シングルはもちろん、このベストディスクにはあまりミニアルバムを入れない。それは意図的にそうしているというわけではなくて、良い曲が5曲入っているミニアルバムよりも15曲入っているフルアルバムの方が評価は高くなるし、1枚で描くストーリーというものも大きくなるからだ。
しかしながら秋山黄色のデビュー作となったこの「Hello my shoes」はミニアルバムである。ミニアルバムであっても年間ベストに入る、さらには3位という順位にするべき作品である。
NUMBER GIRLの影響を強く感じる鋭く重いリズムのギターロック「やさぐれカイドー」から始まるこのミニアルバムは、秋山黄色というアーティストの持つメロディメーカーとしての資質と可能性をこれでもかというくらいに感じさせる。なんらかの有名なアニメのタイアップにでもなっていれば大ヒットしていたであろう「猿上がりシティーポップ」、そもそもがフリーターを自称して登場したやるせない自身の心象を描いた「Drown In Twinkle」、
「今現在の残金の総額とあふるる夢の数がスレてて笑っちまう」
という、「金はないけど夢はある」あるいは「夢はあるけど金はない」という意を独自の筆致で描いたラインが個人的2019年No.1フレーズである「とうこうのはて」。このミニアルバムに収められた5曲はそれだけでフルアルバムの15曲に比肩するぐらいの大名曲のみ。それによってこの順位に選出したのだ。
おそらく単純に再生回数だけなら2019年の1位であろうというくらいに聴いた作品。こういうアーティスト、こういうアルバムに出会えるからこそ音楽を聴くのがやめられないし、一生一緒なんて思えるようになりたいんだ。