/ 2019/06/17
昨今のブームもあり、このバンドといえば『オペラ座の夜』であり『ボヘミアンラプソディ』となる向きが多いが、彼らには所謂駄作と呼ばれるアルバムが1つも無いと言っていい。賛否分かれるであろう80年代の作品たちも、様々な問題と戦った結果であり、そんなことを抜きにしても未だ感銘をうけるものばかりだ。
そしてこのアルバム。
ジャケットの色合いもあり、ややダークかつ地味な印象で語られることも多い作品だが、特に初めて聴くオリジナルアルバムとしては圧倒的にオススメしたい一枚である。
彼らのアルバムはどれも多彩だが、この作品はすべての曲が別の方向を向き、かつ高い次元で輝いている。一曲一曲が足りないパーツを補うかのように一枚の作品を構成している。
五角形のパラメータで表すならば西武時代の松井稼頭央のごときバランスの良さ。
アタマのTie your mother downのハードロックバンドとしてのインパクトと、Long Awayの美しさやスケールの大きさ、Somebody to Loveのゴスペル的なダイナミズムや、懐かしのラヴァーボーイのPOPSとしての完成度、teo toriatteの繊細さなど、これ程まで異なる向きの曲が並ぶがどこか統一感を感じるのは、その楽曲の持つクオリティの高さだけによるものだけではなく、四人が持つまさに「Magic」の賜物なのであろう。
関連記事
ソルファ (2016) ASIAN KUNG-FU GENERATION
過去の楽曲を再構築して録り直したアルバムだと、クラムボンの『Re-clammbon』シリーズがあるけど、このアルバムは過去の楽曲を再構築したわけでも、新しい解釈をして録り直したわけでもない。『ソルファ …続きを見る
マジックディスク ASIAN KUNG-FU GENERATION
希望に満ち溢れ、生のエネルギーに満ち溢れた力強いメッセージ。
間違いなくアジカンの最高傑作かつ集大成。震災がなければこの作品を最後に彼らは解散していたという。
しかし、それほどまでに悪化していた関 …続きを見る
Snuff Said Snuff
90年代初頭(と言うか正確には89年だけど)のアシッドハウス全盛期でパンクが一番どん底だった時代に突如として現れたイギリス産3ピースハードコアバンドSnuff。その後メロコアと呼ばれるジャンルの基礎を …続きを見る
YOU NEED FREEDOM TO BE YOU 9mm Parabellum Bullet
正直言ってライブでリリース前の「カタルシス」を聴いた時は「ちょっと難解な曲過ぎないですかね…?」と思っていたし、だからこそその時に製作中だと言っていたこのアルバムがどんな内容になるのか全く予想がつかな …続きを見る
柿レンジャー となりの企画はよく柿くう企画だ 古都の夕べ
『区分』でバンドの完成度を究極に高めた古都の夕べがメンバーを一部刷新。ベース・どし丸とボーカル・あゆ巫女が抜けベースボーカルのハコが加入。4人編成バンドに。編成だけでいえばギターの前にマイクがない以外 …続きを見る