「もうアルバムは出ないんじゃないだろうか」とすら思うくらいに難産だった「The Fin.」からしたら割と早くアルバムが出来たな、と思っていたら5年というインターバルはその「The Fin.」のリリースと全く同じだった。そんなに空いた感覚がなかったのはシングルなどのリリースが定期的にあり、数え切れないくらいにやってきたライブで常にその新曲を演奏してきたからだろう。
その先行シングル曲である「ハローフィクサー」以降は3人以外の音であるシーケンスをより前面に押し出すようなサウンドになっているのであるが、それがバンドらしさを全く失っていないどころか、むしろ10-FEETとしてのミクスチャーロックさをさらに引き出しているのはその「ハローフィクサー」しかり、映画「SLAM DUNK」に起用された「第ゼロ感」しかり、そうしたサウンドの曲が名曲としか言えないくらいに、数々の名曲たちを更新する新たなアンセムになっているからだ。なんなら今の10-FEETのライブは「RIVER」や「goes on」をやらなくても成立するのもこの新曲たちの存在があるからであるし、これだけアルバムリリースペースはマイペースであっても失速しないどころか、さらに巨大な存在となり続けているのは京都大作戦の存在はもちろん、こうして素晴らしい曲であり作品をリリースし続けているバンドだからであることを改めて証明している。このアルバムに何曲か収録されているショートチューンたちはこれからもライブの持ち時間がギリギリの時などに鳴らされ、そこでさらなる熱狂を生み出してくれる景色が想像できる。
/ 2023/06/16