前日に続いての横浜アリーナでのバズリズムLIVE。前日はスタンド最上段には空席もあったが、この日はその最上段にさらに立ち見まで追加され、バカリズムに
「もうあの辺ステージ見えないんじゃない?」
と言われるくらいにステージ真横よりも後ろまで人で埋まりきった超満員。
この日は
King Gnu
KEYTALK
sumika
スキマスイッチ
フジファブリック
と前日よりは「ポップ」に感じるようなバンドとアーティストが揃う。
・King Gnu
バカリズムとアナウンサーによる挨拶ではこの日の観客が全員町田から来たことにされる中、最初のバンドはKing Gnu。この日の出演者を紹介するVTRが流れた時に歓声がめちゃくちゃ大きかったし、物販列はライブ間に合わないでしょって思うくらいに並んでいたのが今のこのバンドの状況を象徴している。
4人がステージに現れると、常田大希(ボーカル&ギター)のギターが唸りを上げる「飛行艇」からスタートし、もともとバケモノ級だったバンドのグルーヴが絶え間ないライブを繰り返してきたことでさらに練り上げられている。重厚な雰囲気の曲であるが、先日結婚を発表した勢喜遊のドラムの一打の強さがどうしたってロックさを強く感じさせる。
「貴方の期待に飛び乗って」
という歌詞のとおりに完全にこの超満員の観客の期待の上にこのバンドは乗っている。
常田のやさぐれさと少しの気怠さを感じさせるボーカルと、井口理(ボーカル&キーボード)の美しいハイトーンなボーカルが絡み合う「Sorrows」と序盤こそアッパーに会場を揺らしまくっていくが、曲中に常田のギターの音が出なくなってしまうというアクシデントが発生。すぐさまスタッフが修復するのだが、それによって常田は歌も飛んでしまっていた。
そんなこともありながらも、井口がピアノを弾きながら歌う「白日」からはそのメロディをしっかりと聴かせる流れに。もはや周りからは鼻を啜る音=涙を流す音すらも聴こえるくらいにこの曲に自身の人生や想いを重ねたりしている人も多いであろうけれど、春フェスで見た時点ではまだ「白日」だけ聴ければいいという人もたくさんいたが、すでにこのバンドはそこを完全に飛び越えた存在になっている。
常田がキーボード、新井和輝(ベース)もシンセベースという夏までのフェスでは見ることが出来なかった編成で演奏されたのは今年リリースのアルバム「Sympa」収録の美しいバラード「The Hole」。そのタイトルとおりに心に空いてしまった穴について歌う曲で、常田がキーボードを弾いているということもあって井口はほとんどボーカルに専念するのだが、曲後半ではそれまでの透き通ったハイトーンボイスから一転して絶唱と言ってもいいくらいに声を張り上げて歌う。つい最近も喉の不調によって病院に行ったりしていたみたいだが、井口はライブでペース配分したり抑えたりして歌うことができないのだろう。常に120%以上じゃないとステージで歌えないというか。それはライブの熱さとしてはこれ以上ないくらいだけれど、MUSICAのパーソナルインタビューで勢喜も井口のそうした部分を心配していただけに、体にだけは気をつけて欲しいと思う。これからも歌い続けるために。
常田がキーボードを離れて拡声器を持って観客を扇動するように歌う「Slumberland」ではその拡声器をコーラス部分で新井に向けて歌わせたりというあたりもライブを重ねまくってきたからこその経験や余裕を感じさせるが、最後の「Flash!!」では間奏で井口がぶっ壊れたかのように床を転がり回るという奇人イメージそのもののパフォーマンスを見せたが、その「Flash!!」の演奏前の勢喜のドラムソロを見ていても、このバンドの強みはリズム隊の強さである。そこがしっかりしているからどんな曲や音楽も自分たちのものにすることができるし、聴いていて「カッコいいな」と感じる曲をライブでさらにカッコよく感じることができる。
もうライブを見ていたら途中からこのバンドのワンマンを見にきたと錯覚してしまうくらいに横浜アリーナを制圧していた。いわゆる王道的な方向に進むのではなく、今自分たちがやっていることを新しい王道にするべく、ポップシーンにまで足を踏み入れているこのバンドがまさにKingになる日は近づいてきている。いやしかし夏フェスの時ですら春からはるかにすごくなったと思っていたのにそれから数ヶ月でさらにまた凄いライブをするようになっている。この成長曲線の急っぷりはなんなんだろうか。来年はどこまで行ってしまっているのだろうか。
1.飛行艇
2.Sorrows
3.白日
4.The Hole
5.Slumberland
6.Flash!!
・KEYTALK
ツアーが始まったばかりという過密スケジュールの中での出演となる、KEYTALK。しかしそのスケジュールはこのバンドがライブをしまくって生きているライブバンドであることの証明でもある。
おなじみ「物販」のSEで元気良く走ってメンバーがステージに登場すると、首藤義勝(ベース&ボーカル)が金髪になっており、小野武正(ギター)、八木優樹(ドラム)と合わせて4人中3人が金髪に。髪型も含めて八木と少し被り気味である。
そんな中で義勝が歌い始めたのは「桜花爛漫」。もはや春では全くないがそうした季節感はこのバンドには関係ないのだろう。八木は早くも椅子から立ち上がってドラムを叩くくらいに気合いに満ち溢れている。
「パリピになろうぜー!」
と夏が過ぎ去っても夏が終わってないかのように錯覚してしまう「Summer Venus」では巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)がパリピらしくサングラスをかけ、EDMパートでは芸人のモノマネダンスを披露。スケジュールがキツくても巨匠のボーカルは全く疲れなどを感じさせないくらいに伸びやかで、最後にはマイクスタンドごと持って義勝とともに荒々しいボーカルになる。
かと思えば武正はどこまで行くんだ?というくらいにステージ両サイドに伸びた花道を走り回りながらギターを弾く。今行われているツアーのサブタイトルが「武正の膝の爆弾は大丈夫なのか」というものであるが、この機動力を見ていると大丈夫としか思えない。ちょっと顔がふっくらしてきたようには見えるけど。
巨匠がこのイベントに出れることへの感謝を告げると、
「KEYTALKのライブ初めて見る人〜?」
と問いかける。すると予想以上にたくさんの人(半分以上くらい?)が手をあげる。このアリーナや幕張メッセでワンマンをやって、各地のフェスではもれなくメインステージに出るようになってもまだまだライブを見たことがない人がたくさんいる。そうなると結果的にこの日のセトリが初見の人向けの代表曲連発というものになったことが実によくわかる。
そんな中でレーベル移籍第一弾シングル「BUBBLE-GUM MAGIC」は代表曲連発の中にあっても他の曲とは温度感が少し違うというか、アッパーに踊らせまくるというよりもゆらゆらと体を揺らせるという、リリース時にメンバーも言っていたとおりに「大人のKEYTALK」な曲。そんな曲でもロックバンド感を強く感じさせるのはこの手の曲にしてはあまりにも弾きすぎな武正のギターによるところだろう。
ハイトーンな義勝のボーカルも横浜アリーナいっぱいに響き渡るポップな「Love me」から、終盤戦はやはりその義勝がイントロでピックを客席に投げ入れてからスラップベースで力強く弾きまくる「MATSURI BAYASHI」で踊らせまくり、この辺りからは武正だけではなく巨匠もサイドの花道を走り回りながら、観客のすぐ近くでギターを弾く。
そしてラストはもちろん「MONSTER DANCE」。初見の人が多かったからか、あるいは席指定でスペースがないからか振り付けを踊っている人はそこまで多くなかったけれど、だからか武正は途中のサビでお立ち台に立ってギターを弾かずに振り付けを踊って笑わせると、巨匠は花道に行き過ぎて最後のサビにギリギリ間に合わずに自分のマイクではなく1番近かった武正のマイクスタンドで歌うというカッコよく決まりそうでいて決まらないという実にKEYTALKらしい場面も見せた。そして演奏が終わってステージから捌ける時に観客に手を振っていて足元を見ていなかった八木が台車につまづいて転びそうになっていたのもまた実にKEYTALKらしかった。
アルバム「DON’T STOP THE MUSIC」がリリースされたばかりというタイミングであるだけに、その中から新曲を披露するんじゃないかとも思っていたが、結果としては代表曲・定番曲のみで固めた形になった。すでに始まったツアーではアルバムの曲をやっているのだろうし、ライブハウスでの持ち時間が長いライブでは初期のレア曲もガンガン演奏しているバンドだ。
それだけにセトリを変えられないのではなくて、あえてこの曲たちで勝負をしにいっているのだろう。その原動力になっているのはやはり自分たちのライブを初めて見る人たちがまだまだたくさんいるということ。今でもあらゆるフェスやイベントにひたすら出まくっているが、そう思うと至る部分でまだまだやることがあるよなぁとも思うし、見た目も含めてベテランという位置にはまだまだ行かない。これからもガツガツとアグレッシブに。
1.桜花爛漫
2.Summer Venus
3.BUBBLE-GUM MAGIC
4.Love me
5.MATSURI BAYASHI
6.MONSTER DANCE
・sumika
こちらも絶賛ツアー中であり、年中ライブをやっているというイメージであるsumika。
ライブの合間にはバカリズムと日テレのアナウンサーが出てきてトークをするのだが、その間にすでにステージにスタンバイしていたので、SEも登場もなしで、暖かい光が差し込んでくるようなポップな最新シングル「イコール」がすぐに始まる。荒井智之の手数の多いリズムパターンと片岡健太の丁寧なボーカルが熱狂とはまた違うsumikaの空気感を生み出していき、KEYTALKの武正同様にポップなサウンドにおいても弾きまくる黒田隼乃介のギターと小川貴之(キーボード)のコーラスが曲のポップさをさらに引き立てていく。この曲はあだち充原作のアニメのタイアップ曲であり、過去のあだち充の作品に合わせたフレーズが入っている片岡の作家性も見事だが、日テレ系列のアニメということで日テレ系列の音楽番組である「バズリズム」のライブでは外せない曲だろう。
すると背面のLEDに泡が弾けるような爽やかな映像が映し出されたので、「え?あの曲この持ち時間でやらないだろうから他の曲に合わせる演出だよな?」と思っていたら、演奏が始まったのはその映像から真っ先に想起された曲である「ソーダ」。まさかこの持ち時間のイベントでこの曲をやるなんて全く思っていなかっただけに、この曲が持っている清々しさが心の中に満ち溢れていく。
いつものように片岡は曲が終わるとゆっくりと、丁寧に口を開き、
「ビジネスメイトじゃない、音楽が大好きな仲間が作っているイベントだからこうしてこのステージに立っていると思っています」
という地上波のテレビのイベントというともすれば血が通っていないように感じてしまいそうなこのイベントに自分たちが出ている理由と意味をしっかりと伝えると、ポップミュージックの魔法を体現するかのような「MAGIC」へ。曲そのものが持つ楽しさもさることながら、sumikaは本当にメンバー全員が笑顔で楽しそうに演奏している。その姿を見るとこっちもより楽しくなってしまう。
片岡がギターを下ろしてハンドマイクで歌い始めたのは男女の危ない関係すらもポップなサウンドに乗せて描いた「Traveling」。自由に動くことができる片岡は花道を歩き回りながら観客に手を振ったり、クレーンカメラに目線を合わせて歌ったりする。その様が[ALEXANDROS]の川上洋平とはまた違った意味で様になりすぎている。白い服であることを含めて片岡健太という人間そのものが光を放っているかのような。
片岡が再びギターを手にするとハードなギターサウンドとともに情報社会への皮肉を歌う「ペルソナ・プロムナード」が演奏するのだが、
「そしてバズ バズ」
というフレーズがあるだけにこの「バズリズム」という番組のイベントに合わせて演奏されたのだろうなと思っていると、
「今日1日、バズるってなんなんだろうなって考えてました。バズるっていうとSNSのいいね!とかリツイートとか、人が多かったりとかの数字で見てしまいがちなんだけど、バズリズムのスタッフたちは数字や人数の先にあるものを見ている。
誰にどんなにバカにされたりしようと、自分はこれが絶対に好きなんだ!って心から思えるものを持つこと。それがバズるっていうことなんじゃないかと。
バカリズムさんとキャッチボールしたり、佐藤アナやスタッフの皆さんが我々のツアーを見に来てくれたり。そんな音楽仲間の作るイベントに参加することができて幸せです。最後に、sumikaが初めて作った曲を贈ります」
と言って演奏されたのは片岡の「誰に何を言われようと自分を貫く」という言葉とおりの意志が込められた「雨天決行」。黒田は体を思いっきり屈めて熱量を込めてギターを弾いていたが、片岡はきっと自分たちが出演するイベントにどんな理由があるのか、それをステージでどうやって伝えるのかをしっかり考えてからステージに立っている。
それは今年ロッキンのGRASS STAGEに立った時も、スペシャ主催のフェスであるラブシャに出た時もそうだった。自分たちがそこに出る理由を精査して、しっかりとその答えを見つけられる場所に出る。そしてそれを自分の口で見に来てくれた人に話す。
sumikaはそういうライブをやるから、どんなに持ち時間が短くてもその日その場所でしか見れないライブとして脳裏に強く記憶されていく。本当にどこまでも真摯なバンドと人間だと思うし、それは音楽にもしっかり現れている。だからこそこのバンドはアリーナツアーをやるまでの大きな存在になったのだ。
そんなsumikaとしての想いの強さを感じられたからこそ、ライブを見ていたらついつい、泣いちゃいそうだ。
1.イコール
2.ソーダ
3.MAGIC
4.Traveling
5.ペルソナ・プロムナード
6.雨天決行
・フジファブリック
先月に大阪城ホールにて素晴らしい記念ワンマンを見せてくれた、フジファブリック。それを終えても一息つく間もなくこのイベントにも出演。しかもこの日のライブでしか見れない特別な企画もあるという。
サポートドラマーを含めて4人がステージに登場すると、SEに合わせて手拍子を促しながら音が止まるとカウントとともに山内総一郎(ボーカル&ギター)がイントロのギターを弾き始めたのは「夜明けのBEAT」。相変わらずギター専任だった時の曲をギターを弾きながら歌えるというあたりには恐れ入るが、フジファブリックの代表曲の一つと言ってもいいこの曲も先日の大阪城ホールでのワンマンの際には演奏されなかっただけに、やはりワンマンとフェスではセトリの組み方が全く違うのがよくわかる。あのワンマンが特別なものだったというのもあるだろうけれど。
その山内のボーカリストとしての今の力量の素晴らしさを味わえるのが、金澤ダイスケ(キーボード)による壮大なサウンドの美しいバラード「Green Bird」。客席では大阪城ホールの時に販売されていたサイリウムを曲タイトルに合わせて緑色に光らせるファンの姿も見受けられるが、ボーカル転向時は歌唱力という点においてはかなり厳しい評価を受けていた山内がこんなにも聴いていて感情を揺さぶられるくらいに歌えている。もはや立ち位置的には完全にベテランと言っていい年齢とキャリアであるが、ここにきて凄まじい進化をあくまで飄々と遂げている。
こちらも代表曲でありながら大阪城ホールでは演奏されなかった「銀河」ではハットを被ってビシッとキメた加藤慎一の跳ねるようなベースが体も心も踊らせていく。とはいえこの日初めてフジファブリックのライブを見たりこの曲を聴いたりした人たちはこの曲についてどんな印象を抱くのか気になるばかりである。
山内による挨拶の時には金澤はあらゆる方向の席の観客に手を振るという朗らかな(その金澤の人間性はかつてサポートを務めていたアジカンを救ったと言ってもいい)空気を感じさせながら、「LIFE」ではサビでギターを弾かずに手を振る山内に合わせて客席でも無数の手が揺れる。ファルセットボーカルが多いこの曲においても山内の声の安定感は抜群である。
そんな山内が間奏で花道に駆け出してギターを弾くというギタリスト・山内を存分に見せてくれるのは「徒然モノクローム」であるが、あまりに弾くのに夢中になりすぎたのか、金澤に
「戻ってこーい!」
と言われるくらいにマイクから離れてしまい、結果的に歌い出しに全く間に合わないという天然っぷりを感じさせる。いわく
「すごい可愛い男の子がいたからそこで弾くのに夢中になっちゃった」
とのこと。その男の子はおそらく成人男性であるけれど。
そして山内が
「このイベントを作っているスタッフに拍手!今日ここに来た自分自身にも拍手!」
とスタッフはもちろん時間と足とお金を使ってこのライブに足を運んでいる観客自身を称えると、
「そんなみなさんに最後にこの曲を贈ります」
と言って演奏された「若者のすべて」では金澤によるキーボードのイントロが鳴らされただけで演奏が始まっているにもかかわらず大きな拍手が起こる。転換中にもこのバンドが番組に出演した時にこの曲を演奏している映像が映し出されていたが、この曲はもうフジファブリックの代表曲というところを超えたところまで行った曲なんだなと思った。それはこの曲を演奏し続けてきたバンド自身や、この曲を愛し続けてきた人たちの歴史が作ったものだ。リリースされた当時、良い曲だとは思っていたけれど、こんなにたくさんの人に愛される曲になるとは想像していなかった。
演奏が終わると場内が暗転し、モニターに映像が映し出される。それはバカリズムが番組で様々なアーティストたちとコラボ曲を作ってきたもので、いきものがかりの水野良樹や大原櫻子などとコラボしてきたこの企画の今回のコラボ相手がフジファブリックであり、合体ユニットであるフジファブリズムのお披露目である。
バカリズムが山内の横に立って赤いストラトを持つと、演奏されたのは「Tie up」。一聴してフジファブリックのものとわかる、楽しくてポップだがどこか独特のサウンドに山内とバカリズムのツインボーカルが乗る。バカリズムはやはり歌は上手くはないけれど、
「タイアップを愛してる」
というサビと、タイアップの意味を解説するバカリズムによるセリフのシュールな言葉の応酬はバカリズムの芸風そのものであるし、その歌詞が同じくシュールな歌詞の曲がたくさんあるフジファブリックに実に良く似合っている。バカリズムはやはりギターは持っているだけで弾いていなかったけれど。
演奏が終わるとバカリズムとフジファブリックの4人によるトークも。
「「若者のすべて」の後にやるなんて!(笑)」
というバカリズムも、バカリズムのお笑いライブを観に行っているというフジファブリックも実に楽しそうだったが、実に忙しい一年を過ごしている中でこうした企画のために曲を作り、それがフジファブリックの曲であると堂々と言えるクオリティのものにしてくるフジファブリックはさすがだ。
フジファブリックもバカリズムもお互いに色々あった。長い歴史の中で形は変わってきた。それでも名前を変えることなく、止まらずにずっと続いてきた。ただただ自分たちをずっと見てくれている人たちを笑顔にするために。このコラボの最大の共通点は実はそこなんじゃないかと思う。
1.夜明けのBEAT
2.Green Bird
3.銀河
4.LIFE
5.徒然モノクローム
6.若者のすべて
7.Tie up (フジファブリズム)
・スキマスイッチ
この2日間の大トリはスキマスイッチ。キャリアや知名度を考えると妥当であるが、この2日間で唯一のバンド形態ではないスキマスイッチがトリを飾るというのは実に面白い。
ステージには巨大なグランドピアノも配置される中、ギター、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション、サックス、トロンボーンという大人数のバンドを従えて、大橋卓弥(ボーカル)と常田真太郎(ピアノ)の2人がステージに登場。
「スキマスイッチらしくゆっくり始めていきましょう」
と言って演奏されたのは職人的なイメージも強いこのユニットが生み出した名バラード「奏」。こうして2日間に渡ってバンドのライブを見続けてくると、1曲目にいきなりバラードを演奏するというライブが実に新鮮に思えるし、やはり大橋は実に歌が上手い。出てきて数分で完全に見入ってしまう。
「若者のすべて」同様に夏の終わりの情景を感じさせる「Revival」も近年の人気ドラマの主題歌として話題になった曲であり、今もスキマスイッチが名曲工房であり続けているのがよくわかる。
壮大なサウンドと歌詞が強く聴き手の背中を押す「ハナツ」で短い時間にもかかわらずスキマスイッチの世界に完全に引き摺り込むと、
大橋「今日初めてスキマスイッチのライブを見る人どれくらいいる?…ショックなくらいいますね…(笑)」
常田「普段僕らのライブを見に来てる人は今日はどこで何をしてるんだろうか(笑)」
大橋「今日ってみなさん順番は知ってたんですか?知らない?じゃあさっきフジファブリックまで終わった時に、いよいよじゃああいつらかってなったわけだ(笑)」
とベテランならではの自虐さを含んだMCで笑わせると、常田はKing Gnuのボーカルの常田と漢字が同じだけど読み方が違う(「ときた」と「つねた」)ことをネタに、
常田「あんな風にセクシーになりたかったなぁ〜(笑)」
と羨む。sumikaの片岡の眩しさにも触れたり、2人がこの日の出演者のライブをずっと見ていたことがわかる。ベテランであってもそうした若手のライブや音楽に触れていくという姿勢は見習い続けていきたいところである。
大橋「初めて見る人によく「思ったより大きい」って言われるんですよ。あと「思ったより喋りますね」って(笑)」
と自分でも言う通りにMCが想像以上に長かったのは少し意外なところだが、
「最近体調は〜」
とアコギを弾きながら歌い始めた「ガラナ」では大きな歓声が上がって気を良くしたのか何度も歌い直しては歓声を浴びる。初めて見る人がほとんどというアウェー感はこの曲の情熱的なサウンドによってすっかり消えて無くなる。目当てのバンドが終わったら帰るという人はほとんどおらず、最後まで音楽を楽しもうという観客の姿勢が「Ah Yeah!!」での大橋の叫びとの相乗効果を生み出していく。
そうして2人も盛り上がりっぷりに喜びながら、大橋は何度も何度もコール&レスポンスを求めては大きなレスポンスが返ってくることに驚いていたのだが、そんな最後に最高潮に達した状態で演奏されたのはもちろん「全力少年」。大橋は花道からさらに先、客席と客席の間の通路までをも練り歩きながら歌う。最終的にステージの正反対と言っていい位置まで行ったのだが、そんな遠い場所で歌っていても全く変わらないボーカルの安定感と、こうしたスケールの会場で戦い続けてきた経験と、そして観客全員で歌えるこの曲の普遍性を改めて感じさせた。
自分はこの日初めてスキマスイッチのライブを見たのだが、始まる前まではこの若手バンドが居並ぶ中で「トリで大丈夫なのか」と思っていた。しかしそんな心配は杞憂だったと思うくらいにトリに相応しいライブだったし、やはり誰もが知っている曲というのは本当に強いし楽しいなと思った。
1.奏
2.Revival
3.ハナツ
4.ガラナ
5.Ah Yeah!!
6.全力少年
「音楽仲間の作っているイベント」
この日の感想はsumika片岡のこの言葉に尽きるだろう。放送時間が深夜なだけに家族全員で見るのは難しい番組かもしれない。でもこうしてライブの楽しさや熱さを伝えてくれる番組が地上波で放送されているということを本当に嬉しく思うし、この番組が続くことでロックバンドのライブに出会う人もたくさんいるはず。自分が中学生くらいの時にこういう番組があったら絶対毎週無理してでも夜中まで起きて見てただろうな。
文 ソノダマン