/ 2020/05/01
かっこいいバンドであるということはデビューミニアルバムの「オレンジの抜け殻、私が生きたアイの証」リリース時からわかっていたが、ことフルアルバムとなるとこれまでどこか物足りないような印象をTHE ORAL CIGARETTESに対しては抱いていた。それはこれまでにリリースしてきたフルアルバムが4枚すべて10曲入りという内容だったことと無関係ではない。
もちろん曲数や収録時間が長ければいいというものではないが、これまではどこか、緊迫した投手戦であるがゆえに2時間くらいで決着がつくような野球の試合のようであった。
しかし5枚目の今作は初の15曲入り。それによって展開に起伏が生まれているし、それは従来のバンドサウンドのみならずゴスペルまでも取り入れた音楽性の広さがあるからこそより生きるものでもある。時には山中拓也がライブで全くギターを持たずに歌う姿や先行配信曲の変化・進化のスピードの速さに寂しさを覚えたこともあったが、それもすべてはこのアルバムに向かっていたと考えるとすべて納得がいく。
ラスト2曲の「The Given」「Slowly but surely I go on」は様々なドラマや展開を生み出してきた試合の最後の9回裏を不動のストッパーが3者連続三振で完璧に締めるような美しさ。出会った時の「かっこいい」というだけのバンドではなくなった。オーラルはやはり「すごい」バンドだった。それを証明するかのような新世界がここに。
関連記事
THE BAND STAR ハルカミライ
そもそも昨年の1月にフルアルバム「永遠の花」をリリースし、この「THE BAND STAR」をリリースした3月までの間にも数え切れないくらいの本数のライブをやりまくってきているだけに、いったいいつ作っ …続きを見る
正しい偽りからの起床 ずっと真夜中でいいのに。
いくら音楽が好きでも、年を取ると新しい音楽に触れようという積極性が薄れてしまうもので、積んでいる新譜の山に後ろめたい思いをしながら昔の名盤を何度も聴いてしまう現象、あると思います。音楽だけじゃなくてゲ …続きを見る
Rest In Punk HEY-SMITH
自分は忖度というものができない人間である。だからいくらYouTubeの番組に呼んでもらって、メンバーの方々と知り合いと言えるような存在になっても平気でフェスの時にHEY-SMITHと被っている他のバン …続きを見る
Tank-top Flower for Friends ヤバイTシャツ屋さん
こやまのデスボイスからしばたのハイトーンボイスによるキャッチーなサビまで激しく展開していく「Blooming the Tank-top」から始まり、こやまがピアノを弾いてしばたが歌う、本来は怒りの感情 …続きを見る
Bedroom Joule [ALEXANDROS]
このコロナ禍で、がリモートで作り上げたアルバム。既存曲のアンプラグドアレンジが中心。
コロナの時代のせいか、世間は今、シリアスすぎる音楽を求めていない気がします。心に迫るような計算され尽くした音楽で …続きを見る