えるまで 僕たちは生きていこう」
という最後の歌詞はUVERworldという世界に生きるファンの気持ちを代弁しているようにも感じるし、なぜこのバンドが男性ファンだけでアリーナワンマンができるのかということがよくわかったと思うし、いつか自分もこのバンドのライブで世界をそう思えるような景色を見てみたいと思った。
最後の「0 choir」を演奏していた時、それまで普通に見ていたマイヘアのTシャツを着たカップルの女性の方が男性の肩に頭を寄せていた。普段なら心の中で舌打ちするような場面でも「いや、わかるわ」と思うくらいにあの大合唱は凄かった。完全にこのバンドに持っていかれてしまった。
リハ.ナノ・セカンド
1.Don’t think. Feel
2.ODD FUTURE
3.PRAYING RUN
4.Forever Young feat.AK-69
5.Touch off
6.零HERE 〜SE〜
7.IMPACT
8.EDENへ
9.0 choir
18:00〜 9mm Parabellum Bullet [SUNSET STAGE]
この日のSUNSET STAGEのトリ、ということは今年SUNSET STAGEで最後にライブをするのは、かつては滝がこの時期に実家の田植えをしていたためにライブができなかった、9mm Parabellum Bullet。アラバキでの15周年ライブの余韻も冷めやらぬ中でのトリ。
18時、トリとはいえまだ空が明るい状態でメンバーがおなじみの「Digital Hardcore」のSEで登場すると、メンバーの演奏が始まり菅原卓郎が空を指差して「太陽が欲しいだけ」でスタート。序盤から「Black Market Blues」「Cold Edge」というヒットシングルも惜しみなく演奏されるが、ゲストがいないライブだからこその曲順の自由さ。
「俺は実は第1回のこのフェスに1人で参加してて。吉井和哉さんのライブにゲストで出たんだけど、あれがもう9年前のことなのかって」
と、1曲目で吉井和哉の代わりにいきなり卓郎がメインボーカルを務めた第1回のこのフェスのことをしみじみと思い出しながら語ったが、そうして振り返るようなことを口にしながらも、「カルマの花環」「キャリーオン」と演奏される曲は近年リリースの、9mmの王道的な曲が続く。さすがにトリということもあってか、メンバーの演奏も実に漲っている。
祭囃子的なサウンドに合わせて滝が盆踊りのような踊りを見せた「Bone To Love You」は間違いなくアラバキで人間椅子の和嶋慎治とコラボして演奏されたことによってセトリに残ったであろう曲だが、まさか「新しい光」のカップリングであったこの曲がリリースから8年経ってもフェスの場で演奏されているなんて全く想像していなかった。
滝のギターのイントロが切なさを煽る「黒い森の旅人」から最新シングル「名もなきヒーロー」と、やはりセトリ自体はアラバキの短縮版と言っていいようなものになっていたが、野音でのフリーライブ以降は来週、あるいは月内に会いましょうと言えていたこのバンドのライブが1ヶ月以上ないというのは少し寂しいところである。
そうこうしているうちにすっかり陽が落ちて場内は夜の時間帯になってきている。こうしてライブの最中に景色が変わっていくのは野外フェスならではの醍醐味であるが、卓郎もその景色を見て、
「15年間このバンドをやってきたけれど、9mmがデビューしてからの15年間は日本のフェスが大きくなっていく時代とちょうど重なっていて。だから俺たちもいろんなフェスに出てきたけれど、その中でもこれは屈指の絶景ですね」
と語る。それほどまでに美しい景色だったし、その時にステージに立っていたのがこのバンドであるということが実に幸せだ。
そして和彦がそうした思いを全て受け止めるように両手を大きく広げる姿が実に頼もしく映る「The Revolutionary」から、ラストは「ハートに火をつけて」「新しい光」という9mmアンセムの連打で、去年と一昨年のようなゲストとのコラボはなくても9mmのライブは最強であるということを証明してみせた。
正直言って、ライブ前は直前に見たUVERworldがあまりにも凄すぎて、この後にどんな気持ちでライブを見ればいいのかわからないというくらいに持っていかれていた。次に見るのが大好きな9mmであるにもかかわらず、やっぱりスタジアム規模でライブをやっているバンドには勝てないよなぁなんて思いも頭をよぎっていた。
かつて横浜アリーナでワンマンをやっているとはいえ、9mmはもうそこに立つような動員力はない。けれども9mmはやっぱり誰にも負けてないというか、やっぱり最強なんじゃん?ってライブを見ると感じることができる。こんなバンドをずっと見てこれたのは本当に幸せなことだ。ロッキンとCDJだけでなく、このフェスにもこれからも毎年。それは我々が来年もここに来る理由になる。
1.太陽が欲しいだけ
2.Black Market Blues
3.Cold Edge
4.カルマの花環
5.キャリーオン
6.Bone To Love You
7.黒い森の旅人
8.名もなきヒーロー
9.The Revolutionary
10.ハートに火をつけて
11.新しい光
18:55〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [SKY STAGE]
そしていよいよ今年のJAPAN JAMも最後のアクトを迎える。今年のトリはアジカン。決して毎年同じフェスに出るというタイプのバンドではないが、このフェスには毎回出演している。
すでに暗くなったステージにメンバー4人とサポートキーボードのシモリョーが登場すると、現在行われているツアーのオープニング曲でもある、都会的な冷たさすら感じさせる淡々としたメロディ部分からサビで一気に光が降り注ぐように拓けていく「UCLA」でスタート。「ホームタウン」ツアーが終わるまではこの流れは変わらないのかもしれない。
そんな「ホームタウン」のタイトル曲も軽快に演奏されると、ゴッチの軽い挨拶から「荒野を歩け」に。この曲の見どころの一つは喜多のギターソロであり、それはバッチリ決めるが髪を切ったことによってか喜多は以前までよりも少し年を召したような感じに見受けられる。
イントロのセッション的なライブアレンジが再レコーディングシングルとして採用されてリリースされた「Re:Re:」から、「リライト」では間奏でおなじみのコール&レスポンスが行われるのだが、ゴッチの発案で徐々に声を小さくしていくという流れになり、小さくし過ぎた結果、最後にはゴッチの口パクっぽくなり観客は爆笑。そんな朗らかなおじさんたちっぷりを見せながらも、
「小さい音の方が演奏するのは難しいから」
と自分たちがそうしたことすらもできるような技術を身につけたことに自信をうかがわせる。
今回のこのフェスではドラマーの伊地知潔が家系ラーメンの吟屋とコラボしたメニューを販売しているのだが、ゴッチが会場入りする時になぜそんなことをしたのかをシモリョー&山田と話していてその後に潔を問い詰めたところ、理由は金だという。でも潔は音楽とともに料理も好きな男だから決して金のためだけに受けた話ではなく、これはネタとしてそう言っているだけだろう。
で、今のアジカンは「ワンマンでは超有名曲というか代表曲的な曲すらもやらない」ということも往々にしてあるというか、「リライト」も「ソラニン」もやらない時もある。でもフェスの時はこうして必ずと言っていいほどにこれらの曲をやるのは、この日に初めて自分たちのライブを見るであろう人たちもたくさんいるというアジカンなりのサービス精神によるものだろう。
昔はそういう考えに対して抗うようなところも何度も見てきたけど、今のアジカンはそうして自分たちの役割であったり、やるべきことに自覚的に向き合っている。アジカンというバンドを客観的に捉えることができるようになっているというか。それはゴッチのソロや潔のPHONO TONESなどのアジカン以外の場所での活動で気づいたことでもあるだろうし、そうした自分たちの役割ややるべきことの現時点での集大成的なものが、日本のロックバンドとしてのサウンドの刷新を図った「ホームタウン」なのである。
「フェスでやるのは実は久しぶり」
という「君という花」でらっせーらっせーコールを巻き起こすと、最後に演奏されたのはこの規模でさえも包み込むような包容力を持った「ボーイズ&ガールズ」でそのそぎ落とされたバンドの演奏とゴッチの歌に酔いしれていた。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「もう言葉にならない。生きていて良かった」
とゴッチが珍しく心から感謝の気持ちを表し、最後に演奏されたのは翌週にリリースを控えた最新曲「解放区」。突き抜けるようなロックサウンドと、夜空の下だからこそのゴッチのポエトリーリーディング。その内容はライブごとに変えていて、先日見たワンマンとは全く違うものだった。この曲はこうしてその日その日で全く受けるイメージが変わるだろう。そんなアジカンの曲は初めてだ。そうしてアジカンはさらに前へ、先へ進んでいる。両A面の「Dororo」も含めてこれからのアジカンが本当に楽しみになる。
1.UCLA
2.ホームタウン
3.荒野を歩け
4.Re:Re:
5.リライト
6.Easter
7.ソラニン
8.君という花
9.ボーイズ&ガールズ
encore
10.解放区
演奏を終えるとメンバーが並んで観客に一礼し、夜空に花火が上がった。それは屋内のフェスでは見ることができないもの。終わった後に主催者が出てきて長々と挨拶をするのはともすればフェスの余韻を奪ってしまうことにもなりかねない。しかしこうして花火が上がると、参加者みんなが揃って夜空を見ている。
好きなアーティストや音楽への向き合い方はみんな違うかもしれないけれど、この瞬間に考えていることはみんな同じだ。来年もこうしてここでライブが終わった後に花火を見ていたい。それはゴッチの言っていた
「生きていて良かった」
という感情そのものだった。
渋谷陽一は「来年はもっと快適にできるアイデアがある」と言っていた。参加者からの意見もあれど、渋谷陽一も山崎洋一郎も、ライブやってる時間に客席を歩いているからこそ見えているものがあるのだろう。ロッキンやCDJも含め、それがロッキンオンのフェスが快適に改善されていく理由。千葉市と金銭を半分ずつ出して地面を全面芝生化したのも千葉県民として本当に嬉しいし、その千葉でこうした素晴らしいフェスが行われているのは千葉の音楽好きの誇りだ。果たして来年はどんな風にこの会場は変わるのだろうか。
JAPAN JAMもVIVA LA ROCKもそうしてたくさんの人に来てもらえるように改善をしている。4日間で2日間ずつ参加して、1番たくさんの人に来てもらう方法はやっぱり日程を被さないことだ。この日にビバラにも行きたかったし、前日はJAMにも来たかった。ロッキンオンジャパン読者歴18年くらい、MUSICAは創刊号から全て持っている。それくらい大好きな両者のフェスにどちらかして行けなくて悩むのはツラい。もし両者の日程が被らなくなって6日、7日連続になっても全部行くから。
文 ソノダマン