昨年末にリリースされたRADWIMPSのアルバム「ANTI ANTI GENERATION」はその内容から驚きと賞賛とが入り乱れたものとなったが、野田洋次郎本人がリリース時に
「リリースしてからのライブは予定していないし、そういう同じサイクルを繰り返すのもどうかなって」
と発言していた通りに通常のバンドの「音源リリース→ツアーへ」というルーティンを度外視して作られたアルバムだっただけに(だからシングル「カタルシスト」リリース時に大規模なアリーナツアーを行った)、リリース当初はライブの予定が全く決まっていなかったが、ファンからのライブを求める声が大きくなったこともあり、今年になって急遽ツアーを開催。
通常のパターンだとツアーファイナルで1番大きな会場、あるいは沖縄をファイナルにしてそのまま休暇というものになりがちなのだが、そうした背景もあってバンドのワンマンとしては過去最大規模であるZOZOマリンスタジアムというスタジアムワンマンがツアー前半、この翌週が沖縄でツアーは8月まで続くというかなり変則的(このスタジアム以外は平日ばかりというのが急遽会場を抑えた感じが出ている)な日程であるため、初のスタジアムワンマンでも集大成的な空気はほぼない。
アリーナスタンディングからスタンド指定席の内野席がビッシリ埋まった(前日の2days初日は外野席にも観客がいたらしい)景色はやはり壮観であるが、18時を少し過ぎた頃にEDM的なSEが流れると、センターバックスクリーンに作られたステージの上段の左右に配置されたドラムセットに座る森瑞希と刃田綴色の2人が最初に登場。黒と赤の混ざった服を着た刃田は軽やかに舞いながらドラムセットに向かうというテンションの高さを見せている。
その後に桑原彰(ギター)、武田祐介(ベース)に続いて白い衣装にハチマキとハットを頭部に装着した洋次郎もステージへ。SEのEDM的なサウンドを引き継ぐように武田もベースではなくシンセを弾く「ANTI ANTI GENERATION」の「NEVER EVER ENDER」の瑞々しいサウンドがライブの開幕を告げる。音源ではやはりそのEDM的なサウンドが目立っていた曲であるが、こうしてライブで聴くと機械的な感じは全くなく、肉体性を感じさせるものになっているのはツインドラムという現在のこのバンドの編成によるものが大きいだろう。最初はハンドマイクで歌っていた洋次郎は曲のアウトロ部分ではピアノを弾くというあたりに早くも今のRADWIMPSのマルチプレイヤーっぷりが表れている。
RADWIMPSはライブのキャパが広くても常に演奏するメンバーの姿がスクリーンに映し出されているわけではないというか、この日も3面のLEDがメンバーの後ろにあったが、メンバーを映すという役割もありつつ、映像演出として使うというのもありつつ。だからこそ「ギミギミック」のような洋次郎がギターを弾きながら歌う、今のRADWIMPSからするとシンプルな編成で演奏される曲では肉眼で捉えられる限りはスクリーンを介さずにメンバーの姿を見ていたいと思える。
「この日のスペシャルゲスト」
と洋次郎が言って早くもステージに招かれたのは、アルバムにも参加していたSOIL & “PIMP” SESSIONSのタブゾンビ率いるホーン隊。しかし参加したのはアルバムの中のコラボ曲ではなく、先行シングルの「カタルシスト」。サビというかヴァースの部分でホーンの音が高らかに鳴り響き、洋次郎のボーカルと絡み合うのを見るともともとこうしたアレンジで演奏されるのを想定していたんだろうか、とすら思える。
「俺たちめちゃくちゃ楽しみにしてたからな!みんなも楽しみにしてたんかいのう!?
(観客の声援を聞いて)…まだ足りないな。今日はその声に比例させたライブをやるわ。だから今の3倍くらいの声を聞かせてくれ!」
と洋次郎が挨拶がてらに言いながら観客を煽って演奏されたのは3倍だから三唱ではなく千唱となる「万歳千唱」。洋次郎が煽った甲斐があったからなのか、コーラス部分ではこれぞスタジアム!というくらいの巨大な大合唱が響き渡る。
そもそもは「18祭」というNHKの企画で18歳のファンを集めて一緒に歌うというアイデアのもとで生まれた曲であり合唱パートであるが、そうした「ANTI ANTI GENERATION」に至るまでに経験したこと全てがアルバムの内容やこのライブに繋がっているし、もともとやろうと思えばスタジアムでライブをやる機会はあったであろうバンドであるが、ちゃんとスタジアムだからこそより一層響く、生きる武器を手に入れた上でスタジアムに立っているのを見るとこのタイミングでここでライブをしているのが必然であるかのように思えてくる。
「晴れた空の青さだけじゃ もはやかばいきれはしなくて」
という歌い出しのフレーズが雨は降っていないが曇天の空模様であるこの日の天気やシチュエーションを肯定するかのように歌われる「透明人間18号」、さらにはハンドマイクの洋次郎だけでなく桑原と武田も演奏しながら花道、さらにはアリーナの前方ブロックと後方ブロックの間に伸びる外周を歩きながらセンターステージへ向かう「アイアンバイブル」と過去のアルバムに収録された曲が続くが、前日の初日はここで演奏されたのは「’I’ Novel」と「謎謎」だったらしい。
去年の「カタルシスト」ツアーでもそうだったが、近年のRADWIMPSのツアーでは本編で演奏される曲は変わらず、アンコールで各地のセトリに変化をつけるという内容だった。それはこうした巨大な規模になるとどうしても演出をガチガチに固めた上でのライブになるだけに仕方ないところだと思っていたが、それをこうして変えてきている。もちろんセトリが同じであっても同じライブというのは2度とないが、2日間来た人からするとたくさん曲が聴けるというのはこの上なく嬉しいはず。アルバム曲にシングル曲以上に人気がある曲も数え切れないほどあるバンドだし、色んな時期にそれぞれの聴き手が思い入れを持っているバンドだからこそ。
「アイアンバイブル」を演奏しながらセンターステージに辿り着いた洋次郎、桑原、武田の3人がそれぞれホームベース、1塁、3塁に向かってステージの端にしゃがみ込むと、
「今週、この土日だけ雨予報だった。マジでやめてくれと思って(笑)
でも昨日もライブやってる時は降らなかったし、今日も降ってない。これは俺たちに「天気の子」がついてるね。もう雨バンドって呼ぶなよ!(笑)まだ晴れバンドとは言えないから曇りバンドだけど(笑)」
と、すでにバンドが音楽を担当することが発表されている新開誠監督の新作映画のタイトルを出して雨が降らなかったこの日の天候に触れたのは実に上手かった。
その状態で洋次郎がボーカル、桑原に加えて武田もギターという実にシンプルな形で演奏されたのは「ANTI ANTI GENERATION」収録の全英語詞バラード「I I U」。近年は英語詞の曲の比率が減ってきているためについ忘れてしまいがちな洋次郎の英語の発音の良さを改めて堪能できる。
桑原と武田が観客の前を通ってメインステージに戻り、洋次郎がセンターステージのピアノを弾きながら歌い始めたのは「そっけない」。時には誰も歌詞に使わないような言葉を用いたラブソングもたくさん作ってきた洋次郎による素朴なラブソング。曲途中でバンドの演奏が加わると、武田はなんとチェロ(のような楽器。遠めだったので確証はないが弓を使って弾いていた)を弾いているというここにきてのさらなるマルチプレイヤーっぷり。それでいてベースも全く疎かになっていないどころかさらに進化しているのが恐ろしさすら感じるし、一体この人たちは人生におけるどれだけの時間を音楽に費やしているのだろうかと思う。
洋次郎もメインステージに戻るとハンドマイク状態になって歌い始めたのは宗教をテーマにした歌詞でファンに衝撃を与えた「洗脳」。スクリーンに映る洋次郎は不穏なオーラを撒き散らすようなリアルタイムのエフェクトがかけられており、この曲のおどろおどろしさをさらに引き立てている。しかしながら驚いたのは、去年の「カタルシスト」ツアーよりも観客が腕を上げたりしてこの曲を楽しんでいる姿。まだ「シングルのカップリング曲、かつこんな重いテーマの曲をライブでやるのか」という空気すらあった去年から、アルバムにも収録されたことによってこの曲の立ち位置はガラッと変わったし、前述の演出も含めてライブでやり続けたことによってこの曲の持つ真価をさらに発揮できるようになったというのもあると思う。
さらに続くのは「PAPARAZZI 〜✳︎この物語はフィクションです〜」という「ANTI ANTI GENERATION」の中で最も衝撃を与えた、「フィクションです」とタイトルにつきながらも「ノンフィクションじゃないの?」と勘ぐってしまうくらいの生々しい、メディア側にいる人間の醜さを断罪する曲。
はっきり言ってこうした曲は聴く人や好き嫌いがかなり分かれる曲だと思う。いわゆる「売れるアルバム」を作るのなら入れない方が賢明と言ってしまえるくらい。でもRADWIMPSは入れる。それが言いたいことであって表現したいことだから。それは「なんちって」や「へっくしゅん」を作った10代の頃から全く変わらないバンドのスタンスである。
「君の名は。」の大ヒットによって国民的バンドと言ってもいいような立ち位置になっても全くブレないその姿勢を示したこの曲は、ついつい楽な方や無難な方を選んでしまいがちな我々の人生に強く喝を入れているようでもあるし、
「ポッと出で出てきたわけじゃねぇ こちとらメジャーで10余年
こんな変わり者の俺の音楽を待ってくれてるファンたちと
絆を一つずつ作り上げ こうしてスタジアムやってんだ!」
と歌詞を変えて歌った洋次郎のボーカルは自信や迫力に満ちていたし、過激な歌詞ばかりが目立ってしまいがちだが、このフレーズは紛れもなく我々とRADWIMPSというバンドのまさに「絆」を確かめさせてくれるような曲である。
そんな不穏な曲ゾーンを終えると、桑原も挨拶がてらにMCをするが、信じられないくらいに噛みまくって何を言っていたのかわからないレベル。こうしたところは10代の頃から全く進化していないが、逆に進化した部分を見せるのが間奏で激しいセッションが展開される「おしゃかしゃま」。洋次郎が後ろを向いて指揮者のように手を挙げるとその手の方にいる人が音を出し、最初は桑原のギターと武田のベースによるバトルとなるのだが洋次郎が武田の髪をわしゃわしゃと掴んでスラップベースを弾かせると、森と刃田のドラムバトルに展開し、さらには森&武田、刃田&桑原のチーム戦に。どのくらいの長さのセッションをするか決めているのかはわからないが、洋次郎の動きに咄嗟に反応して音を出す反射神経は実に見事だし、ツインドラムと言っても刃田はパーカッション的な側面も強いことがこのセッションを見るとよくわかる。(洋次郎はその刃田のパーカッシヴなドラムソロに合わせて踊りまくっていた)
音を小さく鳴らし始めてからどんどん大きくしていって大音量に達して最後のサビに突入する頃には客席も完全に熱気に満ちており、洋次郎がギターを弾きながら歌う「DARMA GRAND PRIX」に続いて、音源でもタブゾンビをゲストに招いていた「TIE TOUNGE」ではそのタブゾンビをはじめとしたホーン隊「TIE TOUNGEゾンビーズ」が三度登場して高らかに音を鳴らし、さらにシアトルマリナーズのイチローのユニフォームを着たラッパーのMiyachiも登場して洋次郎のボーカルとラップを掛け合わせていく。何人もが花道を歩きながら演奏するステージ上の様子ももちろんだが、サウンドも実に華やかである。
とここでそんな熱い流れを一旦クールダウンさせるかのように洋次郎がピアノを弾きながら披露されたのは「ブレス」。
「触れたら壊れてしまいそうで
触れなきゃ崩れてしまいそうな」
というサビのフレーズは実に繊細な洋次郎の心の声を表しているし、東北の震災を受けて作られたこの曲は東北での野外ワンマンの際には津波の被害に遭ったピアノを修復して演奏された。歌い終わった後に洋次郎はそのピアノと音からそのピアノが壊れる前、つまり震災が起こる前の風景を思い浮かべて涙を流した。そんなRADWIMPSの人間らしさや優しさを感じることができる曲であるし、あの震災のことを洋次郎たちは今も忘れていない。
そんな流れを挟みながら、今度は武田がサポートドラマー2人を紹介し、(なぜか最後には「見かけたら声をかけてあげてください」と2人ともに言っていた)音源ではONE OK ROCKのTakaと洋次郎のツインボーカルで収録されていた「IKIJIBIKI」ではTakaは会場には来れないために観客による合唱とTakaのボーカルの同期を使って演奏された。果たしてこの曲をライブで洋次郎とTakaが歌う日はやってくるのだろうか。
洋次郎によるおなじみのコール&レスポンスでは観客の声に物足りなさを感じてやめようとするという恒例の展開もありながら、観客による
「もう1回!もう1回!」
のコールがあまりにも強すぎたことによって
「そこまで言われると俺が悪いような気がする(笑)」
と折れ、結果的には
「すいませんでした!(笑)」
と洋次郎が謝るくらいの巨大レスポンスが。
それが「君と羊と青」のお祭り感をさらに引き上げていたのだが、やはり
「もう1回!もう1回!」
と曲終わりになるとコールが起こり、メンバーは超高速でアウトロをもう1回演奏する。実に楽しいし、メンバーの演奏力がキャリアの中で最高レベルに達しているからこそ心からその楽しさを感じることができる。
打ち込みの手拍子音から武田と桑原、そして観客の大きな手拍子へと変わっていく「いいんですか?」ではスタジアムの最上部にある球場の照明が点灯して客席が明るく照らされる中で演奏されたのだが、ライブを見ているとつい忘れがちだが、普段ロッテの選手たちはこの光を浴びて野球をしているんだよな、と思うし、花道を駆け回りながら歌う洋次郎はしっかり観客の姿が見えるように照明をつけたのかと思うくらい、大合唱が起こる中で放った
「愛してるよー!」
という言葉はこの景色の中で聞くといつも以上に本当に愛されている実感を持つことができて、思わず泣けてきてしまった。
そんな感情を増幅させたのは、
「俺たちの作る音楽が合わないなって思う時が来るかもしれないし、そうなったら離れてもらっても構わない。でもいつか戻ってきた時にも俺たちは音楽を作り続けていくし、「好きな音楽は何?」って聞かれたら「RADWIMPS」って胸を張って言えるようなバンドであり続けたい」
という洋次郎のMC。この日やこのツアーに来た人、これからこのツアーに参加する人たちはみんな今でも「RADWIMPSが好き」って胸を張って言える。何よりもRADWIMPS自身がそう思わせてくれるような音楽を作ってライブを見せてくれるのが何よりも嬉しかった。
そして再び洋次郎がピアノの前に座ると、本編最後に演奏されたのは先程もMCで話をしていた、新開誠監督の映画「天気の子」の主題歌になる新曲「愛にできることはまだあるかい」。まだ映画が公開されていないのでどの程度映画のストーリーに沿った曲なのかはわからないが、それを抜きにしてこの場で初めて聴いても耳に残る
「愛にできることはまだあるかい
僕にできることはまだあるかい」
というサビのフレーズのメロディの美しさ。この「僕」はもしかしたら映画の主人公を指しているのかもしれないが、もしこの「僕」がRADWIMPSそのもののことだとしたら…まだまだRADWIMPSにはできることがたくさんある。どれだけ曲やアルバムを出しても我々ファンは未だに驚かされ続けているし、まだこんなに美しく素晴らしい曲を作ることができる。
きっとまたこの曲やこの曲が使われる映画によってRADWIMPSと新しく出会う人がたくさん出てくる。つまり、まだこのバンドの音楽に触れたことのない人たちが世の中にはたくさんいる。そう考えるとやっぱり、RADWIMPSにできることはまだあるよ、と光のカーテンやシャワーの中で演奏するメンバーの姿を見ながら思いを馳せていた。
アンコールで再びメンバーが登場すると、武田はツアーTシャツに着替えており、洋次郎はピアノに座ると、
「みんなで歌いたい曲があるんだ。ちゃんと歌詞が映るから。昨日より文字を大きくしたからちゃんと見えるはず(笑)」
と言って演奏されたのは「正解」。NHKの「18祭」のために作られた合唱曲を、きっと18歳ではないたくさんのRADWIMPSのファンの人たちが全力で歌う。洋次郎のボーカルを超えるくらいの声量で。
今や音楽は人間が歌わなくても作ることができる。決してボカロの存在をディスりたいわけではないけれど、でもどんなに音程が外れていたり、歌が下手だったりしても、人間の発する声以上に人の心を揺さぶるものはない。そこには間違いなく感情がこもっているから。だから「18祭」でこの曲を歌っていた人たちはみんな泣いていたし、この日の大合唱の中にこもっていた感情ーそれはそれぞれのRADWIMPSが好きという気持ちや、RADWIMPSの音楽と交差してきたそれぞれの人生。そうしたものが溢れる声が3万人分重なっていく。それはスタジアムというこれまでで最も大きな場所だからこそより一層感じることができるもの。RADWIMPSは真の意味でスタジアムバンドになっていたのだ。
そして洋次郎がピアノから降りてギターを手にすると、
「満天の空に君の声が…」
と歌い始めたのは「トレモロ」。かつて2008年にSUMMER SONICに出演してこのステージに立った時も演奏されていた曲だが、その時のライブはかなり不完全燃焼というか、ある意味ではRADWIMPSのライブスランプの始まりを告げたライブであった。前年の8月31日に行われた初の横浜アリーナワンマン「セプテンバーまだじゃん。」は今までに何本ライブを見たかわからない自分のライブ人生の中でTOP10に入るくらいに素晴らしい、RADWIMPSの一つの集大成のようなライブだった。
そんなライブから1年、待望のRADWIMPSのライブはどんな進化を果たしているのかという期待が大きく空回りしてしまったライブ。それから2年間くらい、RADWIMPSのライブはずっと精彩を欠いていた。あの最高だった横浜アリーナまでの数年間の鉄壁っぷりが幻だったかのように。
でもこの日の「トレモロ」はそんな思い出したくない記憶すらもあっさり上書きするくらいに、今の最高のRADWIMPSの演奏で鳴らされていた。あいにくの曇り空によって星は見えなかったが、こうしてRADWIMPSのライブを笑顔で、あるいは涙を浮かべながら見ることができている。その景色は満天の星空よりも美しかったかもしれない。
そして
「もう1曲やっていい!?もう明日みんな学校とか仕事だろうけど、明日声が出ないくらい喉が痛かったり、歩けないくらい足が痛かったりしたら「洋次郎のせい」って言っていいから!それ以上は何も言わない方がいいと思うけど(笑)」
と言って服を脱いでタンクトップ姿になると、千葉の駄々っ子を体感するべく演奏された「DADA」で最後のひと暴れ&大合唱を巻き起こしシーン登場時は「ミクスチャーロック」と形容されていたRADWIMPSの本領を見せると、ファンからもらった横断幕を纏ったメンバーがホーン隊やMiyachiを招いて一緒に花道で丁寧に観客に感謝を告げ、
「最後にみんなにプレゼントがあります。5秒前から一緒にカウントダウンしよう」
と言って0になると、夜空に美しい花火が。洋次郎がツイッターでしきりに「幕張の日は雨が降らないでくれ」と言っていた最大の理由はこれがあったからなんだろうなと思うと同時に、これはスタジアムでしか見ることができない景色だな、とこのバンドがスタジアムに立てるようになったこと、こうしてスタジアムバンドにふさわしいライブを見せてくれたことに心から感謝したのだった。
前述の通り、11年前のサマソニのこのステージでのライブは散々たるものだった。RADWIMPS目当てで来た友人が途中で違うステージに移動してしまうくらいに。
もちろんそれでもずっとライブに行っていたから、今のRADWIMPSにそんな不安はないのはわかっていたけれど、やっぱりあの日の残像が頭にはまだ残っていた。この日のライブはそれを最高な記憶に塗り替えてくれるものとなった。
この世に生まれてからほとんど同じ年月を過ごしてきた、自分と同い年のメンバーたちのバンド。まだお互いに学生だった頃からずっと見てきたし、その道のりは決していいことばかりじゃなかった。それはバンドだけではなくて我々の人生もそうだ。
でも様々な紆余曲折を乗り越えたバンドが今になって最高だなって思えるような姿を見せてくれている。しかもそれはひたすら観客の期待に応えるというわけではなく、自分たちが本当にやりたいことを自分たちの手で選びながら。その姿が生きていくための力にならないわけがない。
「離れたりするかもしれないけれど」
と洋次郎は言った。それは「HINOMARU」という曲が議論を巻き起こしてしまった去年のツアーでもそう言っていた。
でも離れるわけがない。もう離れられないんだ。今までどんな良くないライブを見たり、バンドの形が変わってもずっと見続けてきた果てに、こうしてお互いに生きてきたことを祝福しあえるような素晴らしい日が待っているのがわかっているのだから。
やっぱり、RADWIMPSにできることはまだあるよ。
1.NEVER EVER ENDER
2.ギミギミック
3.カタルシスト
4.万歳千唱
5.透明人間18号
6.アイアンバイブル
7.I I U
8.そっけない
9.洗脳
10.PAPARAZZI 〜✳︎この物語はフィクションです〜
11.おしゃかしゃま
12.DARMA GRAND PRIX
13.TIE TOUNGE
14.ブレス
15.IKIJIBIKI
16.君と羊と青
17.いいんですか?
18.愛にできることはまだあるかい
encore
19.正解
20.トレモロ
21.DADA
文 ソノダマン