2日目。始まる前に少しだけ雨は降ったが、むしろ暑くなく寒くもなくという過ごしやすい気候に。まだ初日の影響で地面はぬかるんでいるところもあるけれど。
9:55〜 ズーカラデル [FOREST STAGE] (Opening Act)
この日のオープニングアクトはズーカラデル。デビューフルアルバムを出した直後のタイミングという、オープニングアクトにうってつけの出演。
メンバー3人が登場すると「漂流劇団」からスタートするのだが、以前ライブを見た時はメロディが良いすごくポップなバンドというイメージが強かったが、ボーカルの吉田崇展の歌い方もそうだし、その吉田が「僕は全然大したことないですけど、うちのリズム隊の2人は本当に素晴らしいプレイヤーなんで」と言っていたベースの鷲見こうたとドラムの山岸りょうの2人がさらにライブ映えする演奏をするようになっている。
特に鷲見は音階的にも物理的にもより一層動くようになっており、ポップなイメージが強いこのバンドのロックな部分を担っていると言ってもいい。
吉田のおなじみの「アリガトッ!」という外国人みたいな曲終わりの感謝も変わらないが、これまでのキャリアの総括的なアルバムを出したことによってセトリの幅も広がってきている。
「向こうに見える山の方まで響いてるんじゃないかっていうくらいの感じでやってますが…」
という吉田のMCは本人も意味不明な感じになってしまったが、このステージから見える景色を楽しんでいることだけは確かだ。
短い時間ではあるけれどバンドの魅力をしっかり伝えるような演奏をすると、現状のこのバンド最大のキラーチューンと言っていい「アニー」では最後のサビで太陽が出てきた。それはオープニングとしてこの日1日を占う上で最高の光景だったし、それはこのバンドのこの曲が持つ陽性のエネルギーあってこそだろう。
個人的には初期のくるりに通じるものをこのバンドに感じているが、それとはまた違う進化を遂げていきそうな気がしている。
1.漂流劇団
2.イエス
3.友達のうた
4.前夜
5.アニー
10:25〜 the telephones [Mt.Fuji STAGE]
前日は石毛とノブがCLOSING DJを務めた、the telephones。実に4年ぶりのこのフェス帰還である。
おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」でメンバーが登場すると、石毛の
「ラブシャー!4年ぶりに帰ってきたぜー!みんな、朝から猿のように踊ろうぜー!」
というハイトーンボイスによる挨拶からいきなりの「Monkey Discooooooo」でスタートし、朝から大勢の人が詰めかけたMt.Fuji STAGEを踊らせまくる。石毛のブリッジギターも炸裂する中、さらに「I Hate DISCOOOOOOO!!!」と朝イチからディスコを叫びまくり。とても10時台のテンションとは思えないが、the telephonesのライブはいつもこうだった。時間とか関係なく最高に楽しくて、ディスコの向こう側に連れて行ってくれる。
長島涼平のベースのイントロが観客の体を揺らす「electric girl」は細かいアレンジの変化なども含めて、暴れるだけではないtelephonesのダンスミュージックとして定着してきているが、石毛の
「おはディスコ!」
という挨拶は見事にスベる。その挨拶の後に
「昨日CLOSING DJやって、今日が朝イチ。鬼かと(笑)でもなんで俺たちがこの時間なのかなって考えたら、初めてこのフェスに出た時がこのステージのトップバッターだった。4年ぶりに帰ってきて、同じ位置で出演させてもらっている。スペシャは本当によくわかってるなって」
と初出演時のことを思い出しながらも、ずっとスペシャで海外の音楽を紹介し続けている石毛ならではのスペシャへの感謝を示すと、「urban disco」ではノブがイントロで客席に突入し、その後も客席最前の柵の前を走り回る。この男の体力には衰えという概念はないのだろうか。
そして4年前も最後に演奏された「Love & DISCO」は前日のCLOSING DJの時も鳴らされたし、telephonesが出演しなかった年も石毛とノブのDJで流していた。telephonesとしてはこの場所にいなかったけれど、この場所でtelephonesの音楽はずっと流れていた。それが4年ぶりにバンドの演奏で鳴らされた。それはこの山中湖もこの曲がまたここで演奏されるのを待っていたかのようだったし、不在時もピエール中野らDJ陣はいつもtelephonesの曲を流していた。初出演時からずっと、telephonesの音楽はこのフェスのアンセムであり続けてきたのだ。だからこそ、来年以降もこの場所でtelephonesの音楽を聴いていたい。こうしていろんな場所でまたライブをやっているのを見ることで、その場所に刻まれたものを思い出すことができる。それは今となっては全て美しいものに感じられる。
1.Monkey Discooooooo
2.I Hate DISCOOOOOOO!!!
3.electric girl
4.urban disco
5.Love & DISCO
11:05〜 NICO Touches the Walls [LAKESIDE STAGE]
このフェスは山中湖に場所を移してから今年で13回目の開催だが、そのうち10回出演しているという最多出演バンドが2組いて、そのうちの1組がNICO Touches the Wallsである。近年は昼過ぎや夕方に出演することもあったが、今年はLAKESIDE STAGEのトップバッターとしての出演。
サウンドチェックでメンバーが曲を演奏するのはいつものことであるが、早くから集まった人を歓喜させる「バイシクル」、光村龍哉(ボーカル&ギター)がアコギを弾いて歌うというアコースティック感の強いアレンジになった「天地ガエシ」、さらにはシンディ・ローパーの「Time After Time」と「Mr.ECHO」を交互に口ずさんだりと、サウンドチェックの段階からサービス精神が強いが、朝早くから集まってくれた観客のためというのもありつつ、自分たちがやりたいことをやっているというのもあるだろう。
本編はストレートな「手をたたけ」、「THE BUNGY」とともに観客の手拍子が重要な役割を果たすタイプの代表曲でスタート。ストレートな、というのはライブごとに曲に加えるアレンジを変えるバンドであるため、セトリだけ見ると定番曲ばかりやっているように見えても違うアレンジで演奏されることも多いからだ。
すると「夏の大三角形」では爽やかなイントロに大歓声が上がる。確かにこのバンドの中ではヒットした曲であるが、他のこのステージの出演者に比べると「誰もが知る大ヒット曲」というわけではないとファンとしても思っていた。(そもそもNICOがそういう立ち位置のバンドなだけに)
でもこのフェスに来ている人はほとんどの人がこの曲を知っている。NICOがどんなバンドでどんな曲を持っているのかを。フェスだと時間が短くて物足りなく思ってしまうことも多いけれど、NICOが好きな人しか基本的にはいないワンマンでは見れないしわからないものがフェスの場にはある。
すると光村がここで6月リリースの最新アルバム「QUIZMASTER」について、
「シングル曲が1曲も入ってない。正直、レコード会社の大人には反対する人もいた。でもいつか絶対こういうアルバムが作りたいって思ってた。そういうアルバムが作れて嬉しい。ロックンローラーとしてやり続ける、挑戦し続けるっていう姿勢を示したい」
と語り、その「QUIZMASTER」収録の「MIDNIGHT BLACKHOLE?」を演奏した。6曲という少ない曲数の持ち時間でこの曲を演奏したことには少し驚きもあったが、それこそが光村が言う「挑戦し続ける」ということ。それでいてやりたいことしかやらないが故の自己満足的なアルバムには全くなっておらず、これまでにNICOの音楽に触れてきた人たちはもちろん、そうでない人たちも取り込めるようなアルバムになっている。確かにシングルは入ってないけれど、この曲も含めてシングルになってもおかしくないような曲がたくさん入っているアルバムだ。
そして光村のボーカルとメンバーの演奏がステージのはるか先にある山の中まで届いているんじゃないかと思うくらいのスケールと伸びを持って響く「Broken Youth」へ。こちらもアレンジ自体はストレートなものだったが、古村大介のギター、坂倉心悟のベース、対馬祥太郎のドラムが激しくぶつかり合うイントロは年数を重ねるごとに迫力を増している。1人1人の技術と経験の向上がバンドの進化を何倍にも押し進めている。
ラストは光村がアコギを弾きながら歌う「QUIZMASTER」のリード曲「18?」。最近、フェスでは毎回この曲を最後に演奏している。これが今のNICOのモードであり、最新形であるということを示すように。それは完全にホームと言えるこのフェスの場にしっかり届いていたように思える。
ラブシャは必ずしも動員力=デカいステージというタイムテーブルを組むフェスではない。それこそORANGE RANGEや銀杏BOYZですら初出演はFOREST STAGEだった。そんな中で、NICOがこの最大規模のLAKESIDE STAGEに立っている理由。それは動員力だけではない、この規模に立つべきスケールを持ったバンドであるということをこのフェスを作る人たちがわかっているからである。それくらい、毎年NICOがステージに立つのを見てきたフェスだから。
かつては普段なら絶対やらないようなサークルモッシュを観客に求めたりしたこのステージ。きっとバンドにとっても特別な場所だろうし、毎年見ている我々NICOファンにとっても間違いなく特別な場所になっている。それはきっとこれから先も。
リハ.バイシクル
リハ.天地ガエシ
リハ.Mr.ECHO (Time After Time)
1.手をたたけ
2.THE BUNGY
3.夏の大三角形
4.MIDNIGHT BLACKHOLE?
5.Broken Youth
6.18?
11:55〜 THE BAWDIES [Mt.Fuji STAGE]
昨年はこのステージのトリを務めた、THE BAWDIES。今年は昼の時間の出演であるが、NICO Touches the Wallsと同じくこのフェス最多出演を誇る、ラブシャの顔と言えるバンドである。
「ダンス天国」のSEで黒いスーツを着た4人がステージに登場すると、
「THE BAWDIESでーす!」
とROY(ボーカル&ベース)が元気よく挨拶し、いきなりの「JUST BE COOL」で飛び跳ねさせながら、ROYはのっけから超ロングシャウトを炸裂させて大歓声を浴びる。基本的にROYは不調という言葉を知らないくらいにいつも完璧なボーカルパフォーマンスを見せる男であるが、やはりこのステージではさらにのびのびとしているようにすら感じる。
前に戻るのではなく歩いてきた道を少し振り返ってみるという15周年を迎えたバンドだからこその最新ロックンロール「LET’S GO BACK」から観客の合唱とともにロックンロールを生み出す「SING YOUR SONG」と続けると、おなじみの「HOT DOG」劇場へ。
今回も最近よくやっている、ソウダセイジと舟山卓子の学園ラブコメの第1話なのだが、生徒役としてthe telephonesのメンバーもステージに。先生役のMARCYから
「おい石毛、うるさいぞ」
と言われたりもしていたが、この2組は先日恵比寿リキッドルームで2マンをやっているのだが、そこではthe telephonesがこの「HOT DOG」劇場を完コピするというコラボを見せていただけに、流れを完全に覚えているノブはJIMに変わって真面目な生徒役をこなすというこの日ならではのコラボ。
the telephonesがトップバッターなのも、その次にこのステージに出るのがTHE BAWDIESなのも、スペシャは全てわかっている。この両者の関係性も、歴史も。だからこそまたこうして両者が一緒にステージに立っている姿を見ることができる。THE BAWDIESのメンバーはthe telephonesのライブ中もずっと袖で見ていた。THE BAWDIESがこのフェスに毎年出続けてきたからこそ、the telephonesもこうして戻ってこれた。そのtelephonesの姿をTHE BAWDIESは見ていた。また一緒にこのフェスで転がり続けていく同志の姿を焼き付けるために。
the telephonesのメンバーが去って「HOT DOG」を思いっきりの熱さで演奏すると、さらなる新曲「BLUES GOD」も披露。タイトルとおりにブルース色が強い曲だが、フェスではあまりやる曲に変化がないTHE BAWDIESがこんなに新曲をセトリに入れてくるのは珍しい。春には新曲お披露目ツアーもやっていたが、そこで得た新曲への自信や確信があるのだろう。実際にTHE BAWDIESでしかないロックンロールとブルース曲であるが、よりサウンドは鋭さを増しているように感じる。
乗り遅れないように、と言われながらもROYがあれだけロングシャウトを見せたら着いていくのが大変になってしまう「IT’S TOO LATE」から、ラストはやはり「KEEP ON ROCKIN’」。高速化したビートによる演奏に加え、観客によるハンドクラップとコール&レスポンスも行われるのだが、先日のthe telephonesの2マンの時と同様に、レスポンスの小ささにガッカリしたROYが小さいところから徐々に大きくしていくコール&レスポンス部分でメンバーが大きな音で演奏してROYが戸惑うという小芝居もあり。演奏はめちゃくちゃカッコいいのにこうして笑えるところも見せてくれるところにこのバンドの人間性を感じさせる。
コール&レスポンスもバッチリ決まってライブを終えると、TAXMANによる恒例の「わっしょい」も行われ、去年「入り口で止められてでもこのフェスには絶対来る」というくらいに愛してやまない今年のこのフェスの出番を終えた。
かつてはメインステージのトリも務めたこともあるくらいに愛し愛されているこのフェス。近年はフェスではアウェーさを感じることもあったりするが(それはこの世代のバンドはほとんどそう感じるようになってきている)、このフェスだけは全くそうならない。それはやはり転がり続けてきたことによって積み重ねてきたものがあるから。できることならまた「THE BAWDIES A GO! GO!」も毎週のレギュラー番組として復活してくれないだろうか。
リハ.NO WAY
1.JUST BE COOL
2.LET’S GO BACK
3.SING YOUR SONG
4.HOT DOG
5.BLUES GOD
6.IT’S TOO LATE
7.KEEP ON ROCKIN’
12:40〜 あいみょん [LAKESIDE STAGE]
今年で3年連続出演。去年はFOREST STAGEを超満員にしていたが、今年は一気にLAKESIDE STAGEに進出した、あいみょん。陽が射してきている山中湖の昼の時間に登場。
先にバンドメンバーがスタンバイしている中でステージに現れたあいみょんは黒い服を着ているのだが、腰の両サイドが空いていて素肌が見えるというとてつもなくセクシーな出で立ちで、その姿を見た観客からどよめきが起こる。
そんなあいみょんがアコギを手にして歌い始めたのは「愛を伝えたいだとか」。時にはアコギを弾かずに背負うような形で歌う姿も実にクールだが、真昼間の時間帯に似つかわしくないイメージのこの曲すら音が鳴らされれば完全にあいみょんの世界に連れていかれてしまうくらいにもう百発百中レベルに観客を撃ち抜いていく。
ロックフェスで歌うことによって、全てのロックを聴いて生きている観客のテーマソングとなる「君はロックを聴かない」、ドラムのリズムに合わせたハンドクラップが心地良い「今夜このまま」とヒット曲を連発すると、
「3年連続出演ですが、私が出る日は全て晴れてます」
と2日前に共演したRADWIMPSに倣うかのようなラブシャの天気の子っぷりはこの日も遺憾無く発揮され、時折眩しいくらいの太陽が差し込んでくる。時にはメンヘラと称されることもあるし、次に演奏された「生きていたんだよな」はまさにそう言われるキッカケになった曲でもあるのだが、こうして晴れた空の下で歌う姿を見ているとこの人は紛れもなく陽性のパワーを持っているんだなと思わせる。
展開がコロコロと変わりながらもあいみょんなりのポップさで貫かれた最新シングル「真夏の夜の匂いがする」も含めて、自身には夏の曲が多い夏女であることを口にしながら、バンドメンバーの演奏がさらに熱さと速さを増していくのは「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」。いつにも増してサビの最後のフレーズを長く伸ばして歌う姿からはここで歌うのが本当に気持ちいいこと、自分でも思う以上に声が出ていることをうかがわせるが、それはまるで夏の終わりのこの景色を自身の脳裏に焼き付けるかのようだった。
そう、あいみょんはこの日が今年の夏フェス納めであり、まさに夏の終わりの1日だったのである。そんなあいみょんが今年の夏の最後に演奏したのはやはり「マリーゴールド」。客席で左右に揺れる手は彼女にはマリーゴールドのように見えただろうか。その花がこれからもすくすくと育っていくのを願うかのように、この曲の演奏中はこの日ここまでで最も陽が照っていた。やはりこの人は何か特別な力を持っている気がしてならない。
2年前にこのフェスに初出演した時は、タイムテーブルにすら名前が載っていない、スペシャスタジオでの弾き語りで、観客は数十人しかいなかった。(その時にすでに「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」はライブを担う曲になっていた)
あれからわずか2年。もはやこういうフェスに来る人の中にあいみょんの名前を知らない人はいないというレベルにすら達しているが、これからさらに2年後には彼女はどこまで行っているのだろうか。
リハ.ふたりの世界
1.愛を伝えたいだとか
2.君はロックを聴かない
3.今夜このまま
4.生きていたんだよな
5.真夏の夜の匂いがする
6.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
7.マリーゴールド
13:30〜 KANA-BOON [Mt.Fuji STAGE]
昨年に続いてのMt.Fuji STAGEへの出演となる、KANA-BOON。昨年は自身のライブの直後にLAKESIDE STAGEでマキシマム ザ ホルモンのライブが始まるというタイムテーブルだっただけに、観客が途中で抜けてホルモンに行かないようにノンストップでキラーチューンを連発するという作戦を取っていたが、果たして今年は。
SEもなしにメンバーがステージに登場すると、この日もサポートベーシストのヤマシタタカヒサを加えた4人編成で、いきなりの「シルエット」からスタートするという飛ばしっぷり。なぜかこのフェスの時のKANA-BOONの客席は他のフェスよりもはるかにノリが激しく、この日もいきなりモッシュやサークルの嵐。それはそうしたくなるような衝動や激しさをこのバンドのライブが発しているということでもある。
谷口鮪の早口なボーカルが早すぎていつもより少し聞き取りづらくなってしまった「盛者必衰の理、お断り」もある意味では気合いの先走りっぷりであるが、
「ラブシャ、どうしたいですか?走りたいですか?暴れたいですか?それとも、ゆらゆらしたいですか?」
と「ないものねだり」の曲前の問いかけ方もいつもとはまた一味違うが、「フルドライブ」ではイントロからサークルができていた客席の様子を知ってか、ブレイク部分で鮪が
「バルス!」
と叫ぶとサークルが弾けるという展開に。これは前日にテレビで「天空の城ラピュタ」が放送されていたからこそのノリであろうけれど、かつては鮪はサークルに苦言を呈すというか、あまり好きではない(自分たちの方を見てもらいたいから)というようなことを言っていたが、それも少し変わりつつあるんだろうか。
すると鮪は
「いろいろあるけどバンドを10年続けてると楽しいと思うことや良かったと思うことがたくさんある。このフェスに毎年出れるのも。だからずっと続けていきたい。バンドも、歌うことも」
とこれからもバンドを続けていく決意を語る。
きっと鮪はやろうと思えばソロでも活動できるだろうし、KANA-BOONではできないこともそこでならできるかもしれない。でも鮪にはまだまだKANA-BOONの4人でやりたいことや、4人じゃなきゃできないことがあると思っている。そしてこれからもKANA-BOONとしてこの景色を見たいとも思っている。なかなか厳しい道のりになってきてしまったが、誰よりもメンバーたちが1番前を向いている。
そんな思いを曲にしたような「バトンロード」から、ラストは最新の自分たちの姿を見せる「まっさら」。古賀と小泉だけでなくヤマシタもコーラスを務めているが、めしだ不在のこの状況を乗り越えるためには技術はもちろん、メンバーのことをよく知っていて意志を共有できる人じゃないといけない。そういう意味ではかつて一緒にスプリットシングルをリリースしたこのヤマシタ以上にうってつけの存在はいないし、彼の演奏がバンドを停滞ではなくて前に進ませている。
前のように無邪気なままではいられなくなった。こうしてライブをやるだけでそこには「バンドを続ける意志」が滲み出るようになってしまったから。でも今年もこのステージで見れて嬉しかった。来年はまたあの4人でこのステージに立っている姿が見れたら。無理はして欲しくはないけれど、みんな忘れずにずっと待っているから。
リハ.1.2 step to you
リハ.なんでもねだり
1.シルエット
2.盛者必衰の理、お断り
3.彷徨う日々とファンファーレ
4.ないものねだり
5.フルドライブ
6.バトンロード
7.まっさら
14:15〜 sumika [LAKESIDE STAGE]
3年連続出演にして、FOREST STAGE→Mt.Fuji STAGE→LAKESIDE STAGEと一歩ずつ規模を広げてきた、sumika。今や武道館すら即完する存在となってこのステージに登場。
メンバーがステージに現れると、いつもと少し違うことに気づく。おなじみのSEがない。無音でメンバーはステージに現れると、なんと1曲目から「「伝言歌」」。普段はライブの締めとして演奏されるのがすっかりおなじみになっているし、それが相応しい曲が1曲目に演奏されるというのは心地よく予想を裏切られるが、
「伝えたい」
の大合唱は最初であっても最後であっても変わらない。
さらに「Lovers」と観客のコーラスが重要な役割を果たすキラーチューンにして名曲が続き、片岡健太(ボーカル&ギター)はピアノソロを弾く小川貴之の近くまで寄っていって小川の水を飲んだり、小川に水を飲ませたりするという微笑ましい場面も。
ポップな曲が続いたが、観客のギアをもう2段上げるべく演奏された「ふっかつのじゅもん」はこのバンドがそもそも持つロックやパンクな部分を感じることができ、今年リリースの最新アルバム「Chime」収録の「Flower」では片岡がハンドマイクでステージを駆け回りながら、
「ラブシャの!」「Flower!」
と歌詞をこのフェスバージョンに変えて見せる。ツアーでも大事な役割を担っていた曲であるが、こうしたフェスでももはやおなじみの曲になってきている。
するとそんなアッパーなモードから一転、最新シングル収録の「Traveling」では同じく片岡はハンドマイクで歌うのだが、曲自体はゆったりと心地良いサウンドに身を委ねるようなタイプのもの。とはいえ歌詞はいけない男女の関係を片岡らしく物語的に捉えたものであり、ただ単に心地良い曲ではない違和感に溢れている。
その片岡が
「学生の頃、学校に居場所がなかった。そんな自分が毎日楽しみにしてたのがスペシャだった。スペシャ30周年、おめでとうございます。続くから縋ることができる。バンドもフェスも。家族で来たり、友達と来たり、恋人と来たり、1人で来たり色々な人がいると思うけど、ここに来れば毎年会える人がいるっていう待ち合わせ場所になりますように」
と心のうちを語った。去年も片岡は学校に居場所がなかった自分を救ってくれたのはスペシャだったと話していたが、今の片岡はバンドとしてスペシャでレギュラー番組を持ち、かつての自分のような人間を救う側の立場になった。その片岡の姿を見て音楽を志す人も必ずいる。その人が縋れるのも、sumikaもスペシャもラブシャも続いていくものだから。
最後に演奏された、とびきりポップな「フィクション」を聴きながら、いつになれば終わるのかは皆目見当がつかないな、と思っていたし、それはおあいにく見当もつけないものなのかもしれないと思っていた。sumikaもスペシャもこのフェスも。
リハ.1.2.3…4.5.6
リハ.MAGIC
1.「伝言歌」
2.Lovers
3.ふっかつのじゅもん
4.Flower
5.Traveling
6.フィクション
15:05〜 Nulbarich [Mt.Fuji STAGE]
さいたまスーパーアリーナでのワンマンも決まっており、とどまるところを知らない勢いのNulbarich。ホーン隊も加えた大人数編成で登場。
鮮やかなダイダイ柄のTシャツで首謀者のJQ(ボーカル)が登場すると、「It’s Who We Are」からその美しいハイトーン&ファルセットボイスを響かせる。そのゆったりとしたサウンドやメンバーたちのオシャレな空気も、客層がそれまでとはガラッと変わった客席の空気も同じフェスのものとは思えないくらいの別空間。
しかしサウンドチェックの時点からベーシストがJQのステージ衣装を着ていることに触れ、
「着てんだよな…。明日着ようと思ってたのに(笑)なんかコンビみたいじゃん?(笑)」
とダイダイTシャツを着た2人が並ぶことをいじるが、
「喋るとこんな感じになっちゃうから(笑)」
とすぐに曲へ。しかしこの語り口も含めて、この人の周りの時間の流れは我々のものとは違うのだろうかと思うくらいにゆったりとしている。
しかしながらそんなJQのボーカルが、ブラックミュージックを主体としたこのNulbarichの音楽をポップなものにしているのは間違いなく、もしかしたらそのキャラクターがそこに寄与しているところも大きいのかもしれない。
タイトル的には疾走感がありそうな「Super Sonic」もこのバンドの手にかかると独特の浮遊感を放ち、ハンドクラップとスタンプ、さらには大合唱が巻き起こった「Stop Us Dreaming」はまるでQUEENのようなスケール。激しいバンドもたくさん出演しているこのステージだが、こうしたサウンドのアーティストも実によく似合うロケーションだし、富士山がもっとくっきり見えていたらより一層そう思えていたかもしれない。
1.It’s Who We Are
2.VOICE
3.Kiss You Back
4.Sweet and Sour
5.Zero Gravity
6.Super Sonic
7.Stop Us Dreaming
15:50〜 クリープハイプ [LAKESIDE STAGE]
近年はあらゆるフェスに出まくっているが、このフェスでもおなじみの存在である、クリープハイプ。晴れ間も覗かせてきたこの時間帯に登場。
この日はいきなりの「栞」でスタートするという展開にどよめきも起こるが、髪を切ってよりきのこっぽい頭になった尾崎世界観が演奏が始まって数秒で、
「あのさぁ、毎回変わり映えもしないセットリストの中でキラーチューンを最初にやってるわけですよ。いわば出オチみたいなもんですよ。もうちょっと盛り上がってくれてもいいんじゃないですか?」
と観客を煽って最初から演奏し直すとさっき以上の大歓声が上がるが、実は尾崎は数年前にこのステージに立った時にヤジを飛ばしてくるPerfumeファンのおっさんに対してキレたことがあり、この日のタイムテーブル的にもその時の再来か?とヒヤヒヤしたりもしたのだが、その後の「鬼」の演奏中に長谷川カオナシ(ベース)にステージ前方の位置を譲るようにして前に行ってもらったり、小川幸慈(ギター)をヒップアタックして無理矢理前に出したりと、まるでエレカシ宮本のようにメンバーをアピールする姿は実に楽しそうで一安心。
「青い炎は温度が高いと言われますが、1番温度が低い炎は無色透明です。インターネットの炎上の曲を」
とカオナシが前口上を述べてから自身のボーカル曲「火まつり」を演奏するのだが、尾崎はその様子を
「よく毎回そんな上手いこと言えるな…」
と言いたげな目で見ていた。
おなじみの「ラブホテル」ではブレイク部分で尾崎が
「髪を切りすぎた。こんなに耳のラインが出ているのも久しぶり過ぎて慣れない。ちんこの皮みたいになってしまった(笑)でも剥いたら後は出すだけですから(笑)そんな髪を切りすぎたのも…」
と髪を切りすぎたことを「夏のせい」にするが、そこに下ネタを混ぜてくるのが実に尾崎らしい。
そしてライブならではのイントロの演奏が加わった「イト」からの「イノチミジカシコイセヨオトメ」では
「生まれ変わったら何になろうかな」
のフレーズに続けるように尾崎が
「生まれ変わってもクリープハイプのボーカルになってこのステージに立ちたい」
と歌って大きな歓声を浴びるが、曲終わりでも
「1年でも休むと、このステージには違うバンドが出る。でもこのステージを誰にも譲りたくない」
とこのステージへの思いを口にした。普段あまりそういうことを言わない尾崎なだけに驚いたけれど、その後に「HE IS MINE」で
「セックスしよう」
の大合唱をして終わるのが実にクリープハイプらしかった。
クリープハイプのライブ中、尾崎が
「似合わないからこんなに晴れなくてもいいのに(笑)」
というくらいに眩しい太陽が照りつけていた。それはきっと尾崎のこの場所への強い思いが呼んだものだ。「ラブホテル」はMVのように夏の太陽が似合う曲だから。自分が本当に大切だと思っている場所を、こんなにも大切だということをステージの上で言葉にしてくれている。こんなに感動してしまうフェスのクリープハイプのライブはこれまでになかったような気もする。
リハ.愛の標識
リハ.さっきの話
1.栞
2.鬼
3.火まつり
4.ラブホテル
5.イト
6.イノチミジカシコイセヨオトメ
7.HE IS MINE
16:25〜 松本大 (LAMP IN TERREN) [WATERFRONT STAGE]
この日のWATERFRONT STAGEに出演するのはLAMP IN TERRENのボーカルの松本大。最近は弾き語りのライブもよく行っているが、久しぶりのこのフェスにも単独で登場。
夏とは思えない長袖パーカーという出で立ちの松本は
「メタリカTシャツしか今日持ってきてないから(笑)」
という理由で上着を脱げないらしいが、アコギを弾きながら歌う「ボイド」、ピアノを弾きながらの「花と詩人」、イントロだけピアノ→アコギとボーカルの「New Clothes」と器用な演奏能力を持つからこそ曲に合わせて弾く楽器を使い分けることができる。
しかし何よりも松本の歌だ。儚さを強く含んだその魅力的な声はかつてより一層力強さと生命力を感じるものになっている。弾き語りであっても声量を絞ったりすることは一切ない。
アコギ、あるいはピアノと歌のみというシンプルな形だからこそ松本のボーカリストとしての素晴らしさがよくわかる。それはそのままバンドに持ち帰った時に大きな武器になるはずだ。
しかし松本は
「俺たちが最後に出たのが4年前。まだその時は3人だった。それから呼ばれてないっていうことは俺たちの力不足だけど、今日も最初はバンドでアコースティック編成でこのステージに出ないかってオファーされてた。でもバンドで出るならアコースティックじゃなくて爆音で鳴らせる方がいい。俺は自分のバンドがLAKESIDE STAGEに立ったり、トリができるくらいカッコいいバンドだと思ってる。来年になるかいつになるかはわからないけど、絶対にバンドで帰ってくる」
とバンドで出演出来なかった悔しさを滲ませた。日比谷野音でワンマンをやったりと、バンドの状況が上向いているのをわかっているからこそより一層悔しいのだろうし、この松本の言葉を聞いて、大屋真太郎はこのフェスの景色を見ていないのか…と思った。松本がこれほどまでに思いを強く持つフェスのステージ。来年こそ4人で立つ姿が見たくなった。
そんな思いを打ち明けるような「オーバーフロー」から、最後は
「フレデリック始まっちゃう!」
と同じオーディションからデビューした先輩への愛を感じさせながら、バンド最新にして最高の武器と言える曲である「BABY STEP」をダンサブルな要素もある原曲とは違う、弾き語りだからこその儚さを持った形で歌い、最後まで本当にパーカーを脱ぐことなくライブを終えた。
5年前にLAMP IN TERRENがMt.Fuji STAGEのオープニングアクトを務めた時のことはよく覚えている。あの時、松本は最後に
「行ってらっしゃい!」
と言った。それはオープニングアクトという位置をわきまえた発言のようにも思えたし、彼らがまだ我々と変わらぬようにフェスを楽しむ存在であるとも思わせた。
それから5年。未だにあのステージには戻れていない。でもこの日の松本の弾き語りはまたあそこで、そして今度は「行ってらっしゃい!」と言わなくてもいいような立ち位置と時間にLAMP IN TERRENを観れるんじゃないか、という期待を抱かせてくれるものだった。
1.ボイド
2.花と詩人
3.New Clothes
4.オーバーフロー
5.BABY STEP
17:05〜 フレデリック [Mt.Fuji STAGE]
去年はLAKESIDE STAGEに出演した、フレデリック。今年はMt.Fuji STAGEとなったが、これは前後(特に後)のアーティストとの兼ね合いによるものだろう。(持ち時間は変わらないし)
「35分一本勝負、フレデリック始めます」
と三原健司(ボーカル&ギター)が挨拶して、まだまだ遊びきってないのも当たり前な1曲目は「KITAKU BEATS」。さらに健司がハンドマイクを持って歌う「飄々とエモーション」と、やはり1本勝負ということで曲間がほとんどないテンポの良さ。1本勝負と言うのは簡単だが、その無駄のないライブアレンジも含めてなかなかできることではない。
するとここでロッキンでも演奏していた新曲「イマジネーション」を披露。タイトルのリフレインが印象的なダンスナンバーで、続く「シンセンス」に至るまで、いわゆる速いタイプのダンスナンバーは一切ない。ひたすらにバンドの出す音に身を委ねて揺れるという感じ。その心地良さこそ今のフレデリックが目指している、求めているものであろう。
それを象徴するのはリリースが決まっている新作のリード曲「VISION」。そのモードの決定打と言えるようなメロディの良さ。結局このバンドが今やアリーナクラスでワンマンをやるくらいに大きな存在となったのはそのメロディの力あってこそ。三原康司(ベース)の作った曲を双子の健司が歌うことによって生まれる魔法のようなもの。二卵性の双子だから2人はあまり似ていないが、だからこそこうしてお互いの良い部分が違っていて、それを重ね合わせることでお互いにない部分を補い合うことができる。果たして「VISION」の他の収録曲はどんな曲なんだろうか。
宣言通りに駆け抜けたライブのラストは「オンリーワンダー」。大方の予想は最後は「オドループ」が来ると思っていたはずだ。だがバンドは今回それをやらずに新たなモードを示すことを選んだ。
思えばFOREST STAGEに初出演した時もこのバンドは翌月にリリースされる新曲として「オドループ」を披露した。そうして常に新たなモードを提示しては、それが自分たちの新たな軸になってきた。そうしたバンドであることは今でも全く変わっていない。フレデリックは未だに音楽で遊び続けている。
リハ.リリリピート
1.KITAKU BEATS
2.飄々とエモーション
3.イマジネーション
4.シンセンス
5.VISION
6.オンリーワンダー
17:50〜 Perfume [LAKESIDE STAGE]
4年ぶりの出演となる、Perfume。今や海外にも精力的にライブをしに行くようになっているが、今年はロッキンなどにも出演し、日本の夏フェスをも彩っている。
ピンクと紫の中間のような鮮やかな衣装を着た3人がステージに登場すると、「Future Pop」「FLASH」と近年のPerfumeを象徴するような新たなダンスミュージックのモードを提示する。3人の一糸乱れぬダンスもやはり見ていて「すごいな…」と思ってしまう。
7月に配信されたばかりの最新曲「ナナナナナイロ」まで含めて完全に新作モードだが、あ〜ちゃんのスペシャへの感謝を告げるMCからの「Baby Cruising Love」は懐かしさも感じるとともに収録アルバム「GAME」が日本の音楽界の歴史に残るべき傑作アルバムであったことも思い出させてくれる。ある意味ではカヌーというクルージングと言っていいアトラクションを楽しめるこのフェスにはうってつけの曲かもしれない。
やついいちろうとIMARUによるユニット、SUSHI PIZZA「マイティ・ディスコ」を全力で歌うP.T.Aのコーナーでさらに一体感を強めると、これをJ-POPのど真ん中で鳴らしているという事実が実に痛快なバキバキのダンスミュージック「FAKE IT」ではレーザー光線が飛び交い、日が暮れてきた山中湖を鮮やかに彩る。
そして「ディスコ!」の大合唱がこの日the telephonesとPerfumeが同じ日に出演していることの必然を感じさせる「チョコレイト・ディスコ」では間奏が最新のダンスミュージックバージョンにアップデートされる中、最後に演奏されたのはこのグループのこれからの未来にはどんな可能性があるのだろうか、と思いを馳せる「無限未来」だった。
もう3人は30歳を超えているし、この日の出演者の中でもベテランと言っていいクラスだ。しかし見た目もダンスも全くそんな風には感じさせない。というか老化や体力の減退というものとは無縁なんじゃないか、とすら感じさせる。この3人じゃなきゃ絶対に成立しないグループであることを含めて、そういう特別な力をこの3人は持っているんじゃないかと。
しかし最後にあ〜ちゃんは
「いつまでできるかわからない」
と口にした。見ている側からしたら全く変わらないように見える3人だけど、本人たちは今と同じパフォーマンスができる時間がそう長くは残されていないことを悟っている。そうなった時にどうするのか。年齢や体力に見合ったパフォーマンスをするグループになるのか、それとも今と同じことが出来なくなったらやめてしまうのか。
そう思うくらいにPerfumeという存在に3人は強い美学を持っている。だからこそそれを決めるのは周りの大人なんかではなくこの3人だ。今、観れるうちに見ておかないといけない。そんな色んな人が何度となく口にしてきたことをこの日のPerfumeは改めて思い知らせてくれた。それはバンドも、アイドルも。
1.Future Pop
2.FLASH
3.ナナナナナイロ
4.Baby Cruising Love
P.T.Aのコーナー
5.FAKE IT
6.チョコレイト・ディスコ
7.無限未来
18:45〜 KREVA [Mt.Fuji STAGE]
すっかり夜になったMt.Fuji STAGEのトリはKREVA。KICK THE CAN CREWとしては出演したことがあるが、ソロとしては意外にも初出演となる。
KREVAは今年新録ベストアルバムをリリースしているのだが、その新録ベストアルバムは何が新しいのかというと、生バンドで撮り直しているということ。それによってこのライブもフルバンド編成。日本のヒップホップアーティストとしてはかなり珍しい形である。
ジャケットを着てサングラスをかけたKREVAがバンドメンバーたちの演奏するステージに登場すると、タイトルコールに続いて「ここだ!」のレスポンスが起きる「パーティーはIZUKO?」でスタート。まさにパーティーはここだ、というオープニングであるが、バンドサウンドになったことによって曲のイメージはかなり変わる。より一層ライブ感が強くなっている。
「今日、俺がこのフェスに出ることによって、今日のあらゆるフェスの中でこのフェスがヒップホップ偏差値1位。引いておくぜ、新たな基準を!」
とKREVAらしい自信満々のMCから突入した「基準」はその言葉が紛れもなく真実であるということを証明するかのような超高速ラップを展開。バンド編成によってサウンドの迫力は段違いに増したが、KREVAのラップがそのバンドの音に負けないくらいに強くなっている。ただでさえ神懸かり的なスキルを持つこの男が今もなお進化の真っ只中にいるということは実に恐ろしいことだ。
それを曲という面でも証明するのが今月リリースの新作アルバム「AFTER MIXTAPE」に収録される新曲「無煙狼煙」。そのフレーズの細かさや韻の踏み方なども含めて早く歌詞カードを見ながら聴きたくもなるのだが、さらに新曲として「One」を披露するために観客に歌詞とメロディーを歌うようにレクチャーするも、
「難しい?出来ない?じゃあ本物に歌ってもらいましょう!」
と言ってコラボ相手であるNulbarichのJQを招く。完全に普段着丸出しなJQは歌い終わったら直帰するらしいが、その美しいハイトーンボイスがKREVAのラップとこんなにも相性抜群だとは。KREVAのフィーチャリング相手はこれまでも達人揃いだったが、それは新作においても変わることはない。
「新曲を聴いてもらったし、ここからはみんなが知ってそうな曲を演奏する!」
と言うとまずはきらめくようなサウンドの「Na Na Na」のタイトルフレーズを大合唱させると、待ってましたという空気が客席から溢れ出る「イッサイガッサイ」では
「最近Amazonで買った」
というハーモニカをKREVAが吹くのだが、そのハーモニカが奏でるサビのメロディに合わせて大合唱が起きるのは実に感動的な出来事だったし、今年の夏が終わって何もしないようで何かしていたとしても、このフェスでこうしてKREVAの新しい形でのライブを見れば、実際やっぱり楽しめた。だから脳のファイルをかき集めて、この日のイッサイガッサイをしっかり記憶しておこうと思う。
そしてラストはバンドでの演奏がよりジャジーな大人の魅力を醸し出す「音色」。予想以上に満員だった客席はそのサウンドとKREVAのボーカルの上手さに酔いしれ、ここにいた誰もがこの日、このステージのトリがKREVAで良かったと思ったはずだ。
KREVAはこれまでにもパーカッションやドラム、キーボードを入れながらもそれをDJと両立させるという半生スタイルや、1人でラップからサウンドまでを担う単独スタイルなど、ヒップホップのライブの新たな可能性を追求し続けてきた。そうした音楽への好奇心や探究心が15年かけてたどり着いたのがこのバンドスタイルだった。
しかしKREVAは
「俺のライブ初めて見る人、手を挙げて。こんなにいる!15年ソロをやってきたけれど、まだまだ俺自身伸び代がある!」
と言っていた。その言葉に偽りがないことはこの日のライブが証明していた。
1.パーティーはIZUKO?
2.基準
3.無煙狼煙
4.One feat.JQ (Nulbarich)
5.Na Na Na
6.イッサイガッサイ
7.音色
19:35〜 [ALEXANDROS] [LAKESIDE STAGE]
この日のトリは[ALEXANDROS]。昨年はZOZOマリンスタジアムでのワンマンがあった影響からかこのフェスには出演しなかっただけに、2年ぶりの出演となる。
白井眞輝(ギター)、磯部寛之(ベース)に加えてリアド(ドラム)とROSE(キーボード)のサポート陣での4人が先に登場して演奏を始めると、その後に川上洋平(ボーカル)がステージに登場。オープニングらしいイントロのライブアレンジが施されたのがこれまでも時期ごとにライブで形を変えてきた「Run Away」だが、そこからアウトロとイントロを繋げるようにして演奏された「Starrrrrrr」は思わず空に星を探してしまうくらいにこの夜の山中湖によく似合っている。観客に大合唱させながらも川上は実に気持ちよさそうにその美しい声を響かせている。
最新アルバム「Sleepless in Brooklyn」のリード曲「アルペジオ」から徐々にサウンドが重く強く変化していくと、川上がカメラに向かって舌を出しながら、
「暴れ足りないみなさん、おまたせしましたー!」
と叫ぶ「Kick & Spin」と続くのだが、ついこの前までは骨折した影響でまだ椅子に座って演奏していた磯部が立って演奏できるようになったことで機動力と破壊力を取り戻し、磯部はこの曲では白井に合わせるようにフライングVを弾くようになっている。怪我をしても決してライブに出ることはやめなかったからこその成長と進化がうかがえる。
そうして磯部が立てるようになったことが絵的に最も迫力を持って迫ってくるのが重厚なリフを川上、白井、磯部が並んで演奏する「Mosquito Bite」。さらにこのフェスという名のパーティーも終わってしまうという寂しさを感じてしまう、一転して削ぎ落とされたサウンドの「PARTY IS OVER」へ。ロッキンの時には「あまりライブでやらない曲」と言ってから演奏されていたが、なんやかんやでほぼ毎回やっているような気さえする。
川上は何度となく日本から離れて暮らしていた少年時代にずっとスペシャを見ていたことを口にしてきたが、そのスペシャが30周年を迎えたことを祝いながら、
「スペシャはいつも自分に新しい音楽を教えてくれた、音楽が好きな先輩のような存在。そんなスペシャがやっているフェスであのロゴを背負ってライブができていることを本当に幸せに思います」
と言ってステージの頭上にあるスペシャロゴに向かって頭を下げた。この光景をスペシャを見ていた川上少年が見たらなんと思うのだろうか。
そして大谷翔平が出演するアクエリアスのCMソングである最新曲「月色ホライズン」は爽やかなサウンドが青空が似合う曲かと思っていたが、タイトル通りに夜の空の下も実によく似合うということを証明してくれる。
そんなライブのラストはやはり「ワタリドリ」で、川上も笑ってしまうくらいのハイトーンな大合唱が巻き起こり、やはりこのバンドはこうした大舞台の大事な位置になればなるこそ力を発揮するバンドであることを見せつけるようなライブだった。
未だにこのバンドはドラマーの庄村聡泰が復帰する目処が立っていない。ジストニアから復帰するのはそうそう容易いことではないから。でもそんな万全ではない状態でありながらも、やっぱり最強だなと思わせてくれる。それはひとえにリアドという頼もしい存在あってこそであるが、どんな時でも悲観的な姿を絶対に見せない、いつも俺たちがナンバーワンなんだ、という姿勢で進んできたこのバンドだからこそだと思う。
1.Run Away
2.Starrrrrrr
3.アルペジオ
4.Kick & Spin
5.Mosquito Bite
6.PARTY IS OVER
7.月色ホライズン
8.ワタリドリ
早くも2日も終わってしまった。楽しければ楽しいほど、あっという間に感じてしまう。もう3日間ですら足りないと感じるほどに。
文 ソノダマン