the telephones 「SUPER DISCO Hits 11!!! 〜3Days Show〜」 NO DISCO!!! vs ALL DISCO!!! duo MUSIC EXCHANGE 2020.12.19 the telephones
the telephonesの5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!の3daysもいよいよ最終日。初日と2日目はそれぞれ年代で演奏される曲を分けていたが、この日は「NO DISCO!!! vs ALL DISCO!!!」ということで、まさにこれまでに行われてきたSUPER DISCO Hits!!!らしい内容になる予感。
チケットソールドアウトということで、2階の端まで椅子が用意されたduoの中が18時過ぎに暗転してステージ上のミラーボールが輝き出すと、前日はバンドで演奏もされた「Happiness, Happiness, Happiness」がSEとして鳴ってメンバーが登場。初日は当時の衣装、2日目は白と黒のシャツという出で立ちだったが、この日は今のtelephonesとして、普段通りの衣装で登場。
カラフルなアフロカツラを投げ捨てると、
「みんな両手を挙げてくれー!」
と唇サングラスをかけた石毛が言って観客が精神を解放するように両手を高く掲げて、この時間だけは暗いことや辛いことを考えない、ひたすらに楽しいものにしようというステージと客席双方の意思が満ちていき、この日は今年リリースの最新アルバム「NEW!」の1曲目であり、ライブのスタートに実にふさわしい「Here We Go」から始まる。それでも特に1曲目ということを意識して作ったわけではないと言っていたのが不思議だが、「NEW!」を自分がtelephonesの最高傑作だと思っているのはこの曲から始まるからだ。それくらいにメンバー全員によるサビのフレーズのコーラスというよりもはや合唱が聴いているこちら側をさぁ行くぞと奮い立たせてくれる。
初日と2日目はいわゆるDISCO曲をほとんどやらず、むしろライブでやるのは何年ぶりだろうか?という曲を中心に演奏してきたが、この日はこの序盤で早くも「Monkey Discooooooo」という超代表的なDISCO曲を演奏して早くも観客は椅子ありの指定席でありながらも踊りまくり、石毛が間奏でブリッジギターを披露する中、ノブはステージを走り回ったかと思えばシンセを弾きながら足をピンと伸ばしてマネキンチャレンジのように静止してみせたりと相変わらずパフォーマンスの幅が広い。
そのノブはメンバーの中で最も物理的に運動量が間違いなく多いはずだが、3daysの3日目となっても「RIOT!!!」(初日には演奏されなかったが、まさか最終日に来るとは)という激しいディスコパンク曲でやはりステージを走り回ったり飛び跳ねまくったりと、スポーツ選手なら大体の人が引退していてもおかしくない年齢だというのに全く疲れを感じさせないし、そもそも見た目がそうした年齢を感じさせない。完全なる三枚目アスリートである。
ライブタイトルからして今日はDISCO曲が多めに演奏されることになるだろうなと予測はしていても、ノブがカウベルを打ち鳴らしながらステージを闊歩するライブでの定番と言えるようなDISCO曲では全くない「DISCO AGE MONSTERS」で屋外の極寒さを忘れさせてくれるようなトロピカルな空気で観客を温めてくれる。
序盤はそうして「NO DISCO曲」と「DISCO曲」を交互に演奏しており、観客もそれに完全に気付いているのに、最初のMCでは
「実は交互にやってました!」
と言っており、客席からは「わかってますよ」という頷きが起きる。バンドサイドは観客が気づいていることが意外だったようだ。
この最初のMC部分では毎日の恒例になっている涼平による誠治いじりはこの日も行われたのだが、誠治は長く伸びた髪を三つ編みみたいにしようとするので、BRAHMANのRONZIの「好き好きロンちゃん」みたいになり、涼平から「混ぜ混ぜ誠ちゃん」と呼ばれる。大宮でまぜそば屋を営む誠治だからこそであるが、あまりにハマりまくっているネーミングである。
そこからもヒップホップなどの多様な要素を詰め込んだDISCO曲「Say DISCO」、新作からのクールなダンスナンバー「Tequila, Tequila, Tequila」、さらにはライブでついに初披露された、音楽だけではなくこの日こうしてライブを見に来てくれた人たちへの感謝までも込められた「Thank You DISCO!!!」、リリース当時に「これはtelephonesの新しいポップな一面を切り拓いたな」と思ったのももう10年前になる「kiss me, love me, kiss me」と、やはりDISCO曲とNO DISCO曲を交互に演奏していく。
しかしこうして1本のライブでまとまった形で聴くことによって実感するのは、一口にDISCO曲と言っても曲の音楽性はバラバラで幅広いということである。石毛は
「作る時はこういうDISCO曲を作ろうとは決めていない」
ということを前に話してくれたが、ひたすらにDISCO曲を演奏しまくるライブであってもtelephonesがただフェスで騒げればいいというようなバンドではない、音楽的な懐の広さを持っているバンドであるということは聴けばちゃんと伝わると思う。バイアスのかかっていないであろう「NO DISCO」な曲たちならば尚更。
するとここで今回の「NO DISCO!!! vs ALL DISCO!!!」というタイトルの趣旨を説明。てっきりここまでの流れの通りにDISCO曲とNO DISCO曲を交互に演奏するライブかと思いきや、ちゃんと対決になるルールがあるという。
それは観客の中から「NO DISCO!!!」の代表者と「ALL DISCO!!!」の代表者にそれぞれ腕に装着するタイプの万歩計をつけて、どっちの方がカウントが多いかを対決させるという、telephonesらしからぬちゃんと考えられた企画。(「どうせtelephonesだからヌルッとしたまま終わると思ってただろうけど」と石毛も言っていたが)
なのでここからは1曲ずつ交互にではなく、ブロックごとに演奏するということになり、一応参考としてノブも万歩計を装着してから、まずは「NO DISCO!!!」ブロックということで、ノブがカウベルを打ち鳴らしまくる「Baby, Baby, Baby」へ。普段のこの曲では広い会場のフェスであっても客席に突入していくノブは(個人的に1番好きなのは新木場の若洲公園のメインステージで客席にある滑り台の上まで行って子供と戯れながらカウベル叩いていたMETROCK)涼平サイドに行って足元にカウベルを置いて叩こうとするのだが、その状態では全然音が鳴らないということに気付いてすぐに拾い上げていた。
しかしながら「NO DISCO」曲はあまりにも曲の数が多い。アルバム1枚の中にDISCO曲は入っても1曲だけだが、NO DISCO曲はそれ以外の全部の曲なのだから。だからこそどの曲を選ぶのかで盛り上がりっぷりは全く変わってくるのだが、観客が真上に飛び跳ねまくる「Yeah Yeah Yeah」、涼平のイントロのベースラインが否が応でも観客を踊らせ、石毛も完全にそのグルーヴにノリノリで踊りまくる「electric girl」、一緒に歌うことはできないけれどタイトルに合わせて手をアルファベットの形にするのが楽しいのだが、ノブがシンセに体を預けるように倒れ込んでいたのを後でメンバーに「サボってた」と言われていた「A A U U O O O」と、完全にライブ定番曲の連打に次ぐ連打。
しかしこうして定番曲を連発しているのを観ていると、初日や2日目にこれらの曲を全く演奏しないでワンマンを構成していたバンドの練習量と曲の豊富さに改めてすごいなと思ってしまう。それ以外の曲だけでワンマンを作っていて、それを成立させていたのだから。
そんな「NO DISCO」ブロックの最後の曲はこちらも初日の「YOUNG」では演奏されていなかった「sick rocks」。赤い照明がまるで燃え上がるような熱い演奏をしているメンバーを照らし出し、普段ならば客席にダイブしたりもするノブはステージ上で叫びまくる。もっとこの「NO DISCO」に浸っていたいと思わせてくれるとともに、telephonesはDISCO曲だけのバンドではないということをバンド自身の曲と演奏によって証明していた。
そして対照的に「ALL DISCO」ブロックへ。初日には「urban disco」が、2日目には「Keep Your DISCO!!!」と「Romantic Disco」が演奏されており、被り曲なしという3日間なだけにそれらの曲と、すでにこの日演奏されている曲を除いたDISCO曲でどうやってこのブロックを構成していくのかと思っていたのだが、初っ端の同期音のイントロから始まる「oh my DISCO!!!」という「これがあったか!」なDISCO曲で完全に観客はブチ上がり、さらには
「今の世の中、バカみたいに踊ることが本当に大切だと思う!」
と言って演奏された「A.B.C.DISCO」のポップかつダンサブルなサウンドが会場を至福感で満たしていく。本当にバカみたいに、ただひたすらに楽しいと思えているということ。それは今の世の中で普通に生活していてもなかなか得ることができない感覚だ。それを味わうことができるから日々のそうした息苦しさを耐えていけるのだし、やっぱり音楽やライブは少なくとも自分の人生には必要だ。それも音楽やライブを生む場所やそれにまつわる人を愛してくれているバンドが作る音楽やライブが。
声を出せないだけに、観客は腕を挙げながらメンバーがひたすらに「DISCO!」と叫びまくるのを聴くという「I Hate DISCOOOOOOO」でも石毛は
「歌え!」
といつものように観客を煽るのだが、それは間違いなく「心で歌え」ということだ。だからこそ観客は誰も声を出さない。ルールを遵守するということがバンドを守ることにつながることをわかっているからだ。もちろん今まで通りに歌えたらもっと楽しくなれるのはみんなわかっているのだけれど。
そんな狂騒的な流れの中に「NEW!」収録の最新のDISCO曲である「Do the DISCO」が挟まれるのだが、それも納得と思えるくらいに「Do the DISCO」はストレートなディスコパンク曲。そうしたタイプのDISCO曲は実に久しぶりというか、もしかしたら「Monkey Discooooooo」以来と言えるのかもしれない。
そしてライブは本編最後の曲へ。石毛はここに来てくれた人や来たくても来れなかった人への感謝を告げつつ、
「今日来てくれて、俺たちもスタッフも本当に救われた」
と口にした。俺たちだけではなく、スタッフも。初日と2日目のアンコールで予定にない曲を演奏してもしっかり合わせてくれるPAや照明のスタッフ、こんなに寒い中でずっと屋外で物販に立っているマネージャー。そういう人たちもライブがなければ仕事がなくなってしまう。telephonesはライブハウスのスタッフをやっていたメンバーなだけに、そうした人たちの姿をバンドをやる前からずっと見てきている。だからこそその人たちのためにもやらなくちゃいけないし、成功させなくちゃいけない。
もちろん我々観客も、そう言ってくれるバンドがいるからこうしてこの状況の中でライブハウスに足を運ぼうと思うことができる。それは今までの「来てくれてありがとう」とは全く重みが違う。もちろんいろんな立場や考え方があるけれど、少しでもこうしてライブに来ることによってバンドや、それにまつわる人を支えることができるんなら、やってくれる限りは足を運ぼうと自分は思っている。こんな状況によって生活していけなくなって辞めなければならなくなって、もう会えなくなってしまうなんてあまりにも残酷過ぎるから。
曲前にはこれまでのライブでも行ってきた、
「ウィーアー!」
「ディスコ!」
のコール&レスポンスも行われるのだが、もちろんレスポンスを声として返すことは今はできない。その代わりにグッとした気合いのような思いを観客はバンドへ返す。もちろん心の中で思いっきり叫びながら。
そして最後に演奏された「Love & DISCO」はやはり今までにSUPER DISCO Hits!!!やいろんな場所でのいろんなライブで聴いてきた思い出が蘇ってきていた。ああ、この曲で声を出さないというか出せなかったのは活動休止を発表したTOKYO DOME CITY HALLでのSUPER DISCO Hits!!!が最初だったな、とか。でも今は声は出せなくても腕を挙げたり、踊ったりすることはできる。つまりはやっぱりtelephonesのライブに来ることは本当に楽しいというあまりにも単純なところに行き着く。これまでとは違う状況だったけれど、確かに愛とDISCOに溢れた3日間だったのだ。
アンコールではやはり今回のライブTシャツに着替えながら、初日にすでに先行で発表されていたツアーの各地のタイトルなども発表されながら、万歩計対決の結果発表ではDISCO曲が勝利し、その勝利者にアンコールでやって欲しい曲をリクエストしてもらうという流れに。
「昨日のリクエストは全部知らない曲だった」
と涼平が言う中、4〜5曲挙げていた中で唯一この3日間で演奏されていなかった「Burn With Anger」を披露しようとするも、石毛が
「サビのギターがわからない」
ということで、前日にも演奏している「D.E.N.W.A.」に落ち着くのだが、
「ディスコディスコばっか言ってるけど
俺は常にミュージックラバー
退屈な君の日常を壊す
ゴルゴばりのスナイパー」
というこの曲の日本語のフレーズの韻の踏みっぷりが好きなだけに、やはりこうして聴けるのは嬉しいところである。前日のような「演奏できる曲がない!」という展開も期待していたけど。
「昨日まで2日間やって、みんなを楽しませるのはもちろんだけど、それ以上に俺たち自身が楽しむことが1番大事だなってみんなのことを見ていたら実感しました」
と石毛がこれからも周りの目を気にしたり、求められることをやり続けるのではなく、telephonesとしてやりたいことをやり続けていくという決意を改めて口にすると、最後に演奏されたのはDISCO曲が勝ったということで、初心に戻ってのDISCO曲である「urban disco」。ノブが客席にダイブできない代わりに、機材を運搬する台車に乗って転がっていくという、メンバーも演奏しながら爆笑するパフォーマンスを見せ、最後には石毛がメンバー紹介をしてから4人とも心からやり切ったような表情を浮かべて、3日間でほぼ被りなしの60曲を演奏したステージを去っていった。
過去のSUPER DISCO Hits!!!でいろんな場所に行ってライブを見た。みんなで肩を組んで踊ったディファ有明や、石毛ピックをゲットしたラフォーレミュージアム六本木などの、なかなか行く機会が他にない場所から、さいたまスーパーアリーナまで。活動休止の発表もSUPER DISCO Hits!!!だった。
そんな、telephonesの歴史と思い出が詰まりまくったイベントがついに帰ってきた。そこで3日間で聴いた、58曲にはそれぞれの曲にそれぞれの思い入れがある。それら全てを含めて、やはりtelephonesが好きで良かったし、こうして3日間全て来て間違いじゃなかったと思える。
また来年の年末もこうしてSUPER DISCO Hits!!!が開催されて、その時には来たい人が全員何の後ろめたさもなく来れるような世の中になっていますように。telephonesがいればそれができるんじゃないかと思えるくらいに、やっぱりこの4人を見ていると信じられないくらいの希望や信頼が自分の中に湧いてくる。この時代に、間違いなく必要なバンドだ。
1.Here We Go
2.Monkey Discooooooo
3.RIOT!!!
4.DISCO AGE MONSTERS
5.Say DISCO
6.Tequila, Tequila, Tequila
7.Thank You DISCO!!!
8.kiss me, love me, kiss me
9.Baby, Baby, Baby
10.Yeah Yeah Yeah
11.electric girl
12.A A U U O O O
13.sick rocks
14.oh my DISCO!!!
15.A.B.C.DISCO
16.I Hate DISCOOOOOOO
17.Do the DISCO
18.Love & DISCO
encore
19.D.E.N.W.A.
20.urban disco
文 ソノダマン