音楽好きにとって、くるりって最高のアーティストだと思うんです。時代によって作風がまったく違うのに、あやゆるジャンルでの最高峰の作品を生み出し続けている、存在そのものがとても特別なアーティスト。アルバム単位ではなくくるりというアーティストそのものをたたえる方法はないものか。そんなときにYouTubeでくるりのライブ映像を見ていて、衝撃が走りました。
それがこの『Philharmonic or die』にも収録されている、ウィーン・アンバサーデ・オーケストラとのコンサートです。
本作はウィーン・アンバサーデ・オーケストラと共演したパシフィコ横浜での演奏や元京都磔磔での演奏が収録されたライブアルバムです。
このアルバムが素晴らしいのは、オーケストラによってサウンドがアップデートされていることにあります。
サウンドのアップデートというのは、単に現在(2007年)のくるりの音にオーケストラを足したというものではなく、各時代ごとのくるりと現在のくるりが反映された音を加味してのオーケストラサウンドが加わっている点が素晴らしいのです。
例えば“WORLD’S END SUPERNOVA”では、2002発表当時のデジタル感と、現在の時代感が反映されたくるりの演奏がベースにあり、そこにオーケストラがもともとその場にいたかのようにごく当たり前のように存在している、そのバランス感が素晴らしいのです。
つまり、2007年の音にオーケストラを足しているのではなく、2002年の音にオーケストラがもともとあって、そのまま5年を共にしていたような音が鳴らされているのです。
オーケストラによって豪華になっているのではなく、オーケストラが存在していることが当たり前のサウンドになっている。そういった離れ業ができたのは、時代ごとに作風を変え続けてきたくるりだったからなんだなあと思います。