2017年にリリースしたフルアルバム「ミカヅキの航海」が発売日のオリコンデイリーチャートで1位。このままビッグアーティストとしての道を歩んでいくようになるかと思いきや、弾き語りアルバム「め」のリリースこそ2020年にあったものの、実に5年の歳月を経てのセカンドアルバムリリースと、信じられないくらいに久しぶりのフルアルバム。
しかしタイトル曲「酸欠少女」、アニメの主題歌になった「花の塔」という冒頭2曲を聴いただけでもうこのアルバムが名盤であることがわかる。それと同時に入れ替わりが激しい女性シンガーソングライターという立ち位置でこれだけ長い期間アルバムが出なくてもさユりがその存在感を失うことがなかったこともわかる。それくらいにさユりにしか紡げないメロディがあって、さユりにしか歌えない歌がある。このアルバムはそんな曲だけで成り立っているし、改めてさユりが名曲だけを生み出してきたアーティストだということを実感させてくれる。かつてシングル発売時にタワレコのサイン会に行った時に自分は
「さユりさんのシングルはカップリング曲もタイトル曲に負けないくらいに良い曲しか入ってないからこうして毎回シングルを買ってます」
と伝えたら
「ああ、本当に嬉しい。ありがとうございます」
と言ってくれたことがある。それくらいに1曲1曲に手を抜くことができないから、これだけ時間が空いてしまうこともあるし、曲を生み出す時に自身の生きづらさがそのまま歌詞になったりもする。日本でその日に1番売れたアルバムを作っても変わることがなかったさユりの人間性や本質が今も泣きそうな酸欠少女のままで鳴っている。
/ 2023/06/16