メイナードの別プロジェクト、toolとともに長年沈黙を続けていたa perfect circleの、『eMOTIVe』以来14年ぶりとなる新作。前作でジェームス・イハが加入し話題となったものの、レコーディングには参加しておらず、本作で初めてa perfect circleとしてのイハのギターを聴くことができる。結成当初から、a perfect circleの音楽性には、“toolが男性的だとしたら、a perfect circleは女性的”という表現がよく用いられるが、まさに言い得て妙だ。本作もそのイメージに違わず、キーボード、特にピアノを多用した繊細で美しいメロディ・ラインと、メイナードの囁くような歌声が印象的。タイトル曲、「Eat The Elephant」はビリーがチェスター・ベニントンのために書き、LINKIN PARKの『One More Light』に収録されるはずだった曲。また、「So Long, And Thanks For All The Fish」はデヴィッド・ボウイやモハメド・アリなど、2016年に立て続けに偉大な人物たちが亡くなったことに触発されてできた曲だ。このように、「死」というものと対峙しながら、世の中のあらゆる疑問に対して自問自答を繰り返し、メイナードが至った境地は、「俺が耳を傾けるべきなのは、自分の内側からくる声だけだ」というもの。本作はその心境がよく表れている。前作の至るところに感じられる怒り、苦しみのような激しさ、激情は姿を潜め、本作ではそのすべてを包み込む優しさ、愛おしさをたたえた曲調が続く。まるで、暗闇をさまよう私たちの行く末を、静かに照らしてくれる道標のようなアルバム。彼らの最高傑作といってもいい一枚だ。
/ 2019/07/02