何度かライブを観ているけれども、自分はハッキリとしたAimerの顔がわからない。それは大きな会場でのライブになると設置されているスクリーンには彼女の顔が映されることはないというミステリアスなイメージを守るための方針とも言えるだろうけれども、「光」と「闇」というテーマに寄って収録曲を分けた2枚同時リリースのこのアルバムを聴いていると、顔がハッキリとわからないにもかかわらず、Aimerが歌っている姿が頭の中に浮かんでくる。
これまでにも様々なアーティストが曲を提供してきたが、今回もそうした作り方をしていることによってサウンドは非常に幅広いものになっている。Aimerは独特の憂いを含んだその声を曲のサウンドによって、光のヴェールに包まれているかのように、あるいは自身の心の奥底に眠る闇を全て音に乗せるかのように変化させていく。それによって全ての曲がAimerが歌う曲としての必然を感じさせるものになっている。
Aimerの存在を知った時は「アニソンを歌うシンガー」というイメージだった。初めてちゃんと聴いた時は「Galileo Galileiの曲に参加して、屈指の名曲をバンドと共に作った人」というイメージだった。「蝶々結び」がリリースされた時は「野田洋次郎が惚れたこともわかるような声を持つ人」というイメージだった。この2枚がリリースされた今は、歌うことでしか生きられないような業を持った、だからこそ歌が上手いという次元や、ポップやロックという概念すら超えるシンガーというイメージになった。