CDを買ってきて最初に再生した時に真っ先に抱いた感想は「なんてノリにくい、複雑なリズムの曲とアルバムなんだ」ということ。こちらが乗ろうとしている通りのリズムで全然ドラムが鳴ってこない。だから聴いていてこちらの予想通りに全然いかない。それはそのまま自分の脳内や体内にはなかったリズムの音楽ということであるのだが、そうしてリズムが複雑になるとそこに乗るメロディも難解なもの、マニアックなものになってしまうと思っているのだけれど、秋山黄色の「ONE MORE SHABON」の楽曲のメロディには難解さやマニアックさ、とっつきにくさは全く感じない。「From DROPOUT」、「FIZZY POP SYNDROME」というアルバムたちで得たもの、確立したもの=それはつまり秋山黄色のとびっきりキャッチーなメロディが新しいリズムと融合している。それこそが自分がこのアルバムを1位に選出した理由だ。
ただ中には「なんでこいつを選ぶんだ」と思う人もいるかもしれないし、もちろん選んだからには先月の報道に触れないわけにはいかないと思う。もちろんやってしまったことはどんな理由があれ悪いことであるし、きっとそう報じられた事実もイメージも消えることはないだろうし、ずっとそういう目で見てくる人だっているだろう。
でも同じように秋山黄色が生み出したこの素晴らしい作品や今までの楽曲、ライブで口にしてきた言葉、そこで覚えた感動も決して消えることはない。これから先にもっと素晴らしいものを作って返していくしかないと思うくらいに自分がこの男が帰ってくるのを待っているのは、彼の音楽やライブから確かな人間としての優しさや温もりを感じてきたからであるし、もう音楽がなくなったら生きていけない人だとも思っているから。もし仮に世の中の誰しもが待っていなくても自分はもう一度どこかで会えたらいいなって、と思っているけれど、そう思ってる人はたくさんいるはず。その人たちもまた秋山黄色の音楽があるから、この世の中を生きることができたはず。そんな力を持った、今年最高傑作のアルバム「ONE MORE SHABON」。
「君が持つのならば拳銃だって怖くない」(「アク」)
秋山黄色にこのフレーズを言ってあげたい。
/ 2023/06/16