ちょうど去年の春フェスでのライブからyonigeはそれまでの3人編成から、サポートギターに土器大洋(ex.LILI LIMIT)を加えた4人編成となった。一部では「初見殺し」と言われていたくらいにそれまでの自分たちの代表曲はほとんど演奏せず、当時の最新ミニアルバムであった「HOUSE」の曲を演奏する。明らかにそこからはyonigeというバンドのモードが変わったことを感じさせた。
その4人編成で製作されたフルアルバムが「健全な社会」トピック的にはアジカン・ゴッチとチャットモンチー(済)の福岡晃子がプロデューサーとしてクレジットされているが、その二人の参加によって変わったのではなく、変わるための手伝いをしたのがその二人だと言うのが正しいだろう。
実際にこのアルバムにはかつてのyonigeの代名詞的な、エモーショナルなサウンドのギターロック的な曲は全くない。「HOUSE」の「春の嵐」で描かれていたような、何気ない生活や日常の風景を、しかし牛丸ありさだからこその独特の視点で描いた歌詞。その歌詞が最も合うような平熱感の強いサウンド。新しい、そしてこれから先にさらなる進化と変化が待っていることを感じさせるyonigeの音楽だ。
昨年8月の日本武道館でのワンマンライブ(映像作品がこのアルバムと同時発売)のMCでごっきんは「バンドをやることが今、本当に楽しい。まだまだやりたいことがたくさんある」と言っていたし、ドキュメンタリーでは「もう「アボカド」みたいな曲は作れない」とも言っていた。でも「アボカド」を作った時には作れなかった音楽が今なら作れる。「健全な社会」と冠されたアルバムは、yonigeというバンドの健全な進化の証明である。